WAMAとモハメッド・ヌール
WAMA & Mohamed Nour
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WAMA(アーメッド、モハメッド、ナデール、アーメッド・ファーミ) |
エジプト版バックストリート・ボーイズとして脚光を浴びたボーイズ・バンド、WAMA。アラブ音楽の世界では非常に珍しい、男性アイドル・グループである。アイドルとはいっても、ご覧の通りルックス的には正直なところあまり垢抜けない。
しかし、基本的に男は若さやルックスよりもキャリアと実力で勝負という保守的なアラブ音楽界にあって、音楽だけでなくビジュアルもセールス・ポイントの一つとして打ち出した彼らの存在はなかなか貴重かもしれない。
メンバーはモハメッド・ヌーリ、アーメッド・ファーミ、ナデール・ハムディ、アーメッド・エル=シャミの4人。全員がエジプトの名門カイロ音楽院の卒業生というエリート集団だ。もともと学生時代からの友人だった彼らだが、98年の卒業後にモハメッドとアーメッド・ファーミの働きかけでグループを結成。メンバーそれぞれのニックネームの頭文字を取って、WAMAというグループ名にしたそうだ。
99年頃から既に活動を始めていたようだが、初めてのヒットとなったのは03年に発表したシングル“Ya
Leil”。これはヒップ・ホップやR&Bに影響を受けたメロウ&スウィートなミディアム・バラードで、アラブ語圏各国で爆発的な大ヒットとなった。
彼らの音楽の特徴は、欧米化の著しい近年のアラブ音楽界の中でも、特に欧米のポピュラー・ミュージックからの影響が色濃いということ。モハメッドやアーメッド・ファーミはアメリカン・ポップスの大変なファンだというし、アーメッド・エル=シャミは家族と共に思春期をドイツで過ごしている。それぞれにクラシック音楽の素養もあるわけだから、西欧的な音楽を志向するようになったのも自然なことなのかもしれない。
さらに、ハウスやエレクトロニカなどクラブ・ミュージックの最新トレンドにも敏感だし、その一方でジャズやシャンソンといったトラディショナルな西欧音楽の要素も貪欲に取り入れている。そのバラエティ豊かな音楽性というのも彼らの成功の秘密なのだろう。
ただ、06年に発表されたシングル曲“Zay
Ma Bahlem
Beek”を最後にグループは活動休止中。モハメッドとアーメッド・ファーミはソロ・アーティストとして活動中で、ナデールとアーメッド・エル=シャミの2人もソロ活動の準備を進めているようだ。
Ya Leil (2003) Ya Ghali Alayah
(2005)
(P)2003 Mega Star (Egypt)
(P)2005 Fame Music/EMI
(UAE)
1,Fenak Enta
2,Ya Leil ビデオ
3,Sortek
4,Ensa
5,Heya
Dmoa!
6,Leil w sho'w Ngoom
7,Hobaba Gowal Alben
8,Kol
Alb
9,Egypt
10,Ya Leil (Remix)1,Ya Ghali Alayah ビデオ
2,Dah
Kalam ビデオ
3,Tehlefli
Asaddaia ビデオ
4,Hatbeeia
Khalas
5,Aqrab Li Min Rohi
6,Albek W Albi
7,Maidarsh
Ansak
8,Lamma Abeltaha
大ヒットしたR&B風バラード#2を含むWAMAのファースト・アルバム。一応は伝統的なアラブ歌謡をベースにしつつも、かなり欧米のボーイズ・バンドを意識した作品に仕上がっていると思います。ソウルフルなアカペラ・ナンバー#6なんか、ボーイズUメン辺りが歌ってもおかしくないような感じですもん。なので、コアなアラブ音楽ファンからは賛否両論ありそうですね。個人的にはトライバルでファンキーなオリエンタル・ハウス#1がお気に入り。クラシカルでエレガントなバラード#8もなかなかの名曲です。
前作の路線を踏襲しつつも、より洗練されたメロディとサウンドが印象的なセカンド・アルバム。R&Bやハウスはもちろんのこと、伝統的なヨーロピアン・ポップスからの影響も強く感じられます。中でも、まるで往年のフランス映画音楽を思わせるような美しいバラード#2は秀逸。これ1曲のためだけでも買って損はない一枚だと思いますね。他にも、ダンサンブルでアダルトなムードのアーバン・ソウル#5や、ソフトでドリーミーなR&B風バラード#8など、ほんのりと叙情性を湛えた美しい楽曲がオススメです。
で、そのWAMAの音楽的な中心人物でもあるモハメッド・ヌーリ。そのハンサムなルックスから、メンバーの中でもダントツの人気だったようだ。06年にいち早くソロ活動を開始し、エジプトを代表する若手男性アーティストとして活躍中。スーパー・スター、アムル・ディアブを超えることが出来るかどうか要注目だ。
1981年1月18日カイロの生まれ。幼い頃からバイオリンを学び、地元の名門カイロ音楽院へ入学。その仲間と共に結成したグループWAMAのリーダーとなり、一躍若い女性のアイドル的な存在となった。
これまでに2枚のソロ・アルバムをリリースしており、特にメロディアスで叙情性豊かなバラード・ナンバーは絶品。セカンド・アルバムはちょっと残念な出来栄えだったが、今年発売される予定のサード・アルバムに期待を繋ぎたい。
Nour Einak
(2006) Wahshak Awi
(2007)
(P)2006 Vanilla Music
(UAE)
(P)2007 Arabic Recorded Music
1,Sahran
2,Nour
Einak
3,Yerdeki ビデオ
4,Hayati ビデオ
5,Mateaarar
6,Mestaagel
Leah
7,Ana Felean
8,Bantaglek
9,El Farah
10,Ana Felean
(Remix)1,Tawel
Ghayabak
2,Aadi
3,Teslamli Einik
4,Lama Yehsat Eah
5,Kan Men
Badri
6,Sekt
7,Atawaadt
8,Sadaeehom
9,Anta Tayeb Wala
Eah
10,Shook Layaleek
11,Lama Yehsat Eah (Remix)
12,Wahshak
Awi
モハメッドの記念すべきソロ・デビュー作。全体的にバラード・ナンバーを中心に構成された作品です。中でもタイトル・ソングともなった、メロウでロマンティックなバラード#2がオススメ。モハメッドのソフトなボーカルと絶妙にマッチしていますね。シングル・ヒットした#7も悪くありませんが、よりオーガニックなアコースティック・サウンドに仕上げた#10のリミックス・バージョンの方がオススメかも。
今のところ最新作に当たるセカンド・アルバムですが、ボサノバ・スタイルのエレガントでスタイリッシュなタイトル・ソング#12と、ラテン風味のダンス・ポップ・ナンバー#1以外は、どうもいまいちパッとしない仕上がり。いつものメロディの冴えが消えうせてしまい、毒にもクスリにもならない凡庸なアラビアン・ポップスといった印象です。ん〜、残念。