シビル・ダニング Sybil Danning

 

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 ジュリー・ストレインと並ぶ映画史上最高のアメコミ系グラマー女優。その彫刻のような顔立ちとサイボーグのような肉体は、まさにアメコミ・ヒロインそのもの。もともとは70年代初頭に西ドイツのソフト・ポルノで注目を集め、イタリア映画やヨーロッパで撮影されたハリウッド映画にも数多く出演するようになった。さらに、1977年には本格的にアメリカに移住し、80年代に入ると自らのプロダクションも設立。この頃から、それまでのシルヴィア・クリステル路線のしっとりとしたセクシー女優から一転、コスプレ系の肉体派アクション女優へと大胆なイメージ・チェンジを図った。出演する作品はB級アクションや低予算のホラー映画ばかりとなってしまったが、結果としてこのイメージ・チェンジは大成功。世界中に熱狂的なファンを生み出し、今やエドウィージュ・フェネッシュやパム・グリアーとも並ぶ世界的なカルト映画の女王だ。

 1947年5月24日、オーストリアはウェルスの生まれ。本名をシビル・ヨハンナ・ダニンゲルという。生まれてすぐに両親が離婚し、彼女が5歳の時に母親がアメリカ人の陸軍大佐と再婚。そのため、アメリカのニュージャージー、メリーランド、サクラメントを転々として育った。14歳から歯科医だった叔父の助手として働き始めたシビルは、16歳の時に家を出てウィーンへ。さらにザルツブルグへ移り、有名な歯科医の助手として働きながら美容学校に学んだ。卒業後、ファッション・ショーやグラビア撮影のメーキャップ・アーティストとして働くようになり、その容姿に注目した映画関係者にスカウトされることとなる。映画デビューは1968年。「美女なで切り/好色性豪伝」('71)や「人妻SEX行動専科」('72)といった、いかにもなタイトルの西ドイツ産ソフト・ポルノで人気を集めるようになった。

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イタリア映画“Red Queen Kills 7 Times”('74)より

「エアポート80」('79)でエディ・アルバートと


 さらに、リチャード・バートン主演の「青ひげ」('72)やオリバー・リード、フェイ・ダナウェイらオール・スター・キャスト出演の「三銃士」('73)に「四銃士」('74)、フレデリック・フォーサイス原作の「オデッサ・ファイル」('74)など、ヨーロッパで撮影されたハリウッド大作に次々と出演。1977年にはロサンゼルスに移住し、「サンダーボルト救出作戦」('77)や「メテオ」('79)といったオール・スター・キャストの大作映画に出演。あの「エアポート'80」('79)にも名優エディ・アルバートの若妻役でチラリと顔を出している。
 こうしてハリウッドでも引っ張りだことなったシビルだったが、いずれも役柄としては単なる色添えの脇役。女優として認められたわけではない、というのは本人も重々承知の上だった。そんな彼女の転機となったのが、フランコ・ネロ主演のイタリア産スリラー「コブラ」('80)とロジャー・コーマン製作のB級SFアクション「宇宙の七人」('80)。「コブラ」ではフランコ・ネロの恋人という大役を任せられ、「宇宙の七人」ではゴージャスでセクシーな女宇宙戦士を好演。特に「宇宙の七人」のオフビートで痛快な演技は評判が良く、多くの映画マニアに女優シビル・ダニングを強く印象付けた。

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フランコ・ネロと〜“Salamander”('81)

“Salamander”('81)より

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“Salamander”('81)より

アンソニー・クィンとF・ネロ〜“Salamander”('81)

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F・ネロとマーティン・バルサム“Salamander”('81)

クラウディア・カルディナーレ〜“Salamander”('81)


 この時期の作品で注目しておきたいのが日本未公開の政治サスペンス“Salamander”('81)。「コブラ」に続いてフランコ・ネロと共演した作品だが、何とクライディア・カルディナーレやアンソニー・クィン、イーライ・ウォラック、クリストファー・リー、マーティン・バルサムといった錚々たる大御所スターを脇に、ヒロイン役を堂々と熱演しているのだ。しかも、単なる色添え的なヒロインではない。物語の舞台はイタリア。陸軍将校の殺人事件を調べるマトゥッチ大佐(フランコ・ネロ)は、事件現場に残されたサラマンダー(伝説上の竜)の画を手がかりに捜査を進めるうち、政界・財界を揺るがす恐るべき陰謀に巻き込まれていく。シビルが演じるのは、マルトゥッチ大佐の捜査に協力するうち惹かれあっていく女性リリー役。マルトゥッチと共に政府の大物と渡り合う意思の強い聡明な女性で、シビルはスタント・シーンも自らこなしている。映画そのものは興行的にも批評的にも惨敗したものの、彼女のキャリアの上では非常に重要な作品の一つと言っていいだろう。
 さて、こうして幸先の良い(?)スタートを切った80年代は、まさにシビル・ダニング・ファンにとって黄金期とも言える時代だった。まず女囚もの「拷問(レイプ)!・美女軍団の復讐」('82)と「チェーン・ヒート」('83)では美しくも冷酷な極悪女囚役を立て続けに怪演。さらにルー・フェリグノと共にマッチョな女戦士を演じた「7人の輝ける勇者」('83)と勇者ヘラクレスの宿敵である悪女アリアドネを演じた「超人ヘラクレス」('83)では見事な肉体美を披露。初体験もの「ラブ・レッスン殺人事件」('84)では勉強よりもセックスのレッスンが得意な人妻女教師役を演じ、アンディ・シダリス監督のビキニ・アクションものの原点である「マリブ・エクスプレス」('85)ではセクシーでゴージャスな悪徳女性実業家。さらに「ハウリングU」('85)ではボンデージ・ファッションに身を包んだ狼女、「ファントム・エンパイア」('87)では地底帝国を支配するアマゾネス・クィーン、「アメリカン・パロディ・シアター」('87)では月世界を支配する女王ララと、まさにコスプレの女王とでも言うべき見事な活躍ぶり。彼女自身も自分のファン層の好みをしっかりと理解しており、かなり楽しんで仕事をこなしていたようだ。

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「マリブ・エクスプレス」('85)より

「マリブ・エクスプレス」('85)より

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「超人ヘラクレス」('83)より

「ファントム・エンパイア」('87)より


 85年には「パンサー・スクワッド−女豹軍団」でプロデューサー業に進出。「L.A.バウンティ」('89)では製作・脚本・主演の3役をこなした。しかし、1990年の6月にスタント・リハーサル中の事故で入院。重症のヘルニアを患ってしまい、車椅子生活を余儀なくされてしまう。こうして女優業を退いたシビルは、自ら社長を務める製作プロダクション、アドベンチャー・プロダクションズの経営に専念。パラマウントと専属契約を結び、低予算のアクション映画やスリラー映画の製作を手掛けている。さらに、倒産しかけたドイツのアイス・ホッケー・チームを買収して優勝に導くなど、ビジネス・ウーマンとしての才能を発揮している。

 そして2007年。シビル・ダニングは遂に女優として映画界に復帰する。その第1弾がクェンティン・タランティーノとロバート・ロドリゲスが監督する話題作「グラインドハウス」。しかも、ナチの女将校役というからファンには感涙もの!タランティーノも彼女のファンだったに違いない。そして、ロブ・ゾンビが手掛ける「ハロウィン」のリメイクにも看護婦役で出演が決定。さらには、フィギュアの発売も予定されているという。もうすぐ還暦を迎えるということで、ちょっと遅すぎたカムバックと言えなくもない。しかし、そのカルトな人気は未だに衰える事を知らず、マニア系のコンベンションでは引っ張りだこ。まだまだ活躍の場は残されているはずだ。ひとまずは、伝説の女王の復活を祝福したい。

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Salamander (1981)

(P)2004 Pathfinder Pictures (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン/モノラル/音声:英語/字幕・なし/地域コード:ALL/103分/製作:アメリカ・イタリア・イギリス

映像特典
劇場予告編
スチール・ギャラリー
監督による音声解説
フランコ・ネロ インタビュー
監督:ピーター・ツィンナー
製作:ポール・マスランスキー
脚本:ロバート・カッツ
原作:モリス・ウェスト
撮影:マルチェロ・ガッティ
音楽:ジェリー・ゴールドスミス
出演:フランコ・ネロ
    アンソニー・クィン
    マーティン・バルサム
    シビル・ダニング
    クリストファー・リー
    イーライ・ウォラック
    クラウディア・カルディナーレ
    クリーヴォン・リトル
    ポール・スミス
    ジョン・スタイナー
    アニタ・ストリンドバーグ
    マリーノ・マゼ
 大御所が揃った主要キャストの他にも、ジョン・スタイナーやマリーノ・マゼ、アニタ・ストリンドバーグなどイタリア映画マニアなら思わずニンマリしてしまう顔ぶれがあちこちに。画質もまずまず許容範囲内だし、特典も充実しています。「ジャッカルの日」みたいなスパイ・スリラーが好きな人にはオススメの1本。

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