THE COTTAGE (2008)

 

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(P)2008 Sony Pictures (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/5.1chサラウンド/音声:英語・フランス語・スペイン語・ポルトガル語/字幕:英語・フランス語・スペイン語・ポルトガル語/地域コード:1
/91分/製作:イギリス

特典映像
未公開シーン集
NGシーン集
ストーリーボード・ギャラリー
オリジナル劇場予告編
監督:ポール・アンドリュー・ウィリアムス
製作:ケン・マーシャル
   マーティン・ポープ
脚本:ポール・アンドリュー・ウィリアムス
撮影:クリストファー・ロス
音楽:ローラ・ロッシ
出演:アンディ・サーキス
   リース・シェアスミス
   ジェニファー・エリソン
   スティーヴン・オドネル
   デヴィッド・レジェノ
   ダグ・ブラッドリー
   スティーヴン・バーコフ

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落ち着かない様子で山小屋へやって来た中年男2人

風采の上がらない彼ら、実は誘拐犯だった

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ワルになりきれないマフィアの用心棒デヴィッド(A・サーキス)

その弟で情けないくらいのダメ男ピーター(R・シェアスミス)

 これは面白い。『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのゴラム役や『キング・コング』('05)のコング役でもお馴染みのモーション・キャプチャー俳優アンディ・サーキスの主演作。マフィアのボスの娘を誘拐して身代金を奪おうとした間抜けな男たちが、人里離れた農場で残忍な連続殺人鬼に遭遇してしまうという『ショーン・オブ・ザ・デッド』タイプのホラー・コメディである。
 主人公はうだつの上がらないデヴィッドとピーター、アンドリューの中年男3人組。デヴィッドとピーターは兄弟で、アンドリューはマフィアの親分アーニーのバカ息子だ。彼らはアンドリューの腹違いの妹トレイシーを誘拐し、多額の身代金を巻き上げようとする。それぞれに、今のどん底生活から抜け出したい一心だったからだ。ところが、長いこと裏社会で生きてきたデヴィッドはいいにしても、女房の尻に敷かれっぱなしのダメ男ピーターと世間知らずで脳みその足りないアンドリューが次から次へと信じられないようなヘマをやらかし、しまいにはトレイシーがピーターを誘拐して山里の隠れ家を脱走してしまう。追いつ追われつで近隣の農場へとたどり着いた主人公たち。ところが、そこは地域一帯を恐怖に陥れている連続殺人鬼の巣窟だった…。
 本作の見どころは、ホラー・コメディでありながらも決してホラーとコメディを一緒くたにしていない点にあるだろう。ちょうど、モンティ・パイソンのキャラクターが『悪魔のいけにえ』の世界に迷い込んでしまったようなものと言えば分りやすいだろうか。つまり、登場人物そのものは極めてコミカルなのだが、彼らが置かれたシチュエーションは紛れもなくシリアスなホラーなのである。その辺は、『ショーン・オブ・ザ・デッド』よりもかなり徹底している。
 また、登場するキャラクターの描き方も絶妙だ。冷静で頭はいいものの世渡りが下手っクソで、マフィアの用心棒でありながら悪人になりきれないデヴィッド。そんな兄に対して子供の頃から劣等感を抱いてきたピーターは、小心者なくせにプライドだけは人一倍高く、口は達者だが何をやらせてもダメ。しかも無駄なくらいに生真面目な堅物で、兄貴と違って自分はまともな仕事をして家庭も持っているというのが唯一の誇りなのだが、ブルドッグのような女房には全く頭が上がらない。一方のアンドリューというのも、マフィアのボスを父親に持っていながら…というよりも、だからこそなのかもしれないが、自分一人では何もできない世間知らずのバカ息子。やることなすことスキだらけで、しかも常に間違った選択肢ばかり選んでしまう。本作はそんな彼らをただ単に笑えるだけのおバカ・キャラではなく、情けないくらいにダメだけどどこか憎めない負け犬集団としてしっかりと描いているところがいい。
 そんな彼らが必死の形相でヘマをやらかしまくる前半は文字通り抱腹絶倒。血みどろのスプラッターが炸裂する後半では、極限状態の中でようやくデヴィッドとピーターのわだかまりが解けていく過程がちょっと感動的に描かれるのだが、もちろんハッピーエンドで丸く収まるようなはずもなく。そんなバカな!という悲惨で皮肉なオチが待っているクライマックスがまた爆笑必至だ。
 ただ、ちょっと残念だったのは、アンドリューの異母姉妹トレイシーを早い段階でさっさと殺してしまったこと。このトレイシーというのがまた、誘拐事件の被害者としてはあまりにも凶悪でクレイジーなキャラクターなのだ。ベビーフェイスの可愛らしい顔をしているくせに、口を開けば“このオ○ンコ野郎、てめえのキンタマひねり潰してぶっ殺したろか!”と罵詈雑言を吐きまくり、誘拐犯であるピーターたちがちょっとでもスキを見せれば殴るわ蹴るわ頭突くわの暴れん坊ぶりを発揮。殺人鬼と遭遇してからも、自分が生き残るためなら手段を択ばないという見上げたビッチなのだが、あっけなくシャベルで頭を真っ二つにされてしまう。作り手としては後半戦を兄弟のサバイバル劇にしたかったのであろうことは分かるのだが、そこへこの殺人鬼並にサイコなトレイシーを絡めたらもっと面白くなったのではないかと思うのだが。
 とにもかくにも、ホラーは好きだけどコメディが混ざるとちょっとねえ…というホラー・ファンにもおススメできる一本。個人的には『ショーン・オブ・ザ・デッド』よりお気に入りだ。もちろん、モンティ・パイソンなどのブラックな英国コメディが好きだという人も十分楽しめることだろう。

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誘拐されたマフィアの娘トレイシー(J・エリソン)は凶暴なサイコ・ギャル

世間知らずでオツムの弱いアンドリュー(S・オドネル)も共犯

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アンドリューの運んできた身代金の中身はティッシュだった

覆面マスクのチョイスまで失敗したアンドリュー

 舞台は山里の小さなバーナビー・コッテージ。2人の中年男が落ち着かない様子で小屋に入ってくる。一人はマフィアの用心棒デヴィッド(アンディ・サーキス)、もう一人はその弟のピーター(リース・シェアスミス)。2人はデヴィッドのボスであるアーニー(スティーヴン・バーコフ)の娘トレイシー(ジェニファー・エリソン)を誘拐してきたのだ。温かいお茶を飲んで気分を落ち着けた彼らは、風邪でもひかれたら困るというピーターの意見でトレイシーを車のトランクから小屋の2階へと移すことにする。
 ところが、ピーターがボーっとしているスキにトレイシーが目を覚ましてしまい、強烈な頭突きと足蹴りで彼をボコボコにしてしまう。顔中が痣と血だらけになったピーター。さらに、デヴィッドだと声で正体がバレてしまうため、代わりにピーターがアーニーへ身代金を要求する電話をかけるのだが、そこで彼はついついデヴィッドの名前を出してしまい、その上またもやトレイシーに騒がれてしまう。
 足手まといになるばかりの弟に頭を抱えながらも、なんとか大金を手に入れる手はずが出来たことで安心するデヴィッド。子供の頃から決して仲がいいとは言えない2人だったが、それぞれにまとまった金が必要な事情があった。デヴィッドは裏社会から足を洗って静かな余生を送ること、そしてピーターは相続税を払えずに手放した亡き母親の家を買い戻すこと。
 一方、アーニーは出来そこないの息子アンドリュー(スティーヴン・オドネル)に身代金を運ばせることにする。実は、アンドリューはデヴィッドと秘かに組んでおり、身代金を山分けして高跳びするつもりだった。親分のバカ息子として周囲から嘲笑の的にされるのが嫌だったのである。ところが、アーニーは息子の裏切りをとっくに見抜いていて、韓国人と中国人の殺し屋コンビ、マック・リー(ローガン・ウォン)とチュン・ヨー(ジョナサン・チャン=ペンスリー)に息子を尾行させていた。というのも、アンドリューは行き付けの美容院の美容師スティーヴン(サイモン・シャッツバーガー)に誘拐計画の一部始終をペラペラ喋っていたのだ。
 待ちに待った身代金が来ました!とばかりに喜ぶデヴィッド、ピーター、アンドリューの3人。ところが、バッグの中身はティッシュペーパーだった。なんで中身を確認しなかったのかと怒るデヴィッド。アーニーは殺し屋たちに誘拐犯を抹殺させ、娘を救出するつもりだったのだ。ところが、マック・リーとチュン・ヨーの2人は森の中で何者かに襲われてしまう。
 こうなったら銀行口座に身代金を振り込まるしかない。だが、ヤクザ者のデヴィッドは銀行口座を持っておらず、ピーターの口座はおっかない女房の名義なので使えない。もちろん、間抜けなアンドリューは自分の口座番号など覚えいるはずもなく。そこで、デヴィッドは亡き母の口座を使おうと考えるのだが、通帳がピーターの家にあるため番号はすぐには分からない。そこでピーターは恐る恐る自宅へ電話をかけて妻から母親の口座番号を聞き出したのだが、トレイシーの叫び声にビックリして携帯電話を水たまりへ落してしまった。残念ながらアンドリューの携帯はバッテリー切れ寸前。これでは身代金要求の電話がかけられない。しかも、騒ぎ出したトレイシーを抑えつけようと2階へ駆け上がった3人だったが、アンドリューは顔が丸出しになる変な覆面マスクを着用したがために素性がバレテしまい、パニクったピーターはそもそも覆面マスク自体を忘れたもんだから、結局のところ全員がトレイシーに顔ワレしてしまった。
 なんでこんなバカどもと組んだのかと後悔先に立たずのデヴィッドだったが、いまさら身代金を諦めるわけにはいかない。仕方なく、彼は村の公衆電話まで車を走らせ、そこからアーニーに電話をかけた。すると、村人たちがデヴィッドの周りにゾロゾロト集まってくる。バーナビー・コッテージに泊まっているのか?と訊ねる老人(ダグ・ブラッドリー)は、あの近辺では夜はむやみに出歩かない方がいいと忠告する。
 コッテージへ戻ったデヴィッドは、床で失神しているアンドリューを発見。どうやら彼の留守中にトレイシーが再び暴れ出し、根性も腕っぷしもひ弱なピーターとアンドリューは太刀打ちが出来なかったらしい。トレイシーはアンドリューを殴り倒し、泣き叫ぶピーターを拉致してコッテージを脱走してしまったのだ。デヴィッドはアンドリューを連れて2人を追うことにした。
 その頃、ピーターを引き連れて森を進んでいたトレイシーは、広大な農場へとさしかかった。どうやら人が住んでいるらしい。ここなら電話があるだろうと踏んだ彼女は、嫌がるピーターを無理やり引っ張って農家の中へと入っていく。だが、そこは見るからに奇妙で不気味な場所だった。家の中は散乱しており、壁には住人のものらしき家族写真が数えきれないほど張られている。だが、その顔はみんな恐怖に引きつっていた。
 キッチンの地下階段から物音がするのを聞いたピーター。怯える彼を尻目に階段を覗き込んだトレイシーだったが、次の瞬間に脇腹を出刃包丁で刺されてしまう。犯人は顔面が醜く変形した巨体の農夫だった。命がけで逃げ回るピーターとトレイシー。だが、殺人鬼を前にしても口の減らないトレイシーは、顔の口から上をシャベルで切り落とされて即死。足のつま先を切り落とされたピーターは激痛と恐怖で泣き叫びまくり、その声があまりにもうるさいもんだからシャベルで頭をガツンと殴られて気絶してしまった。
 それからしばらくして、ピーターの足取りを追ってきたデヴィッドとアンドリューが農場へと到着する。納屋で日記や写真なを発見したデヴィッドは、ここの住人だった農夫が事故で醜い姿になり発狂してしまったことを知る。その納屋の奥には、ミイラ化したり腐敗した人間の生首が多数。いったい何があったんだ…と思った瞬間、2人は巨体の殺人鬼に襲われる。つるはしで太ももを刺されて悶絶するデヴィッド。一人だけこっそり逃げようとしたアンドリューは鍬に顔面をぶつけてしまい、殺人鬼に追いかけられて馬小屋へと逃げ込む。だが、携帯で父親に電話をかけようとしたところを捕まってしまい、胴体から背骨ごと頭を抜き取られて殺される。
 その頃、お互いに生きていることを確認し合ったデヴィッドとピーター。見上げると夜空には数えきれないほどの星が光り輝いている。こんな風に兄弟2人で空を見上げたのなんて、いったいいくつの時以来だろうか。振り返ってみれば、お互いに意地を張って無駄な喧嘩ばかりしてきた。もう仲直りしてもいい頃じゃないか。…なんて感傷に浸っている場合じゃない。殺される前になんとかここを逃げ出さねば。家の中で電話を探す2人だったが、そこへ殺人鬼が戻ってきてしまう…。

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夜は一人で外を出歩かないようにと警告する村人たち

山小屋ではデヴィッドの留守中にトレイシーが大暴れ

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ピーターを拉致して近隣の農家へたどり着いたトレイシー

いきなり脇腹を包丁で刺されて唖然とする

 演出と脚本を手掛けたのは、イギリスの若手監督ポール・アンドリュー・ウィリアムス。マフィアに追われる母娘の逃避行を通して、若者の性や児童買春の実態を描いた社会派スリラー“London to Brighton”('06)でエジンバラ国際映画祭の新人監督賞などを獲得して高く評価され、今年はヴァネッサ・レッドグレーヴやテレンス・スタンプを主演に迎えたコメディ・ドラマ“Song for Marion”の公開も控えている注目の映像作家だ。
 その“London to Brighton”でも組んだクリストファー・ロスが撮影監督を担当。編集のトム・ヘミングスや音楽のローラ・ロッシ、製作のケン・マーシャルも、“London to Brighton”以来ウィリアムス監督作品の常連となったスタッフだ。また、『ドライビングmissデイジー』('89)や『JFK』('91)、『グラディエーター』('00)などのセット装飾を手掛けたクリスピアン・サリスが美術デザインを、『ブラザーズ・オブ・ザ・ヘッド』('05)のマリアンヌ・エイジャートフトが衣装デザインを、『ディセント』('05)や『ドゥームズデイ』('08)のポール・ハイアットが特殊メイクデザインを担当している。
 ちなみに、最後の最後にダメ押し的なオチが付いているので、スタッフ&キャストのクレジット・ロールが終わるのを待つように。まあ、そんなに大したオチでもないのだけれど(笑)。

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床下の通路から姿を現した醜悪な殺人鬼(D・レジェノ)

ピーター大パニック!

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シャベルで顔を真っ二つにされて殺されたトレイシー

ピーターを探して農場へやって来たデヴィッドとアンドリュー

 さて、冒頭でも述べたように『ロード・オブ・ザ・リング』三部作や『キング・コング』でお馴染みの名脇役アンディ・サーキスが主人公デヴィッド役で登場。他にも『猿の惑星:創世記』('11)のシーザー役やアニメ『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』('11)など、代表作の殆どが素顔を見せることのない役柄ばかりな彼だが、ここでは出来の悪い弟に腹を立てながらも突き放すことの出来ないヤクザな兄貴を悲哀たっぷりに演じており、改めて巧い役者だなと感心させられる。
 一方、とことんまで情けなくて滑稽で、なおかつ性格的にも問題多々ありで、にもかかわらずなぜか憎めないピーター役を演じているのは、テレビの人気コメディ・ドラマ『リーグ・オブ・ジェントルマン 奇人同盟』('99〜00)の脚本家兼俳優としてイギリスでは有名なコメディアン、リース・シェアスミス。この人、『ショーン・オブ・ザ・デッド』にも出ているのだが、これがもう主演のサーキスを喰ってしまうくらい抜群に巧い。気難しいくせに肝っ玉の小さいピーターの神経質なビビりっぷりや、パニクった時のしどろもどろな慌てっぷり、半べそかきながら逆ギレする姿など、とても演技とは思えないほど絶妙。彼がいなければ本作の面白さも半減していたに違いない。
 間抜けなデブキャラのアンドリューを演じているスティーヴ・オドネルは、『コナン・ザ・グレート』をリメイクした“Conan the Barbarian”('11)でも重要な役を演じているイギリスのコメディアン。また、彼らに誘拐される凶悪ギャル、トレイシー役には元アイドル歌手のジェニファー・エリソンが扮しており、放送禁止用語連発で暴れまくっている。
 そのほか、『ハリー・ポッター』シリーズの狼人間フェンリール・グレイバック役で知られるデヴィッド・レジェノが殺人鬼役、『ヘルレイザー』シリーズのピンヘッド役が有名なカルト俳優ダグ・ブラッドレーが村の老人役、『ランボー2』('85)や『ビバリーヒルズ・コップ』('84)の悪役で鳴らしたスティーブン・バーコフがマフィアのボス、アーニー役で顔を出している。

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つるはしで太ももを一撃されたデヴィッド

こっそり逃げようとしたアンドリューは鍬の柄に頭をゴツン

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束の間の静寂の中で兄弟のわだかまりが解けていく

アンドリューの首を背骨ごと引っこ抜いて雄たけびを上げる殺人鬼


 

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