タルカン Tarkan
ターキッシュ・ポップの帝王
今やトルコが世界に誇るスーパー・スターである。2005年には製作進行中のニュー・アルバムの音源がネット流出してしまうという事件が起きている。当初夏に世界発売が予定されていたアルバムは延期されてしまい、10月に入ってようやく先行シングル“Bounce”が、そして2006年4月にアルバム“Come Closer”が発売されるに至った。これなどは、彼の人気の高さ、注目度の高さが逆に証明されてしまった出来事と言えるだろう。トルコ歌謡のエキゾチズムとインターナショナルなポップ・センスを兼ね備えたユニークな音楽性、端正な顔立ちと濃厚なセックス・アピールの醸し出すカリスマ性。ここ数年、ヨーロッパを中心に世界マーケットでも高い注目を集めているターキッシュ・ポップだが、そのきっかけを作ったタルカンの功績の大きさは計り知れない。
タルカンは本名をタルカン・テヴェットール(Tarkan
Tevetoglu)という。タルカンという名前は古代トルコの有名な王様に起源があり、60年代には漫画のヒーローの名前にも使われている。生年月日は1972年10月17日。西ドイツのフランクフルトに移民の息子として生まれた。当時のドイツには好景気を背景に多くのトルコ人が職を求めて移り住んで来ていた。最近では、この移民2世に当たる世代のアーティストがトルコとヨーロッパをつなぐ架け橋として活躍するようになって来ているのは注目に値するだろう。
さて、幼い頃からヨーロッパの文化を吸収して育ったタルカンだったが、13歳の時に一家はトルコに戻ってしまう。イスタンブールで音楽を学んだものの、トルコの生活になかなか馴染めなかった彼はドイツの大学に進学する事を真剣に考えていたという。そんな時に知り合ったのが、トルコのレコード会社“Istanbul
Plak”の重役Mehmet
Sogutoglu。デモ・テープを送ったところ、即座に契約が成立した。
1992年にリリースされたデビュー・アルバム“Yine
Sensiz(君なしでふたたび)”は、トルコ音楽界の女王セゼン・アクスが全面協力した作品で、新人としては異例の75万枚というセールスを記録する。さらに、94年にリリースされたセカンド・アルバム“A-Acayipsin(素敵な君)”は200万枚という驚異的な枚数を売り上げ、ターキッシュ・ポップスとしては初めてヨーロッパでも75万枚を売り上げるヒットとなった。
こうして瞬く間にトップ・スターとなったタルカンだったが、加熱する一方のファンの熱狂から距離を置くため、94年にニューヨークへ移住する。大学で英語を習得する一方で、アトランティック・レコードの創設者であるトルコ人Ahmet
Ertegunと知り合い、全米進出への野望も芽生えるようになった。
97年に帰国したタルカンは、サード・アルバム“Olurum
Sana(君のためなら死んでもいい)”をリリース。ファン待望の3年ぶりの新作ということもあり、実に450万枚という桁外れのセールスを記録。これは、トルコ・ポップス史上2番目の快挙だという。
その圧倒的な人気に後押しされ、シングル“Simarik(甘やかされて)”がユニバーサル・ミュージックを通じてヨーロッパで発売されたところ、これが大ヒットを記録。ベルギーでヒット・チャート1位を記録した他、ドイツやフランス、オランダ等でもトップ5に入る大ヒットとなった。この曲はオーストラリア出身の女性歌手ホリー・ヴァランスによって“Kiss
Kiss”としてカバーされ、イギリスやアメリカ、日本で大ヒットした。ちなみに、日本ではタルカンのオリジナルが「Chu!
Chu!は恋の合言葉」として発売されたものの注目されるには至らず、ホリー・ヴァランスのバージョンがカバーだという事を知らないリスナーもかなり多かった。
このヒットを受けて、セカンド・アルバムとサード・アルバムを編集したアルバム“Tarkan”が世界発売されている。こちらもヨーロッパを中心に爆発的なヒットとなった他、南米でも好調なセールスを記録した。
しかし、この頃タルカンはトルコ国内で大きなトラブルに見舞われていた。トルコには徴兵制度があるのだが、この時期に音楽活動を中断するわけにはいかなかった彼は兵役を拒否し、そのためにトルコの市民権を剥奪されてしまったのだ。しかし、99年8月にトルコを見舞った大地震の救援金として1600万ドルを寄付したことで、28日間の兵役と罰金だけでお咎めなしとなったのだった。
2001年には4枚目のアルバム“Karma”をリリース。200万枚というセールスを記録し、改めて健在ぶりをアピールした。2002年のワールド・カップではトルコ・チームの応援テーマ曲も担当。さらに、2003年にリリースしたアルバム“Dudu(女性)”はロシアでも100万枚のセールスを記録。ロシアでもタルカン・ブームが吹き荒れた。
そして2006年4月。タルカンにとって初の英語によるフル・アルバム“Come
Closer”がヨーロッパ及び南米で同時リリースされた。先述したAhmet
Ertegunが中心となってセールス・プロジェクトが組まれ、全米リリースも実現。しかし、今のところアメリカでは目立ったアクションはなく、非英語圏アーティストによる全米進出の難しさを改めて思い知らされている。アメリカで成功するためにはアメリカに住んで毎日のようにメディアに顔を出す必要があると言われるが、タルカンの今後の動向に大いに注目したいところだ。
“Simarik”のプロモ・クリップ ココ で見れます!
“Kuzu Kuzu”のプロモ・クリップ ココ で見れます!
“Dudu”のプロモ・クリップ ココ で見れます!
“Bounce”のプロモ・クリップ ココ で見れます!(カッチョイー!)
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Tarkan (1999) |
Simarik (1999) |
Bu Gece (1999) |
Kuzu Kuzu (2001) |
(P)1999 Universal Music (Argentina) | (P)1999 Motor Music (Germany) | (P)1999 Universal Music (Germany) | (P)2001 Istanbul Plak (Turkey) |
1,Simarik 2,Olurum Sana 3,Kir Zincirlerini 4,Sikidim (Hepsi Senin Mi?) 5,Salina Salina Sinsice 6,Ikimizin Yerine 7,Inci Tanem 8,Don Bebegim 9,Basina Bela Olurum 10,Gul Doktum Yollarina 11,Unut Beni 12,Beni Anlama 13,Delikanti Caglarim 14,Simarik (Long Version) produced by Mehmet Sogutoglu |
1,Radio Edit 3:10 2,Malagutti Remix 4:48 3,Long Version 3:55 4,Extended Malagutti Version 7:00 produced by Mehmet Sogutoglu #2 & #4 remixed by DJ Techno G. |
1,Club Remix 5:33 2,Radio Version 3:53 3,DJ Tomcraft Remix 6:10 4,Smash Vocal Mix 3:48 5,Extended Version 5:29 6,Acoustic Version 3:49 7,Original Version 5:25 produced by Mehmet Sogutoglu #1 remixed by Ch. Magniez #2,#5 & #6 produced by Laurent Marimbert. #4 produced by Michel Nachtergaele |
1,Original Version 3:50 2,D'Evrim Mix 5:43 3,Kivanch K. Mix 8:36 4,Ozinga Mix 8:43 5,Akustik Version 3:40 produced by Ozan Colakoglu & Tarkan #2 mixed by Devrim Karaoglu #3 mixed by Kivanch K. #4 mixed by Ozan Colakoglu,Murat Matthew Erdem,Ulas Agce #5 mixed by Murat Matthew Erdem,Ulas Agce |
タルカンの記念すべき世界デビュー盤。セカンド・アルバムとサード・アルバムから選曲した13曲に、シングル#1のロング・バージョンが収録されている。殆どの楽曲がタルカン自身による作詞・作曲。全編トルコ語による世界進出というのは凄い事だが、そのため洋楽=英語という固定観念の強い日本ではいまひとつ話題にならなかった。トルコ歌謡特有のエキゾチックなメロディと、世界共通のクラブ系サウンドの融合というのは大正解。トルコ音楽入門用にもオススメです。 | タルカンの名前を世界に知らしめたメガ・ヒット・シングル。アラビックなオリエンタル・ビートに、“チュッチュ”というキス音が絡むセクシーなダンス・ナンバー。むちゃくちゃキャッチーで遊び心に溢れた作品です。ただし、ハウス・リミックスはいまひとつの出来。BPMの速さと共に濃厚なエロさが薄まってしまってます。ちなみに、作曲に参加したのはトルコ音楽界の女王セゼン・アクス。ホリー・ヴァランスが英語でカバーする際、アクスが勝手に権利を売ってしまった事から二人は袂を別ったとのこと。 | 世界進出第3弾としてヨーロッパでリリースされたシングル。97年のサード・アルバムに収録されていた楽曲です。もともとはオリエタル・トランス系の作品で、#2や#5はオリジナルに忠実な出来栄え。#1ではさらにアラブ風の幻想感を盛り込んだ壮大なトランス・アンセムに、#3はダブに近いアンダーグランド・ハウスに仕上がってます。#4は#1のエディット・バージョン的な作り。#6はアコースティック・バージョンというよりは、バラード・バージョンと呼んだ方が良さそう。全体的にそつない感じですね。 | これはカッコいいです。濃厚なトルコ歌謡の世界にファンキーなオリエンタル・ビートを融合しているという点では“Simarik”の延長線上にあるものの、更に厚みを増したゴージャスでパワフルなサウンド・プロダクションは秀逸。よりコアなワールド・ビート的アプローチを聴かせてくれます。コシのあるグルーヴィーなガラージ・ハウスに仕上げた#3、スペイシーでスピード感のあるハード・トランスに仕上げた#4、フラメンコ風の哀愁感溢れるスパニッシュ・バラードに仕上げた#5などリミックスも最高。 |
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Dudu (2003) |
Bounce (2005) |
Bounce (2005) |
Bounce (2005) |
(P)2003 Istanbul Plak (Turkey) | (P)2005 Istanbul Plak (Turkey) | (P)2006 Urban/Universal (Germany) | (P)2006 EMI (Russia) |
1,Dudu 4:35 2,Bu Sarkilar Da Olmasa 4:26 3,Gulumse Kaderine 3:47 4,Sorma Kalbim 4:35 5,Uzun Ince Bir Yoldayim 4:57 6,Dudu (Ozan Colakoglu Remix) 4:51 7,Gulumse Kaderine (Devrim Remix) 5:18 8,Bu Sarkilar Da Olmasa (Devrim Remix) 5:52 9,Dudu (Ozgur Buldum Remix) 3:54 10,Gulumse Kaderine (Murat Matthew Erdem Remix) 4:54 produced by Tarkan & Ozan Colakoglu. |
1,Bounce (Original) 3:43 2,Bounce (Pacifique) 3:44 3,Bounce (Ozinga) 3:40 4,I Wanna Hear Love Speak (SHHH) (Devrim) 3:50 5,Bounce ( Kerim & Devrim) 4:20 6,I Wanna Hear Love Speak (SHHH) (Original) 3:35 7,Bounce (N.Y. - L.A.) 3:45 Bounce produced by Devrim Karaoglu & Tarkan SHHH produced by Billy Mann & SUPAFLAYAZ. #3 remixed by Ozan Colakoglu #4 remixed by Devrim Karaoglu #5 remixed by Kerim & Devrim Karaoglu |
1,Original Mix 3:43 2,Don Candiani Reggaeton Remix 3:17 3,DJ Altay Indu Mix 3:31 4,Pacifique Replay Remix 3:06 5,DJ Altay Oriental Mix 3:44 6,Armand Van Helden Mix 6:56 produced by Devrim Karaoglu & Tarkan. #3 & #5 produced by DJ Altay #4 produced by Ken Deranteriassian & Dexter Simmons #6 remixed by Armand Van Helden |
1,Bounce 2,I Wanna Hear Love Speak (SHHH) (Original) 3,Ayrilik Zor (Original) 4,Bounce (Trip Hop Version) 5,Ayrilik Zor (Serkan Dincer Mix) 6,Bounce (Ozinga) 7,Gulumse Kaderine (Murat Matthew Erdem Remix) 8,Ayrilik Zor (Murat Matthew Erdem Mix) 9,Bounce (Pacifique) 10,Ayrilik Zor (Avera Rekiam Muzigi Version) 11,Bounce (N.Y. - L.A.) 12,Ayrilik Zor (Serkan Dincer Mix 2) 13,I Wanna Hear Love Speak (SHHH) (Devrim) 14,Ayrilik Zor (Ozingo Melankoli Version) 15,Gulumse Kaderine (De Guiche Magic Radio Mix) 16,Hay Hay (feat. Nazan Oncel) |
5曲の新曲とリミックス・バージョンで構成された5枚目のオリジナル・アルバム。より大胆にトルコの民族楽器を取り入れた音作りが刺激的でクール。この翌年に同郷のセルタブがユーロビジョン・ソング・コンテストに優勝し、ギリシャのデスピナ・ヴァンディやヘレナ・パパリツォウなど汎地中海系サウンドのブームが訪れますが、その先駆的作品とも言えるでしょう。ちなみに、本作には未収録ですが、ロシアのNeomasterによる“Dudu”の超アッパーなハウス・リミックスも秀逸です。 | タルカンの最高傑作と呼んでもいい究極のオリエンタル・ダンス・ナンバー。グルーヴィーでヘヴィーなロウ・ビートに、トルコの民族楽器のエキゾチックな音色がねっとりと絡む作品で、濃厚なセックス・アピールを発散しまくりです。ヒップ・ホップやレゲトンのファンにもオススメできるアンダーグランドな魅力満載。カップリングの#4と#6も更にレゲトン的アプローチの強い作品ながら、ちょっと“Simarik”を意識しすぎて2番煎じ的な印象を残してしまうのが残念。いずれにせよ、猛烈にオススメの1枚。 | こちらは、今年に入ってリリースされたヨーロッパ盤シングル。一番のオススメは#2でしょう。むちゃくちゃファンキーでカッコいいレゲトン・ミックスです。また、DJ Altayによる#3ではボリウッド・サウンドにも挑戦。ワールド・ビート・ファンは大満足の内容に仕上がってます。ただし、Armand Van Heldenによるハウス・ミックス#6は余計だったかも。タルカンとハウスというのは、あまり相性が良くないみたいですね(^^; |
こちらはロシア編集の企画盤。しかし、何故か発売元がEMIということで、もしかしたら海賊盤かもしれません。基本的にはトルコ盤シングルの内容に加えて、2005年にトルコで携帯電話のCMに使用されたシングル“Ayrilik Zor”のリミックスとアルバム“Dudu”に収録されていた“Gulumse Kaderine”のリミックスを詰め込んだもの。即席感の強い企画ものですが、ファンなら是非とも持っておきたい1枚ではあります。特に#15はかなりレアなリミックスです。 |
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Come Closer (2006) |
(P)2006 Megaliner Records (Russia) |
1,Just Like That 2,In Your Eyes 3,Why Don't We (Aman Aman) feat.Wyclef Jean 4,Mine 5,Over 6,Start The Fire 7,SHHH 8,Bounce 9,Come Closer 10,Don't Leave Me Alone 11,Shikidim 12,I'm Gonna Make U Feel Good 13,Mass Confusion 14,Touch 15,If Only You Knew produced by Pete "Boxta" Martin, Brian Kieruf, Josh Schwartz, Tarkan,Billy Mann, Supaflyas, Devrim Karaoglu,Lester Mendez,etc. |
タルカンにとって初の英語フル・アルバム。こちらもロシア盤ですが、ちゃんとした正規盤ですので(苦笑)。大半をロンドン、ロサンゼルス、ニューヨークでレコーディングしているものの、しっかりとターキッシュ・ポップらしさを全面に押し出した仕上がり。ワイクリフ・ジーンをフューチャーした#3なんか、かなりインパクト強力なオリエンタル・ヒップ・ホップに仕上がっていてカッコいいです。ただ、全体的に似たような楽曲が多いのも事実で、アルバムを通して聴くのは若干辛いかも。コマーシャリズムを狙いすぎたのかもしれませんね。 |