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資本主義ロシアを象徴するスーパー・スター

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 例のテレビ番組ドタキャン事件で、日本ではすっかり悪評が定着してしまったタトゥー。そのせいか、今年の夏の来日時には名古屋のライブ・イベントに客が全く入らず、仕方なくイベントをキャンセルするというハプニングに見舞われた。しかも、マスコミは“またもやタトゥーがドタキャン”と大袈裟な報道をしたために、さらにイメージが悪化する羽目に。実際には、ちゃんとお客にはアナウンスがされていて、別のライブへ招待するというフォローも行われていたのだが、その辺りは全く報道されずじまい。ちょっとフェアとは言えないだろう。しかし、逆に言うと、それだけ彼女たちが日本では嫌われてしまったとも言える。
 基本的に、ボクはアーティストはその作品で評価するべきであって、個人がどういう人柄なのかという事は別にして考えるべきだとは思う。だいたい、芸術家の大半は気難しい変わり者だから、そんな事を気にしてはおれまい。しかし、比較的日本人はアーティストの作品と人格を混同して考える傾向が強い。才能のある人は人格も素晴らしくあって欲しい、と思うのは人情だが、残念ながら世の中にはパーフェクトな人間などいない。どこか欠落していて当たり前なのだ。

 しかも、タトゥーの悪評については特に不公平なように思う。だいたい、彼女たちが番組をドタキャンしたのは彼女たちの判断ではなく、プロデューサーであるイワン・シャポヴァロフの指示であり、ジュリアとレーナはそれに無理やり従わされただけだった。彼女たちの言動の殆どが、彼の書いたシナリオ通りに演じられていたといっても過言ではない。シャポヴァロフは商売人としてはそれなりに才能があったものの、その人格にはかなり問題が多い人物だった。デビュー当時の“同性愛デュオ”というイメージは彼が推し進めた路線であり、実は全くのヘテロセクシュアルである女の子たちに同性愛を演じさせるという売り方は、セクシュアリティを偏ったイメージで商業的に利用するという点でゲイ・コミュニティからの批判・反発も強かった。“世の中には未成年のセックスに興奮する連中が沢山いるんだ。俺も未成年が大好きだしね。”とイギリスの雑誌インタビューで開き直っていたシャポヴァロフだが、金になるのであれば何をしても構わないという彼の考え方はソヴィエト崩壊後のロシアという国を象徴しているようにも思う。
 資本主義への移行に追いついていく事が出来ず、経済的に破綻してしまったロシアに対して世界各国から提供された物資が、その輸送の過程でことごとく奪い去られ闇マーケットに流れてしまったのは有名な話だ。その後の、マフィアの勢力拡大や汚職成金の誕生、クレムリン内部の腐敗などなど、ロシアという国のモラルの崩壊と拝金主義の横行は甚だしい。こうしたロシアの状況を理解していれば、シャポヴァロフの戦略を特に奇異に感じることもないだろう。
 さらに、我々が誤解しているのはタトゥーが女の子のデュオ・グループだという認識である。実は、タトゥーはジュリアとレーナという2人の女の子をフロントに置く音楽プロジェクトであり、その背後にはボリス・レンスキーというスポンサーがいる。プロデューサーも、スタジオ・ミュージシャンも、ソングライター陣も、そしてジュリアとレーナの2人も、全てタトゥーというプロジェクトのためにレンスキーが雇ったメンバーに過ぎない。ゆえに、ちょっと羽目を外しすぎたシャポヴァロフはレンスキーによってクビにされてしまったのだ。タトゥーの実態というのは、ボリス・レンスキーが外貨を稼ぐために投資して開発させた“商品”といっても過言ではない。
 このように、タトゥーというプロジェクト自体がソヴィエト崩壊後のロシアを象徴する存在とも言えるだろう。

 だが、一方でタトゥーの音楽性の高さは誰もが認めるところである。ノスタルジックでちょっと切ないメロディとエレクトリックで幻想的なサウンド。ポップな親しみやすさと前衛的な実験性のバランスも絶妙な作品の数々は、どこか80年代のUKやヨーロッパのテクノ/ニュー・ウェーブ系サウンドを彷彿とさせる。ファースト・アルバムはもとより、より芸術性を高めたセカンド・アルバムも各国で軒並み好セールスを記録している。ただし、ファースト・アルバムが国内盤だけで100万枚以上を売った日本では、セカンド・アルバムもオリコン初登場こそ6位と好調だったものの、トータル・セールスは前作を大きく下回ってしまった。日本人はイメージ先行型であるとはよく言われるが、このタトゥーの凋落ぶりなどはそのいい例だろう。
 それはともかく、音楽的な完成度の高さというのは、チャイコフスキーやストラヴィンスキーを生み出した芸術大国ロシアの文化的な豊かさを如実に物語っている。ロシアの歴史というのは民衆の苦難の歴史でもあるが、社会情勢の厳しい時代や国ほど優れた芸術を次々と生み出すもの。緊張感のない安定した社会からは、人の心を動かすパワーを持った芸術は生まれないのだ。
 このように、タトゥーは極端な商業主義と優れた芸術性が共存しているという意味で、非常にロシア的なアーティストと呼んでいいだろう。ちなみに、ボク個人としては音楽における商業主義というのは否定されるべきではないと思う。少なくとも、その音楽が商業ルートに乗って流通するのであれば、逆に商業主義でなくてはならない。そもそも、音楽を広く大衆の耳に届けようと思うのであれば、商業主義を貫かねばならないはずだ。商業主義とはすなわち、大衆に受け入れられる音楽を大衆の耳に届くように発信するという事。昔からよく商業主義的な音楽は云々という偏屈で非現実的な輩がいるが、商業主義を否定するのであればCDやライブは全て無料でやるべきだし、そもそも不特定多数に対して発表するべきではない。ビジネスと芸術性は共存できるものである。それを否定して孤高の芸術家ぶるのはただの傲慢であり、所詮は自己満足に過ぎない。それでもなおかつ、商業ルートで売るというのであれば、それは大いなる偽善と呼ぶべきだろう。
 ただ、勿論それにも倫理的な境界線というのはあって、例えば新譜発売日になると予め仕込んだサクラ部隊が都内のCDショップでCDを買い漁りまくってヒット・チャート1位に送り込んでしまう日本の某芸能プロダクションのやり方などは、明らかにおかしい。そこまでいくともう商売ではなく情報操作、もしくは詐欺である。資本力があれば何をしても構わない、というのであれば、それは商業主義の腐敗以外の何ものでもない。シャポヴァロフも、そうした倫理的境界線を越えてしまった一人なのだ。

 シャポヴァロフを解雇したタトゥーだが、現在はメインの作曲担当であるセルゲイ・ガロヤンを中心にした活動体制を取っている。8月の末にはユニヴァーサル・ミュージックとの契約を解消した彼らだが、来年の発売に向けてサード・アルバムの準備に取り掛かっている。

 

200_PO_VSTRECHNOI.JPG REMIXES.JPG YA_NE_GLOTAYU.JPG DANGEROUS_AND_MOVING.JPG

200 On The Counter (2001)

Remixes (2003)

I Don't Swallow (2002)

Dangerous and Moving (2005)

(P)2002 Universal Music (Russia) (P)2003 Universal Music (Russia) (P)2002 Hit Records (Russia) (P)2005 Universal Music (Russia)
1,Klouny
2,30 Minut
3,Doschitai Do Sta
4,Zachem Ya
5,Nas Ne Dogonyat
6,Ya Tvoya Ne Pervaya
7,Robot
8,Malchik Gei
9,Ya Tvoi Vrag
10,Ya Soshla S Uma
11,30 Minut (Moscow Grooves Institute Remix)
12,Malchik Gei (That Black Remix)

produced by Ivan Shapovalov
1,All The Things She Said (Blackpulke Remix)
2,All The Things she Said (Marks Buzzin Remix)
3,All The Things She Said
   (Running and Spinning Remix)
4,All The Things She Said
   (Extension 119 Club Dub)
5,Not Gonna Let Us (Larry The Electroclash Mix)
6,Not Gonna Let Us
   (Richard Morels Pink Noise Vocal Mix)
7,Not Gonna Let Us (Thick Dick Vocal)
8,Not Gonna Let Us
   (Dave Aude Remix Velvet Club)
9,30 Minutes (Extension 119 Club Dub)
10,Ne Ver, Ne Boisa (Eurovision 2003)
11,Malchik Gay (That Black Remix)
12,Show Me Love (Extended Version)
1,Ya Ne Glotayu
2,Malchik Gei (Tatu vs Ruki Vverh)
3,Nas Ne Dogonyat (Tatu vs Prodigy)
4,Krik (Fly Dream Remix)
5,Klouny
6,Ya Tvoya Ne Pervaya
7,Zachem Ya
8,Ya Soshla S Uma
9,Nas Ne Dogonyat
10,Doschitai Do Sta
11,30 Minut
12,Ya Tvoi Vrag
13,Robot
14,Malchik Gei
15,Nas Ne Dogonyat (HarDrum Remix)
16,30 minut (HarDrum Remix)

1,Dangerous and Moving (Intro)
2,All About Us
3,Cosmos (Outer Space)
4,Loves Me Not
5,Friend or Foe
6,Gomenasai
7,Craving )I Only Want What I Can't Have)
8,Sacrifice
9,We Shout
10,Perfect Enemy
11,Obezyanka Noi
12,Dangerous and Moving

executive producer : Boris Renski
produced by Trevor Horn,Sergei Galoyan, Dennis Ingoldsby, Martin Kierszenbaum, Robert Orton, Ed Butler, T.A.Music

 今更どうこう言うまでもない、彼女たちのデビュー・アルバムのロシア盤ですね。恐らく、世界で最も売れたロシア語の音楽CDでしょう。まるで少女マンガを思わせる繊細な音世界が非常に魅力的で、曲によっては明らかにユーロ・ディスコだったりするのに、とてもトンガって聴こえるのは不思議。オタク文化的精神が脈づいているとも言える。ジュリアとレーナのボーカルは、叫ぶよりも囁いた方が圧倒的に説得力がある。  日本でも独自編集版としてリミックス・アルバムがリリースされましたが、それとは若干選曲の異なるロシア盤がこれ。ただし、ロシア盤でも2CD+1DVDの3枚組と、この1枚バージョンと2種類存在する様子。しかも、もしかしたらこれも海賊版・・・?という疑念を拭えなかったりするのがロシア盤の怖さなんすよねえ・・・(^^; リミックスの仕上がりについては、本当に可もなく不可もなく。個人的にはテクノ/ノイズ炸裂の#5がオススメ。  ロシアのコンピレーション専門レーベルとして有名なHit Recordsからリリースされたベスト盤。とはいえ、これも正規盤と認識していいのか不明です。ロシアの人気男性グループのヒット曲とマッシュ・アップしてしまった#2やプロデュジーのヒット曲とマッシュ・アップした#3など、ロシア以外では入手困難なレア・トラックが収録されています。さらに言うと、タイトル・トラックの#1はタトゥーの作品リストにはない曲。未発表デモの流出か!?としたら海賊盤の可能性大ですよね(^^;  ファースト・シングルとなった#2が、あまりにも“All The Things She Said”にソックリなのにちょっと面食らいますが、それ以外は前作より楽曲的にもサウンド的にもスケール感と深みを増したアルバム。ロック色も強くなってますね。個人的に大好きなのは、ユーリズミックスのデイヴ・スチュアートが書いて、スティングがベースを担当した#5。切ない哀愁感とクールなペシミズムが混在した素晴らしい作品です。カーペンターズのリチャードが書いた#6も非常に美しく幻想的な出来映え。

LYUDI.JPG ALL_ABOUT_US.JPG FRIEND_OR_FOE.JPG GOMENASAI.JPG

Disabled People (2005)

All About Us (2005)

Friend or Foe (2005)

Gomenasai (2006)

(P)2005 Universal Music (Russia) (P)2005 Universal Music (Taiwan) (P)2005 Universal Music (France) (P)2006 Universal Music (EU)
1,Lyudi Invalidi (intro)
2,Novaya Model
3,Obezyanka Nol
4,Loves Me Not
5,Kosmos
6,Ti Soglasna
7,Nichya
8,Vsya Moya Lyubov
9,All About Us
10,Chto Ne Hvatayet
11,Lyudi Invalidi

produced by T.A.Music, Martin Kierszenbaum, Sergei Galoyan,Dennis Ingoldsby,Robert Orton
1,Dave Aude Big Room Vocal 8:01
2,Dave Aude Vocal Edit 4:12
3,Dave Aude Big Club Dub 8:16
4,Dave Aude Big Mixshow 5:39
5,Dave's Acid Funk Dub 8:20
6,Stephane K Radio Mix 4:04
7,Stephane K Extended Mix 6:26
8,Stephane K Guitar Dub Mix 4:42
9,The Lovermakers Mix 4:54
10,Giam As You Mix by Guena LG 6:27
11,Giam As You Radio Mix by Guena LG 3:51
12,Sunset in Ibiza Mix by Guena LG 8:29
13,Sunset in Ibiza Mix by Guena LG 4:25
1,Glam As You Mix by Guena LG 7:15
2,Lenny Bertoldo Club Mix 7:31
3,L.E.X. Massive Dub 7:54
4,Morel's Pink Noise Dub 6:53
5,Lenny Bertoldo Dub 8:19

produced by Martin Kierszenbaum & Robert Orton
#1 remixed by Guena LG
#2&#5 remixed by Lenny Bertoldo
#3 remixed by DJ Eddie & Luigi Gonzalez
#4 remixed by Richard Morel

1,Comenasai
2,Cosmos (She Wants Revenge Remix)
3,Craving (I Only Want What I Can't Have)
  (Bollywood Mix)
4,Gomenasai Video

produced by Martin Kierszenbaum & Robert Orton
#2 remixed by She Wants Revenge
#3 remixed by Jatin Sharma

 こちらはセカンド・アルバムのロシア語バージョン。とはいえ、単に言語をロシア語に変えただけの内容ではなく、#6、#7、#10なんかはロシア語バージョンにしか収録されていない楽曲です。また、#4は英語バージョンに収録されているものとは全く違ったリミックスが施されており、ファンなら両方買わざるを得ない仕組みになっています。ということで、なかなか上手い商売なんじゃないでしょうか(笑)。  UKチャート8位を筆頭に、ヨーロッパ各国では軒並みトップ10に入る大ヒットを記録したセカンド・アルバムからのファースト・シングル。こちらは台湾のみで制作された13バージョン入りのプロモーション用CDシングル。非売品です。ハードでタイトなエレクトロ・ファンクに仕上がった#5、ジョルジョ・モロダーを彷彿とさせるミュンヘン・サウンド風のテクノ・ファンク#7、メランコリックで幻想的なトランス・ハウス#12辺りがオススメ。  こちらはフランスでリリースされた5バージョン入りのマキシ・シングル。インドネシアのチャートでは1位を記録し、一部の国でもトップ10ヒットとなったものの、イギリスでは48位と奮いませんでした。が、楽曲としては素晴らしい名曲です。リミックスの中では、ウルトラ・ヘヴィーで無駄のないハード・ハウスに仕上がった#3がベストな出来映え。この曲も13バージョン入りのプロモ盤が存在するんですよね・・・。欲しいのだ。  ヨーロッパのみでリリースされた“Dangerous and Moving”からのサード・シングル。タイトル・トラックはアルバム・バージョンと同一です。#2のリミックスは可もなく不可もなく。トランス風のエレクトロ・ハウスです。アイディア賞ものなのが#3で、とてもドリーミーでエキゾチックなエレクトロ・ボリウッド・サウンドに仕上がっています。かなり好きかも。

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