SL8N8 (2006)
(英語タイトル Slaughter Night)

 

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(P)2007 Tartan Video (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン/5.1chサラウンド・DTSサラウンド/音声:オランダ語/字幕:英語・スペイン語/地域コード:1/90分/製作:オランダ

映像特典
メイキング・ドキュメンタリー
オリジナル劇場予告編
NGシーン集
監督:フランク・ヴァン・ゲロヴェン
    エドウィン・ヴィッセル
脚本:フランク・ヴァン・ゲロヴェン
    エドウィン・ヴィッセル
製作:マルティン・ラゲスティー
撮影:ヤン・ヴリンツ
音楽:ハッボ・ベーム
出演:ヴィクトリア・コブレンコ
    クルト・ロギエルス
    ヨップ・ヨリス
    リンダ・ヴァン・デル・ステーン
     スティーヴ・フーイ
    カロリーナ・ディイクイゼン
    ララ・トーロプ
    エミエル・サンドッケ

 オランダ産ホラーと言えば、80年代にディック・マース監督の「悪魔の密室」('83)という、エレベーターが意思を持って殺戮を繰り広げる作品がアヴォリアッツ国際映画祭でグランプリを受賞して世界的に注目を集めたことがあったものの、ジャンルとして大きな流れを形成するまでには至らなかった。ディック・マースは、その後も猟奇ホラー・アクション「アムステルダム無情」('88)という佳作を生み出し、「悪魔の密室」をナオミ・ワッツ主演の「ダウン」('01)としてハリウッドでリメイクしており、唯一オランダ出身のホラー映画監督として地道に活動している。そうした状況の中、突如オランダから登場して各国で話題を呼んだのが、この“SL8N8”である。
 監督のフランク・ヴァン・ゲロヴェンとエドウィン・ヴィッセルのコンビは、これが劇場用長編映画2作目に当たる。デビュー作の“Necrophobia”('95)は興行的に全くの惨敗だったものの、コアなホラー・マニアの間では高く評価されていた作品だった。実に6年ぶりの監督作となる本作では、低予算を逆手に取ったシンプルなストーリー展開で、今風のハリウッド・ホラーやJホラーとは一味違った雰囲気のスプラッター・カーニバルを繰り広げている。

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誘拐監禁された少女

殺された少女の生首

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ヒロインのクリステル(V・コブレンコ)

地下炭鉱を見学する若者たち

 映画は1857年のオランダを舞台に始まる。農家の手伝いをしていた幼い少女が誘拐され、森の奥にある小屋の地下室に監禁される。隣には同い年くらいの少女が縛り付けられおり、周囲には腐敗した生首が棒に突き刺して陳列されていた。そこへ現れた誘拐犯は、何も言わずに隣の少女の首を切断し、荒々しく棒に突き刺す。そして、今まさに農家の少女を手にかけようとした瞬間、捜索中の警官隊が小屋に飛び込んできた。こうして、連続幼児誘拐殺人事件の犯人アンドレアス・マルティエンスは逮捕されたのだった。
 時は移って現代。仲間たちと夜遊びを楽しんだ女子大生クリステル(ヴィクトリア・コブレンコ)は、父親の運転する車で帰路につく。なにげない話でクリステルと父親は口論となり、父親がわき見運転をしてしまったことからトラックと衝突。クリステルは命からがら車から逃げ出すものの、車内に残された父親は爆死してしまう。
 この事故以来、父親の死に責任を感じて苦悩するクリステル。とある工場に残された父親の私物を引き取りに行くという母親の言葉を聞いた彼女は、自分が取りにいきたいと願い出る。ふさぎこんでばかりの娘を心配した母親は、旅行を兼ねて気晴らしに行ってらっしゃいと娘を送り出した。
 仲間グループと一緒に工場を訪れたクリステル。そこで彼女は、父親が生前に調査中だったという資料一式を受け取った。それは、この工場に隣接する炭鉱と、そこにまつわる伝説の連続殺人鬼アンドレアス・マルティエンスについての資料だった。
 1860年代、この炭鉱では死刑囚たちが、ある役割のために使われていた。それは、ガスの充満した炭鉱内でダイナマイトに火をつけるというもので、奇跡的に命が助かった場合は死刑を免れることが出来るという条件が付いていた。もちろん、助かった者は一人もいない。そして、ここで命を落とした最後の死刑囚がアンドレアス・マルティエンスだったのだ。伝説によれば、マルティエンスは生霊となって今も炭鉱内を彷徨っているという。
 現在は閉鎖されている炭鉱内を見学する観光ツアーに参加したクリステルと仲間たち。クリステルは、ツアーに参加しているベルギー人の若者マルク(クルト・ロギエルス)に心惹かれる。しかし、エレベーターが動かなくなってしまい、一行は炭鉱内に取り残されてしまった。既に工場は終業時間を過ぎてしまい、地上には誰も残っていない。エレベーターの修理に向かったツアー・ガイドの老人も消息を絶ってしまった。暇つぶしに占い好きの女の子が持っていた“こっくりさん”に興じる若者たち。すると突然、ベルギー人の女の子が激しい発作を起こし、狂ったように走り去ってしまう。やがて、若者たちは次々とアンドレアス・マルティエンスの悪霊に乗り移られ、地下炭鉱を舞台にした狂気の殺戮パーティーが幕を開ける・・・。

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暇つぶしに“こっくりさん”に興じる若者たち

次々と悪霊に乗り移られていく

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シャベルで顔面が真っ二つ・・・

ベルギー人の若者マルク(K・ロギエルス)

 仕上がりとしては「血のバレンタイン」ミーツ「死霊のはらわた」。何となく80年代ホラー的な懐かしいムードが漂う。伏線として亡くなった父親とクリステルの心の絆であったりとか、殺人鬼アンドレアス・マルティエンスの死にまつわる意外な真相などが思わせぶりに描かれているものの、辻褄合わせの口実としてしか成立していないのは残念。
 あくまでも、この作品のメインは地下炭鉱内で展開する血みどろのスプラッター・パーティだ。若者たちが次々と殺され、片っ端から殺人鬼の悪霊に乗り移られる。特殊メイクやダミー・ヘッドなどを駆使したゴア・シーンはかなり強烈で、日本で劇場公開すればR指定は避けられないだろう。残酷シーン大好き!というホラー・ファンなら満足できるに違いない。
 ただ、前半で描かれる伏線がクライマックスに近づくに従って何の意味もなさないということが分かり、その部分の展開を期待しているとかなり肩透かしを食らってしまう。最初から意味深な描写を避けて、「死霊のはらわた」や「ブレインデッド」みたいにお祭り感覚のスプラッター映画として見せてくれれば、もっと素直な気持ちで楽しめただろうと思う。アーティスティックな面も含めて、批評家受けを意識しすぎた結果なのかもしれない。
 なお、主演のヴィクトリア・コブレンコはウクライナ出身の女優さん。13歳でオランダに移住して女優になったという。オランダでは結構売れっ子らしいが、ドイツのフランカ・ポテンテに似た感じの女優で、美人ではないものの素朴で自然体な雰囲気が魅力だ。

 ちなみに、タイトルの“SL8N8”とは、クリステルの死んだ父親がこっくりさんを通じて娘に伝えた、地下炭鉱から脱出するためのキー・ワード。

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