スラッシャー映画ヒストリー PARTV
完結篇

 

面会時間
Visiting Hours (1981)
日本では82年劇場公開
ビデオは日本発売済・DVDは日本未発売

VISITING HOURS-DVD.JPG
(P)2006 Anchor Bay (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/モノラル/音声:英語/字幕:なし/
地域コード:1/105分/製作:カナダ

映像特典
TVスポット集
ラジオ・スポット
監督:ジャン=クロード・ロード
製作:クロード・ヘロー
脚本:ブライアン・タガード
撮影:ルネ・ヴェルジェール
音楽:ジョナサン・ゴールドスミス
出演:リー・グラント
    ウィリアム・シャトナー
    リンダ・パール
    マイケル・アイアンサイド
    レノーア・ザン
    ハーヴェイ・エイトキン
    ヘレン・ヒューズ

 スラッシャー映画全盛期の真っ只中に、カナダで製作されたサイコ・ホラーの佳作。80年代のカナダはユニークなホラー映画を数多く生み出しているが、この「面会時間」もなかなか印象的な一本だった。フェミニズムを前面に押し出しながらも、まるで本末転倒じゃないかと思えるくらい、女性に対する執拗で残酷な暴力を描いていく。また、マイケル・アイアンサイドの演じるサイコ・キラーの異様なキャラクターもインパクト強烈で、病院を舞台に展開されるクライマックスの息の詰まるようなサスペンスも見応えがあった。
 ちなみに、80年代にカナダでホラー映画が流行ったのは、やはりデヴィッド・クローネンバーグ監督の影響だろう。特に「ブルード 怒りのメタファー」('79)や「スキャナーズ」('81)の世界的な成功は、カナダの映画関係者を大いに刺激したに違いない。本作は、そのクローネンバーグの一連の作品をプロデュースしたクロード・ヘローが製作を手掛けている。ラブ・ロマンスからアクション、パニック・スペクタクル、コメディ、ホラーに至るまで、トレンドをしっかりと押さえた娯楽映画を数多く生み出してきた人物なだけに、えげつない見せ場もたっぷり。そのキワモノすれすれのセンセーショナリズムを楽しみたい一本だろう。

VISITING HOURS-1.JPG VISITING HOURS-2.JPG VISITING HOURS-3.JPG

テレビの人気女性キャスター、デボラ(L・グラント)
「面会時間」より

デボラの恋人であるディレクター、ゲイリー(W・シャトナー)
「面会時間」より

女性を憎悪する殺人鬼コルト(M・アイアンサイド)
「面会時間」より

 主人公はテレビの人気女性キャスター、デボラ・バリン(リー・グラント)。熱心なフェミニストであるデボラは、家庭内暴力の末に夫を殺した女性を擁護する発言をして物議を醸していた。番組内で女性の正当防衛を主張して専門家と論争を繰り広げる彼女に、恋人である番組ディレクターのゲイリー(ウィリアム・シャトナー)もヒヤヒヤさせられている。
 一方で、そんな彼女の姿をスタジオの隅から憎々しげに見つめる目があった。テレビ局の清掃員をしているコルト・ホーカー(マイケル・アイアンサイド)である。コルトは他者との関わりを嫌う寡黙な男だったが、実はこれまでに何人もの女性をレイプしてきた変質者。異常なまでに女性を憎悪する彼は、恐怖に引きつる被害者の顔を写真に撮り、自宅のクローゼットの壁にコラージュして飾るのが趣味という屈折した男だった。
 仕事を終えて自宅に戻ったデボラは、無残にも殺害されたメイドの死体を発見する。そこへ、待ち構えていたコルトが襲い掛かってきた。必死に抵抗するデボラ。間一髪のところで逃げ出すことに成功したものの、両脚を骨折する重傷を負ってしまう。
 病院に運び込まれたデボラを介護するのは、頼りになる女医シーラ(リンダ・パール)。彼女は二人の幼い子供を持つシングル・マザーだ。治療のため入院することになったデボラだったが、コルトの魔手は病院にまで及ぶ。見舞い客を装って病院に侵入したコルトは、夜勤看護婦の注意をそらすために病室で眠る老婆を殺害する。患者の異常に気付いて病室に向う看護婦。しかし、今一歩のところでシーラに姿を目撃されてしまい、コルトはやむなく病院を後にした。
 フラストレーションの溜まったコルトは、街中でリサ(レノーア・ザン)という若い女性をナンパし、サディスティックに暴力を加える。コルトの女性に対する激しい憎悪には原因があった。幼い頃に、父親が母親に熱湯を浴びせられ、それが原因で父親は廃人同然となってしまったのだ。酒に酔って暴力を振るう夫に対する、母親の正当防衛だったわけだが、父親に溺愛されていたコルトは、それ以来女性を強く憎むようになってしまったのだ。
 コルトに半殺しの目に遭ったリサは、病院でシーラに治療を受ける。若くして妊娠・結婚・離婚を経験したシーラの強い励ましに心を開くリサ。一方、コルトは看護士のふりをして病院に再び潜入し、病室のデボラを襲うものの、今度は病院スタッフに気付かれてしまい逃走した。この騒ぎで病院中がパニックに陥り、警察によって出入りのチェックが行われるようになる。
 自宅に戻ったコルトは、部屋の中がめちゃくちゃに荒らされているのを発見して愕然とする。暴行を受けたリサからの報復だった。急いでクローゼットを調べるコルト。壁に貼り付けた写真のコラージュの中から、盗撮したシーラの写真が奪われていた。
 自分の盗撮写真をリサから渡されたシーラは強い衝撃を受ける。留守番をしている子供たちが危ないと感じた彼女は、すぐに自宅へと戻った。子供たちの無事を確認してホッとする彼女に襲い掛かるコルト。必死の抵抗を試みるシーラだったが、わき腹にナイフを刺されてしまう。もがき苦しむシーラの顔を、一心不乱にカメラに収めるコルト。
 何とか一命を取りとめて病院に担ぎ込まれたシーラ。その頃、同じく病院に運び込まれた急患の男がいた。警察のチェックを受けずに治療室へと連れて行かれたその男こそ、他でもないコルトだった。自らの体を傷つけて患者を装った彼は、いよいよデボラを毒牙にかけようとしていたのだ・・・。

VISITING HOURS-4.JPG VISITING HOURS-5.JPG VISITING HOURS-6.JPG

デボラを担当する女医シーラ(L・パール)
「面会時間」より

下半身を骨折して入院することになったデボラ
「面会時間」より

コルトにいたぶられるパンク娘リサ(L・ザン)
「面会時間」より

 とにかくテンポの速い映画である。途中で中だるみする部分はあるものの、無駄な前置きなどを一切排除したストーリー展開は非常に好感が持てる。当時のスラッシャー映画にしては、いわゆるスプラッター描写は殆んどないものの、犯人の女性に対するサディスティックなバイオレンスはなかなか強烈。味気ない殺人シーンを見せられるよりも、よっぽど恐怖感が盛り上がる。とはいえ、既に25年以上も前の作品なので、タランティーノ映画のバイオレンスに慣れてしまった今の観客にはちょっと刺激が足りないかもしれない。
 演出を手掛けたのはカナダの監督ジャン=クロード・ロード。この5年後に「ターミネーター」をパクった迷作「悪魔の改造人間」('86)を手掛けた人だ。これといった個性のある監督ではないが、ここでは非常に手堅いサスペンス演出を見せてくれている。「悪魔の改造人間」もそうだったが、基本的に陰湿なムードの映画を撮るのが得意なのかもしれない。本作も、その何ともいえない後味の悪さが逆に奇妙な魅力になっている。
 陰湿といえば、脚本を手掛けたブライアン・タガートも、暗くて湿った感じの作品を得意とするタイプの人だ。不良グループが新入生の兄妹を徹底的に虐めまくる青春バイオレンス「放課後」('84)などがいい例だろう。その後の「ポルターガイスト3/少女の霊に捧ぐ」('88)や「オーメン4」('91)なども、作品の出来不出来はともかくとして、後味の悪さに関しては共通するものがあった。

VISITING HOURS-7.JPG VISITING HOURS-8.JPG VISITING HOURS-9.JPG

看護師のふりをして病院に潜入するコルト
「面会時間」より

コルトに狙われるシーラ
「面会時間」より

デボラの身に危険が迫る・・・
「面会時間」より

 主演はオスカー女優リー・グラントで、殺人鬼コルトに追いかけられまくるクライマックスは迫真の演技。だが、やはり最大の目玉はそのコルトを演じるマイケル・アイアンサイドだろう。最初にヒロインが襲われるシーンでは、裸の上半身に女物のネックレスやイヤイングをジャラジャラと付け、顔にメイクまで施した状態でクローゼットの中から飛び出してくる。その異様な迫力は圧倒的だ。当時のアイアンサイドといえば、クローネンバーグの「スキャナーズ」('81)で注目を集めたばかりの頃で、“カナダのジャック・ニコルソン”などと呼ばれていたものだった。その強烈な存在感を前にしては、さすがのリー・グラントもちょっと分が悪い。
 もう一人のヒロイン、シーラ役を演じるのは、日本で活躍していたこともある清純派スター、リンダ・パール。商社勤務だった父親の仕事で日本に育ち、幼少時代は東宝芸能アカデミーに所属していたという。帝国劇場のミュージカル「オリバー!」でデビューし、「王様と私」や「奇蹟の人」で人気を集めた外国人子役スターだった。日本人好みの可愛らしい顔立ちの女優さんで、本作でも唯一爽やかな印象を残している。
 また、コルトにレイプされるパンク娘リサを演じているレノーア・ザンも良かった。「誕生日はもう来ない」('81)や「デフーコン4」('85)など、当時カナダ産のホラー映画やSF映画で活躍していた女優さんで、独特のすれっからしなムードが印象的だった。これといった代表作には恵まれなかったが、現在もカナダやアメリカで活躍を続けている息の長い人だ。
 とまあ、この4人が殆んどの見せ場を奪ってしまっているため、我らがカーク船長ことウィリアム・シャトナーの存在感が一番薄いのがちょっと気の毒。これといって活躍する場面もないので、とりあえずネーム・バリューだけの出演という印象は否めない。

 なお、本作はバイオレンス描写が問題視されたため、イギリスではカット版で上映されている。さらに、ビデオ発売の際にはカット版収録であったにも関わらず、“ビデオ・ナスティー(危険なビデオ)”のレッテルを貼られてしまった。とにかく、当時のイギリスは検閲がとても厳しかったのだ。
 上記のアメリカ盤DVDは、もちろんノーカット版。アンカー・ベイにしては映像特典が少ないのが残念だが、画質・音質のクオリティは十分に納得がいくものに仕上がっている。

 

ヘルナイト
Hell Night (1981)
日本では82年劇場公開
ビデオは日本発売済・DVDは日本未発売

HELLNIGHT-DVD.JPG
(P)1999 Anchor Bay (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(レターボックス収録)/モノラル/音声:英語/字幕:なし
/地域コード:ALL/102分/製作:アメリカ

映像特典
オリジナル劇場予告編
TVスポット集
L・ブレア、監督、製作者らの音声解説
監督:トム・デ・シモーネ
製作:アーウィン・ヤブランス
    ブルース・コーン・カーティス
脚本:ルドルフ・フェルドマン
撮影:マック・アールバーグ
音楽:ダン・ワイマン
出演:リンダ・ブレア
    ピーター・バ−トン
    ヴィンセント・ヴァン・パタン
    ケヴィン・プロフィー
    ジェニー・ニューマン
    スキ・グッドマン
    ジミー・スターテヴァント

 これはまた懐かしい映画。昔はよくテレビのロードショー番組で放送されていたものだった。典型的なティーン・スラッシャー映画だが、古い豪邸を舞台にしたゴシック・ホラー・ムードはなかなか良く、蝋燭の灯を多用した映像もキューブリックの「バリー・リンドン」みたいで美しい。残酷シーンも比較的控えめだし、コメディとホラーの要素をブレンドした語り口も嫌味がなく、スプラッターが苦手な人でも気軽に楽しめるエンターテインメント作品に仕上がっている。
 あえて弱点を挙げるとすれば、ヒロイン役のリンダ・ブレアだろうか。どう見ても、新入生の中で一番の美少女には見えない。単なるポッチャリ体型の子豚ちゃんだ。相手役のピーター・バートンがハンサム過ぎるくらいにハンサムなだけに、余計に不釣合いに見えてしまうのはちょっと頂けなかった。まあ、本作では一番のスターなので、とりあえず何でも許されるのだろうけど・・・。

HELLNIGHT-1.JPG HELLNIGHT-2.JPG HELLNIGHT-3.JPG

新入生で一番の美少女(?)マーティ(L・ブレア)
「ヘルナイト」より

ガース邸の内部に入ってきた学生たち
「ヘルナイト」より

友愛会の会長ピーター(ケヴィン・ブロフィー)
「ヘルナイト」より

 新入生歓迎会で盛り上がる大学生たち。友愛会アルファ・シグマ・ローでは、新入生に肝試しをさせるのが毎年の恒例行事だった。今年の参加者は、新入生で一番の美少女マーティ(リンダ・ブレア)、心優しい美少年ジェフ(ピーター・バートン)、女好きの道化者セス(ヴィンセント・ヴァン・パタン)、そしてセクシーでちょっとトボけた女の子デニス(スキ・グッドマン)の4人。
 学生たちは、肝試しの舞台となるガース邸へと向う。この屋敷では20年前に主のレイモンド・ガースが妻と奇形の子供たちを殺害し、自ら自殺を遂げたという場所だった。だが、子供の中の一人アンドリューの死体が発見されず、今も屋敷の中を徘徊していると噂されていた。その呪われた場所で、4人は一夜を過ごすことになるのだった。
 新入生たちを置いて去っていく先輩たち。歓迎会で意気投合したセスとデニスは早速ベッドへ直行してイチャイチャ。そんな二人を横目にまごつくマーティとジェフも、何となくお互いに意識し合っている。
 一方、友愛会長ピーター(ケヴィン・ブロフィー)は、仲間のスコット(ジミー・スターテヴァント)とメイ(ジェニー・ニューマン)の二人を連れて、新入生たちに気付かれないよう屋敷に戻ってきていた。3人は新入生たちを怖がらせるため、様々な仕掛けを用意していたのだ。そうとは知らないマーティたちは、屋敷のあちこちから聞こえてくる不気味な悲鳴や、おどろおどろしい幽霊にビックリ仰天する。もちろん、全てピーターたちの仕込んだ悪戯だ。とはいえ、ジェフとセスもバカではなく、意外とあっさり先輩たちの悪戯を見抜いてしまう。
 だが、メイが何者かによって殺害されたのを皮切りに、スコットとピーターも血祭りに上げられてしまう。そう、屋敷には本物のモンスターが徘徊していたのだ。遂にはデニスまでもが犠牲になり、マーティたちはパニックに陥る。屋敷を出ようにも、玄関の門には鍵がかかっている。何とか門をよじ登ったセスは警察に駆け込むが、酔っ払った学生の悪戯と思われて相手にされない。そうこうしている間にも、屋敷に残されたジェフとマーティの身に危険が迫っていた・・・。

HELLNIGHT-4.JPG HELLNIGHT-5.JPG HELLNIGHT-6.JPG

心優しい美少年ジェフ(P・バートン)
「ヘルナイト」より

お気楽コンビのデニス(S・グッドマン)とセス(V・ヴァン・パタン)
「ヘルナイト」より

謎のモンスターに頸を切られるメイ(J・ニューマン)
「ヘルナイト」より

 これまで毎年肝試しをしてきたのに、何故今年に限ってモンスターが現れるのか?そもそも、先輩学生たちが先に屋敷に入ってガジェットを仕込んでいたのに、何故その時にモンスターは現れなかったのか?など、とにかく突っ込みどころは満載なのだが、そんな細かいことは抜きにして楽しみたいお化け屋敷映画だろう。
 監督のトム・デ・シモーネはポルノ業界出身で、「コンクリート・ジャングル」('82)や「女囚アマゾネス/美女の絶叫」('86)などの女囚物映画で有名な人。一方の脚本家ランディ・フェルドマンは本作がデビューだが、その後スタローン主演の「デッドフォール」('89)やジャン=クロード・ヴァン・ダムの「ボディ・ターゲット」('93)、エディ・マーフィの「ネゴシエーター」('98)などのアクション映画を手掛けた人物だ。どちらも大味な娯楽映画を得意とするタイプなだけに、とにかく細かいディテールについては大雑把そのもの。かといって、別に目くじらを立てる必要もない。ポップコーン片手にキャーキャー騒いで楽しむのが、この手の映画の正しい鑑賞スタイルなわけだし。その点では十分に合格点をあげられる作品だ。
 ちなみに、製作のアーウィン・ヤブランスは「ハロウィン」('78)と続編「ブギーマン」('81)を手掛けた人で、レニー・ハーリンの監獄ホラー「プリズン」('87)やモンスター格闘技映画「アリーナ」('89)などの怪作を世に送り出した張本人。B級映画の何たるかを心得たプロデューサーだ。
 また、撮影のマック・アールバーグは70年代に世界的なヒットとなったスウェーデン・ポルノの名作「わたしは女」シリーズの監督として有名な人物。70年代末にハリウッドで撮影監督となり、本作を皮切りに「チェーンヒート」('83)や「SFソードキル」('84)、「フロム・ビヨンド」('86)など数多くのB級映画を手掛け、一時期は「ネイルズ」('92)や「ビバリーヒルズ・コップ3」('94)などのブロックバスター級映画の撮影も担当していた。

HELLNIGHT-7.JPG HELLNIGHT-8.JPG HELLNIGHT-9.JPG

デニスまでもがモンスターに惨殺される
「ヘルナイト」より

屋敷の中を彷徨うマーティとジェフ
「ヘルナイト」より

警察に駆け込んで助けを求めるセスだったが・・・
「ヘルナイト」より

 冒頭で述べたように、リンダ・ブレアは美少女役として明らかにミス・キャスト。とはいえ、恐怖に逃げまどう演技などはさすがの上手さで、そこいらのポッと出の無名女優とは比べ物にならない。スラッシャー映画のスクリーム・クィーンとしては、立派な仕事ぶりと言えるだろう。
 相手役のピーター・バートンも子役時代から活躍している人。しかし、当時は役者の引退を考えていたという。そんな彼をリンダが説得し、本作に出演することになったのだそうだ。甘い笑顔の印象的な美少年で、「13日の金曜日・完結編」('84)ではシャワー・シーンも披露していた。その後、テレビ・ドラマの世界で大活躍するようになり、現在も映画やテレビに出演を続けている。そんな彼も既に51歳というのだから、年月の経つのは早いもんである。
 で、日本公開当時最も話題になったのは、お調子者のセス役を演じているヴィンセント・ヴァン・パタンの出演だった。日本ではプロ・テニス選手として有名で、当時はイケメン・アスリートとしてアイドル的人気が高かった。そんな彼も、もともとは子役出身。両親も兄弟も親戚も、全て俳優というハリウッドきっての芸能一族の出身なだけに、当然の成り行きだったと言えるだろう。

 なお、舞台となるガース邸の外観として使用されたのは、カリフォルニアに実在する豪邸キンバリー・クレスト。この屋敷は1897年に建てられたもので、アメリカでも数少ない本格的なビクトリア朝様式の宮殿として知られている。クリネックス・ティシューで有名なアメリカの製紙会社キンバリー・クラークの創設者の一人、J・アルフレッド・キンバリーの一族が代々所有しており、映画のセットとして使われたのは後にも先にもこれ一本だけだったようだ。現在は博物館として一般に公開されている。

 

サマーキャンプ・インフェルノ
Sleepaway Camp (1983)
日本では劇場未公開
ビデオは日本発売済・DVDは日本未発売

SLEEPAWAY-DVD.JPG
(P)2002 Anchor Bay (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★★☆

DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録
)/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/84分/製作:アメリカ

映像特典
オリジナル劇場予告編
F・ローズ、監督らによる音声解説

監督:ロバート・ヒルツィック
製作:ミシェル・タトシアン
    ジェリー・シルヴァ
脚本:ロバート・ヒルツィック
撮影:ベンジャミン・デイヴィス
音楽:エドワード・ビロウス
出演:マイク・ケリン
    キャサリン・カミー
    ポール・デアンジェロ
    ジョナサン・ティアーストン
    フェリッサ・ローズ
    クリストファー・コレット
    カレン・フィールズ

 クライマックスが全ての映画、と言ってもいいだろう。基本的には、「13日の金曜日」や「バーニング」と全く同じ路線の、サマー・キャンプを舞台にした平凡なティーン・スラッシャー映画。大映ドラマ並に大袈裟なキャラクターが続々登場するのは面白いものの、かなりの低予算で作られていることもあってか、全体的には素人臭さが目立つC級レベルの作品だ。しかし、誰もがビックリ仰天する衝撃的なクライマックスのおかげで、80年代を代表するスラッシャー映画の怪作として歴史に名を残すこととなった。
 で、何が衝撃的なのかというと、完全にネタばれになってしまうので詳しくは明かせないが、つまりは殺人鬼の正体のこと。しかも、その撮り方がまた凄い。上手いとか下手とかの問題ではなく、あまりにもインパクトが強烈なのだ。まさに百聞は一見にしかず。決して面白い映画だとは言わないが、このクライマックスだけは話のネタに見ておいて損はないはず。

SLEEPAWAY-1.JPG SLEEPAWAY-2.JPG SLEEPAWAY-3.JPG

アンジェラ(F・ローズ)と従兄弟リッキー(J・ティアーストン)
「サマーキャンプ・インフェルノ」より

変わり者のマーサ叔母さん(デジリー・グールド)
「サマーキャンプ・インフェルノ」より

アンジェラに優しく声をかけるポール(C・コレット)
「サマーキャンプ・インフェルノ」より

 主人公は物静かな少女アンジェラ(フェリッサ・ローズ)。幼い頃にボート事故で父親と弟を失った彼女は、変わり者のマーサ叔母さん(デジリー・グールド)に引き取られて育てられた。快活な従兄弟リッキー(ジョナサン・ティアーストン)は、内気な彼女にとって頼もしい味方だ。
 そんなある日、マーサ叔母さんはアンジェラとリッキーをアラワク・キャンプ場のサマー・キャンプへと送り出す。すぐに年少組男子のリーダー的存在となるリッキーだったが、アンジェラは誰とも口をきこうとしない。そんな彼女に、リッキーの親友である美少年ポール(クリストファー・コレット)が話しかけてくる。その様子を見ていた、気位の高い女王様的存在のジュディ(カレン・フィールズ)は、何かとアンジェラを目の敵にするようになる。
 一方、アンジェラに目をつけている大人もいた。コックのベン(ロバート・アール・ジョーンズ)だ。アンジェラを食糧倉庫に連れ込み悪戯をしようとするが、間一髪のところでリッキーに発見されてしまう。そして、その直後にベンは何者かに襲われ、沸騰したスープを全身に浴びて大火傷を負ってしまった。キャンプ場の責任者メル(マイク・ケリン)は警察に事故として報告し、従業員たちにも固く口止めをする。保護者に知れてしまったら、キャンプ場の経営に影響が出るからだ。
 だが、キャンプ場ではさらに恐ろしい事件が発生する。アンジェラをからかったことでリッキーと大喧嘩を繰り広げた年長組の少年がボート遊びの最中に殺され、半ば腐敗した状態の死体が発見される。さらに、アンジェラに嫌がらせをした年長組のリーダー格の少年も、全身を蜂に刺されて怪死。ジュディと一緒になってアンジェラを虐めた指導員のメグ(キャサリン・カミー)も、シャワーの最中にナイフで惨殺された。
 さらに、キャンプ場から離れて野宿をしていた子供たちまでもが皆殺しにされてしまい、キャンプ場は大パニックに陥る・・・。

SLEEPAWAY-4.JPG SLEEPAWAY-5.JPG SLEEPAWAY-6.JPG

アンジェラを目の敵にするジュディ(K・フィールズ)
「サマーキャンプ・インフェルノ」より

ボート置き場で発見された少年の溺死体
「サマーキャンプ・インフェルノ」より

全身を蜂に刺されて殺された少年
「サマーキャンプ・インフェルノ」より

 そもそも、ボートで腐乱死体が発見された時点で、普通なら保護者が騒ぎ出してキャンプ場は閉鎖されるんじゃないか・・・?と大きな疑問を抱いてしまうわけだが、まあ、それでは映画が成立しないだろう。とはいえ、登場人物たちの危機感の無さは、まるでコメディ映画のようだ。
 そう、本作の大きな特徴は、冗談なのか本気なのか分らないような、悪趣味丸出しのキッチュなテイストにある。なにかにつけて“あら、そうだったかしら?そうよね?”と自問自答を繰り返す変人マーサ叔母さんとか、これ見よがしな女王様気取りがまるでドラッグ・クィーンみたいなジュディ、露骨なまでの営利主義が滑稽な銭ゲバ親爺メルなど、登場人物のキャラクターがとにかく極端。演じる俳優たちもすっかり悪ノリしまくりで、ばかばかしいくらいに大袈裟な演技を繰り広げてみせる。
 監督・脚本のロバート・ヒルツィックは本作が劇場用映画デビュー。それ以前のキャリアは全く分らないが、その演出を見る限りでは自主映画畑出身なのかもしれない。ホラー映画の見せ方は一応心得ているが、肝心の技術が全く伴っていないという印象。少なくとも、映画製作の現場で修行を積んだ人の仕事とは思えない。

 キャストも殆んどが無名の素人ばかり。キャンプ場の責任者メルを演じるマイク・ケリンだけが、キャリアのあるベテラン俳優だ。ディーン・マーティンとジェリー・ルイス主演のコメディ映画の脇役として注目された人で、ドン・シーゲル監督の「突撃隊」('62)のポーランド人脱走兵役で評価された名優。本作の撮影終了直後にガンのため死去しているが、確かにあまり具合が良くなさそうな印象を受ける。
 子役の中では、アンジェラと親しくなる美少年ポールを演じるクリストファー・コレットが、この翌年に映画「家族の絆」('84)でテリー・ガーの息子役を演じて注目され、「マンハッタン・プロジェクト」('86)や「ローラー・ボーイズ」('90)などに出演してアイドル的人気を得た。

 さて、映画としては決して出来の良い作品と呼べない「サマーキャンプ・インフェルノ」だが、上記で述べたようなバッド・テイストが何故か熱狂的なファンを生み出してしまい、パート3まで劇場公開される人気シリーズとなってしまった。
 それどころか、2002年にはDVD発売用としてパート4も製作されて評判を呼び、来年には待望(?)のパート5“Return To Sleepaway Camp”の劇場公開までが決定している。しかも、フェリッサ・ローズらオリジナル・キャストが復活するそうだ。で、話はそれだけに止まらない。このパート5への期待が高まっているのか、それとも製作サイドの勇み足なのか分らないが、既にパート6“Sleepaway Camp Reunion”の製作まで決まってしまった。さすがジャンク・フード好きのアメリカ人、悪趣味な人が多い(笑)。

 なお、アメリカではこれまでの全作品がDVD発売されている。上記のDVDはパート1のものだが、他にも劇場用3部作を揃えたボックス・セットも存在する。アンカー・ベイにしては画質はイマイチだが、極端な低予算で製作されている作品なだけに仕方ないのかもしれない。特典で収録されている監督やフェリッサ・ローズの音声解説は、殆んどがムダ話や思い出話ばかりで、あまり参考にならないのが妙に微笑ましい。

 

エイプリル・フール
April Fool's Day (1986)
日本では87年劇場公開
ビデオは日本発売済・DVDは日本未発売

APRILFOOLSDAY-DVD.JPG
(P)2006 Paramount (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録
)/5.1chサラウンド・2.0chサラウンド/音声:英語・フランス語/字幕:英語/地域コード:1/88分/製作:アメリカ

映像特典
なし
監督:フレッド・ウォルトン
製作:フランク・マンキューソ・ジュニア
脚本:ダニロ・バック
撮影:チャールズ・ミンスキー
音楽:チャールズ・バーンスタイン
出演:ジェイ・ベイカー
    デボラ・フォアマン
    デボラ・グッドリッチ
    ケン・オランド
    グリフィン・オニール
    リア・キング・ピンセント
    クレイトン・ローナー
    エイミー・スティール
    トーマス・F・ウィルソン

 スラッシャー映画ブームも急速に衰え始めた1986年に全米公開されたのが、この「エイプリル・フール」。記念日ネタも底を尽きてきたとあって、エイプリル・フールと連続殺人をどう結びつけるのか気になるところだが、まあ、こう来たかと・・・(笑)。とりあえず、エイプリル・フールはどんな嘘や悪戯も許される日なわけだし。個人的には全くアリだとは思うのだが、このオチでは人によって憤慨されても仕方ないだろう。ある意味、夢オチと同じくらいの禁じ手を使ってしまっているのだから。

APRILFOOLSDAY-1.JPG APRILFOOLSDAY-2.JPG APRILFOOLSDAY-3.JPG

船着場に集まってくる若者たち
「エイプリル・フール」より

アーチとスキップの悪戯が原因で大怪我を負う船員
「エイプリル・フール」より

パーティの主賓であるマフィー(D・フォアマン)
「エイプリル・フール」より

 4月1日の金曜日。大富豪セイント・ジョン家の豪邸がある孤島へと向うボートに、島へ招待された8人の男女が乗り込む。自由奔放なニッキ(デボラ・グッドリッチ)、悪ガキ仲間のアーチ(トーマス・F・ウィルソン)とスキップ(グリフィン・オニール)、演劇好きで生真面目なナン(リア・キング・ピンセント)、冗談好きのカメラ小僧チャズ(クレイトン・ローナー)、変わり者のハーヴェイ(ジェイ・ベイカー)、男勝りのキット(エイミー・スティール)と恋人のロブ(ケン・オランド)。彼らはセイント・ジョン家の一人娘マフィー(デボラ・フォアマン)の大学仲間だった。
 ボートの上ですっかり盛り上がる彼らだったが、アーチとスキップの悪戯が原因で船員バックが大怪我を負ってしまう。“奴らのせいだ!”と恨めしげに叫びながら、本土の病院へと運ばれていくバック。
 この事故で気まずいムードの漂った彼らだったが、セイント・ジョン邸の豪華さを目の前にして思わずはしゃぎまくる。屋敷の中には様々な悪戯が仕掛けられており、エイプリル・フール気分も高まってくる。しかし、その悪戯は次第にエスカレートし、彼らの後ろめたい過去を暴くようなジョークまで飛び出すに至って、再び気まずいムードが漂うようになる。
 主催者のマフィーは何も知らないと言い張るが、誰かが週末のパーティを台無しにしようとしていた。やがてスキップの死体が発見され、一人また一人と消えていく。しかも、マフィーには双子の姉妹バフィーがいたことも判明。果たして、彼らの前にいるのはマフィーなのか、それともバフィーなのか?殺戮を繰り広げているのは、彼らに恨みを持つ船員バックなのか?それとも、精神に異常をきたしたマフィーとバフィーの姉妹なのか?

APRILFOOLSDAY-4.JPG APRILFOOLSDAY-5.JPG APRILFOOLSDAY-6.JPG

男勝りのキット(A・スティール)と恋人ロブ(K・オランド)
「エイプリル・フール」より

自由奔放で実はSM好きな(?)ニッキ(D・グッドリッチ)
「エイプリル・フール」より

やんちゃな悪戯小僧のアーチ(トーマス・F・ウィルソン)
「エイプリル・フール」より

 製作を担当したのが「13日の金曜日」シリーズ(パート3以降)のフランク・マンキューソ・ジュニアということで、深いことを一切考えずに楽しめるポップコーン・ムービーには仕上がっている。まあ、いちいち深いことを考えてたら楽しめないはずだと思うし(笑)。
 監督のフレッド・ウィルトンは「夕暮れにベルが鳴る」('79)で素晴らしいサスペンス演出を披露し、カトリックをテーマにした宗教サスペンス「殺しのロザリオ」('87)という佳作も撮っている人物だが、本作では辻褄合わせに終始してしまい、肝心の恐怖演出はいまひとつという印象。まあ、「超高層の死角」('89)みたいなC級サスペンスも手掛けていて、作品の出来不出来にムラのある人ではあるのだが。
 撮影は「プリティ・ウーマン」('90)や「プロデューサーズ」('02)などを手掛けているベテランのチャールズ・ミンスキー。だからというわけではないが、大都会の喧騒から離れた孤島の大自然を捉えた映像は非常に美しい。ただ、いくら大自然が美しくてもスラッシャー映画では意味がないと思うのだけど・・・?

APRILFOOLSDAY-7.JPG APRILFOOLSDAY-8.JPG APRILFOOLSDAY-9.JPG

妊娠・中絶の過去を暴かれて激怒するナン(L・K・ピンセント)
「エイプリル・フール」より

アーチの生首を発見して絶叫するニッキ
「エイプリル・フール」より

最後に残されたキットとロブだったが・・・
「エイプリル・フール」より

 出演する若手俳優は、なかなかの粒ぞろい。実質的な主役であるマフィー役のデボラ・フォアマンは、80年代を代表するカルト的青春映画「ヴァレー・ガール」('83)で有名な女優さん。「天才アカデミー」('85)や「ワックスワーク」('88)など、80年代のティーン向け低予算映画に数多く主演し、アメリカでは根強いファンを持つ人だ。
 そんな彼女の元カレという設定のアーチ役を演じるのは、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズのビフ役でお馴染みのトーマス・F・ウィルソン。その親友スキップを演じるのは、ライアン・オニールの息子グリフィン・オニール。80年代に大人気だったテイタム・オニールの妹として鳴り物入りで子役デビューしたものの、全く売れなかった人だ。
 また、男勝りで喧嘩っ早い女の子キットを演じるエイミー・スティールは、「13日の金曜日PART2」('81)のヒロイン役でマニアには有名な女優さん。最近では「キラー・プッシー」('03)にも顔を出していた。カメラ小僧のチャズを演じたクレイトン・ローナーも、ジーン・ハックマン共演の「BAT★21」('88)やカルト映画「ハードカバー/黒衣の使者」('88)などで一時期売れっ子スターだった人だ。

 なお、アメリカ盤DVDは画質・音質ともに大満足の仕上がりだが、映像特典は何も収録されていない。まあ、そこまで深く掘り下げて振り返るような作品でもないのだろう。とはいえ、ちょっと気になるのは、幻の別エンディングの存在である。仕掛け人のマフィーがチャズに殺されるという別エンディングが、少なくともシナリオとしては存在し、なおかつスチル写真まであると言われている。とすると、もしかしたら撮影もされていたかもしれない。だとすれば、ちょっと見てみたい気もするのだが・・・。

 

戻る