シェリーン Sherine
02年にリリースされたシングル“Garh
Tani(別の世界)”で脚光を浴び、ここ数年は母国エジプトのみならずアラブ語圏各国で人気を集めている女性歌手シェリーン。いわゆる“アル・ジール”と呼ばれる現代音楽の流れを汲むアーティストの一人で、エジプトの伝統音楽をベースにしつつ、西欧的なポップスやクラブ・ミュージックを取り入れたスタイリッシュな楽曲が特徴だ。
もちろん、歌唱力もかなり本格的。最近では女優として映画進出も果たし、エジプトを代表するスターへと成長しつつある。
1980年10月10日、エジプトはカイロの生まれ。本名をシェリーン・アブデル・ワハーブという。国立の音楽大学で声楽を学び、99年に音楽プロデューサーのマスル・マールースにスカウトされ、彼の経営する音楽レーベル、フリー・ミュージックと契約。フリー・ミュージックは当時ノンストップのミックス・テープを中心に製作しており、彼女のデビュー曲“Ah
Ya Leil”もその一部として発表されている。
03年には初のソロ・アルバム“Garh
Tani”をリリース。それに先駆けて発表された同名シングルが評判を呼び、アルバムはエジプト以外のアラブ諸国でも好調にセールスを伸ばした。続くシングル“Sabri
Aleel”もヒット。しかし、フリー・ミュージックとの契約トラブルが表面化し、その後しばらく彼女は表舞台から姿を消す。
この一軒でフリー・ミュージックとは袂を分かつと思われたが、最終的には和解が成立。05年には久々の新曲“Ma
Btefrahsh”がアラブ諸国のラジオ・チャートで軒並み1位を独占し、その直後にリリースされたセカンド・アルバム“Lazim
Ayeesh(私は生き残らねばならない)”はプラチナ・ディスクを獲得するほどの大ヒットとなった。
そして、07年にはサウジアラビアのアル・ワリード王子が経営するアラブ世界最大手の音楽レーベル、ロターナへ移籍。翌年にリリースした6曲入りのミニ・アルバム“Bataminak(安心させてあげる)”は大変な話題となった。現在は2010年のリリースに向けてフル・アルバムを製作中とのこと。
また、06年には大ヒット・コメディ“Medo
Mashakel”のゲスト出演で映画デビューを果たし、女優としても活躍中。07年には音楽関係者の男性と結婚して一児をもうけている。
Garh Tani
(2003) Lazim Ayeesh
(2005) Bataminak
(2008)
(P)2003 Free Music/EMI Arabia
(UAE)
(P)2005 Free Music/EMI Arabia
(UAE)
(P)2008 Rotana (Saudi
Arabia)
1,Sabri Aleel ビデオ
2,Eih
Eih
3,Ana Filgharam
4,Kounta
Arfah
5,Bitouhashni
6,Niseeni
7,Boussi Ba'a
8,Garh Tani ビデオ
9,Kalam
10,Ah
Law Gani Tani
11,Ma Tigirahneesh
bonus video
<Garh
Tani>
produced by Free Music/Nasr Mahrous1,Mafeesh Mara ビデオ
2,Lazim
Ayeesh ビデオ
3,Tameen
Alby
4,Ala Bali ビデオ
5,Kount
Baaoul ビデオ
6,Eli
Garhani
7,Ale Saaban Alia
8,Ein Wee Nenny ビデオ
9,Wee Benques
Hayaty Maak
10,Enta Akher Wahed
produced by Free Music1,Bataminak
2,Bi Kelma Minak ビデオ
3,Ana Mesh
Beta'et El Kalam Dah (Remix)
4,Mush' Ayza Ghairak Enta
5,Barage'
Naffsi
6,Mush' Ayza Ghairak Enta (Remix)
こちらがシェリーンのファースト・ソロ。トライバルでダンサンブルなオリエンタル・ディスコ#1がむちゃくちゃキャッチー。個人的にかなりお気に入りのナンバーです。ただ、それ以外の楽曲はわりと地味な印象で、全体としては伝統的なアラブ歌謡の要素が濃厚な仕上がり。エレクトロなテクノ・サウンドを導入した#7が音作り的には結構面白いものの、楽曲としてはいまひとつといったところです。
これは素晴らしいアルバムです。楽曲の充実度もさることながら、ヒップ・ホップからテクノ、クラシックまであらゆる西欧音楽を貪欲に吸収したサウンド・プロダクションの完成度の高いこと!彼女の代表作に相応しい一枚だと思いますね。中でもひと頃の2ステップを思わせるエレクトロ・サウンドがカッコいい#1、エレガントでシンフォニックなバラード#4、哀愁たっぷりのアラブ歌謡風バラード#8はオススメ。
全体で25分程度のミニ・アルバムですが、1曲たりとも手抜きのない完成度の高さ。中でも、叙情的でもの哀しいポップ・バラード#2の美しさは筆舌に尽くしがたいものがあります。サビの美しいコーラスとゴージャスなストリングスの絡みは鳥肌ものだと思いますね。#3ではかなりハード・エッジなヒップ・ホップとアラブ歌謡を難なく融合。ヨーロッパ映画のワン・シーンを思わせる耽美的なバラード#5も感動的です。