ウルトラ・ネイト Ultra Nate
洗練された大人のためのハウス・ディーバ

 

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 90年代を代表するクラブ・ヒット“Free”でお馴染みのハウス・ディーバ。デビュー当初から、ジャズやリズム&ブルースのテイストを取り入れたスタイリッシュなサウンドで熱狂的なファンを獲得してきた。生まれも育ちも生粋のアメリカ人だが、その音楽的アプローチはUKのアーバン・ソウルに近い。時にメロウで洒脱。クールでファンキーでグルーヴィー。ありきたりなハウス系アーティストとは一線を画した、踊るためだけではない音楽を追求している女性だ。
 もちろん、ボーカリストとしての実力も本格的。マーサ・ウォッシュやロリータ・ハロウェイなど、ハウス系ディーバというと大声で叫ぶしか能がないデブ女というイメージが強い。だが、このウルトラ・ネイトとアディーバの二人は別格。ハウス以外のジャンルでも十分に通用する“歌心”を持っているアーティストと言えるだろう。

 1968年3月20日、メリーランド州の生まれ。本名をウルトラ・ネイト・ワイシェという。幼い頃からマーヴィン・ゲイやテディー・ペンダーグラスなどを聴いて育ち、学生時代にはカルチャー・クラブなどのUKポップスにも夢中だったという。学校では薬学を勉強していたものの、週末には地元のクラブで歌っていた。そのステージを見た音楽プロデューサーのトーマス・デイヴィスにスカウトされ、彼が率いるハウス・ユニット、ベースメント・ボーイズの楽曲にゲスト・ボーカルとして参加。それが、結果的に彼女のソロ・デビュー作となったシングル“It's Over Now”(89年)である。
 この曲はワーナーのディストリビュートでメジャー・リリースされ、特にイギリスで大ヒットを記録。不発だった“Scandal”と“Deeper Love”の2枚を経て、91年にリリースしたシングル“Is It Love?”が再びイギリスを中心にヒットし、アメリカでもビルボードのダンス・チャートで上位にランクされた。さらに、3枚目のシングル“Rejoicing”はダンス・チャートで7位をマーク。ファースト・アルバム“Blue Notes in the Basement”も高い評価を得た。
 93年にリリースされたセカンド・アルバム“One Woman's Insanity”からはファースト・シングル“Joy”がダンス・チャートで2位、続く“Show Me”と“How Long”が立て続けに1位を記録。UKのネリー・フーパーやオランダの“ソウルショック、カットファーザー&カーリン”といったグランドビート系のプロデューサーとも組み、より洗練された大人のクラブ・サウンドを聴かせてくれた。
 しかし、レコード会社側がR&B路線を要求するようになり、音楽的な方向性の違いからワーナーと決裂。インディペンデント系のストリクトリー・リズムに移籍し、当時頭角を現しつつあったハウス・ユニット、ムードUスウィングと組むようになる。
 そうした状況の中、97年にリリースされて爆発的な大ヒットとなったのが、通産8枚目となるシングル“Free”である。ビルボードのダンス・チャートで1位、全英チャートで4位を記録したほか、ヨーロッパ各国やカナダでもチャート上位をマーク。続く“Found A Cure”も全米ダンス・チャート2位、全英チャート6位を記録。サード・アルバム“Situation : Critical”は全米アルバム・チャートで17位まで上り、彼女にとって最大のヒットとなった。
 その他、アンバー、ジョセリン・エンリケスと共にレコーディングしたシングル“If You Could Read My Mind”もダンス・チャート3位の大ヒットに。2000年にはシングル“Desire”を、2001年には“Get It Up(The Feeling)”を相次いでダンス・チャート1位に送り込み、4枚目のアルバム“Stranger Than Fiction”もリリースした。2003年にはプリテンダーズのカバー“Brass In Pocket”がダンス・チャート8位をマーク。しかし、その後は様々なプロジェクトでのゲスト・ボーカルに専念し、あまり目立った活動を行わなくなった。
 しかし、2006年にシングル“Love's The Only Drug”で久々にカムバック。これがダンス・チャートで2位を記録。さらに、翌年には“Automatic”と“Give It All You Got”を1位に送り込み、ハウス・ディーバとしての健在ぶりを示している。

 

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Is It Love? (1991)

Rejoicing (1992)

Joy / Show Me (1993)

How Long (1994)

(P)1991 WEA Records/Warner (USA) (P)1992 WEA Records/Warner (USA) (P)1993 Warner/WEA (USA) (P)1994 Warner/WEA (USA)
1,Is It Love? (The Edit) 3:34 ビデオ
2,Is It Love? (Club Mix) 7:11
3,Scandal (Club Mix) 8:10 ビデオ
4,Scandal (Love Me Dearly Mix) 7:26
5,It's Over Now (Piano Vocal Mix) 12:48

produced by The Basement Boys
1,Turn Up The Radio Mix 3:52 * ビデオ
2,Deee-liteful Stomp Mix 8:03 *
3,Gospel Stomp Mix 7:15
4,The Leftfield Vocal Mix 9:27 **
5,Backslide Remix 7:51
6,Ultrapella/Deee Dub 6:05 * ビデオ
7,Blue Notes Version/Album Version 6:30

produced by The Basement Boys
* remixed by DJ Dimitry and Towa Tei
** remixed by Leftfield
1,Show Me (Album Version) 4:21 ビデオ
2,Show Me (Masters At Work R&B Mix) 5:35*
3,Show Me (Basement Boys Vocal Mix) 6:58**
4,Joy (Album Version) 5:19
5,Joy (Never Ending Joy Mix) 10:00
6,Joy (Turn It, Ms.Ultra Mix) 6:37
7,Show Me (Original Extended Version) 6:03
8,Show Me (Masters At Work Wild Dub) 6:13*
9,Joy (What Rave? Mix) 6:12***
10,Joy (Tee's Freeze Mix) 5:29***
11,Joy (Techno Joy Mix) 4:29
12,Show Me (Masters At Work Club Mix) 6:40*

“Show Me”
produced by Soulshock, Cutfather and Karlin
“Joy”
produced by Basement Boys
* remixed by Masters At Work
** remixed by Basement Boys
*** remixed by Todd Terry
1,Wigstock Hip Hop Edit 3:57*
2,Album Radio Edit 4:08 ビデオ
3,118th Street Mix 5:38**
4,Paradox Disco Mix 9:08***
5,Fire Island Remix 7:21****
6,Original Extended Vocal 6:35*****
7,Philly Cream Mix 6:53***
8,Ultra's House Swing 8:39******
9,Mood UMaster Mix 6:49******
10,Sound Factory Mood Mix 9:26******

produced by Nellee Hooper & Basement Boys
* remixed by Basement Boys
** remixed by Mufi and Whip
*** remixed and reproduct by Basement Boys
**** remixed by Nellee Hooper
***** remixed by Mood USwing
****** remixed by Mood USwing & Little Louie Vega
 ムーディー且つジャジーなピアノとボーカルで幕を開ける、かなり渋めのディープ・ハウス・ナンバー。UKのアシッド・ジャズ・シーンを意識していますよね。カップリングの“Scaldal”は、セカンド・シングルとしてリリースされた作品。こちらは典型的なガラージ・ハウスです。そして、最後には記念すべきデビュー・シングル“It's Over Now”のリミックスも収録。12分以上にも及ぶ大作で、エレガント且つクラッシーなガラージ・ハウスに仕上がっています。  ゴスペルとジャズ、ディスコのエッセンスを盛り込んだガラージ・ハウスの名作。かなりファンキーでアッパーな仕上がりです。随所に挿入されるサックスやリズム・ギターのカッコ良さといったら!あらゆる愛にまつわる“歓び”を歌ったポジティブな歌詞も素晴らしいですね。ベスト・ミックスは、ディーライトのディミトリとテイ・トウワの手がけた#1と#2でしょう。UKのハウス・ユニット、レフトフィールドによる#4もラテン・ディスコっぽい雰囲気で大好きです。  “Joy”と“Show Me”のシングル2枚をカップリングしたお徳盤マキシ。メロウでキャッチーなメロディラインが印象的な“Show Me”、ゴスペルをベースにしたガラージ・ディスコ“Joy”と、どちらもお洒落でクール。“Show Me”に関しては、やはりオリジナル・ミックスが最高の出来栄えです。“Joy”のリミックスではパーティ気分盛り上がるラテン・スタイルのダブ・ミックス#6がベスト。マスターズ・アット・ワークによる#2はちょっと渋すぎたかもしれません。  グランドビートを世に広めたUKのソウル・バンド、ソウルUソウルの元メンバー、ネリー・フーパーを迎えたシングル。都会的で洗練されたR&Bナンバーで、キャッチーなメロディとグルーヴィーなリズムが艶かしい傑作です。リミックスの中では、アッパーでファンキーなガラージ・ディスコに仕上げた#4、ラテン・ジャズ風のアフロ・ビートが心地よい#5がベストな出来栄え。逆に、硬派なヒップ・ホップに仕上げた#1は原曲の良さを完全に殺してしまっています。

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Free (1997)

Free (1997)

Found A Cure (1998)

Found A Cure (1998)

(P)1997 Strictly Rythm/A&M (UK) (P)1998 Strictly Rhythm/A&M (UK) (P)1998 Strictly Rhythm/Sony (EU) (P)1998 Strictly Rhythm/Sony (EU)
1,Radio Edit 3:53 ビデオ
2,Mood USwing Extended Vocal Mix 12:00
3,Mood USwing Live Vocal Mix 7:30 ビデオ
4,Full Intention Club Mix 6:46*
5,Mood USwing House Dub 7:30

produced by Mood USwing
* remixed by Full Intention
1,Radio Edit 3:53
2,Mood USwing Edit 3:28
3,M&S Philly Klub Mix 7:38*
4,RIP Up North Dub 5:47**
5,GA's Mix 8:40***

produced by Mood USwing
* remixed by Ricky Morrison & Fran Sidoli
** remixed by RIP Productions
*** remixed by George Acosta
1,Full Intention Club Edit 3:31* ビデオ
2,Full Intention Club Mix 7:23*
3,Mood USwing Underground Mix 7:50
4,Morillo's Classic Adventure Mix 6:00**

produced by Mood USwing
* remixed by Full Intention
** remixed by Erick Morillo
1,Full Intention Radio Edit 4:01**
2,Mood USwing Radio Mix 4:13
3,Morillo Swings with a Constipated Monkey 7:09*
4,Mood USwing Extended Original Vocal 8:54
5,Classic String Mix 3:50**

produced by Mood USwing
* remixed by Erick Morillo & Constipated Monkey
** remixed by Full Intention
 こいつはバカ売れしましたよね。メロウでクールなギター・リフが最高にカッコいい、ガラージ・ハウスの大傑作です。やはり、ムードUスウィングによるオリジナル・ミックス#1と#2がダントツの出来栄えですね。アンプラグドなジャズ・ファンクに仕上げた#3もむちゃくちゃカッコいい。フル・インテンションによるプログレッシブなハウス・ミックス#4も嫌いじゃないです。  こちらは翌年にUKでリリースされたリミックス盤。US版のリミックス12インチよりも2バージョン少ないのが玉に瑕ですかね。リミックスの内容にしても、あまりにも完璧なオリジナル・バージョンと比べるてしまうと、はっきり言って聴き劣りしてしまいます。とはいえ、オリジナルのアレンジを活かしつつ、ヘヴィーなエレクトロ・ハウスに仕上げた#5はまずまずの出来栄えです。  ドラマチックで美しいメロディラインの印象的な、哀愁系ガラージハウスの名曲です。この時期のウルトラ・ナッテは本当に充実していました。前作“Free”を意識したギター・リフなどを随所に絡めつつ、よりポップ・マーケット向けの作品に仕上げていますね。フル・インテンションによる#1と#2は、シャカタクにも通じるメロウ感が素晴らしい。70年代ディスコ風の#4もカッコいい出来です。  こちらは同時期にリリースされたリミックス盤。個人的にはフル・インテンションのミックスがベストだと思っていますが、#4のムードUスウィングによるオリジナル・バージョンも、よりジャズ・ファンク色を濃くしたような仕上がりで甲乙付けがたいところ。めくるめくトリップ・ハウスに仕上げた#3もサイケな感じでクール。叙情的なストリングスのみで歌い上げる#5も聴き応え十分です。

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New Kind Of Medicine (1998)

New Kind Of Medicine (1998)

Get It Up (The Feeling) (2001)

Free EP (2004)

(P)1998 Strictly Rhythm/A&M (UK) (P)1998 Strictly Rhythm (USA) (P)2001 Orange Records (Sweden) (P)2004 Curvve/Centaur (USA)
1,Morales Club Mix 9:54 *
2,Rascal Dub 5:18 ***
3,Tenaglia's Future Garage Mix 6:45 **
4,Acappella 4:43 ***
5,Extended 7:04 ***
6,Morales Def Mix 7:56 *
7,Morales Medivac Mix 7:43 *
8,Tenaglia's D Tour Dub 8:16 **

produced by D-Influence
* remixed by David Morales
** remixed by Danny Tenaglia
*** remixed by Albert Cabrera
1,Radio Edit 3:50 ビデオ
2,Original Extended Vocal Mix 7:00
3,Rascal Dub Mix 5:15
4,Tiefschwarz is Coming Home Vocal Mix 7:38
5,Pressure (Extended Vocal Mix) 8:13
6,Pressure (Rascal Dub Mix) 6:25
7,Pressure (Radio Mix) 3:25
8,Free (Yossarian Trip Rock Mix) 4:00
9,Found A Cure (Club 69 Insane Club Mix) 8:51
10,Tiefschwarz New Kind Of Sub Dub Mix 7:41
11,A Capella 2:56

produced by D-Influence
1,Original Radio Edit 3:36 ビデオ
2,Full Intention Radio Edit 3:02 ビデオ
3,Tru Faith Garage Radio Edit 3:31
4,Full Intention Club Mix 7:00
5,Full Intention Sultra Mix 7:38
6,Tru Faith Garage Vocal Mix 5:02
7,Spen & Karisma Main Vocal 5:40

produced by Arnthor & Bloodshy
1,Free (Brick City Remix) 7:42
2,Free (Oscar G's Space Afterhour Mix) 8:19
3,Free (Jason Nivens Remix) 7:53
4,Time Of Our Lives
  (Stonebridge Anthem Mix) 8:20
5,Free (Toolhouse Remix) 7:07
6,Free (Junior Sanchez Remix) 5:29
7,Feel Love (Liquid People Remix) 6:53
8,Free (Graig C's Strange Bedfellows Mix) 7:49
9,Brass In Pocket (DJ Karizma Mix) 6:52
10,It's Over Now (Live Version) 4:51

executive producers/Vinny Troia & Bill Coleman
 “Free”、“Found A Cure”と同じ路線で手堅く攻めてきた作品。大御所モラレスのミックス#1なんぞは、まさに大道のUKガラージといった感じ。トライバル色を押し出した#7もカッコいい仕上がりです。70年代のサルソウル・サウンドを思わせるリー・カブレラのミックス#5のレトロなダンクラ感覚も好きです。それに比べると、ダニー・テナグリアのミックスはちょっと凝りすぎといった印象で、個人的にはイマイチでした。  こちらはゴッソリとカップリング曲を収録した豪華お徳用のアメリカ盤。一番のオススメはジミー・ボー・ホーンの“Spank”をサンプリングした超アッパーな傑作ガラージ“Pressure”ですね。アルバート・カブレラのパンチの効いたミックスは本当に最高です。ピーター・ローホファーによる“Found A Cure”のリミックス#9もツボを心得たハード・ハウスに仕上がってます。逆にトリップ・ホップ風の#8はちょっと勘違いかも。  まさに70年代のニューヨーク・サウンドといった感じのファンキーでグルーヴィーなガラージ・ディスコ。アイズレー・ブラザースをサンプリングしてますが、サビなんかはロッドの“Get It Up”をかなり意識してますよね。フル・インテンションの煌びやかなミックスも捨てがたいですけど、やはりオリジナルのビッチでグラマラスな感じが最高です。ラウンジっぽい仕上がりの#7はそつなくまとまり過ぎてしまった印象。  “Free”の新録バージョンに新曲のリミックスを加えたミニ・アルバム。改めてニュー・バージョンを出す必要があるのかという疑問はあったものの、ついつい手を出してしまうのがファンの性というもの。オスカーGの#2は大箱向けハード・ハウスといった感じでまずまずの出来。クレイグCの#8も原曲のイメージを活かしたディスコティックな仕上がりで合格。でも、あとはどうでもいいかな。新曲#7もカッコよかったです。

AUTOMATIC_2008.JPG

Automatic (2008)

(P)2008 Tommy Boy (USA)
1,Tikaro,J.Louis & Ferran Radio Mix 3:37
2,Tikaro,J.Louis & Ferran Vocal Mix 8:10 ビデオ
3,Tikaro,J.Louis & Ferran Remix 1.0 7:56
4,Tikaro,J.Louis & Ferran Remix Dub 7:53
5,Alex Gaudino Mix 8:03
6,Riff & Rhys Mix 7:24
7,Discode Club Mix 5:13
8,Esquire Mix 6:48
9,Original Extended Mix 6:17 ビデオ
10,Automatic Acapella 3:11

produced by Jens Bergmark & Ultra Nate
 ポインター・シスターズのカバーです。もともと2007年にリリースされましたが、こいつは今年に入って出たリミックス盤です。80年代カバーものには正直なところかなり食傷気味ですが、これはなかなかの出来栄え。しっかりと彼女のカラーに染め上げているのは立派です。ファンキーでテンションの高いミックスに仕上がった#1と#2がベスト。80年代ユーロっぽいサウンドがユニークな#7はアイディア賞ものですね。ラテン・ハウス風の#8も結構お気に入りです。

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