「サーフズ・アップ」
Surf's Up (2007)

 

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2007年12月15日より全国ロードショー
オフィシャル・サイト

 

 ペンギンを主人公にしたCGアニメと言えば、昨年の「ハッピー・フィート」('06)という作品があったが、これはそのサーフィン版といった趣き。巷では二番煎じかよ・・・という声もあるようだが、これはこれでなかなか楽しい作品に仕上がっている。

 主人公はイワトビペンギンの少年コディ。南極のシバレルタウンで暮らすコディはサーファーを目指しているが、南極でサーフィンをするペンギンなど他にはいない。母親は“何を言ってるんだか・・・”とまともに相手にしてくれないし、兄のグレンはまともに仕事もしないでサーフィンに熱を上げている弟コディをバカにしている。そんな彼の心の支えは、子供の頃にシルバタウンへやって来た伝説のサーファー、ビッグ・Zの存在。いつかビッグ・Zのようなサーファーになりたいという夢を募らせながら、仕事の合間をぬっては氷のボードで波乗りに勤しんでいた。
 そんなある日、サーフィン・ワールドカップの出場者を探しに、スカウトマンのマイキーがシバルタウンにやって来る。このチャンスを逃すまいとマイキーに積極アピールするコディ。その熱意に負けたマイキーは、ワールドカップの行われる南の島ペングー・アイランドへコディを連れて帰る。ようやく夢が叶うと大喜びのコディ。同じくワールドカップに出場する変わり者のサーファー、チキン・ジョーとも意気投合する。
 さて、ペングー・アイランドに着いたコディとチキン・ジョー。そんな彼らの前に、ワールドカップ9連覇中のチャンピオン、タンクが立ち塞がる。傲慢でプライドの高いタンクは、コディが大切にしているビッグ・Zのペンダントをバカにした。これに怒り爆発のコディは、無謀にもタンクに挑戦状を叩きつける。今まで南極の小さな波しか知らなかったコディは、今まで見たことのないスケールのビッグ・ウェーブに太刀打ちできず、海の底へ真っ逆さまに。
 瀕死の状態のコディを救ったのは、ライフガードの女の子ラニだった。彼女は、森の奥にある小屋へとコディを運び、ギークという中年のオウサマペンギンに助けを求める。コディの傷の治療をするギーク。彼は、理由があって森の奥に住む、いわば世捨て人だった。コディがビッグ・Zを慕っていることを知ったギークは、自身を失った彼を励ますために立派なサーフ・ボードを作ろうと申し出る。
 ギークとサーフ・ボードの材料になる大木を運んでいたコディは偶然、静かな入江を発見する。そこはサーフィンの穴場だった。そして、彼はその入江でビッグ・Zのボードが積まれた小屋を発見して愕然とする。興奮を隠せないコディを横目に眺めるギーク。その時、コディは悟った。ギークこそ、サーフィン中に死んだと言われているビッグ・Zその人だったのだ。
 波乗りのテクニックを教えて欲しいとせがむコディに、ギークはサーフ・ボード作りの基礎から教える。それは愛情のこもった繊細な作業だった。さらに、ギークはサーフィンのテクニックよりも、波に乗ることの素晴らしさを教えようとする。
 最初はギークの意図が理解できずにゴネてばかりいるコディだったが、やがてサーフィンの真髄を少しづつ理解し始めた。サーフィンは海という大自然と触れ合うスポーツなのだと。そんなコディの姿を微笑ましく見つめるギークとラニ。実は、ラニはギークの唯一の肉親だった。
 こうして、波乗りの自信を取り戻したコディは、いよいよワールドカップ大会へと臨むことになるのだが・・・。

 最大の見所は、やはりCGならではの鮮やかでスケールの大きいサーフ・シーンだろう。中でも、ダイナミックなチューブライディングの美しさはお見事。実写で再現することが非常に難しいシーンだ。それ以外にも、森の中の草木を細部まで描きこんだCGのリアルな質感も驚かされる。かつて「トイ・ストーリー」や「バグス・ライフ」を最初に見た時も感心させられたものだったが、本当にテクノロジーの進歩は目覚しいもんだと改めて痛感。CGに関しては個人的に懐疑的な方だが、こうしてまざまざと見せ付けられると、確かに凄いわな・・・と思わずため息が漏れる。

 また、全編をワールドカップにチャレンジする新人サーファー、コディの姿を追うドキュメンタリーとして描いているのもユニークな手法。いや、ドキュメンタリーというよりも、リアリティ番組と言った方が的を得ているだろうか。カメラマンとのやり取りや、オフレコ・コメントなどが随所に散りばめられ、辛辣なブラック・ジョークも盛りだくさん。ストーリー自体が非常にシンプルなので、それらの小ネタが全体のテンポを良くするアクセントとして効果的に使われている。
 人生もスポーツも勝つことだけが全てではない、というメッセージにも全く嫌味がなく、大人から子供まで・・・というよりも、どちらかというと大人の方が楽しめる動物アニメに仕上がっていると思う。製作スタッフはディズニー及びピクサーの出身者ばかりみたいだが、子供に媚を売るような部分があまり見られないというのは好印象だ。確かに、どこかで見たような映画と言われればそうなのかもしれないが、少なくとも見終わってから気分良く映画館を後にできる作品であることは間違いない。

 なお、今回は日本語吹替え版で鑑賞したのだが、その出来の良さも意外だった。まず、コディ役を演じている小栗旬がとても上手い。アニメ慣れした声優独特の変なクセが全くない分、演技が非常に自然だということもあるのだが、細かいリアクション演技の絶妙さなんかは天性の勘というべきものだろう。人気俳優やタレントがアニメの声優に挑戦すると落胆させられる事が殆んどだが、彼の場合は声の表情も非常に豊かで、しかも嫌味が全くない。アニメ声優というよりも、洋画吹替えの声優に近いタイプの落ち着いた演技には安心感すら感じさせられる。
 しかし、一番の驚きはギーク(ビッグ・Z)役のマイク真木の演技だろう。これがもう、舌を巻くぐらいに上手い。言われるまで声の主が彼だと気付かない人も多いだろうと思う。あのノホホンとしたギークのキャラクターとマイク真木というのは、なかなか結びつかないもの。エンディングのトボけた歌にも味があって、その芸達者ぶりには全くもって驚かされること請け合いだ。
 普段は日本語吹替え版など見向きもしないタチだが、この作品に限っては是非とも日本語吹替え版で鑑賞することをオススメしたい。

 

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