ウェス・クレイヴン Wes Craven

 

WES_CRAVEN.JPG

 

 “ホラー映画界きってのヒット・メーカー”と形容されることの多いウェス・クレイヴンだが、よくよく考えてみると彼の作品で興行的に大成功を収めたと言えるのは、『エルム街の悪夢』(84年)と『スクリーム』(96年)シリーズくらいのもの。処女作『鮮血の美学』(72年)と2作目『サランドラ』(77年)はカルト映画としての知名度は高いし、一部の国ではそれなりにヒットしたものの、あくまでも“低予算映画としては”という前置きが必要だろう。逆に言うと、それだけ『エルム街の悪夢』と『スクリーム』シリーズの成功が、エポックメイキング的なものだったということの証明でもある。
 1939年8月2日、オハイオ州クリーブランドに生まれたクレイヴンは、厳格なバプテスト信者の母親に育てられた。映画を見るなどもってのほか、高校生活最大の思い出となるプロムナイトへの出席すら禁じられていたという。その反動が大人になって一気に噴出したと本人も語っている。親に教わったとおり禁欲的な青春時代を過ごした彼は、めでたく大学で修士号を取得。作家を目指していたことから、時間に余裕のある大学講師の仕事を選んだ。
 そこで初めて映画の世界に触れた彼は、たちまちその魅力に取り付かれて没頭。さらに、それまで親に教え込まれてきた価値観に対する怒りがこみあげ、映画界を志して大学を辞めてしまう。当時既に20代後半だったわけだから、さしずめ遅く訪れた反抗期といったところだろうか。チャンスを求めてニューヨークへ出たところ、当時ポルノ映画を撮っていたショーン・S・カニンガム監督(『13日の金曜日』)と知り合い、スタッフとして働くようになった。
 そのカニンガムのプロデュースで製作された、クレイヴンの処女作が『鮮血の美学』(72年)。2人の女子高生がストリート・ギャング集団によってレイプ・殺害され、片方の女の子の両親が壮絶な復讐を遂げるというもの。ドキュメンタリー・タッチでリアルに描かれるバイオレンス・シーンが話題を呼んだ作品だ。母親がストリート・ギャングの一人にフェラチオをして、ペニスを噛み切ってしまうなど、当時としてはかなりショッキングな描写がてんこ盛りだった。
 さらに、『サランドラ』(77年)では、中流階級の平凡な家族が砂漠のど真ん中に取り残され、核実験で変異した食人鬼一家と対峙する。一家の父親は丸焼きにされ、母親と嫁も惨殺される。残された子供たちは、誘拐された幼い赤ん坊を取り戻すため、食人鬼一家と全面対決をすることになるわけだ。
 このように、初期のクレイヴン作品は現代社会の生み出した怪物に直面する平均的なアメリカ人家族の姿を描くという点で共通していると言えよう。どちらも明快なハッピーエンドは与えられず、暴力によって崩壊させられてしまった家族の喪失感とむなしさばかりがあとに残る作品だった。
 『サランドラ』ではシチェス国際映画祭のグランプリを受賞したクレイヴンだったが、その後数年間はスランプの時期が続く。厳しい戒律を守って暮らすキリスト教宗派のコミュニティで起きる陰惨な恐怖を描いた『インキュバス・死霊の福音』(81年)、植物と人間の融合したアメコミ・ヒーローを描く『怪人スワンプ・シング/影のヒーロー』(82年)、小さな町の住人が次々と豹変していく『ジェシカ/超次元からの侵略』(84年)。
 自らの生い立ちや経験を生かしたと思われる『インキュバス・死霊の福音』や、クレイヴン版「ステップフォードの妻たち」とも言える『ジェシカ/超次元からの侵略』は、面白い作品になる可能性だけはあった。が、商業マーケットを狙いすぎたせいなのか、ホラーとしても娯楽映画としてもまことに中途半端な仕上がりと言えよう。
 そもそも、クレイヴンは基本的にとても真面目な映画作家だ。正直なところ、商売人としては決して器用なタイプの人ではないと思う。あくまでも常識人なので、低予算をごまかすために派手なエログロ描写に逃げるようなことも出来ない。ビジネスに徹しようとすると、逆に粗が出てしまうというか、妙にぎこちのない作品が出来上がってしまうのだ。彼は作品によって出来不出来が激しい人だが、その辺りに原因があるのではないかとも思う。

NIGHTMARE_ON_ELM_STREET.JPG

エルム街の悪夢(84年)

 そんなクレイヴンのターニングポイントとなったのが、80年代のハリウッド・ホラーを代表するメガヒット作『エルム街の悪夢』(84年)である。これは、カンボジア難民の子供たちが悪夢に苦しんだ挙句死んでしまうという奇妙な現象を報じた新聞記事にヒントを得たもので、81年頃には既に構想は出来上がっていたようだ。その後、クレイヴンはあちこちの映画会社に脚本を持って回るが、ことごとく断られてしまった。半ば諦めかけたところへ出資を申し出てくれたのが、当時まだ新興の映画会社だったニューライン・シネマ。まさしく、クレイヴンにとっては念願の企画だったわけだ。
 この『エルム街の悪夢』でクレイヴンは、潜在意識の中にある恐怖を夢に出てくる怪物フレディ・クルーガーとして描き出した。エルム街に住む少年少女たちの夢の中に現れ、次々と彼らを血祭りにあげていくフレディ。それは、思春期にさしかかった子供たちの心の奥に潜む不安や恐怖を象徴する存在だ。と同時に、それは彼らが親から背負わされてしまった重荷の象徴でもある。なぜなら、フレディはかつて彼らの親たちに殺された連続殺人鬼だからだ。
 親たちは子供を守るためにフレディ・クルーガーを抹殺し、子供のためを思ってその事実をひた隠しにしてきた。その悪霊が蘇って子供たちに復讐を遂げていくわけだが、何も知らされていない子供たちはなす術もなく殺されるしかない。それどころか、親たちは子供たちが発信するSOSにすら耳を傾けようとはしない。なぜなら、死者が蘇るなんてことはあり得ないから。親は自分たちの考えが絶対的に正しいと思っているのだ。
 クレイヴンはインタビューで、“親たちは、少しでも子供がおかしい素行をすると、家の中に閉じ込めてしまう。だから子供にとって、家が刑務所になってしまい、心から自由を求めようとする”と語っている。親が良かれと思って子供に押し付ける価値観は、往々にして苦痛や足かせにしかならない。親は教育のためだと考えて子供から情報を奪おうとするが、それは逆に子供が自らの身を守るための武器を奪っていることにもなりかねない。クレイヴンは自らの実体験から、そのことを身にしみて感じていたのだ。
 本作のヒロイン、ナンシーは果敢にもフレディに立ち向かい勝利する。それは己の心に潜む恐怖に打ち勝ったことを意味するわけだが、同時に親から押し着せられたものからの脱却をも意味する。なぜなら、彼女は自分が肌で感じた恐怖という存在を受け入れ、自分の頭で考えてそれに立ち向かい、自分の手によって勝利したからだ。それだけに、ナンシーの活躍が観客にもたらすカタルシスは、他のホラー映画とは比べ物にならないくらい大きい。
 『エルム街の悪夢』が成功したのは、こうした精神分析学的なアプローチによる素晴らしい脚本と、それを見事に映像化したテクノロジーの融合にあると言っていいだろう。クレイヴンはそれまでにも幾度となくサイコロジカルな視点から恐怖というものを描こうとしてきたが、表現方法が未熟だったために上手く消化できないでいた。『インキュバス・死霊の福音』にしても、『ジェシカ/異次元からの侵略』にしてもそうだと言える。
 ただ、残念なのはクレイヴンの手から離れた2作目以降、シリーズが単なるモンスター映画になってしまったこと。実体のない恐怖を象徴する存在だったフレディ・クルーガーに実体が与えられてしまい、子供たちを追い掛け回す悪戯好きの殺人鬼になり下がってしまった。それはそれでエンターテインメントとしてはアリなのだろうが、1作目の世界観を愛するファンにとっては邪道以外の何ものでもないだろう。

SCREAM.JPG

スクリーム(96年)

 こうして80年代のホラー映画を代表する金字塔を打ち立てたクレイヴンだったが、その後は再び低迷期を迎えることとなる。『エルム街の悪夢』の直前に撮影が終了していた『サランドラU』(85年)は、そもそも1作目で死んだはずの食人鬼たちが生きていたという設定からして無理があった。クレイヴン自身、当初からお金に困って企画した作品だったことを明かしている。『デッドリーフレンド』(86年)や『ショッカー』(89年)、『壁の中に誰かがいる』(91年)は、クレイヴンらしいユニークな発想をエンターテインメントとして十分に生かしきれなかった。
 そうした中で、ゾンビをハイチの恐怖政治を象徴する存在として論理的な観点から描いた『ゾンビ伝説』(88年)は、ホラー映画としても社会派の風刺ドラマとしても優れた作品だったが、残念ながら過小評価されてしまった。一方、エディ・マーフィに頼み込まれて撮った『ヴァンパイア・イン・ブルックリン』(95年)に至っては、ウェス・クレイヴンである必要のないスター映画であり、そもそもホラー映画として大失敗した作品だったと言えよう。
 ただ、『エルム街の悪夢』の番外編として撮った『エルム街の悪夢/ザ・リアルナイトメア』(95年)は、ホラー映画の何たるかをクレイヴン流の哲学的視点から描いた佳作だった。映画の中だけで存在するはずのフレディが現実世界に現れ、映画関係者を次々と殺していく。ナンシー役を演じる女優ヘザー・ランゲンカンプ自身が、今度はフレディと対峙することになるわけだ。クレイヴンはこの一見すると単なる自己オマージュ的なメタ構造の中に、ホラー映画の本質を描こうと試みた。つまり、映画の中の恐怖とは現実世界の恐怖を映し出す鏡であり、観客の内なる恐怖を解放するための儀式でもある。誰もが現実世界で対峙しなくてはいけない様々な恐怖に対して、それを克服するための勇気と知恵を与えてくれるのがホラー映画なのだと。
 この“ホラー映画を描くホラー映画”というスタイルをさらに進化させたのが、ホラー映画ブーム再来の起爆剤となった大ヒット作『スクリーム』(96年)である。ここではあらゆるホラー映画の約束事をあらかじめ観客に提示した上で、それをことごとく破っていくというやり方で、ホラー映画における虚構性の面白さ・楽しさを観客に再認識させた。つまり、所詮は作り物であり絵空事なのだと。だからこそ、徹底的な悪が縦横無尽に暴れまくり、残虐な方法で人が殺され、最後には強いヒロインが勝つ。映画の中だからこそ思い切り恐怖に悲鳴をあげることができるわけだし、最後には悪を倒すという究極のカタルシスを得ることが出来る。もちろん、それはホラー映画の魅力の一面にしか過ぎないのではあるが、その部分での本質は十分に捉えていると言えるだろう。つまり、最大公約数的なホラー映画の愉しみ方を分かりやすく見せてくれたというわけだ。
 続く『スクリーム2』(97年)では続編のお約束をネタに殺戮が繰り広げられ、『スクリーム3』(00年)では現実と虚構が模倣しあうという面白さを展開。『ミュージック・オブ・ハート』(99年)では、ホラー映画以外でも十分に映画監督としてやっていけることを証明した。
 ただ、その後の『ウェス・クレイヴン's カースド』(05年)は製作そのものが難航し、途中で撮影を中断して脚本もキャストも総入れ替えするという最悪の事態に。製作費も底をついてしまい、肝心のCGによるVFXは見るも無残な代物になってしまった。まさしく、呪われた(カースド)作品だったわけだ。しかし、ホラーからちょっと離れたサスペンス・スリラー『パニック・フライト』(05年)では、練りに練られた脚本で低予算をカバーすることに成功。現在は久々のホラー映画“25/8”の撮影に取り掛かっている。

 

 

サランドラ
The Hills Have Eyes (1977)

日本では1984年劇場公開
VHS・DVD共に日本発売済

HILLS_HAVE_EYES-DVD.JPG
(P)2003 Anchor Bay (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤2枚組)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録
)/5.1chサラウンドEX・6.1ch DTS-ES/音声:英語/字幕:なし/地域コード:ALL
/89分/製作:アメリカ

映像特典
メイキング・ドキュメンタリー
監督ドキュメンタリー
別エンディング
オリジナル劇場予告編集
TVスポット集
製作舞台裏写真集
ポスター&広告ギャラリー
オリジナル・ストーリーボード
監督バイオグラフィー
クレイヴン監督&製作者の音声解説
オリジナル脚本(DVD-ROM)
スクリーン・セイバー集(DVD-ROM)
監督:ウェス・クレイヴン
製作:ピーター・ロック
脚本:ウェス・クレイヴン
撮影:エリック・サーリネン
音楽:ドン・ピーク
出演:スーザ・レニエ
    ロバート・ヒューストン
    マーティン・スピアー
    ディー・ウォーレス
    ジェームズ・ホイットワース
    ラス・グリーヴ
    ジョン・ステッドマン
    マイケル・ベリーマン
    ヴァージニア・ヴィンセント
    ヤヌス・ブライス

 日本では数年間もお蔵入りした挙句、“ジョギリ・ショック”なる意味不明のおどろおどろしい宣伝文句で公開された『サランドラ』。ジョギリとは本編中でチラッとだけ登場するナイフのことらしいのだが、当時流行のスプラッター映画を期待して見に行った観客からは総スカンを食らってしまった。かくいう自分もその一人。当時は映画の誇大広告なんて当たり前の時代だったのだが、さすがにチラシやパンフレットに書かれた製作年度まで偽装していたのには呆れたものだった。
 そうした苦い思い出があるだけに、どうしても悪い印象がつきまとってしまう本作。すごくツマラナイ映画という記憶しかなかったのだが、冷静になって見直すと決して悪い映画ではない。砂漠のど真ん中で立往生してしまった平凡な一家が、近隣に住む人喰い一族に襲われるというのが筋書き。パッと聞くと『悪魔のいけにえ』のような猟奇的モダン・ホラーを連想しそうだが、実際にはほとんどアクション映画と言ってもいいような内容。恐怖描写はあっさり薄味だし、血みどろの残酷シーンなどほとんど皆無。そう、そもそも本作はホラー映画ではないと思うのだ。
 前半は喧嘩をしながらも仲睦まじい一家の様子が丁寧に描かれ、中盤で人喰い一族に襲われた彼らが恐怖のどん底に突き落とされる。父親は焼き殺され、母親と娘も銃殺され、まだ赤ん坊の孫は連れ去られてしまう。これが一般的なホラー映画ならば、家族の面々が一人また一人と残虐な方法で殺されていくのだろうが、予想外にあっさりと殺戮は終わってしまう。そして、ここからは残された一家の猛反撃が始まるのだ。
 砂漠の地形を利用して人喰い一族をおびき出し、一人づつやっつけていく。ハンターと獲物の立場が逆転するわけだ。恐らく、クレイヴンは“暴力は暴力しか生み出さない”という負の連鎖を描きたかったのだろう。狂ったように相手をメッタ刺しにする娘婿の、野獣のような表情を大写しにしながら終わるエンディングが、それを物語っているように感じられる。ホラー映画としてではなく、ユニークな復讐型バイオレンス・アクションとして見るべき作品なのではないかと思う。

HILLS_HAVE_EYES-1.JPG HILLS_HAVE_EYES-2.JPG

砂漠で立往生してしまったカーター一家

父親ビッグ・ボブが焼き殺されてしまう

HILLS_HAVE_EYES-3.JPG HILLS_HAVE_EYES-4.JPG

野獣のような男たちに襲われたブレンダ(S・レニエ)

赤ん坊を守ろうとしたリン(D・ウォーレス)も殺されてしまう

 トレイラー・ハウスで砂漠を旅するカーター一家。カリフォルニアを目指す彼らは、休憩を兼ねてガソリン・スタンドに立ち寄った。父親ビッグ・ボブ(ラス・グリーヴ)は引退した警察官。母親エセル(ヴァージニア・ヴィンセント)は鼻っ柱の強い女性だ。長女リン(ディー・ウォーレス)は結婚しており、夫ダグ(マーティン・スピアー)と生まれたばかりの娘カティも一緒。年の離れた長男ボビー(ロバート・ヒューストン)と次女ブレンダ(スーザン・レニエ)は、長旅にすっかり退屈している様子だ。
 砂漠の近辺には核実験場があり、軍の戦闘機が空を駆け抜けていく。ビッグ・ボブはガソリンスタンドの店主フレッド(ジョン・ステッドマン)の忠告に耳を貸さず、砂漠を横切って近道をしようとした。ところが、岩だらけの砂漠で車が故障してしまい、一家は広い荒野のど真ん中で立ち往生してしまう。そんな彼らを、砂漠の上から監視する目があった。
 夜も更けて気温が下がったことから、ビッグ・ボブはガソリン・スタンドへ歩いて戻って救援を頼むことにする。ところが、ふいに現れた巨漢の怪人ジュピター(ジェームズ・ホイットワース)に襲われ、縛り上げられてしまう。
 その頃、トレーラーハウスでは女性陣が先に眠り、ボビーとダグは父親の帰りを待っていた。すると、遠くで火の手が上がり、ビッブ・ボブの叫び声が聞こえる。ボビーとダグ、そして目を覚ましたエセルとリンが傍へ近づくと、それは木に縛り付けられて生きたまま焼かれたビッグ・ボブだった。何が起きているのか理解できずに呆然と立ち尽くす一家。
 その頃、トレイラーハウスではブレンダが2人の野獣のような男たちに襲われていた。そこへ、リンが赤ん坊の安全を確かめようと戻って来る。男たちと格闘になるリン。後から戻ってきたエセルが加勢しようとしたものの、ライフルで腹を撃たれてしまった。さらに、ナイフで反撃しようとしたリンも銃殺されてしまう。
 銃声を聞きつけたボビーとダグは急いでトレーラーハウスへ戻るが、男たちは赤ん坊カティを連れて逃げ去ってしまった。残されたボビーとダグ、ブレンダは突然の悲劇に打ちひしがれるも、幼いカティを奪還すべく復讐を誓う。
 そのカティを奪い去ったのは、砂漠に住む一家だった。父親のジュピター、母親のママ(コーディ・クラーク)、息子のマース(ランス・ゴードン)とプルート(マイケル・ベリーマン)、そして末っ子の娘ルビー(ヤヌス・ブライス)。彼らは核実験の影響で突然変異し、砂漠を横切る旅人を殺しては食料にしていたのだ。一家にとって赤ん坊は最高のご馳走。彼らはカティを感謝祭のメイン・ディッシュにするつもりだった。しかし、末っ子ルビーは赤ん坊を殺すことに抵抗を感じている。
 翌朝、復讐に燃えるカーター一家は行動を開始。愛犬ビューティを使って食人鬼一家の居所を探し当てた彼らは、カティを奪還するための計画を実行に移すのだった・・・。

HILLS_HAVE_EYES-5.JPG HILLS_HAVE_EYES-6.JPG

赤ん坊を誘拐した食人鬼一家

反撃を開始するカーター一家

 この食人鬼一家にはモデルがいる。15世紀初頭のスコットランドに実在したソーニー・ビーン一家だ。エジンバラ近郊の高原に住んでいた彼らは16人家族という大所帯で、25年間に渡って旅人を殺しては金品を奪っていた。時には、殺した犠牲者を料理して食べたこともあったと言われている。スコットランド国王ジェームズの命により一家は捕らえられ、全員即刻処刑されたらしい。
 だが、ウェス・クレイヴンの脚本と演出からは、そうした猟奇的な伝説にまつわる陰惨さは微塵も感じられない。どちらかというと、『狼よさらば』や『ウォーキング・トール』、『ブレーキング・ポイント』といったリベンジ・アクションに近い雰囲気だ。ただ、当初はかなり残酷なシーンも用意されていたらしいのだが、成人指定を免れるために大幅なカットを余儀なくされたという。つまり、もともとは猟奇ホラーとして製作されたものの、結果としてアクション映画みたいに仕上がってしまったというわけだ。
 そのことは、美術デザインに『悪魔のいけにえ』を手がけたロバート・バーンズを起用していることからも推察できるだろう。食人鬼一家の棲み家には『悪魔のいけにえ』の小道具が流用されている。
ちなみに、カットされたフィルムは紛失してしまい、残念ながら現存していないという。

HILLS_HAVE_EYES-7.JPG HILLS_HAVE_EYES-8.JPG

プルート役を演じるマイケル・ベリーマン(左)

長女リン役を演じるディー・ウォーレス


 出演者は主に当時無名だった俳優で固められている。その中で唯一、後に有名になったのが長女リン役を演じているディー・ウォーレス。大ヒットした狼男映画『ハウリング』(81年)のヒロイン役で注目され、『E.T.』(82年)の母親役で御馴染みとなった女優だ。また、食人鬼一家の次男プルート役で強烈な印象を残す怪優マイケル・ベリーマンも、『地獄の武装都市/復讐のターミネーター』(85年)や『未来警察マッド・ポリス』(87年)などB級映画を中心に、カルト俳優として活躍している。
 また、次男ボビー役を演じているロバート・ヒューストンは当時駆け出しの若手俳優だったが、後にドキュメンタリー映画の監督へ転向し、数多くの映画賞やテレビ賞を受賞している。
 その他、60年代からテレビ・ドラマに出演してきたベテラン脇役ラス・グリーヴがビッブ・ボブ役を、50年代からB級映画の脇役女優として活躍したヴァージニア・ヴィンセントがエセル役を、『悪魔の沼』(77年)や『溶解人間』(77年)などB級ホラーでお馴染みの女優ヤヌス・ブライスがルビー役を演じている。
 なお、続編『サランドラU』(85年)ではボビーとダグ、ルビーの3人が再び砂漠へ戻り、生き延びていたジュピターやプルートたちと対峙することになる。さらに、06年にはアレクサンドル・アジャ監督によってリメイク版が作られている。こちらのリメイク版の方が、純粋なホラー映画として楽しめるかもしれない。

 ちなみに、上記アメリカ盤2枚組DVDとほぼ同じ内容のものが日本盤でも発売済み。マスターは同一のものを使用していると思われる。ただし、DVD-ROM収録されているオリジナル脚本とスクリーン・セイバーのデータは、日本盤には収録されていない模様。

 

 

怪人スワンプ・シング/影のヒーロー
Swamp Thing (1982)
日本では劇場未公開・TV放送のみ
VHS・DVD共に日本未発売

SWAMP_THING-DVD.JPG
(P)2005 MGM/Sony Pictures (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★☆☆
DVD使用(北米盤両面ディスク)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録
)・スタンダードサイズ/モノラル/音声:英語/字幕:英語・フランス語・スペイン語/地域コード:1/91分/製作:アメリカ

映像特典
なし
監督:ウェス・クレイヴン
製作:ベンジャミン・メルナイカー
    マイケル・E・ウスラン
脚本:ウェス・クレイヴン
原作:D・C・コミックス
撮影:ロビン・グッドウィン
音楽:ハリー・マンフレディーニ
出演:ルイ・ジュールダン
    エイドリアン・バーボー
    レイ・ワイズ
    デヴィッド・ヘス
    ニコラス・ワース
    ドン・ナイト
    アル・ルーバン
    ディック・デュロック
    ナネット・ブラウン
    レジー・ベイツ

 D・C・コミックスの人気ダーク・ヒーロー、スワンプ・シングをウェス・クレイヴンが映画化したB級アメコミ・ヒーロー映画。ノリとしては『超人ハルク』に近いものがあるものの、いかんせん安っぽい。脚本のスケールはむちゃくちゃ小さいし、ヒロイン役のエイドリアン・バーボーはオバサンだし、特殊メイクもチープで粗雑だし。
 クレイヴンは50年代の子供向けヒーロー物を意識したのかもしれないが、それにしてもテンポは悪いし、仕掛けも古臭い。80年代の娯楽映画としてはあまりにもバカバカしい内容の作品だ。しかも、クレイヴンは大真面目に取り組んでいるため、そのバカバカしさを笑い飛ばすこともできない。これだったら、ジム・ウィノースキーの手がけた続編『怪人スワンプシング』(89年)の方が、低予算を逆手に取ったハチャメチャなバカ映画として楽しめる作品だったように思う。

SWAMP_THING-1.JPG SWAMP_THING-2.JPG

政府から派遣された調査員アリス・ケイブル(A・バーボー)

アリスはホランド博士(R・ワイズ)の人柄に惹かれていく

SWAMP_THING-3.JPG SWAMP_THING-4.JPG

アルケイン博士(L・ジュールダン)は研究成果を横取りしようとする

血清を浴びて火だるまとなるホランド博士

 フロリダの湿地帯の奥深くで、アレック・ホランド博士(レイ・ワイズ)は沼地の植物と動物のDNAを融合した新たな生命体の研究に取り組んでいた。この研究が成功すれば、あらゆる自然環境で食物を栽培することが可能になる。政府から現地調査のために派遣された調査員アリス・ケイブル(エイドリアン・バーボー)は、少年のように夢を語るホランド博士の人柄に魅了されていった。
 ところがある晩、研究所に武装グループが押し入ってくる。それは、ホランド博士のライバルであるアルケイン博士(ルイ・ジュールダン)の一味だった。ホランド博士の研究が成功したことを知ったアルケイン博士は、その研究データを奪おうと企んだのだ。
 ホランド博士の妹リンダ(ナネット・ブラウン)はとっさに書類を持って逃げようとするが銃殺されてしまい、ホランド博士自身も全身に血清を浴びた上に火をつけられてしまう。火だるまになったまま沼へと消えていったホランド博士。アルケイン一味は研究所を破壊して去っていくが、アリスは研究書類の一部を奪って逃げることに成功した。
 沼地を脱出しようと逃げるアリスを、アルケインの手下であるフェレット(デヴィッド・ヘス)らが追う。まさに危機一髪というところでアリスを救ったのは、緑色の巨大なモンスターだった。それは、血清を浴びて突然変異してしまったホランド博士の変わり果てた姿だった・・・。

SWAMP_THING-5.JPG SWAMP_THING-6.JPG

雑貨店に逃げ込んだアリスは店番の少年ジュード(R・ベイツ)と知り合う

緑色の怪力モンスターはホランド博士の変わり果てた姿だった

SWAMP_THING-7.JPG SWAMP_THING-8.JPG

アルケインの手下フェレットを演じるデヴィッド・ヘス

モンスターの正体がホランド博士だと知ったアリスは…

 アリス役のエイドリアン・バーボーはジョン・カーペンター監督の元夫人。カーペンターの『ザ・フォッグ』(80年)や『ニューヨーク1997』(81年)の他、ロメロの『クリープショー』(82年)や『マスターズ・オブ・ホラー/悪夢の狂宴』(90年)、『ザ・コンヴェント』(99年)など数多くのホラー映画に出演しているスクリーム・クィーンだ。ただ、アクの強すぎる顔をしているため、どちらかというとヒロインよりも憎まれ役が似合う人。このアリス役も、マーゴット・キダーやカレン・アレンのように、鼻っ柱は強いけど可愛げのある女優さんの方が適役だったのではないかと思う。しかも、水浴びシーンではおっぱいポロリのサービス・ショットまで披露しているのだが、一体誰がエイドリアン・バーボーのおっぱいを拝みたいんだろうか?と首をひねってしまう。
 悪役アルケインを演じているのは、『忘れじの面影』(48年)や『恋の手ほどき』(58年)、『カンカン』(60年)などで有名なフランス出身の2枚目スター、ルイ・ジュールダン。確かに当時は落ち目だったとはいえ、この翌年には『007/オクトパシー』(83年)にも出演しているわけだし、一体なんでこんな低予算映画に出てしまったんだろうかと疑問に思うところだが、ぶっちゃけたところ小遣い稼ぎだったのだろう。終始ポーカー・フェイスで、まともに演技らしい演技はほとんどしてない。
 ホランド博士役で登場するのは、『ツインピークス』でローラ・パーマーの父親役を演じていた俳優レイ・ワイズ。まだ髪の毛がフサフサしていて若い。また、アルケインの手下フェレット役として、クレイヴンの処女作『鮮血の美学』で強烈な悪役を演じて有名になった怪優デヴィッド・ヘスが顔を出している。
 ちなみに、スワンプ・シング役を演じているのはレイ・ワイズではなく、スタントマンとして有名なディック・デュロック。後にテレビ・シリーズ版(90年〜93年)でもスワンプ・シング役を演じている。

 

 

ジェシカ/超次元からの侵略
Invitation to Hell (1984)

日本では劇場未公開
VHSは日本発売済・DVDは日本未発売

INVITATIONTOHELL-DVD.JPG
(P)2003 Artisan (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/スタンダードサイズ/ステレオ/音声:英語/字幕:なし/地域コード:1/
100分/製作:アメリカ

映像特典
なし
監督:ウェス・クレイヴン
製作:ロバート・M・サートナー
脚本:リチャード・ロスステイン
撮影:ディーン・カンディ
音楽:シルヴェスター・リヴェイ
出演:ロバート・ユーリック
    ジョアンナ・キャシディ
    スーザン・ルッチ
    ケヴィン・マッカーシー
    ジョー・レガルブート
    パトリシア・マコーマック
    ビル・アーウィン
    ソレイユ・ムーン・フライ
    バレット・オリヴァー
    ヴァージニア・ヴィンセント
    ロイス・ハミルトン

  ウェス・クレイヴンがテレビ用に撮影したSFホラー・サスペンス。どこから見ても完璧で美しい郊外型の高級住宅地。ところが、そのこには恐ろしい秘密が隠されていた…。『ステップフォードの妻たち』や『ボディ・スナッチャー』を連想させる作品と言っていいだろう。
 主人公は大都会から引っ越してきた科学者一家。父親は新しい会社に転職したばかり。そもそもこの住宅地自体が、その会社の従業員専用だ。やがて、彼らは地元のカントリー・クラブの存在を知る。なんとも怪しげな雰囲気の場所だ。しかし、ここに入会した友人たちが次々と出世していくのを見て、主人公夫婦の心は揺れる。入会した人々が別人のようになっていくのを見て本能的に危険を察知する夫、豊かな隣人たちの生活に憧れて入会を強く希望する妻。その辺りの心理的な葛藤のドラマがとても丁寧に描かれており、じわじわと盛り上がっていく緊張感はなかなかスリリングだ。
 ところが、誘惑に負けた妻が子供たちを連れて夫に無断で入会してしまった辺りから、一気に安っぽいB級ホラーへと様変わりしてしまう。低予算ゆえSFXにお金をかけられなかったのは仕方がないにしても、子供向け特撮ドラマみたいな衣装やセット、オプチカル処理はなんとも頂けない。逆にいっそのこと、SFXを全く使わない方が効果的だったのではないかとも思う。
 いずれにせよ、脚本は決して悪くないのだが、その見せ方を間違ってしまった作品と言えるだろう。当時はスピルバーグ映画の影響で猫も杓子もSFXという時代。そうしたトレンドを意識しすぎたことが、結果的に裏目に出てしまったのかもしれない。

INVITATIONTOHELL-1.JPG INVITATIONTOHELL-2.JPG INVITATIONTOHELL-3.JPG

新天地へと引っ越してきたマット(R・ユーリック)と家族

マットは宇宙服の開発に従事することとなる

カントリー・クラブの女性オーナー、ジェシカ(S・ルッチ)

 有能な青年科学者マット・ウィンスロウ(ロバート・ユーリック)は、その実績を買われてマイクロ・デジテックという会社にヘッドハンティングされた。あまり聞きなれない名前の会社ではあったが、長年陽の当たらない場所でコツコツと仕事をしてきた彼にとって、会社側の提示する高額なサラリーはあまりにも魅力的だった。
 妻のパトリシア(ジョアンナ・キャシディ)、息子ロビー(バレット・オリヴァー)、娘クリッシー(ソレイユ・ムーン・フライ)を伴って、カリフォルニアの新天地へと向うマット。そこは会社が従業員専用として用意した高級住宅地だった。夢にまで見たマイホームを目の前にして舞い上がる一家。一足先に越してきていた友人トム・ピーターソン(ジョー・レガルブート)の家族とも合流し、新たな門出を賑やかに祝った。
 耐熱性の高い宇宙服の開発に携わるようになったマットは、地元のカントリー・クラブへの入会を勧められる。だが、そのオーナーであるジェシカ・ジョーンズ(スーザン・ルッチ)は、どこか怪しげなムードをたたえた女性だった。厳重にガードされた施設の無機質で冷たい雰囲気も居心地が悪く、マットは入会を躊躇してしまう。
 一方、友人のトムは家族と共にクラブへ入会し、その翌日には会社重役へと出生してしまった。上司トンプソン氏(ケヴィン・マッカーシー)に人事の不公平を訴えたものの、まるでらちが明かない。しかも、クラブへ入会して以来トムやその家族の様子が急変してしまった。何かがおかしい、と感じ始めたマットに、事務員のグレース(ヴァージニア・ヴィンセント)が不可解な会社の実態を告げようとするが、その直後に忽然と姿を消してしまった。
 一方、高級外車を乗り回し派手な生活を送るようになったトムの家族を羨ましげに感じているパトリシア。そのことが原因で、夫婦の間にも溝が生じ始めた。それを察知したジェシカは、パトリシアに夫を説得するよう促す。だが、マットはカントリー・クラブへの入会を頑なに拒み続けた。しびれを切らしたパトリシアは、子供たちを連れて夫に無断で入会してしまう。
 帰宅したマットは、家族の様子がおかしいことに気付いた。パトリシアはまるで別人のように派手な化粧をし、夫のことを口汚く罵る。子供たちもすっかり攻撃的な性格になってしまった。彼らがクラブに入会したことを知ったマットは途方に暮れる。そこで、彼は失踪したグレースの夫ウォルト(ビル・アーウィン)の協力を得て、カントリー・クラブの実態を探ろうとした。ところが、そのウォルトまでが謎の死を遂げてしまう。
 意を決したウォルトは、開発されたばかりの宇宙服を装着し、武装警備された施設へと潜入する。折りしも、施設内ではハロウィン・パーティが行われていた。宇宙服には視界に入ったものの生命反応を感知するカメラが付いているのだが、なんとクラブのメンバーたちは全員人間ではなかった。施設の奥へと進んで行くマット。その行く手に、悪魔のような本性を現したジェシカが立ちふさがる…。

INVITATIONTOHELL-4.JPG INVITATIONTOHELL-5.JPG INVITATIONTOHELL-6.JPG

入会の儀式を受ける妻パトリシア(J・キャシディ)

別人のように変貌してしまったパトリシア

施設の中は異界へとつながっていた

INVITATIONTOHELL-7.JPG INVITATIONTOHELL-8.JPG INVITATIONTOHELL-9.JPG

ついにその本性を見せたジェシカ

上司トンプソン役を演じるケヴィン・マッカーシー

長男ロビー役のバレット・オリヴァー

 脚本を手がけたのは『ユニバーサル・ソルジャー』(92年)のリチャード・ロススタイン。その他、撮影監督には『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズや『ジュラシック・パーク』を担当した大御所ディーン・カンディ、特殊効果には『ライトスタッフ』(83年)や『スモール・ソルジャース』(98年)、『猿の惑星』(01年)を手がけたケン・ペピオット、音楽には70年代ミュンヘン・ディスコのプロデューサーとして活躍し、『マネキン』(86年)や『ネイビー・シールズ』(90年)などの音楽を手がけたシルヴェスター・リヴェイが参加するなど、スタッフの顔ぶれは意外と豪華だったりする。
 主演は70年代の人気ドラマ『特別狙撃隊S.W.A.T.』や80年代のドラマ『私立探偵スペンサー』シリーズで有名なテレビ・スター、ロバート・ユーリック。その妻役を演じるのは、『ブレードランナー』(82年)や『ロジャー・ラビット』(88年)、最近ではテレビ『シックス・フィート・アンダー』のマーガレット役でお馴染みの女優ジョアンナ・キャシディ。
 彼らの息子ロビー役で、『ネバー・エンディング・ストーリー』(84年)や『コクーン』(85年)で当時人気子役だったバレット・オリヴァーが顔を出しているのも懐かしい。娘クリッシー役のソレイユ・ムーン・フライは現在も女優として活躍中で、人気ドラマ『サブリナ』のロキシー役で海外ドラマ・ファンには御馴染みだろう。
 その他、ベテラン名優ケヴィン・マッカーシーやテレビ『マーフィ・ブラウン』で有名なジョー・レガルブート、50年代にブレイクした往年の名子役パトリシア・マコーマック、100歳近い現在も現役で活躍している名脇役ビル・アーウィン、『サランドラ』で母親役を演じていたヴァージニア・ヴィンセントなどが脇を固めている。
 そして、異次元からやって来た魔性の女ジェシカ役を演じているのが、日本でも深夜に放送されている化粧品の通販番組で御馴染みの女優スーザン・ルッチ。アメリカでは昼メロ・ドラマ“All My Children”のヒロイン、エリカ・ケーン役を38年間に渡って演じ続けていることで知られる昼メロの女王だ。いかにもアメリカ人好みのバタ臭くてケバい女優。当時はプライムタイムに進出しようと数多くのテレビ映画に出演していたが、なにしろ演技力に大きな問題があった。本作でも、ただ立っているだけならクール・ビューティとして存在感があるのだが、口を開くと全くダメ。悪の権化としての威厳もへったくれもないのだ。彼女の演技のせいで安っぽく見えてしまっている部分も大きいのではないかとさえ感じられる。

 

 

デッドリー・フレンド
Deadly Friend (1986)

日本では1987年劇場公開
VHSは日本発売済・DVDは日本未発売

DEADLY_FRIEND-DVD.JPG
(P)2007 Warner Home Video (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録
)/モノラル/音声:英語・フランス語・スペイン語/字幕:英語・フランス語・スペイン語/地域コード:1/90分/製作:アメリカ

映像特典
オリジナル劇場予告編
監督:ウェス・クレイヴン
製作:ロバート・M・シャーマン
原作:ダイアナ・ヘンステル
脚本:ブルース・ジョエル・ルービン
撮影:フィリップ・H・ラスロップ
音楽:チャールズ・バーンスタイン
出演:マシュー・ラボート
    クリスティ・スワンソン
    マイケル・シャレット
    アン・トゥーミー
    アン・ラムジー
    リチャード・マーカス
    ラス・マリン
    リー・ポール

 コンピューター・オタクの少年が、死んだガールフレンドにチップを埋め込んで蘇らせてしまうという「フランケンシュタイン」の青春映画バージョン。人間の心を持たないロボットとなってしまった少女は、自分を死に至らしめた父親や近隣の暴力的な人間を次々と殺していく。平和な街の裏側に潜む闇の部分をえぐり出し、人間の生と死の意味を問うような作品・・・になるはずだったのだろうが、残念ながら結果的には凡庸な若者向けSFモンスター映画に仕上がってしまった。
 最大の敗因は、蘇った少女を単なる殺人マシンとしてしか描くことが出来ず、その背景としての怨念や哀しみが全く浮き彫りにされていないところにある。また、ティーンの観客層を狙ったせいなのか、軽いノリのジョークやギャグが必要以上に目立ってしまい、テーマの深刻性が極端に薄まってしまった。『エルム街の悪夢』という超メガヒットを放った後だけに、周囲からの興行的な期待感も高かったのだろう。マジョリティに迎合した結果、焦点の定まらない作品が出来上がってしまったという印象は拭えない。

DEADLY_FRIEND-1.JPG DEADLY_FRIEND-2.JPG

ポール(M・ラボート)とBBは、近所の少年トム(M・シャレット)と親しくなる

隣の家に住む美少女サマンサ(K・スワンソン)

 どこにでもある平和で静かな町に、ポール(マシュー・ラボート)という少年が母親ジニー(アン・トゥーミー)と共に引っ越してきた。ポールは天才的なコンピューター少年で、自ら設計したロボットBBも一緒だ。BBは自らの意思で動くことの出来る怪力ロボットで、ポールに嫌がらせをしてきたいじめっ子グループも難なく追い払ってしまった。
 近所に住む少年トム(マイケル・シャレット)と仲良くなったポールは、隣の家に住む美少女サマンサ(クリスティ・スワンソン)とも急接近する。しかし、彼女の父親ハリー(リチャード・マーカス)は飲んだくれの乱暴者で、娘が近所付き合いをすることを快く思っていなかった。
 それでも、ポールとサマンサ、トム、そしてBBの4人(?)はどこへ行くにもいつも一緒だった。しかしある日、近所に住む変わり者の老婆エルヴァイラ(アン・ラムジー)が彼らの悪戯に腹を立て、BBをライフル銃で撃ってしまう。さらに、父親に乱暴されそうになったサマンサが誤って階段を踏み外し、意識不明の重体に陥ってしまった。
 病院で手術の経過を見守るポールと母親ジニー。だが、彼らの願いも空しく、サマンサは帰らぬ人となってしまった。彼女の死を受け入れることが出来ないポールは、あることを思いつく。トムを伴って病院の遺体安置室に忍び込んだポールは、サマンサの脳にBBのコンピュータ・チップを埋め込んだのだ。
 サマンサを病院から運び出した2人は、ポールの家の裏手にある物置小屋に彼女をかくまう。やがて、サマンサは意識を取り戻すが、感情のないロボットのような状態だった。しかも、サマンサの記憶とBBの記憶の両方が混在している様子。それでも時折、サマンサとしての意識を取り戻す瞬間があった。
 それからしばらく経ったある日、ポールが物置小屋を見るとサマンサの姿がなかった。その頃、サマンサは自分の家へと侵入。驚いた父親が彼女に襲いかかるものの、逆に首の骨をへし折られて殺されてしまった。そこへ駆け込んできたポールは、慌てて死体を隠す。さらに、ポールの目を盗んで外へ出たサマンサは、BBを破壊した老婆エルヴァイラの頭をバスケットボールでふっ飛ばしてしまい、警察に終われる身となってしまう。
 必死になってサマンサの行方を捜すポールだったが、彼女はいじめっ子のカール(アンドリュー・ロペルト)までをも血祭りにあげようとしていた・・・。

DEADLY_FRIEND-3.JPG DEADLY_FRIEND-4.JPG

サマンサの脳にチップを埋め込むポールとトム

蘇ったサマンサは感情を持たないロボットだった

 ダイアナ・ヘンステルの原作小説を脚色したのは、『ゴースト/ニューヨークの幻』(90年)や『ジェイコブス・ラダー』(90年)、『ディープ・インパクト』(98年)などで知られる脚本家ブルース・ジョエル・ルービン。生と死というのは彼の脚本における共通のテーマであり、本作でもそれを巧みに青春ドラマの中へ取り込もうとはしているのだが、惜しくも演出の段階で上手く生かせなかったように思う。
 老婆エルヴァイラの頭をバスケットボールで叩き割るというシーンなどは、確かにビジュアル的にはインパクトがあるものの、作品全体から見ると明らかに違和感を感じる。興行的な観点から、グロテスクなゴア・シーンを一つくらいは入れておきたかったのだろうが、あまりにもナンセンスが過ぎてしまった。これも、もともとは全く違う殺し方で描かれていたらしいのだが、プロデューサーの意向で撮り直しさせられてしまったのだという。その他、劇場公開時にはかなりのカットを余儀なくされてしまったようだ。
 また、賛否両論の多かったクライマックスにつていも、個人的には否定的に見ている。確かに、最後の最後で観客をビックリさせるというオチは、『キャリー』以来の常套手段ではあるのだが、このクライマックスは本作を単なるB級モンスター映画に貶める決定打となってしまったように思う。
 ちなみに、撮影を担当したのは『酒とバラの日々』(62年)や『ピンクの豹』(63年)、『シンシナティ・キッド』(65年)、『ひとりぼっちの青春』(69年)、『大地震』(74年)などの大御所フィリップ・H・ラスロップ。当時既に74歳という高齢で、これが最後の劇場用長編映画となった。

DEADLY_FRIEND-5.JPG DEADLY_FRIEND-6.JPG

首の骨を折られて殺されるサマンサの父親(R・マーカス)

老婆エルヴァイラの頭は豪速のバスケットボールで粉々に

 主人公のコンピューター少年ポールを演じているのは、『大草原の小さな家』のアルバート役でお馴染みのマシュー・ラボート。当時はティーン・アイドルとして人気が高かった。現在は声優として活躍しているらしい。
 その恋人サマンサ役で大活躍するのが、テレビ・ドラマ化もされたカルト映画『バッフィ/ザ・バンパイア・キラー』(92年)で元祖バッフィを演じた女優クリスティ・スワンソン。『マネキン2』(91年)や『ザ・チェイス』(94年)に主演するなど、一時期はかなり売り出されていた人気女優だったが、その後はB級サスペンスやアクション映画のお色気担当みたいになってしまった。
 また、バスケットボールで頭を吹っ飛ばされる老婆エルヴァイラ役には、『グーニーズ』(85年)や『鬼ママを殺せ』(87年)などで変わり者のお婆ちゃん役として注目を集めていたアン・ラムジーが登場。この2年後に他界してしまった。

 

 

なお、大ヒットした『スクリーム』シリーズだが、アメリカでは豪華映像特典をふんだんに盛り込んだDVDボックスが発売されている。日本盤DVDでは版権の問題などもあって、映像特典がまるっきり入っていなかった(ただし、3作目だけ米国盤と同じ映像特典を収録)。まだスクィーズ収録が一般的ではなかった頃の発売だったため、1作目がレターボックス収録なのは残念だが、ファンだったらこちらの方が絶対にお買い得。既に廃盤となっているものの、中古市場では20ドル前後で出回っている。ブルーレイなどで再発される予定も当分はないので、中古で手に入れておいても損はないだろう。

SCREAM-BOX.JPG

SCREAM1_DVD.JPG

SCREAM2_DVD.JPG SCREAM3_DVD.JPG SCREAM_BONUS_DVD.JPG

Scream (1996)

Scream 2 (1997)

Scream 3 (2000)

Exclusive Bonus DVD

(P) Buena Vista (USA) (P) Buena Vista (USA) (P) Buena Vista (USA) (P) Buena Vista (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆ 画質★★★★★ 音質★★★★★ 画質★★★★★ 音質★★★★★
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(レターボックス収録)/5.1chサラウンド/音声:英語/字幕:なし/地域コード:1/111分/製作:アメリカ

映像特典
監督と脚本家の音声解説
メイキング・ドキュメンタリー
オリジナル劇場予告編
TVコマーシャル集
撮影舞台裏ドキュメンタリー
キャスト&スタッフ・インタビュー
特殊効果ギャラリー
トリビア集
スタッフ&キャスト プロフィール集
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録
)/5.1chサラウンド/音声:英語・フランス語/字幕:スペイン語/地域コード:1/
128分/製作:アメリカ

映像特典
未公開シーン集(監督の解説付き)
監督とスタッフによる音声解説
オリジナル劇場予告編
メイキング・ドキュメンタリー
TVスポット集
ミュージック・ビデオ(2本収録)
NGシーン集
キャスト&スタッフ プロフィール集

DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録
)/5.1chサラウンド/音声:英語・フランス語/字幕:スペイン語/地域コード:1/
117分/製作:アメリカ

映像特典
NGシーン集
メイキング・ドキュメンタリー
未公開シーン集(監督の解説付き)
別エンディング(監督の解説付き)
監督とスタッフによる音声解説
TVスポット集
オリジナル劇場予告編
インターナショナル版劇場予告編
ミュージック・ビデオ
キャスト&スタッフ プロフィール集

DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン・スタンダードサイズ/ステレオ/音声:英語/字幕:なし/
地域コード:1/製作:アメリカ

収録内容
スクリーム3部作ドキュメンタリー
1作目のNGシーン集
カッティング・ルーム(編集疑似体験)
スクリーン・テスト集
サンライズ・スタジオ予告編集
トリビア・ゲーム(DVD-ROM)
キャラクター相関図(DVD-ROM)
スクリーン・セイバー(DVD-ROM)
スクリーム3ウェブサイト(DVD-ROM)
全作の脚本(DVD-ROM)
監督:ウェス・クレイヴン
製作:ケアリー・ウッズ
    キャシー・コンラッド
脚本:ケヴィン・ウィリアムソン
撮影:マーク・アーウィン
音楽:マルコ・ベルトラーミ
出演:デヴィッド・アークエット
    ネーヴ・キャンベル
    コートニー・コックス
    マシュー・リラード
    ローズ・マッゴーワン
    スキート・ウールリッチ
    ジェイミー・ケネディ
    ドリュー・バリモア
監督:ウェス・クレイヴン
製作:キャシー・コンラッド
    マリアンヌ・マッダレーナ
脚本:ケヴィン・ウィリアムソン
撮影:ピーター・デミング
音楽:マルコ・ベルトラーミ
出演:デヴィッド・アークエット
    ネーヴ・キャンベル
    コートニー・コックス
    サラ・ミシェル・ゲラー
    ジェイミー・ケネディ
    ローリー・メトカーフ
    ジェリー・オコネル
    ジェイダ・ピンケット
    リーヴ・シュライバー
監督:ウェス・クレイヴン
製作:キャシー・コンラッド
    ケヴィン・ウィリアムソン
    マリアンヌ・マッダレーナ
脚本:ケヴィン・ウィリアムソン
撮影:ピーター・デミング
音楽:マルコ・ベルトラーミ
出演:デヴィッド・アークエット
    ネーヴ・キャンベル
    コートニー・コックス・アークエット
    パトリック・デンプシー
    スコット・フォーリー
    ランス・ヘンリクセン
    マット・キースラー
    ジェニー・マッカーシー
    エミリー・モーティマー
    パーカー・ポージー
 このDVDボックスのみに収録されている特典DVD。全3部作のドキュメンタリーは、『スクリーム3』の映像特典とは別に新しく撮り下ろされたもの。また、スクリーン・テスト集ではネーヴ・キャンベルやスキート・ウールリッチ、ジェイミー・ケネディのスクリーン・テスト風景が収録されています。カッティング・ルームでは、リモコンを使って好きなシーンを繋げるという映像編集を疑似体験できます。また、パソコン用のDVD-ROMで収録されたデータもなかなかの優れもの。脚本集では、各シーンの場面画像との照らし合わせが出来ます。相関図でもクリックで各キャラクターの解説を拡大表示出来ますし、トリビア・ゲームも動画付き。

 

戻る