ワレリヤ Valeriya
〜ロシアのポップ・クィーン〜

 

VALERIYA_1.JPG

 

 今やロシアを代表するスーパー・スター、ワレリア。今年でデビュー17年目を迎え、これまでに発売されたオリジナル・アルバムは10枚、ヒット・チャートのナンバー・ワンが17曲、公式のアルバム売り上げ記録は1億枚という輝かしいキャリアを歩んでいる。まあ、売り上げ枚数はあくまでも自己申告なので差し引いて見る必要はありそうだが、それにしても大した記録と言えよう。2005年には雑誌フォーブスの長者番付ロシア版で芸能人・スポーツ選手部門の9位にランクされ、プーチン大統領からは“名誉芸術家”の称号まで授与されている。文字通り、国民的な大物アーティストと呼んで間違いないだろう。
 ワレリアの魅力はなんといってもその歌声。知的で凛とした中にも女性らしい可愛さがあり、聴き手を包み込むような暖かさがある。モスクワの名門音楽院で声楽を学んだという正統派で、声・テクニック共にずば抜けたものを持ちながら、決して歌い過ぎることのない品の良さも好感を持たれる秘密なのかもしれない。
 また、常に時代のトレンドを意識しながら、あくまでロシア的なサウンドとメロディこだわった楽曲のクオリティの高さも強力な武器である。単なる大衆ポップスに終らないというのが、彼女の作品の強みだと言えよう。ロックやハウス、エレクトロ、民族音楽、ジャズなど様々なジャンルを巧みに織り交ぜつつ、ロシアでしか生まれ得ない上質なポップ・ミュージックを作り出しているのだ。

 1968年4月17日、ロシア中部のヴォルガ川下流域に位置するサラトフ州の町アトカルスクに生まれたワレリヤは、本名をアラ・ユリエフナ・ペルフィローヴァという。両親は地元音楽学校の教師で、彼女自身も幼い頃からクラシック・ピアノを習っていたという。17歳の時にモスクワの名門グネーシン音楽大学に入学。
 1990年に大学を卒業し、その翌年にテレビのオーディション番組で優勝。92年ファースト・アルバム“The Taiga Symphony”で歌手デビューを果たした。このアルバムは民族音楽やクラシック音楽の要素の強い作品で、ロンドンやミュンヘンでレコーディングされ、全曲英語で歌われている。これは当時のロシアでは画期的なこと。当時の彼女に対する評価や期待の高さをうかがい知ることが出来ると言えよう。
 93年に発表された2枚目“Pobud so Mnoi(私と一緒にいて)”はソビエト時代の懐メロ・ラブソングを集めたフォーク・スタイルのカバー・アルバムで、イギリスのレコード会社からリリースされている。そして、95年発売のサード・アルバム“Anna”からはシングル“Moya Moskva(私のモスクワ)”が爆発的な大ヒットとなり、ロシアのジャーナリスト組合から“今年の人”に選出された。97年のサード・アルバム“Familia, Chast' 1(姓、第一章)”もチャート1位を獲得している。私生活では作曲家兼マネージャーのアレクサンドル・シュルギンと結婚。3人の子供をもうけ、公私共に恵まれたキャリアを歩んだ。
 ところが、2001年のアルバム“Glaza Tsveta Neba(蒼い空色の瞳)”をリリースした直後、突如として芸能界から姿を消してしまう。夫シュルギンとは離婚し、マネージャー契約も解除。端からは幸福そうに見えた結婚生活も実は修羅場の連続で、ワレリヤは日常的なドメスティック・バイオレンスに悩まされていたようだ
 こうして、彼女は子供達を連れて生まれ故郷アトカルスクへと戻り、子育てに専念することとなる。芸能界とは一切の縁を切ったワレリヤだったが、そんな彼女の才能を惜しむ声は少なくなかった。その中の一人が、大手レコード会社NOX MUSICの社長ヨシフ・プリゴージン。彼はワレリアのもとへ足繁く通って説得を続け、いつしか2人の間にロマンスが生まれる。
 そして2003年、ワレリアは7枚目のアルバム“Strana Kyubvi(愛の楽園)”で見事にカムバックを果たし、シングル“Chasiki(鍵)”は15週に渡ってヒット・チャートの1位を独走。アルバムも彼女にとって最大のセールスを記録し、ロシアで最大の音楽賞“ゴールデン・グラモフォン”やロシア版MTVアワードの最優秀女性アーティスト賞などを受賞。私生活ではプリゴージンと再婚している。
 その後、2005年にはカナダやアメリカを含むワールド・ツアーを敢行し、2006年にはアルバム“Nezhnost Moya(私の優しさ)”リリースに併せて大規模な全国ツアーを開催。昨年は英米の大物プロデューサーを迎えたアルバム“Nepodkontrolno(コントロール不能)”を英語版・ロシア語版の両方で同時リリースして話題を呼んだ。
 また、音楽活動の傍らで“de Leri”という自らのブランドを設立し、フランスのメーカーと共同開発した香水や美容サプリメント、ロシアの老舗宝飾メーカーと組んだジュエリーを販売。その辺の商魂逞しさは、いかにもロシア人といったところだろう。ロシアではサイドビジネスで金儲けに走るアーティストが多く、最近では芸能界内部からも批判の声があがっている。とはいえ、競争の熾烈なロシアの芸能界で生き抜くためには大切なオプションと言えるかもしれない。
 その他、母校グネーシン音楽大学で声楽の教鞭を執ったり、政府に協力して移住問題に取り組んだり、イギリスの有名な公開オーディション番組“X-Factor”のロシア版で審査員を務めたりと、その活動は幅広い。
 今年は英語版アルバム“Out Of Control”で本格的なイギリス進出を図るつもりらしいが、本来は昨年の9月に予定されていたイギリスでのアルバム発売は延期されたまま。ロシア語訛りのほとんどない流暢な英語を話し、語学力的には全く問題はないのだが、やはり40歳を過ぎての世界進出というのも一筋縄ではいかないか?

 

VALERIYA_2.JPG

オリジナル・ブランド“de Leri”の広告

※アルバム・タイトルはロシア語を英語アルファベットで表記し、その英語訳を併記してあります。楽曲タイトルは全てロシア語を英語アルファベットで表記しました。

REMIX.JPG GLAZA_TSVETA_NEBA.JPG STRANA_LYUBVI.JPG NEJNOST_MOYA.JPG

Pervui Internet Albom (2000)
First Internet Album

Glaza Tsveta Neba (2001)
Sky-Blue Eyes

Strana Lyubvi (2003)
Loveland

Nezhnost Moya (2006)
My Tenderness

(P)2000 Familiya Pablishing (Russia) (P)2001 Familiya Pablishing (Russia) (P)2003 Nox Music (Russia) (P) Nox Music (Russia)
1,Tui Gde-To Tam (Jet Mix)
2,Riga-Moskova (Galactic Mix)
3,S Dobruim Utrom (Whistle Mix)
4,Eto Moya Lyubov (Orange Mix)
5,Noch Nedhna (Hornoin Mix)
6,O Tom, Chto Builo (Donemix)
7,Popolam (Halfmix)
8,Metelitsa (Club Mix)
9,Telefon (Truzzy Mix)
10,Odinokaya (J.Mix)
11,Riga-Moskva (Vynil Mix)
12,M.M. (instrumental B-mix)
13,Moya Moskova (Happy Mix)
1,Ne Obizhai Menya ビデオ
2,Riga-Moskva ビデオ
3,Tayu ビデオ
4,Ne Obmanuvai ビデオ
5,Obruchalnaya
6,Bolshe Chem Zhiznu
7,S Angelom
8,Metelitsa ビデオ
9,Tui Gde-To Tam
10,Malchiki Ne Plachut
11,Dabnuim-Dabno
12,Pesnya Dlya Tebya
1,Perelei Voda ビデオ
2,Chasiki ビデオ
3,Buila Lyubov ビデオ
4,Radiga-diga ビデオ
5,Cherno-Belui Tsvet ビデオ
6,Tui Prishel
7,Rozovui Tuman
8,Ugadai
9,Obo Mne Ne Vspominai
10,Strana Lyubvi
11,Chasiki (Remix) ビデオ
1,Nezhnost Moya
2,Ya Lechu
3,Ot Razluki Do Lyubvi
4,Prosto Tak
5,Tui Poimesh
6,Gasnut Nebesa
7,Tanets Dlya Avoih
8,Polet
9,Igra Ne Lyubov
10,Tui Poimesh (Remix)
11,Ya Lechu (Remix)
bonus tracks
12,Klyuchiki
13,Otlusti Menya ビデオ
14,Malenkii Samolet ビデオ
15,Rasstavanie
 インターネットのファン投票をもとに選曲されたリミックス・アルバム。当時はロシアでもクラブ・カルチャーが盛り上がりをみせていた時期で、様々なアーティストがヒット曲のリミックスに挑戦してましたが、もともとロシアに根付いた文化ではなかったため、結構“クラブ・ミックス”の意味をよく分かっていないような作品も多かったんですね。その点、本作はガラージ・ハウスやアシッド・ジャズ、2ステップなどUKのクラブ・サウンドからの影響を受けつつ、リアルなトレンドを押えたセンスの良いサウンドを聴かせてくれます。中でも、メロディアスでロマンティックでスケール感のあるハウス・ミックス#1と#8はオススメ。  98年〜01年までのヒット曲を中心に構成された6枚目のアルバム。半ばベスト盤みたいな内容です。中でも、アルバム発売に併せて発表されたシングル#3は当時爆発的な大ヒットになりました。フォーク・ロック・スタイルのダウナーなオープニングから、サビで一気に壮大なスケールの哀愁メロディへと転調する見事な楽曲構成。これは鳥肌ものでしたね〜。名曲だと思います。70年代のガラージ・ディスコを意識したキャッチーなダンス・ナンバーやドラマチックで叙情的なギター・ハウス#5、サイケでヘヴィーな泣きのロック・バラード#7など、どの楽曲も粒ぞろい。いろいろな意味で70年代を意識した作品です。  2年のブランクを経てリリースされたカムバック・アルバム。オープニングを飾る壮大なスケールのエスニック・ハウス#1からテンション上がりっぱなしです。ベラルーシの民族音楽とプログレッシブ・ハウスを合体させたトライバルなサウンドが最高!続くヒット・シングル#2もノスタルジックで甘酸っぱいメロディが印象的な素晴らしいポップ・ナンバー。#11のハウス・ミックスは若干無理があるような気もしますけど(^^; ロシアン・フォーク調の素朴で切ないバラード#6も名曲。ワレリヤにとって今のところ最大のセールスを記録したアルバムですが、それも大いに納得の素晴らしい仕上がりだと思いますね。

 全体的にバンド・サウンドというか、ロックやフォークの色合いが濃厚なアルバムで、残念ながら地味な印象は拭えないかもしれません。それぞれの楽曲も大変丁寧に作られており、レコーディングにはお金も時間も贅沢に費やされたであろうことは想像に難くないのですが、どうもスノッブな香りが鼻につくというか、製作サイドの独りよがり的な感じがしてしまうんですよね。批評家受けはするのかもしれませんが、ファンが求めているのはこういうワレリアではないように思います。逆に、#12〜#15のボーナス・トラックの方が彼女らしい感じ。いかにもロシア的でノスタルジックな香りのするポップ・ナンバーです。

NEPODKOTROLNO.JPG OUT_OF_CONTROL.JPG

Nepodkontrolno (2008)
Out Of Control

Out Of Control (2008)

(P)2008 Nox Music (Russia) (P)2008 Nox Music (Russia)
1,Bne Igru
2,Sneg
3,Nepodkontrolno
4,Tui Ne So Mnoi
5,Razrushit Lyubov ビデオ
6,Mui Vmeste ビデオ
7,Bolu! (Schastue Na Chasti) ビデオ
8,Gde, Zhe Tui?
9,Da i Net
10,Do Vstrechi
11,Chelovek Dozhdya ビデオ
12,Opravdaesh Li Tui
13,Mui Vmeste (DJ Vartan & DJ Pasha Portnov aka Hit Deejays Remix 2007)
14,Chelovek Dozhdya (Karaoke-Version)
1,The Party's Over ビデオ
2,Wild ビデオ
3,Break It All ビデオ
4,I Know
5,Out Of Control
6,Love Sick
7,Here I Am
8,No One
9,Next To You
10,There I'll Be
11,Where Are You?
12,Romantic
13,Somehow, Someway
14,Romantic (DJ Vartan & DJ Pasha Portnov aka Hit Deejays Remix 2007)
15,Stayin' Alive (duet with Robin Gibb) ビデオ
 前作のアダルトなポップ・ロック路線を引き継ぎつつ、より遊び感覚溢れる上質なポップス・アルバムとなった最新作。アコースティックをベースに、実験的なエレクトロ・サウンドを程よく織り込んだサウンド・プロダクションのセンスはなかなか。楽曲的にもさり気なくロシアっぽい哀愁感を漂わせてます。ただ、抜きんでた傑作が見当たらないというのは、ちょっと心もとないような気も。とりあえず、ノスタルジックなラブ・バラード#11はなかなかの名曲です。  こちらが英語版。とはいっても、ロシア語版の歌詞をそのまま英語に訳しただけのアルバムではなく、#1と#9、#13、#15は英語版のみ収録の楽曲。ロシア的なカラーを極力抜き去り、英米マーケット仕様にリパッケージしましたという印象ですね。それが良いのか悪いのか。個人的には、民族的なオリジナリティは残しておいた方がいいとは思うんですけどね。それがアーティストとしての基盤になるはずだし、ライバルとの差別化にも繋がるはずなので。

DE_LUXE_COLLECTION.JPG BEST_VOLUME_1.JPG BEST_VOLUME_2.JPG BEST_2005.JPG

De Luxe Collection

Zvezdnaya Seriya Chast 1
The Star Collection Part 1

Zvezdnaya Seriya Chaste 2
The Star Collection Part 2

Malenkii Samolet
The Small Plane

(P)2000 De Luxe Collection (Russia) (P)2002 S.T.R. Records (Russia) (P)2002 S.T.R. Records (Russia) (P)2005 Sunrise Records (Russia)
1,Ne Obizhai Menya
2,Moya Moskva
3,Metelitsa
4,Tui Gde-To Tam
5,S Dobrim Utrom ビデオ
6,Riga-Moskva
7,Zolotaya Ribka
8,Samolet ビデオ
9,O Tom, Chto Bilo
10,Noch Nezhna
11,Osennii Dim
12,Zhal ビデオ
13,Popolam
14,Obichnie Dela
15,Ptitsi Letyat Na Yug
16,Kal-Kal
17,Tsveti
18,Nebesa
19,Ne Zabud Bilie Uvlechniya
1,Tayu
2,Tui Gde-Tom Tam
3,Riga-Moskva
4,Metelitsa
5,Ne Obmanibai
6,Ne Obizhai Menya
7,Noch Nezhna
8,Obichnie Dela
9,Camolet
10,Zhal
11,Tsveti
12,Ottzveli Hrizantemi
13,Popolam
14,O Tom, Chto Bilo
15,Kak Horoshi Te Ochi
16,Zolotaya Ribka
17,Bessonnitsa
18,S Dobrim Utrom
19,Nebesa
20,Koda (Instrumental)
1,Poslednya Pozma ビデオ
2,Gorod Detstva ビデオ
3,Malenkii Prints ビデオ
4,Bolshe Chem Zhizn
5,Moskva Slezam Ne Verit
6,Nad Moskvoyu Chistoe Nebo
7,Kal-Kal
8,Kalitka
9,Dve Rozi
10,Pesnya Dlya Tebya
11,Malchiki Ne Plachut
12,S Angelom
13,Moya Moskva (Remix)
14,Ne Zabud Bilie Uvaechenya
15,Obruchalnaya
16,Ne Uhodi
17,Oseni Dim
18,Ptitzi Letyat Na Yug
19,Lebedinaya Pesnya
1,Malenkii Samolet
2,Tui Grustish (duet with Stas Pjesha) ビデオ
3,Chasiki
4,Cherno-Belii Tsvet
5,Bila Lyubov
6,Ti Gde-To Tam
7,Obo Mne Vspominai
8,Padiga-Diga
9,Strana Lyubvi
10,Riga-Moskva
11,Ne Onmanivai
12,Rozovii Tuman
13,Samolet
14,Ne Obizhai Menya
15,Tayu
16,Ti Prishel
17,Obichnie Dela
18,Metelitsa
19,Otlustu Menya
20,Perelei Voda
21,Ti Grustish (Remix)
 ロシアの有名なベスト盤シリーズDe Luxe Collectionから発売されたワレリアの初期ベスト。とはいっても、全て95年以降の楽曲で構成されてるんですけどね。90年代のアルバムは入手困難なので、その点では重宝する1枚です。個人的にオススメは、お洒落でポップなエレクトロ・ボサ#13と、猛烈にキャッチーでメランコリックなフォーク・バラード#14。この2曲は今でもヘビー・ローテーションなくらいにお気に入りです。  こちらもロシアは人気のベスト盤シリーズから出たベスト盤。デビューからセミ・リタイア直前までの全てのアルバムから選曲されており、文字通り究極のベストと言うべき内容です。このパート1は95年以降の楽曲を中心としたセレクト。右のデラックス・コレクションと大半のナンバーが被ってしまいますが、ロシアの懐メロ歌謡をカバーした#12や#15なんかは、ワレリヤの原点を感じさせられて非常に興味深いですね。  そして、こちらはデビュー当初の楽曲を中心にセレクトされたパート2。明らかにヴァンゲリスの『炎のランナー』を意識した#1を聞けば、初期ワレリアの音楽的な方向性が如実に分かると思いますね。また、ロシアではとても有名な懐メロ愛唱歌をカバーした#3も大好きですね〜。この仄暗いロマンティシズムこそがロシア音楽の醍醐味。#19なんかアレクサンドル・ソクーロフの映画にガッツリ合いそうだもんな〜。  当時大ヒットしていたシングル#1をタイトルに据えた即席ベスト盤。ロシアお得意の、いわゆるセミ・オフィシャルと呼ばれるグレイ・ゾーンな商品でございます(笑)目玉は、アルバム未収録のラブ・バラード#2。ロシアの人気オーディション番組“スター・ファクトリー”出身の若手男性ボーカリスト、スタス・ペーハとのデュエットです。#21では派手派手のトランス・リミックスも収録。まあ、可もなく不可もなくですな。

 

戻る