The 5th Musketeer (1979)

 

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(P)2004 Columbia/Tristar (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:1/104分/製作:オーストリア・西ドイツ

映像特典
なし
監督:ケン・アナキン
製作:テッド・リッチモンド
原作:アレクサンドル・デュマ
脚本:ジョージ・ブルース
脚色:デヴィッド・アンブローズ
撮影:ジャック・カーディフ
音楽:リズ・オルトラーニ
出演:ボー・ブリッジス
   シルヴィア・クリステル
   ウルスラ・アンドレス
   コーネル・ワイルド
   レックス・ハリソン
   ホセ・ファーラー
   イアン・マクシェーン
   ロイド・ブリッジス
   アラン・ヘイル・ジュニア
   ヘルムート・ダンティン
   オリヴィア・デ・ハヴィランド

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ボー・ブリッジス(フィリップ/ルイ14世)

コーネル・ワイルド(ダルタニアン)

レックス・ハリソン(コルベール)

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ホセ・ファーラー(アトス)

アラン・ヘイル・ジュニア(ポルトス)

ロイド・ブリッジス(アラミス)

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シルヴィア・クリステル(マリア・テレサ)

ウルスラ・アンドレス(デ・ラ・ヴァリエール夫人)

イアン・マクシェーン(フーケ)

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ヘルムート・ダンティン(スペイン大使)

オリヴィア・デ・ハヴィランド(マリア)

 レオナルド・ディカプリオ主演の『仮面の男』(98)の原作としても知られるアレクサンドル・デュマの小説を、『素晴らしきヒコーキ野郎』(65)や『モンテカルロ・ラリー』(69)で有名なイギリスの名匠ケン・アナキンが映画化した作品。
 さらに、撮影には『黒水仙』(47)でオスカーに輝いたジャック・カーディフ、音楽には『世界残酷物語』(62)でオスカーにノミネートされたリズ・オルトラーニ。そして、キャストにはレックス・ハリソンやコーネル・ワイルド、オリヴィア・デ・ハヴィランド、ホセ・ファーラーなどの大御所に加え、シルヴィア・クリステルにウルスラ・アンドレスという2大セックス・シンボルを起用した超豪華な顔ぶれ。
 これだけの強力なスタッフ・キャストに恵まれた作品にも関わらず、なぜ日本未公開に終ってしまったのか・・・?と、はなはだ疑問に思ってしまうところだが、本編を見ればそれも納得。賑やかなだけで映画作品としてのまとまりには著しく欠けており、単なるスターの顔見せ映画に終始してしまったという印象だ。

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ダルタニアンと三銃士のもとを訪れたコルベール

そこへ国王の手先が乱入

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バスチーユへ投獄されたダルタニアンたち

鉄仮面を被せられて幽閉されるフィリップ

 舞台は17世紀後半のフランス。老齢に達したダルタニアン(コーネル・ワイルド)のもとを、ルイ14世の側近コルベール(レックス・ハリソン)が訪れる。ダルタニアンはアトス(ホセ・ファーラー)、アラミス(ロイド・ブリッジス)、ポルトス(アラン・ヘイル・ジュニア)の三銃士たちと共に、フィリップ(ボー・ブリッジス)という若者をかくまっていた。
 実は、このフィリップこそルイ14世の双子の兄であり、権力争いを恐れた母アンヌ(オリヴィア・デ・ハヴィランド)とコルベールによって、ダルタニアンたちに預けられたのだ。久しぶりにフィリップと再会したコルベールは、勇敢な剣術士へと成長した彼の姿を見て喜ぶ。
 ところが、コルベールの後を尾行してきた軍隊が隠れ家を襲撃。捉えられたダルタニアンたちはバスチーユへと投獄されてしまい、フィリップは鉄仮面を被せられた上で幽閉されてしまった。
 その頃、我がままで浪費家のルイ14世(ボー・ブリッジス二役)は、デ・ラ・ヴァリエール夫人(ウルスラ・アンドレス)という愛人がありながら、裕福なスペインの王女マリア・テレサ(シルヴィア・クリステル)と政略結婚することで財政難を乗り切ろうとしていた。しかし、国民の王家に対する反発は日増しに強くなっており、いつ革命が起きてもおかしくない状況だ。
 そこで、彼は財務長官フーケ(イアン・マクシェーン)の入れ知恵で、国王暗殺事件を自作自演しようと思いつく。事件を反王党派の陰謀だとでっち上げ、反対勢力を一掃しようというのだ。その身代りとなるのがフィリップだった。
 ルイ14世の格好をさせられて、マリア・テレサを出迎える式典へと向ったフィリップ。もちろん、彼は国王とフーケの悪だくみなど一切知らない。桟橋に仕掛けられた爆薬が爆発し、辺りはたちまちパニックに陥る。フーケの差し向けた暗殺団がフィリップを殺そうとするが、逆に彼の見事な剣術によって一網打尽にされてしまった。フィリップの正体を知らない民衆は国王を英雄として讃え、この機に乗じて彼はバスチーユに捕えられている囚人全員に恩赦を与えた。
 かくして釈放されたダルタニアンたちは黒幕がフーケと知り、コルベールの協力でベルサイユ宮殿からフィリップを救い出す。マリア・テレサとお互いに愛し合うようになったフィリップだったが、自らの正体を告げずに彼女の前から立ち去る。
 一方、ルイ14世とフーケはマリア・テレサと対立するようになり、彼女のお目付け役であるスペイン大使(ヘルムート・ダンティン)を暗殺。さらに、マリア・テレサを強引に誘拐しようとする。間一髪のところでダルタニアンたちに救出された彼女は、フィリップと再会を果たした。2人はお互いの愛を確認し合うが、フーケのスパイに捕まったフィリップは再びバスチーユへと幽閉されてしまう・・・。

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ヴェルサイユで権力を誇るデ・ラ・ヴァリエール夫人

ルイ14世はデ・ラ・ヴァリエール夫人に夢中だ

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フィリップを自分の身代りにするルイ14世

国王の影武者として式典に現れたフィリップ

 デュマの原作ではルイ14世もフィリップもそれぞれ人間味のあるキャラクターとして描かれているが、ここではルイ14世が完全なる悪人で、フィリップは勇敢な剣術士という設定。フーケも原作ではルイ14世から粛清の対象になり、アラミスと組んで王家にたて突いたりするのだが、ここではルイ14世を影で操る黒幕的存在として描かれている。
 その他、フィリップがダルタニアンと三銃士に育てられていたり、原作では狡猾な野心家のコルベールが善人だったり、ルイ14世がスペイン王女と政略結婚しようとしたりと、かなり大胆な脚色が加えられている。ディ・カプリオ版の『仮面の男』とも全く違うストーリー展開だ。
 実は、本作がベースにしているのは、ジェームズ・ホエール監督、ルイス・ヘイワード主演による映画“The Man in the Iron Mask”(39)。この39年版でジョージ・ブルースが手掛けた脚本を、『ファイナル・カウントダウン』(80)や『イヤー・オブ・ザ・ガン』(91)のデヴィッド・アンブローズが新たに脚色している。
 基本的には非常にシンプルなストーリー。ところが、映像化された作品は、なぜだかやたらと分かりづらい。というのも、豪華な出演陣それぞれに見せ場を与えようとしているため、とにかく本筋とは関係のない余計な描写やサブプロットが多すぎるのだ。それゆえに、しょっちゅう話が横道へと逸れてしまい、物語がどの方向へ進もうとしているのか全く分からない。
 しかも、方向性が分からないのはストーリーだけではない。明朗快活な剣劇アクションなのか、それとも重厚な歴史ドラマなのか。その両方の要素を盛り込もうとしたケン・アナキンの演出は、結局どっちつかずの中途半端なものになってしまっている。しかも、出演者が老優ばかりなので、肝心のアクション・シーンにもいまひとつキレがない。
 恐らく、オールスター・キャスト映画に実績があり、『史上最大の作戦』(62)や『バルジ大作戦』(65)といった大規模なアクション映画を得意としていたことからケン・アナキン監督が起用されたのだろうと思うが、残念ながら全てが裏目に出てしまった格好だ。もともとアナキン監督はライトな演出が持ち味なので、題材そのものが向いていなかったのかもしれない。その点、歴史ドラマ的な悲壮感を強調した39年版は、ホエール監督の重厚な演出スタイルと脚本が見事にマッチしていたと言えよう。

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ルイ14世は反対勢力の一掃を目論んでいた

仕組まれたクーデターで命を狙われるフィリップ

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フィリップはクーデターの鎮圧に成功する

その様子を苦々しく見つめるフーケ

 また、アカデミー賞の特別名誉賞まで受賞している大御所ジャック・カーディフによるカメラ・ワークも精彩がない。特にアクション・シーンのまとまりのなさは致命的で、かなり乱雑な印象を受ける。クロースアップをメインにした画作りもテレビ・ドラマみたいで、全体的に安っぽいB級感が漂うのは残念だ。
 一方、リズ・オルトラーニによる音楽スコアは、マックス・スタイナーやディミトリ・ティオムキンを彷彿とさせる往年のハリウッド・スタイル。オルトラーニらしさには欠けるものの、出来栄えとしては決して悪くはない。
 その他、『ナイル殺人事件』(78)や『スーパーガール』(84)のマルコム・クックが編集を、『卑怯者の勲章』(64)などで3度オスカー候補になったエリオット・スコットが美術デザインを、『冒険者たち』(70)や『レッド・サン』のトニー・プエオが衣装デザインを、『スターウォーズ』シリーズや『スーパーマン』シリーズのピーター・ダイアモンドがスタント指導を手掛けている。

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フーケが黒幕と知ってベルサイユへ乗り込むダルタニアンたち

マリア・テレサとフィリップがお互いに惹かれあう

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ルイ14世を対立するマリア・テレサ

フーケとルイ14世は強引な手段に出ようとする

 主人公フィリップとルイ14世の一人二役を演じているのは、『恋のゆくえ/ファビュラス・ベイカー・ボーイズ』(89)でも御馴染みのボー・ブリッジス。弟ジェフに比べるとかなり遅咲きだったわけだが、確かに若かりし頃の彼は存在感が薄い(笑)本当に普通のお兄ちゃんという感じで、朴訥とした雰囲気が持ち味ではあるものの、主演クラスにはちょっと不向きといった印象だ。本作も残念ながらミス・キャスト。共演の大御所スターたちに存在感負けしている。
 ダルタニアン役を演じているのは、『楽聖ショパン』(45)でオスカー候補になった名優コーネル・ワイルド。『戦うロビン・フッド』(45)など剣劇アクションも得意で、『剣豪ダルタニアン』(53)ではダルタニアン役も演じていた。
 三銃士のリーダー格アトス役には、『シラノ・ド・ベルジュラック』(50)でアカデミー賞を受賞した名優ホセ・ファーラー。どちらかというと重厚な悪役の多かった人だが、ここでは珍しく軽妙な演技を見せてくれている。
 さらに、アラミス役にはボー・ブリッジスの父親であるロイド・ブリッジス。主にB級映画で活躍した人だったが、テレビ初期のドラマ『潜水王マイク・ネルソン』でお茶の間の人気スターとなった。また、ポルトス役には『スプリングフィールド銃』(52)などの西部劇スター、アラン・ヘイル・ジュニアが扮している。
 一方、フィリップやダルタニアンの力となるルイ14世の側近コルベール役を演じるのは、オスカーを受賞した『マイ・フェア・レディ』(64)や『アンナとシャム王』(46)、『ドリトル先生不思議な旅』(67)などで有名な大スター、レックス・ハリソン。敵味方の間を賢く渡り歩く知恵者役をユーモラスに演じていて巧い。
 スペイン大使役を演じているヘルムート・ダンティンは、『ミニヴァー夫人』(42)や『生きるべきか死ぬべきか』(42)などでナチス将校役を得意としたドイツ人俳優。映画プロデューサーとしても知られ、親友サム・ペキンパー監督の『ガルシアの首』(74)や『キラー・エリート』(75)を手掛けている。これが遺作だったようだ。
 そして、本作で一番の儲け役なのが、フーケ役を演じているイアン・マクシェーン。最近ではドラマ『デッドウッド』でゴールデン・グローブ賞を受賞したり、ウディ・アレンの『タロットカード殺人事件』(06)や『光の六つのしるし』(07)で高く評価されたりと、日本での知名度も上がってきた俳優だが、イギリスでは60年代から映画と舞台の両方で活躍する名優として知られている人物。インテリジェントなセックス・アピールの持ち主で、本作のフーケ役でも妖しげな色っぽさを醸し出して抜群の存在感を放っている。
 一方、女優陣ではデ・ラ・ヴァリエール夫人役のウルスラ・アンドレスが印象的。さすがは元祖ボンド・ガール。その女王様然とした貫禄とセックス・アピールは相変わらず強烈そのもので、お色気シーンのサービスもバッチリだ。
 お色気といえば、スペイン王女マリア・テレサ役として元祖“エマニエル夫人”のシルヴィア・クリステルが登場。ただ、当時は『エアポート'80』(79)や『0086笑いの番号』(80)などでハリウッド映画へ進出し、脱ソフト・ポルノ路線を目指していた時期だけに、肝心のセックス・アピールもかなり控えめ。かといって、女優としての実力があるわけでもないので、ウルスラ・アンドレスに比べると貫禄負けしてしまっている印象は否めない。
 最後に、フィリップとルイ14世の母親であるマリア役として、『風と共に去りぬ』(39)のメラニー役でも御馴染みの大女優オリヴィア・デ・ハヴィランドが姿を見せる。といっても顔見せ程度のチョイ役なので、あっという間に消えてしまうのだが。
 とまあ、役者の顔ぶれを眺めている分には飽きない。ハリウッド黄金期を彩ったスターたちがまだ存命中だったからこそ実現したキャスティングだ。そのノスタルジーを理解できる映画ファンであれば、意外と楽しめてしまうのではとも思う。

 

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