シルヴィア・シドニー Sylvia Sidney
〜下町に咲いた可憐な一輪の花〜

 

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 今の映画ファンには「マーズ・アタック!」('96)で宇宙人を退治するお婆ちゃん役をやった女優さんといえばピンと来るかもしれない。1930年代のハリウッドを代表する清純派スター。つぶらな瞳の東洋人的な顔立ちが印象的な女優さんで、貧しくも美しい下町の若い娘を演じさせたら天下一品だった。その愛くるしい笑顔も素敵だったが、何よりもその大きな瞳からポロポロと流れ落ちる涙は絶品。貧しい生活や過酷な運命に翻弄される悲劇のヒロインとして絶大な人気を集め、フリッツ・ラングやウィリアム・ワイラー、ジョセフ・フォン・スタンバーグら巨匠たちに愛された人だった。
 ラングの「激怒」('36)、「暗黒街の弾痕」('37)、「真人間」('38)、ワイラーの「デッドエンド」('37)、フォン・スタンバーグの「アメリカの悲劇」('31)、ヒッチコックの「サボタージュ」('36)、キング・ヴィダーの「街の風景」('31)など代表作は数多いが、残念ながら全盛期は比較的短かった。可憐なベビー・フェイスはなぜか老けるのが早く、その容姿の衰えと共に人気も急落。戦後は脇役に転じ、60年代には半ば引退状態となってしまった。
 しかし、70年代には映画界にカムバック。73年にはアカデミー賞の助演女優賞にノミネートされ、個性的で渋い老女優として再び活躍するようになった。晩年はアクの強い老婆役を得意としていたシルヴィア。若かりし頃の純情で儚げなイメージは全く消え失せてしまっていたが、パワフルで人間味のある演技と存在感には独特のものがあった。プライベートでは歯に衣着せぬ物言いをする人だったようだが、もしかしたら素顔はかなり強い人だったのかもしれない。

 1910年8月8日、貧しいロシア系移民の娘としてニューヨークはブロンクスに生まれた。本名はソフィア・コソフ。母親はルーマニア人だったという。生後間もなく両親は離婚し、母親は彼女を連れて歯科医シグマンド・シドニーと再婚。幼い頃から大人しくて引っ込み思案だったシルヴィアを心配した両親は、彼女が女優になりたいと打ち明けると大変喜んだという。
 こうした両親の後押しもあって、彼女は25年にシアター・ギルド・スクールという演劇学校に入学。ブロードウェイで行われた学生公演の舞台に出演したところ、観客として来ていたニューヨーク・タイムスの記者に大絶賛された。これで自信をつけた彼女は本格的に舞台女優としての道を歩み、全米各地で有名劇場のステージを踏んだ。27年には舞台俳優にスポットを当てた映画“Broadway Nights”にも出演している。
 そんな彼女の、本格的な映画デビュー作がエドマンド・ロウ主演の「疑惑晴れて」('29)。証言台に立つ人々の様々な角度からの証言で主人公の無実が立証されていくという法廷ドラマで、彼女は証人の一人ヴァレリー役を演じた。
 これをきっかけに映画界へ本格的に進出したシルヴィアは、3作目に当たる名匠ルーベン・マムーリアン監督の「市街」('31)で一躍注目されることになる。これは平凡な青年(ゲイリー・クーパー)と恋に落ちたギャングの娘の苦悩を描くメロドラマで、もともとはクララ・ボウが主演するはずだった。しかし、当時のクララ・ボウは人気も落ち目で、容姿が似ている若手のシルヴィアに白羽の矢が立ったというわけだ。彼女自身、クララと比較されることに不安を覚えていたらしいが、その大きく見開かれた悲しげな瞳と確かな演技力は批評家にも絶賛され、たちまちトップ女優へと躍り出ることとなったのだ。

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「三日姫若」('34)より

「デッドエンド」('37)より

 この1931年という年は、シルヴィアにとってまさに転機だったと言えるだろう。この他にも、無実の罪に問われた若いカップルを演じた「鉄窓と花束」('31)が大ヒットを記録。また、キング・ヴィダー監督が下町に住む貧しい人々の日常を詩情豊かに描いた名作「街の風景」('31)、後にエリザベス・テイラー主演の「陽のあたる場所」としてリメイクされたフォン・スタンバーグ監督の傑作「アメリカの悲劇」('31)などに次々と主演。本人が“映画会社は私の涙で儲けた”と言うくらい、メロドラマのヒロインとして絶大な人気を誇ったのだった。
 その後も、歌わない蝶々夫人を演じた「お蝶夫人」('32)、貧困の中で幼い子供を独りで育てようと苦労する若き未亡人を演じた「ジェニイの一生」('33)、中欧のお姫様と失業中の若い娘の二役を演じたロマンティック・コメディ「三日姫若」('34)、ギャングと恋に落ちる女性の悲劇を描いた「Gウーマン」('35)、無実の罪で投獄された恋人(スペンサー・トレイシー)の身を案じる女性を演じた「激怒」('36)、夫がスパイであることを知って苦悩する若妻を演じたヒッチコックの「サボタージュ」('36)、出口のない貧困の中で幼い弟を必死になって育てる姉を演じた「デッドエンド」('37)、犯罪者として追われる身となるカップルの悲劇を描いた元祖ボニー&クライド「暗黒街の弾痕」('37)など、次々と傑作・名作に主演を重ねていった。1930年代といえば、全米を大恐慌の嵐が吹き荒れた時代。シルヴィアは、そんな厳しい時代に生きる庶民の心を代弁するヒロイン像を演じ続けたのだった。

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「東京スパイ大作戦」('45)より

“Les Miserables”('52)より

“I Never Promised You A Rose Garden”('77)より

 しかし、フリッツ・ラングと三度組んだ「真人間」('38)が興行的に失敗した辺りから人気が衰え始め、“One Third Of A Nation”('39)を最後にシルヴィアは舞台を活動の拠点とするようになる。
 それでも、1950年代まではポツポツと映画出演を続けていたが、その殆んどが日本未公開。それゆえに、日本ではすっかりその存在が忘れ去られることとなってしまった。この時代の代表作はジェームズ・キャグニーと共演した「東京スパイ大作戦」('45)、女流作家リリアン・ヘルマンをモデルにした女性記者を熱演した“The Searching Wind”('46)、ジャン・バルジャンに引き取られる少女コゼットの母親を演じた“Les Miserables”(’52)辺りだろうか。「東京スパイ大作戦」では日系人役を演じていた。
 50年代後半からはテレビと舞台ばかりとなり、映画からは完全に遠のいてしまったシルヴィア。そんな彼女のカムバック作となったのが、ジョアン・ウッドワード扮する中年主婦のミドル・エイジ・クライシスを描いた女性映画“Summer Wishes, Winter Dreams”('73)。シルヴィアはヒロインの気難しい母親を演じ、アカデミー助演女優賞にノミネートされた。その後はオールスター・キャストのテロ・パニック映画「特攻サンダーボルト作戦」('76)、反抗心の強い精神病患者を熱演した女性版「カッコーの巣の上で」とも言える“I Never Promised You A Rose Garden”('77)、悪魔の子ダミアンの大叔母を演じた「オーメン2/ダミアン」('78)、ヴィム・ヴェンダース監督のフィルム・ノワール映画「ハメット」('82)などコンスタントに映画出演を続けた。
 88年にはティム・バートン監督の「ビートル・ジュース」('88)で霊界の番人ジュノー役として登場。バートンは彼女のファンだったらしく、「マーズ・アタック!」('96)では思いがけずに世界を救う痴呆症のお婆ちゃんという大役に起用。シャーリー・マクレーンやジェシカ・タンディと共演した「迷子の大人たち」('92)でも、気が強くて口の悪い老女ベッキー役でいい味を出していた。
 ヘビー・スモーカーだったことから晩年は喉頭がんに苦しんでいたようだが、それでも98年には人気テレビ“Fantasy Island”にレギュラー出演。しかし、1999年7月1日ニューヨークにて亡くなっている。
 いまだに日本では彼女の代表作の多くが見れないというのが現状だし、アメリカでもDVDソフトなどで発売されているものは決して多くない。もし衛星チャンネルなどで見る機会があれば、是非ともチェックしてみて欲しいと思う。そのかわいらしい笑顔と、哀しげな瞳に思わず目を奪われてしまうはずだ。

 

三日姫若
Thirty Day Princess (1934)
日本劇場公開年不明/VHS・DVD共に日本では未発売

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(P)2006 Universal (USA)
画質★★★★☆音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤・5枚組ボックス)
モノクロ/スタンダード・サイズ/モノラル
/音声:英語/字幕:英語・フランス語/地域コード:1/74分/製作:アメリカ

収録作品
「三日姫若」(1934)
「接吻とお化粧」(1934)
「盲目の飛行士」(1935)
「アメリカの恐怖」(1936)
「結婚の贈物」(1936)
監督:マリオン・ゲーリング
製作:B・P・シュルバーグ
脚本:フランク・パートス
    プレストン・スタージェス
原作:クラレンス・バディングトン・ケランド
撮影:レオン・シャムロイ
出演:シルヴィア・シドニー
    ケイリー・グラント
    エドワード・アーノルド
    ヘンリー・スティーブンソン
    ヴィンス・バーネット
    エドガー・ノートン
    レイ・ウォーカー

 メロドラマが多かったシルヴィア・シドニーの主演作としては珍しいロマンティック・コメディ。中欧のお姫様がアメリカにやって来るものの、運悪く病気で倒れてしまう。そこで困った関係者がお姫様と瓜二つの売れない女優を替玉として起用するのだが・・・という他愛ないストーリーがとても楽しい一本。シルヴィアはお姫様と売れない女優の一人二役を演じている。共演は当時まだ若手の注目株だったケイリー・グラント。「ローマの休日」を思わせるラストもなかなか心憎い作品だ。

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国王(H・スティーブンソン)とカテリーナ姫(S・シドニー)

ニューヨークに到着した姫とその一行

姫の替玉を探すよう指示するグレシャム(E・アーノルド)

 物語の舞台は中欧の小さな国タイロニアから始まる。のどかで美しいタイロニア王国だが、その一方で大変な財政難に苦しんでいた。国王のアナトール12世(ヘンリー・スティーブンソン)は、欧州旅行でたまたま同国を訪れていた銀行家リチャード・グレシャム(エドワード・アーノルド)に融資を頼む。そこでグレシャムは、アメリカでの外国債募集への協力を約束する。ただし、そのキャンペーン活動にはタイロニアからの親善大使が必要だった。国王の美しい一人娘カテリーナ姫(シルヴィア・シドニー)と会ったグレシャムは、親善大使には姫が適任と判断。カテリーナも国民の生活のためならと一肌脱ぐことにする。
 豪華客船に乗ってニューヨークへとやってきたカテリーナ姫とその一行。しかし、長旅の疲れがたたってか、姫は急病で寝込んでしまう。診断の結果、全快するまでには数週間かかるという。外国債の募集キャンペーンに姫は必要不可欠。既に新聞でも大々的に報道されている。困り果てたグレシャムは、部下を総動員して姫の替玉を探させることにする。
 その頃、ニューヨークに住む売れない女優ナンシー・レーン(シルヴィア・シドニー)は、アパートの管理人に家賃を催促されて困り果てていた。不況で仕事もなく、食事するのにも事欠く始末。カフェで定食をちょろまかそうとしたナンシーは、いきなり黒服の男たちに囲まれてビックリ。ばれたと思って観念したナンシーだったが、男たちに連れて行かれたのは警察ではなくてグレシャムのオフィスだった。
 ナンシーを一目見たグレシャムは大喜びする。ナンシーはカテリーナ姫に瓜二つだったからだ。グレシャムから事情を聞き、報酬として大金を約束されたナンシーは替玉役を引き受けることにする。姫の付添い人らからタイロニアの言葉や習慣、そしてプリンセスとしての立ち振る舞いなどを徹底的に教え込まれたナンシーは、カテリーナ姫として晩餐会に出席することになる。
 その晩餐会に来ていたのが、新聞社を経営するポーター・マディソン3世(ケイリー・グラント)。タイロニア王国の外債募金はアメリカ国民の血税を無駄にするものだと批判しているポーターは、このキャンペーンにおける最大のネックだった。グレシャムはポーターを上手く説得するようナンシーに指示。その思惑通り、ポーターはたちまち姫の美しさにメロメロとなり、翌日の社説では一転して外債募金を推奨する。
 さらに、ポーターは姫のニューヨーク見物の案内役を買って出て、二人は急速に親しくなっていく。その一方で、新聞記者カーク(レイ・ウォーカー)がカテリーナ姫の素性に疑問を抱くようになる。偶然にナンシー・レーンという女優が行方不明になっていることを知った彼は、ナンシーとカテリーナ姫が瓜二つであることに気付いたのだ。新聞記事でそのことを知ったナンシーは、ナンシー・レーンとしてカークと面会し、お金に困って姿を隠していると事情を説明。さらに、わざと下品な言動を見せて何とか疑惑を晴らすことに成功する。
 しかし、今度はカテリーナ姫のフィアンセであるニコラウス伯爵(ヴィンス・バーネット)が渡米してきたものだから大変。さらに、彼女を姫と信じるポーターに対する恋心も芽生えてしまい、人知れず悩むナンシー。そんな彼女に、病の回復したカテリーナ姫がある提案をする・・・。

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売れない女優ナンシー(S・シドニー)

新聞社を経営するポーター(C・グラント)

姫の替玉を演じるナンシー

 一見すると他愛ないロマンティック・コメディだが、随所に当時のアメリカの厳しい社会状況を垣間見る事が出来る。そのファンタジーとリアリズムの適度なバランスが絶妙で、現実にはあり得ないような夢物語に説得力を与えているように思う。脚本に名匠プレストン・スタージェスが参加しているというのは大きなポイントかもしれない。代表作「サリヴァンの旅」でも甘いロマンスの中に大恐慌時代のアメリカの悲哀を盛り込んでいたスタージェスだが、本作にも同じような精神を感じ取る事が出来る。
 監督を手掛けたのはマリオン・ゲーリング。舞台演出家出身で、シルヴィアとは6本の作品で組んでいる人物だ。ゲーリングはロシアからの移民だったが、シルヴィアもロシア系ということでウマが合ったのかもしれない。ただ、映画監督としては決定的な代表作に恵まれず、ハリウッドでのキャリアも非常に短かった。本作を見る限りでも、どちらかというと脚本に忠実な演出をするタイプの人ではないかと思う。ビジュアリストというよりもストーリーテラーなのだ。
 なお、撮影を担当したのはレオン・シャムロイ。後に「海の征服者」('42)や「クレオパトラ」('63)などで4度のオスカーに輝き、「聖衣」('53)や「慕情」('55)、「王様と私」('56)、「南太平洋」('58)など数多くの名作を手掛けたカラー撮影の名手だ。

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急速に親しくなるポーターと偽お姫様

新聞記者が替玉の事実に気付いた・・・?

カテリーナ姫と面会するナンシー

 で、カテリーナ姫と売れない女優ナンシーの二役を演じるシルヴィア。全編に渡って、これもう彼女の独壇場といった感じ。とにかく、カメラは彼女を美しく、愛らしく、そして魅力的に捉えている。まさにスターの映画だ。その気品溢れる笑顔は後のオードリー・ヘプバーンに勝るとも劣らないくらい魅力的で、クライマックスの会見シーンなどは「ローマの休日」そっくり。彼女の代表作とは言えないものの、絶妙な当たり役と言って間違いないだろう。
 対するケイリー・グラントもすこぶるハンサムで、軽妙な演技にも抜群のセンスを見せる。なによりも若い!「赤ちゃん教育」('38)や「フィラデルフィア物語」('40)の頃よりも初々しさがあって、まさに好青年といった感じ。シルヴィアとも「我等は楽しく地獄へ行く」('32)、「お蝶夫人」('32)に続く3作目の共演ということで息もピッタリだ。
 アメリカ人の銀行家グレシャムを演じるエドワード・アーノルドは名作「ダイヤモンド・ジム」('35)で伝説的なギャンブラー、ダイヤモンド・ジム役を演じたスターで、「我が家の楽園」('38)や「スミス都へ行く」('39)、「群衆」('41)などフランク・キャプラ作品の常連としても知られる名優。豪快で弁の立つ政治家や犯罪者、ビジネスマンなどを演じさせたら天下一品の俳優だ。
 一方、カテリーナ姫の父アナトール12世を演じるヘンリー・スティーブンソンはイギリス出身の俳優。「海賊ブラッド」('35)や「進め龍騎兵」('36)、「放浪の王子」('37)などのコスチューム・プレイで、クセのある老貴族を数多く演じてた名脇役だった。
 なお、日本ではVHSでもDVDでも発売されておらず、恐らくテレビ放送も殆んどされていない。アメリカでは上記のケイリー・グラント初期出演作を集めたDVDボックスに収録されている。

 

激怒
Fury (1936)
日本では1937年劇場公開
VHS・DVDは日本未発売

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(P)2005 Warner Bros. (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
モノクロ/スタンダード・サイズ/モノラル
/音声:英語/字幕:英語・フランス語・スペイン語/地域コード:1/92分/製作:アメリカ

映像特典
ピーター・ボグダノビッチの音声解説
フリッツ・ラング 音声インタビュー
オリジナル劇場予告編
監督:フリッツ・ラング
製作:ジョセフ・L・マンキーウィッツ
脚本:バートレット・コーマク
    フリッツ・ラング
撮影:ジョセフ・ルッテンバーグ
音楽:フランツ・ワクスマン
出演:シルヴィア・シドニー
    スペンサー・トレイシー
    ウォルター・アベル
    ブルース・キャボット
    エドワード・エリス
    ウォルター・ブレナン
    フランク・アルバートソン
    ジョージ・ウォルコット

 大衆心理の怖さ、人間の身勝手さをこれでもかとえぐり出す痛烈な社会派復讐劇。ちょっとした誤解から誘拐犯に間違われた平凡な男。人気取りのために証拠も不十分なまま彼を犯人に仕立てようとする政治家たち。その話を鵜呑みにして暴徒と化した民衆は、彼が拘束されている保安官事務所に火をつけて殺そうとする。正義の名を借りた暴力と殺人。これがハリウッド進出第一作となるフリッツ・ラング監督は、アメリカ社会に蔓延る愚かな偽善を痛烈に批判している。この悪しきアメリカ人気質は現在も脈々と受け継がれており、それは9.11直後に高まった戦争気運を見ても分るだろう。冷静さを欠いた大衆心理ほど愚かで怖いものはないのだ。
 シルヴィアが演じるのは、殺人犯と間違われた男のフィアンセ。火に包まれた恋人を目の前にして、ショックのあまり立ちすくんでしまうシーンの、恐怖と悲しみと衝撃の入り混じった瞳が強烈に印象的だった。まさに、ラングはあのシルヴィアの“瞳”を撮りたかったに違いない。二人はこれが最初の顔合わせで、以降「暗黒街の弾痕」「真人間」と名コンビを組んでいくこととなる。

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ジョー(S・トレイシー)とキャサリン(S・シドニー)

働くために故郷へ帰るキャサリン

念願のマイ・カーでキャサリンのもとへ向うジョー

 主人公は若いカップル、ジョー(スペンサー・トレイシー)とキャサリン(シルヴィア・シドニー)。二人は愛し合っているが、お互いに貧しいため結婚が出来ないでいる。二人の住むシカゴではなかなか仕事がないため、キャサリンは結婚資金の足しにするために故郷へ戻って働くことにする。一方、ジョーは二人の弟チャーリー(フランク・アルバートソン)、トム(ジョージ・ウォルコット)と共にコツコツと働き、自分たちのガソリンスタンドを持つまでになった。
 念願のマイ・カーを手に入れたジョーは、キャサリンのもとを訪ねることにする。久々の再会に胸を躍らせるジョーとキャサリン。あともう少しで着くというところで夜を迎えたジョーは、一晩野宿をすることにする。ところが翌朝、彼は地元の保安官助手バグス(ウォルター・ブレナン)に捕まってしまった。
 保安(エドワード・エリス)の尋問を受けることになったジョー。彼のポケットにピーナッツが入っていた事に保安官は疑問を抱く。というのも、手配書に書かれている誘拐殺人犯の特徴と同じだったからだ。しかも、彼の所持金の中から身代金に使われたものと同じ通し番号の紙幣が1枚見つかった。決定的な証拠ではなかったが、地方検事が到着するまでジョーは身柄を拘束されることになる。
 だが、すっかり犯人を捕まえたつもりになった保安官助手バグスは、行きつけの床屋で自慢げに言いふらしてしまった。その噂はたちまち町中に広まり、地元の有力者たちは人気取りのためにジョーを逮捕するように保安官を説得する。しかし、証拠が十分でないことを理由に保安官は逮捕を拒否。それを知った住民たちは怒り狂い、暴徒となって“正義の制裁”を加えようとする。事態を聞いた州知事は暴徒を鎮圧すべきかどうか思案するが、自分の支持率に影響することを怖れて二の足を踏む。
 やがて、業を煮やした住民たちは保安官事務所に殴りこみ、火をつけてジョーを焼き殺そうとする。事態を知ったキャサリンが駆けつけたときには、既に保安官事務所は炎に包まれていた。満足そうに満面の笑みを浮かべる住民たち。キャサリンは格子の向こうで叫ぶジョーの姿を見て失神する。
 だが、すぐにジョーが無実であることが判明した。真犯人が逮捕されたのだ。悔しさで嘆き悲しむチャーリーとトムの前に、ボロボロになったジョーが姿を現す。あの火災の中、彼は九死に一生を得ていたのだ。復讐の鬼となったジョーは、弟たちの協力で暴動の首謀者たちを告訴することにする。証拠は、現場の様子を捉えたニュース・フィルムだった。
 ただし、ジョーが生きているという事は秘密にされた。なぜなら、殺人罪で起訴されれば極刑の可能性もあるからだ。死の恐怖を経験したジョーは、住民たちに同じ恐怖を味わせてやりたかったのだ。しかし、彼が生きているという事を知ったキャサリンは、罪を犯した人々を許すことの大切さを必死に訴える・・・。

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誘拐殺人犯の嫌疑をかけられたジョー

暴徒と化した住民を鎮めようとする保安官

牢屋の中で火に包まれるジョー

 ナチスの台頭を逃れてアメリカに渡ったばかりのフリッツ・ラングは、英語を覚えるために新聞や雑誌を片っ端から読みつくしていた。そうした中で見つけたのが、本作のアイディアとなったリンチ事件だったという。当時のアメリカは正義の名を借りた集団リンチ事件が多発し、大きな社会問題となっていた。その背景には未曾有の不景気にあえぐアメリカ社会の病理があったのだろう。人々はストレスのはけ口を求めていたのだ。本当に犯人なのかどうかということは大して重要ではなかったのである。
 本作に登場する人々も同じだ。犯罪者をつるし上げるということで、日頃のストレスや不満を発散する。相手が本当に有罪なのか、それとも無罪なのかということなど眼中にないのである。しかも、そのフラストレーションが集団の塊となってしまったもんだから手がつけられない。暴走するしかないのである。それが集団心理の怖さだ。
 さらに、自分たちが血祭りにあげた人間が無実だと知った人々は、今度は途端に保身に走る。罪の意識よりも、自分たちの身を守ることの方が勝ってしまうのだ。なかったことにしよう、神は人間の罪をお許しになる、などと都合のいい言葉を口にして。
 一方、奇跡的に助かったジョーも、復讐に燃えるあまり理性を完全に失ってしまう。素朴で真面目だった若者は今や復讐の鬼と化し、その心には人間や社会に対する恨みと嫌悪感しかなくなってしまう。
 ラングは人間の汚さ、残酷さ、醜さをこれでもかと徹底的に描いており、そのドキュメンタリーさながらの映像は揺るぎないくらいに力強い。ナチズムという集団の狂気を目の当たりにしてきただけに、その怖さを嫌というくらいに理解しているのだろう。その冷徹な眼差しには凄みさえあり、見ていて胸が痛くなるほど。いずれにせよ、ラングにとってハリウッド進出第一弾に相応しい傑作である。

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ショックのあまり呆然と立ち尽くすキャサリン

満足げに炎を見つめる住民たち

キャサリンのもとを訪れるジョーの弟たち

 そうした人間のおぞましさが次々と暴かれていく中でただ一人、理性と慈愛を象徴する存在として登場するのが、シルヴィア演じるヒロイン・キャサリンだ。法廷シーンで、住民側の弁護士の非情な追求に狼狽しながらも立ち向かう彼女の姿は本当に胸に突き刺さる。主演にしては出番が少なめだが、本作の精神を代弁する女性として最も重要な役どころだ。美しく清らかで力強いというキャラクターは、まさにシルヴィアの十八番といったところだろう。実に適役だ。
 一方のスペンサー・トレイシーの大熱演も素晴らしい。前半と後半で人間の全く別の面をパワフルに演じきって圧巻だ。MGMではギャング役などのタイプ・キャストに悩んでいたトレイシーだが、本作と「桑港(サンフランシスコ)」('36)の2本でようやく俳優としての真価を発揮し、ハリウッドを代表する演技派スターへと成長して行った。
 また、ジョーを追い詰める人々の中で唯一冷静に判断しようとする保安官役を演じているエドワード・エリスは、ウィリアム・パウエルとマーナ・ロイが主演した「影なき男」('34)でタイトル・ロールの悪役を演じたことで知られる名バイプレイヤー。独特のニヒルで渋い演技が面白い。また、ジョン・フォード映画の愉快なお爺ちゃんとしてお馴染みのウォルター・ブレナンが、粗野で愚かな保安官助手バグスを憎々しげに演じている。

 

デッドエンド
Dead End (1937)
日本では1939年劇場公開
VHS・DVD共に日本発売済(DVDは米国盤と別仕様)

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(P)2005 MGM (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
モノクロ/スタンダード・サイズ/モノラル
/音声:英語・スペイン語/字幕:英語・フランス語・スペイン語/地域コード:1/92分/製作:アメリカ

映像特典
オリジナル劇場予告編
監督:ウィリアム・ワイラー
製作:サミュエル・ゴールドウィン
戯曲:シドニー・キングスレイ
脚本:リリアン・ヘルマン
撮影:グレッグ・トーランド
音楽:アルフレッド・ニューマン
出演:シルヴィア・シドニー
    ジョエル・マクリー
    ハンフリー・ボガート
    ウェンディ・バリー
    クレア・トレヴァー
    アレン・ジェンキンス
    マージョリー・メイン
    ビリー・ハロップ
    ハンツ・ホール
    ボビー・ジョーダン
    レオ・ゴーシー
    ウォード・ボンド

 ハンフリー・ボガートが脇役時代に出演した作品としても知られる社会派の人情ドラマ。デッドエンドと呼ばれるニューヨークのスラム街を舞台に、若者たちが貧困から抜け出すために犯罪に走ってしまうという負の連鎖を描くほろ苦い作品だ。もともと舞台劇だったこともあって、物語のほとんどが街の一角で展開するものの、様々な角度からスラムの風景を切り取っていくカメラ・ワークはさすが巨匠ウィリアム・ワイラー。じんわりと心に染み入っていく名作と言えるだろう。
 シルヴィアが演じるのは、女手一つで年の離れた弟の世話をする健気な女性。懸命になって弟を立派な人間に育てようとするも、貧しさゆえの無力を痛感せざるを得ない。芯の強い彼女がふとみせる悲しげな瞳、そこから流れる大粒の涙。小さな身体で精一杯、世間と立ち向かっていこうとするヒロイン像が実に切ない。

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デッド・エンドと呼ばれるスラム街

ヒロインのドリーナ(S・シドニー)

貧しい建築家デイヴ(J・マクリー)

 舞台はイースト・リヴァーに面した下町の貧民街。古びたボロ・アパートが所狭しと立ち並び、そこには様々な人々が生活している。ところが、最近になって河の美しい眺めに目を付けた富裕層が豪邸を建てるようになり、街の一角では極端な貧富の差が見受けられるようになっていた。
 そんな豪邸を眺めながら、街の不良少年たちはギャングになって一旗あげることを夢みている。貧しくて教養のない彼らにとって、それが一番手っ取り早く貧困から抜け出す手段なのだ。少年たちのリーダー格はトミー(ビリー・ハロップ)。彼は幼くして両親を亡くし、姉ドリーナ(シルヴィア・シドニー)に育てられていた。ドリーナは弟やその仲間たちが犯罪の道に走らないようにと厳しく注意しているが、出口のない貧困の中ではどうしようもないということも理解しており、そのことで日夜思い悩んでいる。
 ドリーナには秘かに想いを寄せるデイヴ(ジョエル・マクリー)という若者がいた。彼は苦労して大学を出て建築家になったものの、この不況の中では仕事もなく、生まれ育った貧民街に舞い戻ってきてしまった。そんな彼は、豪邸に住む若い女性ケイ(ウェンディ・バリー)に心惹かれていた。何とかこの貧しさから抜け出したい彼にとって、彼女は憧れの存在だったのだ。そんなデイヴの様子を見て、ドリーナは人知れず心を痛める。
 そんな街の一角に二人の男がやって来た。そのうちの一人を見て、デイヴは男の正体に気付く。この貧民街出身で、8人の人間を殺して指名手配されているギャング、ベイビー・フェイス・マーティン(ハンフリー・ボガート)だった。逃亡するために顔を整形しているので周囲の人々は気付かないが、幼なじみのデイヴには一目で分った。マーティンは貧しい少年たちの憧れの的だ。正体をバラしたら殺すという彼の脅しに、デイヴは一切口外しないことを約束する。
 逃亡中のマーティンがこの街に立ち寄ったのには理由があった。まずは、少年時代に家を出たっきり音信不通だった母親(マージョリー・メイン)と会うこと。しかし、犯罪者となった息子を母親は心を鬼にして追い返す。次に彼は、少年時代の初恋の相手フランシー(クレア・トレヴァー)と会う。しかし、彼女にかつての面影はなく、すっかり世間ずれした売春婦に成り下がっていた。彼女にとっても、これが唯一の生きる道だったのだ。僅かに残っていたマーティンの良心は、残酷な現実を前にズタズタにされてしまう。
 一方、不良少年たちは豪邸に住む金持ちの少年フィリップから腕時計を奪い取る。怒って屋敷から出てきたフィリップの父親に腕を掴まれたトミーは、とっさにナイフで切りつけてしまう。それはマーティンから教わったストリートの処世術だった。捕まりそうになったらナイフで切りつけて逃げろと。激怒したフィリップの父親は、逃げたトミーを逮捕して少年院送りにするよう警官に命じる。少年院送りになった子供たちの殆んどが犯罪の道に走ってしまうという現実を知っているドリーナは激しく抗議するが、全く聞き入れてもらえなかった。
 やがて、街を去ることを決意したマーティンは、逃亡に必要な資金を調達するために、金持ちの少年フィリップの誘拐を計画する。それを知ったデイヴは阻止しようとするが、逆にナイフで刺されて河に落ちてしまう・・・。

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故郷に戻ってきたギャング、マーティン(H・ボガート)

弟トミー(B・ハロップ)の身を案じるドリーナ

上流階級の女性ケイ(W・バリー)に憧れるデイヴ

 前年の「孔雀夫人」('36)で初めてオスカーにノミネートされたウィリアム・ワイラー監督が、女流戯曲家リリアン・ヘルマンの脚本を得て描く下町の人間模様。情に流され過ぎない厳しさに、身の引き締まる思いがする作品だ。人々は食べていくのがやっとという日々の生活に疲れ果て、夢や希望を抱くことすら忘れている。貧しさから抜け出そうとする者は安易な犯罪の道を選び、そんな大人の背中を見て育った子供たちは非行に走る。金持ちや警官からは貧しいというだけで蔑まれ、人間としての尊厳すら踏みにじられてしまう。そうしたスラム街の過酷な現実を背景に、なんとか誇りを持って生きていこうともがき苦しむ主人公たちの姿が力強く描かれていく。
 ワイラーの演出はあくまでもリアリズム重視。フランク・キャプラだったら庶民的な感動の人情話になってしまうところだろうが、ワイラーとヘルマン女史の視線はあくまでも冷静で厳しい。貧しい建築家デイヴと裕福な女性ケイの2人はお互いに心を通じ合わせるが、デイヴを訪ねて彼のアパートを訪れたケイは、その不衛生な環境に愕然とする。ゴキブリのたかった廊下のごみバケツを見て思わず顔をしかめた彼女はアパートを逃げ出し、2度とデイヴとは口をきかなくなる。そんな彼女の姿を見かけたデイヴも、己の貧しさを恥じて思わず物陰に隠れてしまう。悲しいがな、それが現実なのだ。
 撮影を担当したグレッグ・トーランドは、オスカーを受賞した「嵐が丘」('39)や「偽りの花園」('41)、「我等の生涯の最良の年」('46)などワイルダー作品を多く手掛けている他、ジョン・フォードの「怒りの葡萄」('40)やオーソン・ウェルズの「市民ケーン」('41)でも知られる名カメラマン。狭い路地で展開するクライマックスの逃走シーンは大変な迫力だった。

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母親(M・メイン)に拒絶されるマーティン

初恋の相手フランシー(C・トレヴァー)は娼婦に

理不尽な格差に怒りを覚えるデイヴとドリーナ

 本作はフランシー役のクレア・トレヴァーがアカデミー助演女優賞にノミネートされているが、何といってもシルヴィアの美しさがダントツに際立っている。まさしく下町に咲いた一輪の花。彼女の可憐な魅力があってこそ、対極にあるクレア・トレヴァーのやさぐれた生活感がじんわりと滲み出てくるのだろう。この2人に比べると、豪邸に住む上流階級の女性ケイを演じるウェンディ・バリーの存在が完全に消し飛んでしまう。バリー自身がもともとあまり魅力のない女優だということもあって、デイヴがドリーナよりもケイに夢中になってしまう気持ちがいまいちピンと来ない。
 そのデイヴを演じるのがジョエル・マクリー。ハワード・ホークスの「バーバリー・コースト」('35)やラオール・ウォルシュの「死の谷」('49)で有名な西部劇スターで、セシル・B・デミルの傑作「大平原」('39)の二挺拳銃は本当にカッコ良かった。素朴で頼りになる男を演じさせたら天下一品で、ジョン・ウェインやゲイリー・クーパーに比べて日本での知名度が低いのは残念。本作でも人情味溢れる演技を見せている。
 そして、マーティン役を演じるハンフリー・ボガートがまたいい味を出している。ただ通り一遍等の悪人ではなく、もともと持っていた善良な心をどこかに置き忘れてしまった男だ。長年会っていなかった母親に拒絶され、初恋の想い出も無残に踏みにじられてしまい、僅かに残っていた良心は粉々に砕け散る。所詮俺の人生なんてこんなもんさ、と悟りきってしまった表情がなんとも哀しい。
 ちなみに、本作で不良少年を演じた子役たちが人気を呼び、後に“デッド・エンド・キッズ”として主演映画シリーズが作られている。

 なお、本作の日本盤DVDは正確に言うと海賊盤まがいの代物。アメリカのMGMからリリースされているものが、オリジナル・ネガを使用した正規盤になる。

 

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東京スパイ大作戦
Blood On The Sun (1945)

Les Miserables (1952)

I Never Promised You A Rose Garden (1977)

(P)1999 Roan Group (USA) (P)2007 20th Century Fox (USA) (P)2005 Buena Vista (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆ 画質★★★★☆ 音質★★★★☆ 画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤2枚組)
モノクロ/スタンダード・サイズ/モノラル
/音声:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/94分/製作:アメリカ

同時収録
「キャグニー、ハリウッドへ行く」
“The Time Of Your Life”

映像特典
“The Time of Your Life”の未公開シーン&別テイク
DVD仕様(北米盤両面ディスク)
モノクロ/スタンダード・サイズ/モノラル
/音声:英語・スペイン語・フランス語/字幕:英語・スペイン語・フランス語/地域コード:1/105分/製作:アメリカ

同時収録
「噫無情」(35年版)

映像特典
メイキング・ドキュメンタリー(52年版)
オリジナル劇場予告編(52年版)
スチル・ギャラリー(両作)
修復版比較
DVD仕様(北米盤)
カラー/スタンダード・サイズ/ステレオ/
音声:英語/字幕:なし/地域コード:1/
90分/製作:アメリカ

映像特典
キャスリーン・クィンラン インタビュー
キャスト・バイオグラフィー
監督:フランク・ロイド
製作:ウィリアム・キャグニー
脚本:レスター・コール
原案:ギャレット・フォート
撮影:セオドア・スパークル
音楽:ミクロス・ローザ
出演:ジェームズ・キャグニー
    シルヴィア・シドニー
    ポーター・ホール
    ジョン・エメリー
    ロバート・アームストロング
    ウォーレス・フォード
    ローズマリー・デ・キャンプ
    ジョン・ハロラン
監督:リュイス・マイルストーン
製作:フレッド・コールマー
原作:ヴィクトル・ユーゴ
脚本:リチャード・マーフィ
撮影:ジョセフ・ラシェル
音楽:アレックス・ノース
出演:マイケル・レニー
    デブラ・パジェット
    ロバート・ニュートン
    エドマンド・グウェン
    シルヴィア・シドニー
    キャメロン・ミッチェル
    エルザ・ランチェスター
    ジョセフ・ワイズマン
監督:アンソニー・ペイジ
製作総指揮:ロジャー・コーマン
原作:ハンナ・グリーン
脚本:ギャヴィン・ランバート
    リュイス・ジョン・カルリーノ
撮影:ブルース・ローガン
音楽:ポール・チハラ
出演:キャスリーン・クィンラン
    ビビ・アンデション
    シルヴィア・シドニー
    ロレイン・ゲイリー
    シグニ・ハッソ
    ダイアン・ヴァーシ
    スーザン・ティレル
    バーバラ・スティール
 戦前の東京を舞台に、帝国主義日本の陰謀を阻止すべく奔走するアメリカ人新聞記者の活躍を描いたアクション映画。2度のオスカーに輝く名匠フランク・ロイド監督がメガホンを取っているおかげか、日本の描写は意外とまとも。とはいえ、白人がつり目メイクして日本人に扮しているのは気になる。シルヴィアが演じているのは、日本の警察に通じている日系人女性アイリス役。いわゆるファム・ファタール的な役どころなわけだが、どうもイマイチしっくりと来ない。容姿の衰えが目立ってしまい、どこか疲れたような印象を受ける。なお、本DVDはキャグニーの弟ウィリアムの所有していたネガ・フィルムからマスターを起しており、画質はまずまずといったところ。  キャストの顔ぶれが渋めだったせいか、なぜか日本では未公開のままお蔵入りしてしまった作品。マイケル・レニーのジャン・バルジャンは、有名な35年版のフレデリク・マーチと比べても遜色ないくらいの名演。どこか陰のある暗さと貴族的な雰囲気が良いと思います。対するジャヴェール役のロバート・ニュートンも、35年版のチャールズ・ロートンよりも陰湿で執念深い感じがよく出ていて、悪役としては秀逸です。シルヴィアはヒロイン、コゼットの母親役として登場。すっかりしゃがれ声の中年女性になっていて、当時42歳ということを考えると老け込むのが早いように感じます。名匠マイルストーンの演出は手堅いものの、ベストの出来映えではないかも。  明らかに「カッコーの巣の上で」の成功を意識した作品。キャスリーン・クィンラン扮する若い精神病患者の女性と、ビビ・アンデション扮する温厚な女医との交流を軸に、精神病棟の内情を淡々と描いていく作品。社会派映画というよりは、ベルイマン風の文芸作品に近い仕上がりです。シルヴィアは反骨精神旺盛な精神病患者の老女役で登場。口汚く罵りながら暴れまくったせいで、看護師の男性に殴り倒されます。出番は少ないものの、なかなか強烈な役柄。その他、古い映画ファンなら思わずニンマリしてしまう脇役の顔ぶれが渋いですね。「天国は待ってくれる」のコケティッシュなフランス語教師役が印象的だったシグニ・ハッソが、年老いた精神病患者役で顔を出しています。

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