Wyvern (2009)

※『ジュラシック・プレデター』のタイトルで2010年4月に日本盤DVDが発売されました

 

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(P)2009 Genius Entertainment (USA)
画質★★★★★ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/5.1chサラウンド/音声:英語/字幕:なし/地域コード:1/89分
/製作:アメリカ

映像特典
なし
監督:スティーヴン・R・モンロー
製作:カーク・ショウ
脚本:ジェイソン・ボルク
撮影:C・キム・マイルズ
特殊効果:ラックス・ビジュアル・エフェクツ
音楽:パイナー・トプラク
出演:ニック・チンランド
   エリン・カープラク
   バリー・コービン
   ドン・S・デイヴィス
   エレイン・マイルズ
   ティンセル・コリー
   サイモン・ロングモア
   ジョン・ショウ
   カレン・オースティン
   デヴィッド・ルイス

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アラスカの北極海沿岸で流氷が溶け出す

釣り人を襲う謎の巨大生物

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心に傷を抱えた寡黙なトラック運転手ジェイク(N・チンランド)

食堂を経営するしっかり者クレア(E・カープラク)

 今年の1月にアメリカのケーブル局サイファイ・チャンネルで放送されたテレビ用クリーチャー映画。アラスカのとある小さな町を舞台に、長い眠りから甦った伝説のドラゴン“ワイバーン”と住民の闘いを描く作品だ。
 ワイバーンとは中世ヨーロッパの貴族の紋章などによく登場する二本足のドラゴン。通常のドラゴンが一般的に王家の紋章として使われていたことから、その代用として創造された架空の生き物だ。それゆえに、特定の神話や文献などとは一切無関係の存在なのだが、本作では北欧神話に伝わる伝説の怪獣として設定されている。
 ストーリーは至ってシンプルかつ簡潔。これといって捻ったような展開もなく、ひたすらストレートにワイバーンVS住民の死闘が展開していく。もったいぶることなく冒頭からワイバーンの全貌を見せてしまうのも潔い。演出のテンポもリズミカルだし、余計な男女のラブ・ロマンスなどが一切ないのも好感が持てる。
 また、登場人物たちがいずれも善人ばかりで、お互いの結束力を以ってワイバーンに立ち向かうというプロットも良かった。主人公の足を引っ張るような悪役や憎まれ役がいないというのはスッキリする。もちろん、怪獣の存在を否定する横暴な権力者なども出てこない。おかげで『ジョーズ』の二番煎じ的なマンネリズムに陥ることもなく、ワイバーンを退治するというただ一つの目的に登場人物全員が集中できるのだ。
 その登場人物たちのキャラクター描写も悪くない。それぞれにちょっと風変わりだが、ユーモラスで人間味があって親しみが持てるのだ。彼らの長閑な日常生活をさり気なく描きながら、小さな村に住む隣人たちの絆を浮き彫りにしていく前半のドラマ構成は面白い。
 そして、この種の映画で肝心なCGやVFXもまずまずの出来栄え。一部ライブ・アクションとの合成が不自然で甘いものの、低予算のテレビ映画であるということを考えれば上出来だろう。派手なスペクタクルなど全くないのでスケール感には乏しいが、所詮はお手軽なB級作品。贅沢は言うまい。
 ただ、ワイバーンを退治するクライマックスのご都合主義は安易で、その呆気なさゆえに尻つぼみ的な印象は拭えないだろう。やはり最後はしっかりと手綱を締めて欲しかった。ひとまず、友達とワイワイやりながら楽しむには十分な作品だ。
 ちなみに、製作を手掛けたのはRHIエンターテインメント。かつて低予算のホラー映画やSF映画、テレビ映画を数多く生み出したホールマーク・エンターテインメントが社名変更した会社だ。ドラマ『プリズン・ブレイク』のウェントワース・ミラーが主演した恐竜SFもの『ダイノトピア』(02)や巨大ワニが人を食い散らかす『ラプター』(07)、ランス・ヘンリクセン主演の巨大クモ・パニック『スパイダー・キングダム』(07)、イザベラ・ロッセリーニ主演のSFホラー『エイリアンゾイド』(08)、フェイ・ダナウェイ出演の細菌感染パニック『爆発感染 レベル5』(07)、故デヴィッド・キャラダイン主演のファンタジー・アクション『カンフー・キングダム』(08)などなど、出来不出来には大きくバラつきががあるものの、B級マニアの心をくすぐるテレビ映画やビデオ映画を大量生産している。

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町医者イェーツ(D・ルイス)は森の中で不気味な物音に気付く

それは例の巨大生物だった

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恐怖に怯える猟師ハース(B・コービン)

草むらにはイェーツの腕が転がっていた

 オープニングはアラスカの北極海沿岸。夏の強い日差しを受けて氷河が崩れ落ち、その中で不気味な生物が目を覚ます。そして、舞台は森と河に囲まれた人口300人余りの小さな町ビーヴァー・ミルズへと移る。近郊の河で釣りをしていた男性が、突如として空から現れた巨大生物に食い殺された。
 一方、町の住民は普段通りの平和で長閑な一日を過ごしている。町で唯一の食堂を経営する若い女性クレア(エリン・カープラク)は、誰からも愛される美人で明朗快活なしっかり者。そんな彼女の店には、頑固一徹の昔気質な猟師ハース(バリー・コービン)やのんびり屋で居眠り好きの女性保安官助手スージー(エレイン・マイルズ)、1年前に死んだ親友と未だに朝食を続けている(?)老女イーディン(カレン・オースティン)、正直すぎていつも一言多いファーリー(サイモン・ロングモア)など、憎めない変わり者たちが今日も集まっている。
 クレアが気になっているトラック運転手ジェイク(ニック・チンランド)も常連客の一人だ。さりげなくアプローチをするクレアだが、不器用で寡黙なジェイクは彼女の気持ちに気付いているんだか気付いていないんだか。しかも、彼は自分の運転ミスが原因で最愛の弟を失っており、それがトラウマとして心に重くのしかかっていた。
 食事を終えてドーソン保安官(ジョン・ショウ)と立ち話をしていたジェイク。すると、森の方から銃声が数発響いた。ハースが狩をしているのだろうと気に留めなかったジェイクだが、念のために様子を見ようという保安官について行く。
 すると、そこには顔面蒼白でショック状態のハースがうずくまっていた。彼の話によると、巨大な怪物から空から襲ってきたのだという。ふと草むらに目をやったジェイクは、血まみれの人の腕が転がっていることに気付いた。シャツの袖の柄から、それが町医者イェーツ(デヴィッド・ルイス)のものであることが分かった。
 ただならぬ空気を感じたドーソン保安官は、町の人々を集めて建物の中から一歩も外へ出ないように伝える。しかし、今日は白夜の到来を祝う一年に一度の祭りの日。住民たちは保安官の言葉にも半信半疑で、予定通り祭りを決行することにする。
 その頃、町の外れに住む変わり者の退役軍人シャーマン大佐(ドン・S・デイヴィス)は、空から鹿の生首が降ってきて驚く。双眼鏡で辺りの空を監視していたところ、翼を持った巨大生物を目撃した。すぐさま機関銃を片手に家を飛び出した大佐は、人々に警告を発するために町へと向かう。
 しかし、町の住民は誰もシャーマン大佐の言葉に耳を貸さず、祭りのバーベキューを楽しんでいた。大佐は町内ラジオの放送局へと行き、女性DJのハンプトン(ティンセル・コリー)に緊急警報を出すよう説得するが、やはり断られてしまう。仕方なく巨大生物を探しに郊外へ向かおうとした大佐は、路上に破壊された車がひしめく光景を目の当たりにする。そこから先へは進めない。つまり、町を脱出する手段が断たれてしまったのだ。
 一方、巨大生物が町へと来襲する。真っ先に気付いたハンプトンが緊急警報を出すが、既に手遅れだった。住民たちは次々と怪物の餌食となり、保安官助手スージーも食い殺された。ジェイクやクレア、ハース、イーディンらは食堂に立て篭もり、なんとか難を免れる。
 しかし、巨大生物が町の電話線や送電線を全て破壊したため、外部との連絡手段は全て断たれてしまった。辛うじて無線機が残されたが、アンテナがないために遠距離の通信は不可能だ。ハンプトンの援護で雑貨屋の屋根に取り付けられたアンテナを外し、無線機に繋げることに成功したジェイク。だが、電波が微弱なために、救援隊との通話も途絶えてしまった。
 果たして、あの巨大生物は何なのか?その時、ショック状態から立ち直ったハースがハッと気付く。あれは北欧神話に語り継がれるドラゴン、ワイバーンだと。彼はノルウェー系移民である父親から、ワイバーンの伝説を聞かされて育った。それによると、かつて罪なき人々を襲っては貪り食ったワイバーンは、勇敢なバイキングたちによって北極海の流氷に閉じ込められたという。その流氷が夏の太陽と地球温暖化によって溶け、ワイバーンが目を覚ましたのだ。
 神出鬼没で狡猾なワイバーンは、様々な手を使ってジェイクたちを建物の外へとおびき出そうとする。町外れから戻ったドーソン保安官も餌食になってしまった。ジェイクはシャーマン大佐やハースと共に武器を持ってワイバーンの攻撃から皆を守ろうとするが、なかなか歯が立たない。
 その頃、森の中で町医者イェーツが目を覚ました。片腕を食いちぎられたイェーツだったが、なんとか一命を取り留めていたのだ。そんな彼の目に飛び込んできたのは、三つ並んだ巨大なワイバーンの卵だった・・・。

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いち早く怪物の存在に気付いたシャーマン大佐(D・S・デイヴィス)

ラジオDJ、ハンプトン(T・コリー)の目の前に巨大生物が・・・

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食堂に立て篭もるジェイクやクレアたち

建物の中へ侵入しようとするワイバーン

 監督のスティーヴン・R・モンローは、『SAW』シリーズに影響を受けたデニス・ホッパー主演の密室サスペンス・ホラー『NINE -ナイン-』(05)で一部のB級映画マニアに評価された人物。『THE THING ザ・シング』(05)や『HAKAIJU 破壊獣』(06)といったクリーチャー・ホラーも何本か手掛けている。いずれも低予算ゆえに、ろくに怪獣の姿も見せることが出来ないような代物だが、スピーディな演出の上手さだけは一定の評価を得ているようだ。そんな彼にとって、この“Wyvern”はは今のところ数少ない代表作と呼べる作品かもしれない。
 脚本を担当したジェイソン・ボルクは、監督として『ヘルファイアー』(02)や『スーパーストームXXX』(06)といったRHIエンターテインメント製作のテレビ映画を数多く手掛けている人物。撮影監督のC・キム・マイルズも、『キラー・ゲーム〜呪われた鬼ごっこ』(05)や『スーパーストームXXX』、『フライト・デスティネーション』(07)などのRHIエンターテインメント作品でお馴染みのカメラマンだ。
 また、CGとVFXを担当したラックス・ビジュアル・エフェクツは、サイファイ・チャンネルの人気ドラマ・シリーズ『ユーリカ 〜事件です!カーター保安官』(06〜)を手掛けているカナダの会社。他にも、SFコメディ・シリーズ『REAPER デビルバスター』(07〜)やJ・J・エイブラムス製作の最新ドラマ“Fringe”(08〜)などのVFXも担当している。

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破壊された車によって道路が通行不能に

ドーソン保安官(D・ショウ)もワイバーンの餌食となる

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意識を取り戻したイェーツ医師

目の前にはワイバーンの卵が三つ並んでいた

 主人公ジェイクを演じているニック・チンランドは、『リディック』(04)や『レジェンド・オブ・ゾロ』(05)、『ウルトラヴァイオレット』(06)などの悪役演技で近年頭角を現しつつある俳優。今回は珍しくヒーロー役だが、やはりちょっと主演の器ではなかったかもしれない。10年くらい前のハリソン・フォードを貧相にした感じで、いまひとつ存在感に欠けている。
 一方、食堂を経営するヒロイン、クレア役を演じているエリン・カープラクは、テレビを中心に活躍するカナダの若手女優。ものすごい美人というわけではないが、爽やかな笑顔としっかりとした演技が好感度高い。初主演ドラマ“Godiva's”(05〜06)でレオ賞(カナダ版エミー賞)の主演女優賞にノミネートされ、今年スタートしたドラマ“Being Erica”(09〜)も大好評だったという。
 そのクレアに“ヒルビリー(田舎者)”扱いされる頑固な猟師ハースを演じているバリー・コービンは、『アーバン・カウボーイ』(80)や『センチメンタル・アドベンチャー』(82)、ミニ・シリーズ『ロンサム・ダブ』(89)などでアメリカでは有名なカウボーイ役者。
 また、90年代の大ヒット・ドラマ『たどりつけばアラスカ』(90〜95)のマリリン役で知られるネイティブ・アメリカン女優エレイン・マイルズが、保安官助手スージー役でとぼけた演技を披露。さらに、『ツイン・ピークス』(90〜91)のボビーの父親ブリッグス少佐役や『スターゲイト SG-1』(97〜)のハモンド将軍役でお馴染みの名優ドン・S・デイヴィスが、シャーマン大佐役を演じている。残念ながら、これが遺作となってしまった。

 

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