96時間/リベンジ
Taken 2 (2012)

 

TAKEN2.JPG

 

 正統派のベテラン演技派俳優リーアム・ニーソンがジェイソン・ステイサムばりの肉弾アクションにチャレンジし、本国フランスはもとよりアメリカでもスリーパー・ヒット(思いがけず大成功した作品のこと)となったアクション映画「96時間」('08)の続編である。前作では人身売買組織に誘拐された娘を奪還するために花の都バリの暗黒街を暴れまわった元CIA工作員ブライアンだが、今回は自らが犯罪組織のターゲットにされてしまう。
 パリでの事件をきっかけに疎遠だった娘キム(マギー・グレイス)との関係を修復したブライアン(リーアム・ニーソン)。再婚した元妻レノーア(ファムケ・ヤンセン)と娘の住むロサンゼルスで2人のことを見守りつつ、元CIA工作員の技能を生かしたボディガードとして生計を立てている。そんなある時、レノーアが夫との不仲に悩んでいることを知った彼は、出張先のイスタンブールへと2人を招く。仕事を終えたら一緒にバカンスを楽しもうというわけだ。
 ところが、そんなブライアンを付け狙う怪しげな集団の影が。かつてパリでブライアンに息子を殺されたことを逆恨みしたアルバニア系犯罪組織のボス、ムラド(ラデ・シェルベッジア)が、復讐のために部下を連れてイスタンブールへと乗り込んできていたのだ。街中で彼らの尾行を察知したブライアンは同行したレノーアを逃がそうとするものの、慣れない異国の地で道に迷った彼女を人質に取られてしまう。その場でホテルに残った娘キムへ電話をかけた彼は、これから自分とレノーアが拉致されること、そして急いで安全な場所へ身を隠すよう指示して敵側に投降するのだった。
 かくして元妻レノーアと共にムラド一味に捕らわれてしまったブライアン。一方、ホテルへ忍び込んだムラドの部下たちによって狙われる娘キム。果たして、ブライアンはこの絶体絶命の危機を乗り越え、愛する家族を守ることができるのだろうか…!?

 …というわけで、前作では追う側だったブライアンが今度は追われる身になるという所がポイントだろうか。普段は年頃の愛娘にヒヤヒヤさせられる親バカな父でありながら、いざという時は冷静沈着かつタフなスーパー工作員という主人公のキャラが「24 -TWENTY FOUR-」のジャック・バウアーと被るのは前作と同じだが、携帯電話の向こうの娘に地図と爆弾を使わせて自分が捕らわれている場所を特定したり、免許のない娘に助手席で運転を指示しながら敵の攻撃をかわしたりといった元工作員ならではのテクニックはなかなか見応えがあるし面白い。
 危機また危機の展開にしても「24 -TWENTY FOUR-」を彷彿とさせるものがあるわけだが、92分というコンパクトな上映時間でスッキリと簡潔にまとめているストーリー運びは悪くない。下手にCGや特殊効果で派手な見せ場を作ったり政治的な陰謀めいたものを用意したりなどの大風呂敷を広げるようなことをせず、カースタントを含めた生身のノンストップ・アクションと家族愛のテーマで最後まで見せきるという姿勢は非常に好感が持てる。
 ただ、上映時間がコンパクトなだけに重量感も薄めなことは否定できない。特に「24 -TWENTY FOUR-」や「NIKITA」のように、複雑なプロットや派手なアクション、濃密な人間ドラマの揃った秀逸な連続テレビドラマに慣れてしまった昨今、90分〜2時間で物語を終えなければいけない劇場用アクション映画に物足りなさを感じるようになった観客も少なくないのではないだろうか。
 このシリーズにしても、テレビ・ドラマならもっと深く掘り下げられるだろうにと思えるような要素が数多く見受けられる。特に、最愛の息子や若い部下たちをブライアンに殺されて怒りに燃えるムラドの歪んだ愛情は重要なポイントであろう。アルバニアといえばヨーロッパの最貧国であり、治安も決して良くないことで知られている。本作に登場する組織はもちろん架空のものであるが、アルバニアのように社会情勢の厳しい国において貧しさゆえ犯罪に走る人々がいてもおかしくはない。前作に登場した人身売買組織の背後にもそういう事情を読み取らねばならないだろう。
 そうした前提があった上で、果たして自分たちが生きるために他人を犠牲にすることを正当化できるのか、そのために殺されたのならば自業自得ではないのかという疑問が頭をもたげるわけなのだが、残念ながら本作では彼らをただ得体の知れない悪人たちとしか描ききれていない。冒頭に登場するアルバニア人の母親たちの深い嘆きやムラドの激しい復讐心など、深く掘り下げることのできる題材は揃っているのだが。
 同様に、誘拐された娘を奪還するために数多くの犠牲者を出したブライアンの行動は正しかったのか、正義の名のもとに行われる殺人に正当性があるのかという点も考察されて然るべきだった。ブライアンとムラドが対峙する場面には本来そうした正義と悪の矛盾を問いただす意味があったのではないかと思うのだが、結果的に消化不良というか、煮え切らないまま終わってしまったような印象が否めない。これがもしテレビ・シリーズであれば、アルバニア側の社会背景や人間模様を織り込むことによって、より真実味のある作品に仕上がっていたのではないかと思う。
 いずれにせよ、こういう渋い大人の中年オヤジが大活躍するアクション映画が受けるということ自体は大歓迎。かつてチャールズ・ブロンソンやリー・ヴァン・クリーフの映画にシビレた世代には嬉しい。異国情緒溢れるイスタンブールのロケーションをフル活用したエキゾチックな雰囲気もいいし、前作では出番の少なかったレノーア役ファムケ・ヤンセンも今回はちょっと気の強すぎる普通のお母さんを好演して光る。肩のこらないサスペンス・アクション映画としてオススメできる一本だ。

 

戻る