タマラ Tamara
〜21世紀スペインを代表する歌姫〜
15才でデビューし、天才少女として注目を集めたスペインの歌姫タマラ。とても10代の少女とは思えない、落ち着いた深みのある歌声が強烈な印象を残した。あれから早くも8年、デビュー当時から貫禄のあった歌声はしなやかさと柔らかさを増し、すっかり大人の女性ボーカリストに成長を遂げている。スペインのみならずアメリカや南米でもヒットした2001年のシングル“Herida de amor(愛に傷ついて)”は、間違いなくここ10年間のスペイン・ポップスを代表する名曲と言っていいだろう。ベブ・シルヴェッティが作曲・プロデュースを手掛けたこの曲は、シルヴェッティ十八番のゴージャスなストリングスとセンチメンタルなメロディ、そしてボサノバ風のエレガントなアレンジが非常に華やかで、当時17歳の少女が歌うにはとても大人びた作品だった。恩師とも言うべきシルヴェッティが亡くなって以来、カバー曲ばかりでオリジナル作品を発表していないタマラだが、“Herida de amor”を超える名曲との出会いが待たれるところだ。
1984年6月27日、セヴィリアに生まれたタマラは、フラメンコのカンタオールとして有名な歌手フラファエル・ファリーナを祖父に持つ。メキシコのアナ・ガブリエルやルイス・ミゲルなどのボレロに影響を受けて育ち、11歳の時にテレビのオーディション番組“Menudas Estrellas”に出場して注目を集めた。12歳で地元のレコード会社と契約したタマラは、ラジオやテレビを中心に活躍するようになった。彼女の大人びた歌声を聴いて強い感銘を受けたベブ・シルヴェッティ(ルイス・ミゲルのプロデューサーでもあった)の招きで、99年マイアミにあるシルヴェッティのスタジオでファースト・アルバムをレコーディング。ユニヴァーサル・レコードと契約し、ファースト・アルバム“Gracias”はスペインのみならずアメリカや南米でもリリースされた。シングル“Si nos dejan”(ホセ・アルフレド・ジメネスのカバー)が評判となり、アルバムもラテン・グラミーで4部門にノミネート。2002年にリリースされたセカンド・アルバム“Siempre”も爆発的なヒットとなり、タマラは10代にしてスペインを代表するトップ・スターの地位を確立した。
ロベルト・カルロスやフリオ・イグレシアスのトリビュート・カバー・アルバムをレコーディングしていることからも分かるように、彼女はあくまでも父親や母親の世代をターゲットにした音楽活動を行っている。昨年4月に行われたライブを収録したDVDを見ても、その観客の顔ぶれからファンの年齢層が比較的高めであることがよく分かる。特に中高年のマダム層が目立っており、日本で言うところの演歌・歌謡ポップスの歌姫的なポジションにあるのかもしれない。流行に全く左右されない音楽活動で、憧れのアナ・ガブリエルやロチオ・ドゥルカルのような長く大衆に愛されるディーバとして活躍するに違いない。
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Gracias (1999) |
Siempre (2002) |
canta Roberto Carlos (2004) |
Lo mejor de tu vida (2005) |
(P)2000 Darsha/Universal (USA) | (P)2002 MUXXIC/Universal (USA) | (P)2004 MUXXIC/Universal (Spain) | (P)2005 MUXXIC/Universal (Spain) |
1,Ayudame Dios mio |
1,Siempre ビデオ 2,Herida de amor ビデオ 3,Por mas de mil razones 4,Si faltas tu ビデオ 5,No es un capricho 6,Mienteme 7,Es nuestra despedida 8,Que nadie sepa mi sufrir 9,Como me gusta 10,Todavia produced by Bebu Silvetti |
1,Desahogo 2,El gato que esta triste y azul ビデオ 3,La distancia ビデオ 4,Abrazame asi 5,Lady Laura ビデオ 6,Detalles 7,Propuesta 8,Que sera de ti 9,Concavo y convexo 10,Tengo que olvidar 11,Emociones produced by Max Pierre |
1,La carretera 2,Hey ビデオ 3,Vuela alto 4,Como han pasado los anos 5,La nave del olvido 6,Lo mejor de tu vida 7,No me vuela a enamorar 8,Que no se rompa la noche 9,La vida sigue igual 10,Preguntale 11,Por el amor de una mujer 12,Voy a perder la cabeza 13,Me olvide de vivir produced by Max Pierre |
とても当時15才の少女とは思えない、気品と貫禄溢れる歌声が素晴らしいファースト・アルバム。アナ・ガブリエルやルセーロを思わせるような正統派ボレロ・サウンドの中にも、ヨーロッパ的なエレガンスを漂わせるのはベブ・シルヴェッティ一流のセンスでしょう。そういった意味で、ジルベール・ベコーの名曲シャンソン「そして今は」のスペイン語カバー#5は象徴的な1曲と言えるかも。深い味わいに満ちた名盤です。 | 今のところ彼女の最高傑作と呼べるのが、このセカンド・アルバムです。前作のボレロ路線を踏襲しながらも、よりエレガントに、よりロマンティックに、繊細で気品溢れるゴージャスなサウンドと歌声を聴かせてくれる素晴らしい1枚。やはりオススメは大ヒット・シングル#2ですね。突き抜けるように美しいストリングス、センチメンタルな哀愁メロディ、ボサノバのリズム、そして官能的ですらあるタマラの歌声。傑作です。 | 南米のみならずスペインやイタリア、ポルトガルでも絶大な人気を誇るブラジルのシンガー・ソングライター、ロベルト・カルロスの作品ばかりを集めたトリビュート・カバー・アルバム。名曲#5なんかも、まるで彼女のために書かれたかのような完成度の高さで、ロマンティックでエレガント、とても気品溢れるラテン・ポップス・アルバムに仕上がっています。ボレロが苦手な人にもオススメですね。 | スペインが世界に誇るスーパー・スター、フリオ・イグレシアスの作品を集めたトリビュート・カバー・アルバム。選曲はどちらかというとマニアックで、日本人にお馴染みの「ナタリー」とかは入っていません。というか、40年近くのキャリアを誇るフリオの百曲以上にも上るヒット曲の中からのセレクトなので、多少マニアックにはならざるを得ないでしょう。じっくりと安心して聴ける良質のラテン・ポップス・アルバムです。 |
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Emociones en directo (2006) |
(P)2006 MUXXIC/Universal (Spain) |
CD 1,La nave del olvido 2,La carretera 3,Lady Laura 4,Tengo que olvidar 5,Lo mejor de tu vida 6,Por el amor de una mujer 7,Concavo y convexo 8,La distancia 9,Propuesta 10,Vuela alto 11,Como han pasado los anos 12,Si nos dejan 13,Emociones 14,El gato que esta triste y azul 15,Desahogo 16,Gracias 17,Celos DVD concerto videoclips galeria de gotos |
2006年4月に行われたコンサートの模様を収録したCDとDVD2枚組の豪華盤。スタジオ・レコーディング以上に貫禄と迫力溢れるタマラのボーカルは圧巻です。スタジオで上手い人はいくらもいますが、スタジオよりもライブの方が上手いという人はなかなかいないでしょう。CDの方は初期の作品を一部カットしているので、DVDの方がフル選曲でたっぷりとライブを堪能できます。 |