Tusk (2014)

 

 

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(P)2014 Lionsgate (USA)
画質★★★★★ 音質★★★★☆
ブルーレイ仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:2.40:1/HD規格: 1080p/音声:5.1 DTS-HD MA/言語:英語/字幕:英語・スペイン語/地域コード:A/104分/制作国:アメリカ

<特典>
・未公開シーン集
・製作舞台裏ドキュメンタリー
・撮影舞台裏ドキュメンタリー
・原案ポッドキャスト放送
・ケヴィン・スミス監督の音声解説
監督:ケヴィン・スミス
製作:ウィリアム・D・ジョンソン
   サム・エングルバード
   シャノン・マッキントッシュ
   デヴィッド・グリートハウス
脚本:ケヴィン・スミス
   スコット・モシャー
撮影:ジェームズ・ラクストン
音楽:クリストファー・ドレイク
出演:マイケル・パークス
   ジャスティン・ロング
   ハーレイ・ジョエル・オスメント
   ジェネシス・ロドリゲス
   ジョニー・デップ

<Review>
 映画監督の引退宣言をしていたケヴィン・スミスが3年ぶりに発表した新作。もともと、彼と盟友スコット・モシャーがDJを務めるポッドキャスト番組で話題にのぼったオンライン広告を元ネタにしているらしいのだが、これがなんというか、恐らくケヴィン・スミス史上最もシュールかつナンセンスで奇妙なホラー・コメディに仕上がっている。
 主人公は金儲けの為なら他人の不幸にもつけ込むゲスなポッドキャストDJウォーレス。ネタを探してカナダのど田舎にやって来た彼は、居酒屋のトイレで一風変わった募集広告を見つける。宿泊代無料で自宅の部屋を貸す上に、この宿主がこれまでの人生で経験してきた面白い出来事を話してくれるというのだ。
 これはもしかすると金脈を掘り当てたかもしれない!そう思って広告に記された住所へ向かったウォーレス。ところが、待ち受けていた老人ハワードはセイウチをこよなく愛するサイコパスで、ウォーレスに睡眠薬を飲ませて監禁。彼の両足を切断し、皮膚を縫いつなげ、大好きなセイウチに変えてしまおうとするのだった…。
 な…なぜにセイウチ!?と思わず突っ込みたくなってしまうナンセンスな展開、そんな観客の疑問や困惑をものともせず猪突猛進する力技な演出。一応、老人ハワードの暗い過去が理由として明かされるものの、それにしても飛躍しすぎだろ!といった感じなのだが、そんな問答無用の荒唐無稽が本作の醍醐味だと言えよう。身も心もセイウチに変えられてしまったウォーレスと、自らもセイウチ・スーツに身を包んだハワードが取っ組み合いを繰り広げる、クライマックスの“セイウチ比べ”なんかもう、全然わけが分からないけど異様な迫力が漲っていたりする。
 もちろん、ケヴィン・スミスならではの風刺精神も健在。路線として前作の「レッド・ステイト」の系譜を引き継いでいることは明らかなのだが、あちらが現代アメリカの政治や社会に暗い影を落とす“宗教”の問題をバッサリと切っていたのに対し、本作では同じくアメリカ社会を蝕むセレブ崇拝やSNS文化、拝金主義などに矛先を向け、人間本来の感受性や思いやりを失いつつある現代人の功罪を痛烈に皮肉っているのだ。
 “分かる人が分かればそれでいい”と監督自身が言っているように、恐らく人によって好き嫌いがハッキリと分かれる映画だろうとは思う。悪趣味すれすれのブラック・コメディやカルト・ホラーを好む映画ファンには超オススメ。なお、サイコな老人ハワードを長年追い続ける元刑事ギュイ・ラポンテ役を演じているのが、なにを隠そう実はジョニー・デップ。クレジット上では役者名もギュイ・ラポンテになっている上、特殊メイクでまるっきりの別人に変装しているため、恐らく熱烈なジョニデ・ファンでも気付かないのではないだろうか。

<Story>
 ポッドキャストの人気番組でホストを務めるウォーレス(ジャスティン・ロング)と親友テディ(ハーレイ・ジョエル・オスメント)は、YouTubeで見つけた動画で盛り上がっていた。それは、日本刀を振りかざしていた少年が誤って自分の足を切断してしまうというもの。2人は少年をキル・ビル・キッドと名づけ、こいつまじでバカじゃん!とこき下ろしていたのだが、リスナーからの反響が大きかったことからキル・ビル・キッド本人に会ってみようということになる。
 早速、キル・ビル・キッドの住むカナダのマニトバ州へ向かったウォーレス。ところが、肝心のキル・ビル・キッドは自殺してしまっていた。せっかくカナダまで来て手ぶらで帰るのはもったいない。なにか代わりのネタはないだろうかと探していたウォーレスは、ブラリと立ち寄った居酒屋のトイレで1枚の張り紙広告を見つける。自宅の部屋を宿泊用に無償で貸す、これまで経験した面白い出来事を話しして聞かせる。こいつは渡りに船だとばかりに、ウォーレスは広告主のもとへ向かうことにした。
 たどり着いたのはど田舎の大きな一軒家。周囲を森と湖に囲まれたなーんにも無い場所だ。待ち受けていた老人ハワード(マイケル・パークス)は、若い頃から船乗りとして世界中を旅して回り、あの文豪ヘミングウェイとも友人だったという。これはすごい金脈を掘り当てたぞ、とばかりに喜んで話を聞くウォーレスだったが、いつしか猛烈な睡魔に襲われてしまう。実は、差し出されたお茶の中に睡眠薬が混ぜられていたのだ。
 翌朝目覚めたウォーレスは椅子に縛り付けられていた。しかも、片足の膝から下が切断されている。ショックと恐怖のあまり絶叫するウォーレス。君は毒蜘蛛に足を噛まれたんだ、すぐに医者に来てもらったんだが手遅れだったと説明するハワードだが、もちろんウォーレスはそれが嘘だと気づいている。身の危険を感じた彼は夜中に携帯電話でテディと元恋人アリー(ジェネシス・ロドリゲス)に電話をするも繋がらず、ハワードに見つかって携帯を破壊されてしまった。
 幼い頃に両親を事故で失ったハワードは、孤児院で神父から性的虐待や暴行を受けて育ったために、この世で最も残酷で罪深い生き物は人間だと考えるようになった。18歳でようやく孤児院を出ることができた彼は船乗りに。世界各地を旅したものの、あるとき難破事故に巻き込まれてしまう。その時に助けてくれたのが一匹のセイウチだったのだ。タスク氏と名付けたセイウチはハワードにとって生まれて初めての、そして唯一の親友だったという。
 タスク氏と別れて文明社会に戻ったのが間違いだった。本当に申し訳ないことをした。その罪を償うため、彼は人間をセイウチに変えているのだ。人間でいるよりもセイウチになったほうがよっぽど幸せだ。そう語るハワードは、ウォーレスの残った片足も切断し、脇腹と二の腕の皮膚を糸で接合し、人間の皮膚で作ったセイウチ・スーツを被せ、さらに足の骨で作った牙を装着させる。
 その頃、ウォーレスからの留守番電話を聞いたテディとアリーは彼の身に危険が迫っていることを知り、すぐさまカナダへと向かう。アリーはウォーレスが無名のコメディアンだった頃の恋人だったが、名前を売るために罰当たりな言動を繰り返すうちに身勝手で浅ましい人間になってしまった彼に愛想を尽かし、彼の親友であるテディと付き合うようになっていた。2人ともウォーレスのことは好きだったが、しかしできれば昔の彼に戻って欲しいと思っていた。
 カナダの地元警察に相談したテディとアリーだが、手がかりが殆どないため捜査はすぐに行き詰まる。そこで、担当刑事はある人物を2人に紹介した。モントリオールからやって来た元刑事ギュイ・ラポンテ(ジョニー・デップ)だ。彼は連続猟奇殺人犯ファースト・ワイフを長年追い続けているのだが、その犯行手口がウォーレスを監禁する犯人と酷似していたのだ。
 ラポンテの手助けでウォーレスの行方を追うテディとアリー。一方、ハワードはウォーレスを身も心もセイウチに生まれ変わらせるための調教を始めていた。果たして、テディとアリーは彼を救うことが出来るのか…?

<Information>
 「クラークス」('94)や「チェイシング・エイミー」('97)、「ドグマ」('97)など、独特の鋭い感性を持ったコメディ映画で'90年代の米映画界を席巻したケヴィン・スミスだが、近年は保守化する一方のアメリカにおいて彼の過激な風刺精神はなにかと問題視されることが多く、年齢制限を厳しくされるわ、勝手に再編集されるわ、宗教団体などから猛抗議を喰らうわと災難続き。そんなこともあってか'11年に監督引退を宣言したわけだが、久々の新作となった本作で再び創作意欲に火が付いたらしく、早くも次回作「Yoga Horsers」('15)の撮影が完了済み。しかも、本作でもジョニー・デップが演じた元刑事ギュイ・ラポンテを主人公にしたスピンオフ映画となるらしい。
 スミスと共同で脚本を手がけたのは、「クラークス」以来彼の作品を担当してきたプロデューサーにして盟友のスコット・モシャー。撮影監督のジェームズ・ラクストンは「バッド・マイロ」('13)など近年インディペンデントで頭角を現しているカメラマンで、スミスの次回作「Yoga Horsers」も手がけている。そのほか、テレビアニメで活躍する作曲家クリストファー・ドレイクや人気ドラマ「HOMELAND」で評価されたプロダクション・デザイナーのジョン・D・クレッチュマーなど、スタッフを若手中心で固めているのも大きな特徴と言えるかもしれない。

 サイコな老人ハワードを演じているのは、前作「レッド・ステイト」に続いての登板となるマイケル・パークス。巨匠ジョン・ヒューストンの「天地創造」('66)のアダム役で注目されるも、それ以降は低予算のB級アクションやホラーを中心に活躍。そのせいもあってかカルト映画マニアのタランティーノやロドリゲスに愛され、「キル・ビル」シリーズや「グラインドハウス」、「ジャンゴ 繋がれざる者」などにも出ているベテラン名優だ。
 ウォーレス役のジャスティン・ロングは「ギャラクシー・クエスト」や「ジーパーズ・クリーパーズ」で注目され、「ダイ・ハード4.0」ではブルース・ウィリスの相棒も演じたベビーフェイスの俳優。アメリカではコメディを中心に売れっ子だが、日本ではイマイチ知名度が低い。スミス監督とは「恋するポルノ・グラフィティ」でも組んでいる。
 その親友テディ役は、ご存知「シックス・センス」の元子役ハーレイ・ジョエル・オスメント。少年時代の面影の殆どない髭面のメタボ青年になってしまったが、特徴的な笑顔はやっぱり変わらないのだよね。また、ウォーレスの元恋人アリー役には、「ハリケーンアワー」でポール・ウォーカーの相手役を演じていた女優ジェネシス・ロドリゲス。「俺たちサボテン・アミーゴ」でも紅一点のヒロインだった。
 そして、先述したように元刑事ギュイ・ラポンテ役で登場するジョニー・デップ。フレンチ・カナディアンという設定のため、フランス語訛りの英語を喋るちょっと変わった中年オヤジ。「シザーハンズ」や「パイレーツ・オブ・カリビアン」なんかに比べたらかなり地味なキャラだけれど、ほぼジョニー・デップだと分からないくらいの特殊メイクってのは、もしかするとこれが初めてかもしれない。

 

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