サニー Sunni
ダンス・ミュージックの世界ではフリースタイルが斜陽の時代を迎え、ハウスやニュージャック・スイングが台頭した90年代初頭。わずか4年ほどで消えてしまったヒップホップ/フリースタイル系のインディペンデント・レーベル、アルファ・インターナショナル・レコードからデビューしたのが、このサニーという女性ボーカリストである。
彼女自身の素性はほぼ不明。シンガポールの出身という噂もあったが、残念ながら定かではない。ただ、その背後にいたプロデューサー・コンビは、フリースタイル・ファンにはお馴染みだろう。マーク・リジェット&クリス・バーボサ。そう、あのシャノンやジョージ・ラモーンを世に送り出した二人だ。
ファースト・シングル“Why
Did My Baby Get Over
Me”がリリースされたのは89年。ということは、ちょうどジョージ・ラモーンと同じ時期にデビューしたということになる。ただ、ジョージが“ラテン貴公子”という明確なコンセプトのもとで売り出されたのに対し、サニーはサウンド的にもビジュアル的にも全くの手探りという状態。結果的に、それが二人の明暗を分けてしまったように思える。
というのも、リジェット&バーボサの二人は彼女の売り出しに当たって、L.A.リード&ベビーフェイスのコラボレーターでもあるドウェイン・ラッドをチームに加え、ニュージャック・スイング的なアプローチを加味したのだ。その結果、当時掃いて棄てるほどいたポーラ・アブダルもどきの、B級ダンス・ポップ・アーティストが出来上がってしまったのである。
結局、これといったヒットを出せないまま消えてしまったサニー。それでも、CDアルバムまでリリースしているのだから、当時アルファ・インターナショナルはそれなりに力を入れていたのであろう。楽曲のクオリティも決して悪くはない。
特にラスト・シングルとなった“When
The Sahdes Pull Down”は、カバー・ガールズの“Show
Me”を彷彿とさせるフリースタイルの名曲。ウィスパー気味なサニーのベビー・ボイスがまた、この手のB級ダンス・ポップには珍しく上品な印象を与える。ポピュラー・ミュージックの無名墓地に埋もれてしまった人ではあるものの、個人的にはなかなか忘れがたいアーティストの一人だ。
Why Did My Baby Get Over Me
(1989) Or Lose Me
(1990) When The Sahdes Pull Down
(1990) Sunni
(1990) 1,You Could Change My Life **
(P)1990 Alpha International
(USA)
(P)1990 Alpha International
(USA)
(P)1990 Alpha International
(USA)
(P)1990 Alpha International
(USA)
side 1
1,12" Mix 6:45 ビデオ
2,Single Mix
4:04
side 2
1,Vocal Dub 5:35
2,Acappella 4:17
3,Bonus Beats
3:40
produced by Mark Liggett, Chris Barbosa & Dwayne
Laddside 1
1,Single Version
3:45
2,Extended Version 5:05 ビデオ
side
2
1,Instru,mental 4:35
produced by Dwayne Laddside 1
1,Extended Club Remix
5:33
2,Radio Edit 4:30
3,Acapella Plus 2:27
side 2
1,Shady Hip
Hop Remix 7:00
2,Organic Meltdown Mix 3:20
produced by Mark
Liggett&Chris Barbosa
2,Hand n' Glove *** ビデオ
3,When The
Sades Pull Down ** ビデオ
4,Let's Love
**
5,Why Did My Baby Get Over Me * ビデオ
6,Best
Friend's Boyfriend **
7,Or Lose Me *** ビデオ
8,Gracie
***
9,How You Love Me ***
10,Where Did I Go Right **
*
produced by Mark Liggett, Chris Barbos
a &
Dwayne Ladd
** produced by Mark Liggett & Chris Bar
bosa
***
produced by Dwayne Ladd
こちらがサニーのデビュー曲。バックトラックはまるっきりポーラ・アブダルの“Knocked
Out”ですね(笑)。やっぱりドウェイン・ラッドのカラーなのでしょうか。ただし、サニーのボーカルはポーラよりも遥かに達者です。随所に挿入されたラップもなかなかの腕前。基本的にパクリは流行歌の宿命みたいなもんですし、この手のダンス・ポップは嫌いじゃないので、ワタシとしては十分に合格点な出来栄えです。
ドウェイン・ラッドが単独でプロデュースを手掛けたセカンド・シングル。メロウ&ポップなミドル・テンポのR&B風バラードです。地味ながらも意外にハイ・レベルな楽曲で、サニーの卓越したボーカル・テクニックが遺憾なく発揮された作品。これを聴くと、売り方さえ間違えなければメジャーも十分に狙えた人なのではないかと思いますね。ただ、12インチ・エクステンデッドにする意味は・・・ナシかなぁ〜(笑)。
カバー・ガールズ路線の正統派フリースタイル・ナンバー。彼女にとっては4枚目にして最後のシングルとなりました。良質な作品だとは思うのですが、やはり当時としても出尽くした感のある楽曲だったかもしれませんね。そして、B面のリミックスはまるっきりC&Cミュージック・ファクトリー(笑)。まあ、時代が時代ですからそんなもんでしょう。笑って許してやりたいところですね。
そして、これがサニーにとって唯一のフル・アルバム。一応半分以上の楽曲でリジェット&バーボサのコンビがプロデュースを手掛けているものの、全体的にはポーラ・アブダル的なイメージが濃厚です。場合によっちゃペブルス、さもなくばサファイア。まあ、ご想像いただいた通りの内容かと(笑)。シングル・カット曲以外では、キャッチーかつキュートなポップ・ナンバー#2がおススメです。