SMASH!!
21世紀のWHAMになるはずだった美少年デュオ

 

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 2005年のロシア音楽界最大の事件の一つが、このSMASH!!の電撃解散だろう。2004年11月に発売されたセカンド・アルバム“2nite”のプロモーションにも、片割れのヴラドしか顔を現さなかったため解散危機説はあったものの、その後二人揃ってテレビ出演もこなしていたので、突然の解散騒動はファンにはショッキングだった。
 SMASH!!は、ロシア音楽界において様々な意味で貴重な存在だった。まず、ロシアで数少ない正統派のアイドル・グループということ。何故かロシアには女性の美形アイドル・グループは数多いのだが、男性のアイドル・グループは少ない。
 だいたい、ヒット・チャートの上位に登場する男性アーティストの多くが30代以上のベテラン勢で、若手の男性アーティストは顔よりも実力で勝負みたいなタイプか、同性受けするようなタイプのロック系・ヒップホップ系のアーティストが殆どで、女の子にキャーキャー言われるようなアイドルは非常に稀だったりする。だいたい、そういう類いのアーティストは、たとえ人気が出ても短命で終わってしまう事が殆ど。その背景には、やはり“男は度胸、女は愛嬌”という価値観がロシアで根強いという事があるかもしれない。
 そうした中で彼らがロシアで絶大な人気を誇ったのは、もちろん写真を見ての通りの美形ぶりもさることながら、その圧倒的な歌唱力にあると言えるだろう。とにかく、むちゃくちゃ上手いのである。それも、殆どの楽曲が英語。爆発的な大ヒットとなった“Belle”(ミュージカル「ノートル・ド・パリ」主題歌のカバー)などは、流暢で美しい発音のフランス語で見事に歌いこなしている。
 ルックス良し、実力抜群とくればレコード会社も放っておきはしない。所属するユニバーサル・ミュージック・ロシアは、タトゥに続くスーパー・スターとして世界マーケットへの進出を計画していた。その手始めとして選ばれたのがアジア圏。彼らのような上品な正統派アイドルは、確かにアジア圏向けかもしれない。2004年には香港、中国、東南アジアでアルバムをリリースし、大々的なプロモーション・ツアーも行った。だが、その頃からグループ内の不和が発生していたのだ。
 その実力と楽曲の良さ、そしてルックスの素晴らしさは、世界マーケットで十分に通用するものであっただけに、全く残念としか言いようがない。

 

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                                      ヴラド・トパロフ(左)   セルゲイ・ラザレフ(右)

ひとまず、メンバーの二人を紹介しよう。

セルゲイ・ラザレフ
誕生日は1983年4月1日。身長182cm。モスクワの演劇アカデミーで演技を学んでいる。

ヴラド・トパロフ
誕生日は1985年10月25日。身長178cm。国立ロシア人文大学で法律学を学ぶ。

 二人が出会ったのはセルゲイが11歳、ヴラドが9歳の時。同じ子供劇団に所属していたという。初対面で打解けた二人は大親友となる。その後、ヴラドが学業に専念するためにロンドンへ移るが、3年で帰国。再会したヴラドとセルゲイは、歌手を夢見て二人でデュオを組むようになる。そんな二人の夢を後押ししたのが、ヴラドの父親であるミハエル・トパロフだった。二人はミハエルが夢中になっていたミュージカル「ノートルダム・ド・パリ」の主題歌“Belle”のデモ・テープを制作。それを聴いたユニバーサル・ミュージック・ロシアの主任ディレクターが惚れこみ、レコーディング契約が成立した。
 ユニバーサルは二人の専属マネージャーとしてイギリス人Simon Napier-Bellを付ける。あのWhamを世に送り出した敏腕マネージャーである。恐らく、ユニバーサルは最初から二人を世界マーケットで勝負させるつもりでいたのだろう。デビュー曲は全編英語の“Should Have Love You More”で、プロデューサーにはErasureのリミックスなどで知られるMike Spencerを起用した。作曲はWestlifeやAce of Baseのプロデューサーとしても有名なCutfather & Joe。新人としては異例の豪華な布陣である。ラテン風の哀愁感溢れるメロディと2ステップ風のクールなリズムが紡ぎだすロマンティックなバラードで、瞬く間にヒット・チャートを駆け上がる。
 そして、セカンド・シングルとして選ばれたのが“Belle”だ。プロデューサーにはChristina AguileraやJennifer Lopezを手掛けたBen 'Jammin' Robbinsを迎え、レコーディングにはフル・オーケストラまで動員。プロモーション・ビデオは映画監督フョードル・ボンダルチュク(「戦争と平和」の監督・主演で有名なセルゲイ・ボンダルチュクの息子)を起用し、モスフィルムのスタジオで撮影された。SMASH!!は文字通り、ユニバーサル・ミュージック・ロシア全社あげての一大プロジェクトと化していった。
 シングル“Belle”とデビュー・アルバム“Freeway”は、ユニバーサルの目論見通り爆発的なヒットを記録。SMASH!!は一躍国民的なアイドル・グループとなった。

 しかし、ユニバーサルの計算外だったのは、内部の人間関係である。ヴラドとセルゲイは、グループの方向性などを巡ってマネージャーのSimon Napier-Bellとたびたび対立するようになる。しかも、実質的に二人をコントロールしているヴラドの父ミハエルは、以前よりSimonの存在を快く思っておらず、この機に乗じて彼を追い出してしまう。
 さらに、ミハエルは息子のヴラドよりもセルゲイの方が新聞や雑誌への露出度が高い事に不満を抱いており、結果的にセルゲイまでミハエルとヴラドの二人に追い出されてしまった。しかも、ミハエルはマスコミに対してセルゲイの悪口をある事ない事言いふらし、事態はまさに泥沼の様相を呈してしまう。
 現在、SMASH!!!の公式ホームページは存在するが、すっかりヴラド・トパロフのホーム・ページとなってしまっている。セルゲイはセルゲイで、既に昨年ロンドンでレコーディングを行っており、近いうちにソロ・デビューする事になるだろう。

 こうなってしまったのも、結局は本人たちの責任なんだろうが、それにしてもSMASH!!というグループが確実に世界にも通用するカリスマ性と実力を兼ね備えていただけに、本当に残念としか言いようがない。特に、その美しいメロディとソフトで力強いボーカルは、絶対に日本でも(特にオバさま系に)受けたと思うのだが。
 SMASH!!を知らない日本のみなさま、とりあえず興味を持たれたら当ホームページのリンク集からRussian BeatないしRussian DVDへアクセスをしてみて下さいませ。どちらのサイトでも視聴及びCD購入が出来ますので、廃盤にならないうちに是非ともゲットしましょう!

 

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“Belle”のプロモ・クリップ ココ で見れます!(美しい!)

“Freeway”のプロモ・クリップ ココ で見れます(画質悪し)

 

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Freeway

Freeway 2

2nite

(P)2003 Universal Music Russia (P)2003 Universal Music Russia (P)2004 Universal Music Russia
1,The Real Thing
2,Talk To Me
3,Should Have Loved You More
4,Freeway
5,Make A Little Time
6,The One To Cry
7,Rich Boy
8,Don't Look Back
9,Gonna Be Our Night
10,Belle (Full Version)
11,Molitva
12,Talk To Me (Energy Mix by That Black)

produced by Ben 'Jammin' Robbins,Andy Marvel, Mike Spencer & Judd Friedman
1,The Real Thing
2,Talk To Me
3,Should Have Loved You More
4,Freeway
5,Make A Little Time
6,The One To Cry
7,Rich Boy
8,Don't Look Back
9,Gonna Be Our Night
10,Belle (Full Version)
11,Moltiva (New Mix)
12,From Souvenirs To Souvenirs
13,Zvezda Kak Sleva
14,Rich Boy (Marc Smith Club Mix)

produced by Ben 'Jammin' Robbins,Andy Marvel, Mike Spencer & Judd Friedman
1,Obsession (Long Version)
2,This Could Lead To Something
3,Would You Cry For Me
4,Party 2nite
5,Come Back To Me
6,Faith
7,Apology
8,Mechta
9,You'll Be My Girl
10,Unless You're With Me
11,Obsession (Obsessive Mix)
 記念すべきデビュー・アルバム。ダンス・ナンバーとバラードが程よくミックスされた、これぞ正統派アイドルの王道!といった内容の良質のアルバム。全盛期のWhamを彷彿とさせる爽快でポップでセンチメンタルな魅力に溢れてる。そのWhamの“Careless Whisper”を彷彿とさせるバラード#2や、デビュー・シングルとなったラテン風哀愁バラード#3、そしてメガ・ヒットとなったセカンド・シングル#10で聴かせるソウルフルで力強くも甘いボーカルは、まさにダブル・ジョージ・マイケルといった感じ。80年代風の哀愁感溢れる、センチメンタルでドライブ感に満ちたダンス・ナンバー#4も凄くいい。とにかく全編メロディアスで、どこか切ない懐かしさすら感じさせる素晴らしい1枚。  売れに売れまくったファースト・アルバムに新曲を加え、さらに一部を入れ替えたリニューアル・バージョン。何と言っても目玉は、70年代にヨーロッパ全土で絶大な人気を得たギリシャの歌手Demis Roussosの大ヒット・ナンバーのカバー#12でしょう。“哀愁のカサブランカ”路線の原曲も大好きだったけど、このSMASH!!バージョンは、グルーヴィーで心地よいボサノヴァにアレンジされており、もうロマンチックなことこの上ない。しかも大熱唱。素晴らしすぎです。これだけで絶対に買いです!!  残念ながら最後のアルバムとなってしまったセカンド。ファースト・シングル#1がむちゃくちゃカッコいい。80年代風のミステリアスな哀愁系美メロとファンキーなリズムが見事にマッチした最高のアイドル・ダンス・ポップに仕上がっている。センチメンタルでロマンティックなバラード#2と#3も素晴らしいし、#6に至ってはやってくれました!って感じのジョージ・マイケル・カバー。歌いだしなんか一瞬ジョージ本人かと思うくらいにソックリです。まあ、全体的にはジョージ・マイケルに比べると、どちらかというとあどけなさを残した初々しいイメージですが。これまた哀愁感バリバリのフラメンコ風の甘いバラード#5の切ない高揚感も素晴らしいし。何度でも繰り返し聴ける、クオリティの高いアルバム。

 

<その後のヴラドとセルゲイ>

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ヴラド・トパロフ

セルゲイ・ラザレフ

 さて、その後のヴラドとセルゲイの近況について、軽くアップデートしておきたい。

 まず、セルゲイを追い出した形になったヴラドだが、2005年の暮れには新生Smash!!としてサード・アルバム“Evolution”をリリース。何とベテランの中年ミュージシャン5人をバックに従えたバンド編成のグループに生まれ変わってしまった。ここからシングル“The Dream”や“Kinda Crazy”がまずまずのヒットとなった。しかし、デュオ時代の成功とは比べ物にならず、バンドはあえなく解散。つい先日、ヴラド・トパレフとしてソロ・アルバムをリリースしたばかりだ。
 一方のセルゲイは、やはり昨年にシングル“Lost Without Your Love”でソロ・デビュー。80年代のPWLを彷彿とさせる哀愁系の切ないユーロ・ダンス・ポップで、結構いい曲だったものの、やはり爆発的なヒットには至らなかった。その後、数曲シングルを発表しているが、主にテレビのアイドル・タレントとして活躍している模様。アイドル雑誌のグラビアも飾っており、しばらくは中堅スターとして活躍しそうな様子。

 

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Evolution (2005)

Lonely Star (2006)

(P)2005 Universal Music (Russia) (P)2006 CD Land (Russia)
1,Kinda Crazy
2,Kak Dje Tak Modjet Butu
3,Miradj
4,Everytime
5,Honesty
6,Come Back To Me
7,This Could Lead To Something
8,Unless You're With Me
9,Talk To Me
10,Molitva
11,The Dream
1,Kak Dje Tak Modjet Butu
2,Podnimus Vusoko
3,Odinokaya Zvezda
4,Poteryalis Medjdu Strok
5,Ya S Toboi
6,Salut
7,No More I'm Sorry
8,Can't Take It
9,You'll Stay In My Heart
10,Tri Djelaniya
11,Kto Tui?
12,Za Lyubov
13,Kinda Crazy
14,The Dream
 ヴラドをリード・ボーカルに据えたバンド編成で復活したSmash!!のサード・アルバム。デュオ時代のリメイク曲も含んでおり、大半の楽曲が英語で歌われててますが、あのキラキラとしたマジックはすっかり失われてしまってます。#5ではビリー・ジョエルのカバーにも挑戦。ヴラドのボーカルは甘くソウルフルで、確かに上手いのだけど、何か物足りなさがあることは否定できないですね。まだ渋くなるのには時期尚早。  遂にユニバーサルをクビか?レーベルを移籍してリリースされた初のソロ名義アルバム。R&Bやヒップ・ホップをベースにした、今どきのアイドル・ポップ路線は正解だったが、いかんせん楽曲が弱い。どれも似たような印象の作品ばかりで、全体的にのっぺりとした平坦な印象。歌唱力はずば抜けているだけに、これはもう周囲のスタッフに恵まれていないとしか言いようがないかもしれないですね。


 

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