Wicked Little Things (2006)

※『100年後...』として2008年DVD発売されました

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2006年/アメリカ映画/上映時間:94分
ワイド・スクリーン/カラー作品
監督:J・S・カーダン
製作:アントン・ホーガー
    ボアズ・デヴィッドソン
脚本:ジェイス・アンダーソン
    アダム・ギエラッシュ
    ベン・ネディヴィ
撮影:エミール・トプゾフ
編集:アラン・ヤクボウィッツ
特殊効果:ニコライ・ガチェフ
音楽:ティム・ジョーンズ
出演:ロリ・ヒューリング
    スコート・テイラー・コンプトン
    クロエ・モレッツ
    ジョフリー・ルイス
    ベン・クロス
    マーティン・マクドガル
    クリス・ジャンバ
北米盤DVD発売:Lions Gate
発売年:2007年

 

 ホラー映画にはアンファン・テリブル、すなわち“恐るべき子供たち”を主人公にした作品群というのがある。要は、子供たちが大人を殺しまくる映画だ。一番有名なのはスペイン映画「ザ・チャイルド」('76)だろう。風光明媚なスペインの島を舞台に、身勝手で横暴な大人たちに反旗を翻した子供たちが、ある日突然大人を片っ端から殺し始める。無邪気な子供たちが遊び感覚で大人たちを殺していく「無邪気な悪魔におもちゃが8つ」('74)なんて映画もあったし、SFホラーの古典「光る眼」('60)やスティーブン・キング原作の「チルドレン・オブ・ザ・コーン」('84)なんかも、このジャンルの変化球的作品と見ていいだろう。
 で、この“Wicked Little Things”。100年前に炭鉱工事現場の事故で生き埋めにされてしまった子供たちが生ける屍となり、夜な夜な森から現れては付近の動物や人間を殺しまくるというもの。子供のゾンビ軍団が主人公の映画というのは確かに珍しい。真夜中の暗い森の中で、ゾンビと化した子供たちの姿が青白く浮かび上がる光景はなかなか強烈なインパクトだ。アメリカン・ゴシックとも言うべき伝奇ホラー的ムードもたっぷりで、最近のハリウッドでは稀な正統派怪奇映画の登場と言えるだろう。

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田舎に越してきた主人公一家

真夜中の森を徘徊する子供ゾンビ

 主人公は若き未亡人カレン(ロリ・ヒューリング)。思春期を迎えた長女サラ(スコート・テイラー・コンプトン)と幼い次女エマ(クロエ・モレッツ)を抱えた彼女は、夫の遺産であるペンシルヴァニアの山奥にある古い家を訪れる。ここは夫の実家で先祖代々受け継がれてきた家だったが、何故か長い間空き家になっていた。病を患っていた夫の治療費で貯金が底を尽きてしまっていたカレンは、就職先が決まるまでこの家で暮らすつもりでいたのだった。
 しかし、家の周りを取り囲む森には不気味な雰囲気が漂っていた。まず、水道管の修理に訪れた修理工(ジョフリー・ルイス)が姿を消してしまう。さらに、次女エマがメアリーという目に見えない友達の存在をほのめかすようになる。しかも、そのメアリーには森に住む仲間がいるのだという。
 一方、反抗期真っ盛りの長女サラは地元に住む同世代の男女グループと意気投合、彼らから森にまつわる恐ろしい伝説を聞かされる。もともと貧しい炭鉱村だったこの地域では、横暴な炭鉱主によって幼い子供たちまでもが労働に従事させられていた。時は1913年。採炭を急ぐ炭鉱主の非情な命令により、地下に大勢の子供たちを残したままダイナマイトが発破されてしまった。生きたまま地中に埋められてしまった子供たちは、生ける屍となって夜な夜な森を徘徊しているのだという。そして、運悪く遭遇してしまった人間や動物を殺しては、その死肉を貪るのだ。
 その頃、カレンはエマの姿が見えないことに気付く。必死になって森の中を捜索したカレンは、廃墟と化した炭鉱跡のそばでエマを発見。道に迷ってしまった二人は、森の中の小屋に住む謎めいた老人ハンクス(ベン・クロス)と知り合う。決して夜は出歩いてはいけない、と警告するハンクス。しかし、森に棲む子供たちは、カレン一家の住む家を虎視眈々と狙っていた・・・。

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昼間でも不気味な森の中

死んだ子供たちの写真

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死肉を食らう子供ゾンビたち

憎々しげな炭鉱主の子孫

 20世紀初頭の貧しい炭鉱村の様子を丁寧に再現したオープニングから、なかなかいい雰囲気。舞台となる森の幻想的で不気味なムードも魅力的で、非常にヨーロッパ映画的な感じだ。それもそのはずで、ロケは全てブルガリアで行われている。それこそ、昔のイタリアやドイツのゴシック・ホラーを彷彿とさせるような映像が随所に散りばめられており、ビジュアル的には結構好みの作品である。また、時代の闇に葬り去られてしまった名もなき弱者の怨念が現代に生き続けている、という題材もロマンがあっていい。
 しかし、その一方でこの作品は脚本のツメが非常に甘い。そもそも、自分たちを死に至らしめた炭鉱主への恨みを晴らすために甦った子供たちが、何故に100年近くもの間全く関係のない近隣の住人や家畜を殺し続けてきたのか?さっさと炭鉱主ないしは、その子孫を殺してしまえばいいものを。しかも、ゾンビとはいえ何故殺した相手の肉を食う必要があるのか?さらには、散々夜中に森の中でイチャイチャとデートしているティーンたちが、何故今までゾンビ軍団に襲われた事がなかったのか?違った意味で謎は深まるばかりだ。
 こうした脚本のご都合主義、辻褄の合わない部分を大目に見ることさえ出来れば、これはこれで非常に魅力的なゴシック・ホラーである。露骨な残酷描写よりもムードや演出で怖がらせようとする監督の姿勢も立派だし、それが大部分でちゃんと成功している。夜中にエマの様子を覗きに来たカレンがベッドですやすやと眠る娘の姿を見て安心してドアを閉めると、扉の陰から青白い顔をした少女の姿が暗闇に浮かび上がるシーンなんか、かなりゾーッとさせられる。特殊メイクやCGを使わなくても、十分に怖い映画が撮れるのである。

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母カレン役のロリ・ヒューリング

「炎のランナー」で有名なベン・クロス

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ジュリエット・ルイスのパパ、ジョフリー・ルイス

注目の子役クロエ・モレッツ

 演出を担当するのはJ・S・カーダン。インディペンデント業界の知る人ぞ知るベテラン監督だ。処女作の「魔島」('82)は超低予算ながらも優れたスラッシャー映画だったし、最近では戦争アクション「山猫は眠らない」シリーズなどのプロデューサーとしても活躍している。本作でも、人件費を節約するために選んだブルガリアのロケーションを非常に上手く使っており、全く低予算を感じさせない出来映えだ。
 主演キャストが非常に地味なものの、あの名作「炎のランナー」('81)の若々しい好青年ぶりが印象深いベン・クロスが、変わり者の老人ハンク役で登場。その別人のような老け具合もなかなかショッキングだ。また、クリント・イーストウッド作品の常連で、ジュリエット・ルイスの実父としても有名な名脇役ジョフリー・ルイスがチラリと出演。彼もすっかり年を取ってしまった。さらに注目しておきたいのは、次女エマ役を演じるクロエ・モレッツ。リメイク版「悪魔の棲む家」('05)の末っ子チェルシー役で注目され、日本未公開の病院ホラー“Room 6”('06)や香港ホラーのリメイク“The Eye”('07)など、すっかりホラー映画で引っ張りだこの美少女スター。その繊細で賢そうな顔立ちと、控えめで堅実な演技力が好感の持てる注目の子役だ。

 ということで、決して傑作とは言えないものの、正統派の恐怖映画を楽しみたいという人には是非ともオススメしたい1本。しっかりと怖いデス。

 

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