Trespassing (2004)

 

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(P)2005 Screen Media Films (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/ステレオ/音声:英語/字幕:スペイン語/地域コード:1/89分/製作:アメリカ

特典映像
キャスト・バイオグラフィー
監督:ジェームズ・メレンディーノ
製作:サム・メイデュー
   スタヴロス・メルホス
   アダム・ローゼンフェルト
脚本:ジェームズ・メレンディーノ
撮影:ジョーダン・アラン
   トーマス・キャラウェイ
音楽:ジェームズ・メレンディーノ
   エルモ・ウェバー
出演:エステラ・ウォーレン
   ダニエル・ギリス
   アシュリー・スコット
   クレイン・クロフォード
   ジェフ・ブライアン・デイヴィス
   カートウッド・スミス
   マリアム・ダボ

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異様な猟奇趣味に彩られた農園の一室

若者カールは実の母親(M・ダボ)を殺害する

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20年前の猟奇殺人事件を研究する大学生マーク(D・ギリス)

ローゼン教授(K・スミス)は都市伝説を否定するのだったが…

 『テキサス・チェーンソー』('04)や『ソウ』('04)の興行的な大成功によって、何度目かのスラッシャー映画ブームが再び盛り上がりを見せ始めた2004年。全米でたった4つだけの映画館でひっそりと公開され、その後“Evil Remains”という全く別のタイトルを付けられてDVD発売されたのが、この“Trespassing(無断侵入)”という作品だ。
 その内容はズバリ、『悪魔のいけにえ』+『13日の金曜日』+『ラストサマー』。アメリカ南部の異教的なゴシック・ムードを生かした映像は『ジーパーズ・クリーパーズ』('01)を彷彿とさせるし、邪悪な雰囲気に包まれた森を舞台にしているところなどは翌年公開の『クライモリ』('05)にもよく似ている。まあ、言ってしまえば、“どこかで見たことのあるホラー映画”ってところなのだが、都市伝説を題材にしたスラッシャー映画として、意外にも見どころのある作品だ。
 主人公は男女5人の大学生グループ。彼らは人里離れた森の奥にある古い農園跡へと向かう。そこは南北戦争時代からの呪われた伝説が残る場所であり、20年前に凄惨な殺人事件が起きた場所でもあった。精神を病んだ青年カール・ブライスが、実の両親をむごたらしい方法で殺害したのだ。その後、カールは行方不明となり、周辺の土地は長いこと立ち入り禁止のまま。この土地に足を踏み入れた者はカールのように気が狂ってしまうと言われている。大学生たちは地元でも有名なこの呪いの実態を検証し、卒業論文にするつもりだったのだ。
 で、当然(?)のごとく、若者たちは一人また一人と殺されていく。しかも、精神的に弱い人間から先に奇妙な言葉を口走るようになり、だんだんと頭がおかしくなっていくのだ。本作はその設定を巧みに利用し、周辺を徘徊して人殺しを繰り返しているのが超自然現象的な存在なのか、それとも20年前に行方をくらましたカール・ブライスなのか、はたまた頭のおかしくなった仲間の誰かなのか、観客が様々な憶測を出来るように作られている。その点は非常に賢いと言えよう。
 また、終盤には殺人鬼がいよいよその姿を現してヒロインとの激しいチェイスを繰り広げることになるのだが、ここでも殺人鬼はレザーフェイスのごとく動物の剥製を頭からすっぽり被っており、結局いったい何者だったのかということが最後まで明かされない。考えようによっては、この土地の持つ邪悪な力に影響を受けたヒロインの想像の産物だったとも受け取れる。本当に殺人鬼は存在したのか?実は妄想にとらわれた若者たちが勝手に殺し合っただけではないのか?というイマジネーションの余地を観客に与えているのである。
 一方で、本作は全篇を通してセリフによる説明が多すぎるという、ホラー映画にとっては致命的な失敗を犯してしまった。なので、本編が始まって40分が過ぎてもほとんど何も起こらない。南部特有の湿った空気やエキゾチックな自然環境のダークな映像美で興味を惹きつけるものの、それでも退屈だと感じる観客は少なくないだろう。続編を匂わせるようなエンディングも、あからさまな常套手段という感じで少なからず興醒めする。
 とりあえず、過度な期待さえしなければ意外な拾い物として楽しめる一本。主人公たちが決してバカで軽薄な若者なんかではなく、時間稼ぎのためのセックス・シーンなど一切ないという点も好感が持てる。これでもう少しセリフの説明を減らし、スプラッターを含めた遊び心のある展開を加えながら全体のテンポを良くすれば、知る人ぞ知るカルト映画くらいにはなっていたかもしれない。

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マークは仲間を連れて事件現場の農園へと向かう

農園には南北戦争時代から呪われた伝説が残っている

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森を散策するクリスティ(E・ウォーレン)とシャロン(A・スコット)

森のいたる場所にトラバサミが仕掛けられていた

 アメリカ南部はルイジアナ州のニューオーリンズ近郊。森の奥にひっそりとたたずむブライス農園で事件は起きた。ブライス家の一人息子カールは、ペットの犬を八つ裂きにするなどの異常行為を繰り返し、精神科のセラピストにかかっていた。父親ジョン(ウィル・ロコス)はそんな息子のことを日常的に虐待。一方、母親のリンダ(マリアム・ダボ)は息子を溺愛し、その異常な性格を半ば見て見ぬふりをしていた。そしてある晩、カールは父親を巨大な枝切りバサミで惨殺し、怯える母親に灯油をかけて生きたまま焼き殺す。それ以来、彼はプツリと行方をくらましてしまった。
 それから20年後。卒業を控えた大学生マーク(ダニエル・ギリーズ)は、かつてカール・ブライスのセラピストだったローゼン教授(カートウッド・スミス)にインタビューをする。彼は地元の都市伝説を研究テーマにしており、卒論としてブライス農園の事件を題材にしたドキュメンタリー映画を製作していた。ローゼン教授によると、ブライス農園には南北戦争時代にまで遡る呪われた伝説があるという。かつてあの土地を所有していた農園主マダム・シュヴァリエは、数多くの奴隷たちを拷問したり人体実験に使ったりと、異常な残虐性を持った女性だった。ある時、その農園で火災が起き、地下室に監禁されていた奴隷たちは一人残らず焼死してしまう。それ以来、周辺の土地には死んだ奴隷たちの呪いがかかっているとまことしやかに噂され、そこへ足を踏み入れたものは気が狂ってしまうという都市伝説が生まれたのだ。
 その呪いとカール・ブライスの事件との関連性について、当然のことながらローゼン教授は否定的だ。しかし、個人的な意見として何らかの影響を受けたということは考えられる。ブライス農園へ取材に行くつもりだというマークに対し、ローゼン教授は静かな口調で忠告した。もし現地へ行くのであれば、
自分が何をしにここへ来たのかということを決して忘れないように、そして、できるならば行く前によくよく考えるように、と。
 翌日、マークは大学の仲間たちを連れてブライス農園へと向かう。メンバーは弟でカメラ担当のタイラー(クレイン・クロフォード)、録音担当でムード・メーカーのエリック(ジェフ・ブライアン・デイヴィス)、そして研究仲間でレズビアンのクリスティ(エステラ・ウォーレン)とその恋人シャロン(アシュリー・スコット)だ。
 ブライス農園の周辺は立ち入り禁止となっており、今では誰も近寄ることのない廃墟と化していた。南北戦争時代の名残をそのまま残している場所だ。屋敷の中へ入った男性陣は撮影の準備を始め、クリスティとシャロンは周辺を散策することにする。すると、草むらでトラバサミにかかったウサギを発見。可哀そうに思ったクリスティは、ハサミをこじ開けてウサギを解放する。だが、よく見ると森の一面に無数のトラバサミが仕掛けてある。しかも、中には白骨化した人間の死体まで残されていた。その異様な光景に戦慄するクリスティ。しかも、シャロンがそのトラバサミで足を怪我してしまった。クリスティはシャロンに肩を貸しながら屋敷へ戻りつつ、あちらこちらに点在するトラバサミの仕掛けを解除していく。
 その頃、マイクの準備をしていたエリックは奇妙な物音を拾う。誰かの話し声のようだ。しかし、マークは地下室でカメラの準備をしているタイラーの独り言だろうと考えて取り合わない。一方、地下室でカメラのセッティングをしていたマークは、かつて奴隷たちが繋がれていた牢屋をスチルカメラで撮影したところ、そこに妙な人影が写っていることに気付く。すると、上の方からマークとエリックの話し声が聞こえてきた。次の瞬間、まるで何かが暴れるような物音が響き渡る。マークとエリックが喧嘩でも始めたのかと思ったタイラーは、急いで地下室の階段を駆け上がった。
 この家は何かおかしい。そう直感したタイラーは、荷物をまとめて引き上げることを提案する。しかし、呪いや超常現象など一切信じないマークは笑って相手にしなかった。タイラーはそんな兄の態度が気に食わない。昔からそうだった。常に自分だけが正しいと思っている。2人には少年時代からの確執があるようだ。その時、奥の部屋から奇妙な物音がする。エリックなのか?2人はカーテンで閉ざされた暗い部屋へと足を踏み入れた。
 物音のする方をよく見ると、壁一面が真っ赤に染まっている。手を触れてみると、それは生々しい血のようだった。これは超常現象なのだろうか。少なくとも、これを映像に記録したら大変な話題になることは間違いない。取り返しのつかないことになる前に引き返そうというタイラーだったが、すっかり名声欲に火のついたマークは聞く耳を持たない。2人は赤い液体の流れて来る天井裏へのぼることにした。
 ところが、天井裏へあがった途端に、入り口が閉まって鍵がかけられてしまう。さらに、2人はさかさまに吊り下げられたエリックの無残な死体を発見した。赤い液体はエリックの血だったのだ。呆然とするマークとタイラー。すると、マークがわけの分からないことを口走りはじめる。エリックを殺したのはタイラー、お前だと。そして積年の恨みを吐き出すかのように弟を口汚く罵るマーク。タイラーも兄への憎しみを口にしながら罵倒する。
 そして、2人が袂を別った次の瞬間、タイラーは仕掛けられてあった拷問具に体を挟まれ、断末魔の叫びを上げながら息絶えてしまった。何者かが自分たちを皆殺しにしようとしている。屋根裏から逃げ出さなければと焦るマークだったが、出口はどこにも見当たらなかった。ふと見ると、さっきまであったタイラーの死体が消えている。もしかすると悪い冗談だったのか?緊張の糸が切れかかったその時、マークは窓から差し込む外の光を発見する。急いで窓際へ駆け寄った彼は釘で打ち付けられた木の板を外し、なんとか外へ出ることに成功した。
 そこへ、クリスティとシャロンが戻ってくる。その姿を遠くから確認したマークは、屋敷へ近づかないよう必死に叫んで2人に警告。だが次の瞬間、玄関から飛び出してきた黒い影によって、彼は屋敷の中へと引きずり込まれてしまった。何が起きたのか分からず、屋敷の方へと駆け寄るクリスティとシャロン。すると、2人は落とし穴の中へと転げ落ち、何者かが扉に鍵をかけて去って行った。
 いったい屋敷の中で何があったのか?シャロンはマークを引きずり込んだのがタイラーだったと主張するが、クリスティはにわかに信じがたい。そもそも、あんなに遠くでは誰なのか確認することなど難しかった。ふと見ると、落とし穴の側面に通路がある。ライターでつけた火の光を頼りに、2人はその通路を先へと進む。すると、どうやら屋敷の地下室らしき場所へ出る。タイラーのセッティングしたカメラがそのまま残されていた。ふと見ると、そこには奇妙な人影の写った写真が。やはり呪いの伝説は本当だったのか。外へ逃げるタイミングを見計らって時を待つ2人だったが、次第にシャロンの言動がおかしくなっていく。と、その時、地下室の入り口で異様な音が鳴り響き、何者かが侵入して来ようとしていた…。

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録音担当のエリック(J・B・デイヴィス)が奇妙な物音を耳にする

地下室にいたタイラー(C・クロフォード)も不可解な現象を体験

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カーテンに閉め切られた暗い部屋から物音が…

異様な光景を目の当たりにするマークとタイラー

 脚本と演出を手掛けたのはジェームズ・メレンディーノ。一部の映画ファンの間で高い評価を受けた青春パンク映画『SLC(ソルトレイクシティ) PUNK!』('99)で知られるインディペンデント作家だ。彼にとってはこれが初めてのホラー映画。基本的に真面目な人なのだろう。いわゆるエクスプロイテーション的なエログロナンセンスの一切を排除し、あくまでもシリアスなアートハウス系ホラー映画としてきっちりとまとめあげている。それが興行的な観点から低予算のB級映画として正解なのかどうかというと疑問の余地ありだが、かえってこういう映画があってもいいだろうとは思う。どうやら現在製作中の最新作はヴァンパイア映画になるらしいので、そちらも期して待ちたいところだ。
 製作を担当したのは『SLC(ソルトレイクシティ) PUNK!』でも組んだサム・メイデューと、ダンス・ドキュメンタリー映画『RIZE ライズ』('05)のスタヴロス・メルホス、『Mr.ブルックス 完璧なる殺人鬼』('07)のアダム・ローゼンフェルト。映画監督としても知られるジョーダン・アランと、『クリッター3』('91)や『The FEAST/ザ・フィースト』('05)のトーマス・キャラウェイが撮影監督を務めている。
 そのほか、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』('08)や『ラスト・エクソシズム』('10)、『エクスペンダブルズ』('10)など近年メジャーの話題作を立て続けに手掛けているデヴィッド・K・ネイミが特殊効果を、『ロビン・フッド』('10)や『世界侵略:ロサンゼルス決戦』('11)のデニス・マクヒューが視覚効果を、『ネメシス/S.T.X.』('02)や『オーシャン・オブ・ファイヤー』('04)のマイク・マイケルズが特殊メイクを担当している。

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屋根裏部屋でエリックの無残な死体を発見する

一人残されたマークは逃げ場を失う

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落とし穴に閉じ込められたクリスティとシャロン

抜け道は屋敷の地下室へとつながっていた

 ヒロインのクリスティ役を演じているのは、『PLANET OF THE APES 猿の惑星』('01)や『ドリヴン』('01)で脚光を浴びた女優エステラ・ウォーレン。そういえば、最近はすっかり顔を見なくなった。一方、前半のストーリーを引っ張る自尊心の強い大学生マーク役には、『スパイダーマン2』('04)で注目された俳優ダニエル・ギリスが扮している。
 さらに、テレビドラマ『ジェリコ〜閉ざされた街〜』('06〜'08)のヒロイン役で売れっ子になったアシュリー・スコットがドレッドヘアのレズビアン女子、シャロン役として登場。また、『24 TWENTY FOUR』のファイナル・シーズンでCTU情報分析官デイナの元恋人であるジャンキー、ケヴィン役を演じていたクレイン・クロフォード、主にテレビドラマのゲストとして活躍しているジェフ・ブライアン・デイヴィスが出演している。それぞれの役柄自体がスラッシャー映画らしからぬ人間臭いキャラクターとして描かれているわけだが、演じる役者の手堅い演技にも注目したい。
 なお、精神科のローゼン教授役として登場し、冒頭とエンディングを味のある渋い演技でキリッと引き締めてくれるのが、『ロボコップ』('87)や『ランボー3』('88)などの悪役として有名なベテラン俳優カートウッド・スミス。さらに、オープニングで殺されるカール・ブライスの母親リンダ役には、『007/リビング・デイライツ』('87)のボンド・ガールとして知られるマリアム・ダボが扮している。ド田舎のくたびれたオバサンというには若干綺麗すぎる感じがしないでもないのだが、その無理矢理な汚れっぷりがかえって美人女優として注目された往時とのギャップを生々しく感じさせ、なんとも言えない悲哀を漂わせる。

 

 

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