SF&ファンタジー映画 ブルーレイレビュー

 

 

怪獣ゴルゴ
Gorgo (1961)

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(P)2013 VCI Entertainment (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
ブルーレイ仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:1.78:1/HD規格: 1080p/音声:2.0ch リニアPCM MONO/言語:英語・フランス語/字幕:英語/地域コード:ALL/77分/制作国:イギリス

<特典>
・メイキング・ドキュメンタリー「Ninth Wonder of the World: The Making of Gorgo」
・コミック版ビデオ・ギャラリー
・ロビーカード&ポスター・ギャラリー
・スチル・ギャラリー
・オモチャ&関連グッズ・ギャラリー
・プロダクション・ノート
・オリジナル劇場予告編
・プレスブック・ギャラリー
・フランス語コミック版ギャラリー
・レストア前後比較ビデオ
・音楽スコア&音響効果トラック
監督:ユージン・ローリー
製作:ウィルフレッド・イーデス
   ハーマン・キング
脚本:ジョン・ローリング
   ダニエル・ハイアット
撮影:フレディ・ヤング
音楽:アンジェロ・ラヴァニーノ
出演:ビル・トラヴァース
   ウィリアム・シルヴェスター
   ヴィンセント・ウィンター
   クリストファー・ローズ
   ジョセフ・オコナー
   ブルース・シートン

 SFファン、怪獣ファンの間では傑作との誉れ高いイギリス映画。火山の噴火で甦った古代怪獣ゴルゴが、欲に目の眩んだ人間によって大都会ロンドンで見世物にされてしまうものの、捕らえられたのは実はまだ子供。怒りに燃える母親ゴルゴがロンドンへと上陸し、子供を奪い返すために町を破壊していく。
 怪獣といえばストップモーションが主流だった欧米では珍しい、本作は着ぐるみによるミニチュア特撮。日本の「ゴジラ」にインスパイアされた結果と言われているが、特撮の完成度は「ゴジラ」を上回るほどのもの。特に終盤のパニック・シーンは、スケールにおいてもリアリズムにおいても時代に色褪せない迫力だ。ストーリー的には「キング・コング」の亜流とも言えるが、しかし人類の自然破壊を明確なテーマにしたメッセージ性の高さは特筆すべきだろう。

 これまでに2度DVD化されている本作。いずれも米VCIからのリリースで、日本盤DVDも同一のマスターを使用していた。最初のバージョンはレターボックス仕様で、フィルムの状態も決して良いとは言えず。2度目のバージョンはワイドスクリーン仕様で、カラーの発色もフィルムのキズやホコリもだいぶ改善はされていたが、しかしボヤけたような粗い映像がなんとも残念だった。
 で、改めて米VCIからリリースされた上記ブルーレイは、35ミリ・フィルムから新たにフルハイビジョンでテレシネを行い、デジタル技術によるレストア作業が施されたという。確かにフィルムのキズやホコリは殆ど見られないし、解像度が増したこともあって画像のイメージもきめ細やかで滑らか。ただ、やはり今回も輪郭の潰れや滲みが目立っており、フィルム・グレインのチラツキも濃厚。シャープで鮮明なリマスター映像を期待するとガッカリするかもしれない。
 恐らく、本作はオリジナル・ネガやマスター・ポジが現存しないのであろう。画質から判断する限りでは、上映用ポジフィルムをマスターに使用したのではないかと思われる。特典であるレストア前後の比較映像を見ると、修復以前のフィルムの状態は完全にボロボロ。テクニカラーはすっかり色あせ、一部ではひどく変色してしまい、キズもホコリもひび割れもバッチリと目立つ。なので、相当に手の込んだ丁寧なレストア作業が行われたであろうことは想像に難くない。過去のDVDと比較してもクオリティの向上は明らか。これが現在望みうる最高の画質と考えるべきなのだろう。
 ちなみに、音声はオリジナル英語版、フランス語吹き替え版ともにリニアPCMの2.0chモノラル。リリース前の情報では5.1chサラウンドと告知されていたが、蓋を開けてみたら違っていた。とはいえ、セリフは明瞭で聞きやすいし、音楽スコアや音響効果も重量感たっぷり。DVDの音声と比べても迫力の違いは歴然としている。

 さらにボリューム満点の特典映像も魅力だ。まずはメイキング・ドキュメンタリー。DVD版に収録されていたものとは別の新たな撮り下ろしで、「プリズン」や「パペット・マスター」シリーズの脚本家C・コートニー・ジョイナー、SF映画の研究者兼コレクターで自ら怪獣映画のスーツ・アクターでもあったボブ・バーンズなどのインタビューで構成されている。随所に撮影舞台裏の8ミリ映像や関係者の生前の音声インタビューも織り交ぜられており、企画の立ち上げから完成までのプロセスを克明に追った見応えのある内容だ。
 さらに、当時のロビー・カードやポスター、関連グッズなどを網羅した各種ギャラリーもこれまでにないほど充実。ただ、その大半がなぜかビデオ収録されているため、気になったものをじっくり見たい場合はリモコンの一時停止ボタンを押さなければならないのが面倒なのだけれど。そんなこんなで、さすがに100点満点というわけにはいかないものの、「怪獣ゴルゴ」のビデオソフトとしては過去最高の内容であることは間違いないはず。

 

 

ダーク・スター
Dark Star (1974)

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(P)2012 VCI Entertainment (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
ブルーレイ仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:1.85:1/HD規格: 1080p/音声:5.1ch DTS-HD MA、2.0ch リニアPCM MONO/言語:英語/字幕:英語・スペイン語/地域コード:ALL/83分/制作国:アメリカ

<特典>
・メイキング・ドキュメンタリー「Let There Be Light: The Odyssey of Dark Star」
・SF作家アラン・ディーン・フォスターのインタビュー
・俳優ブライアン・ナレルのインタビュー
・ダーク・スター船内の3Dガイド
・ダン・オバノンのイントロ説明文
・トリビア
・ファン代表アンドリュー・ギルクライストによる音声解説
監督:ジョン・カーペンター
製作:ジョン・カーペンター
脚本:ダン・オバノン
   ジョン・カーペンター
撮影:ダグラス・ナップ
音楽:ジョン・カーペンター
出演:ブライアン・ナレル
   ドレ・パヒッチ
   キャル・カニホルム
   ダン・オバノン

 ジョン・カーペンター監督とダン・オバノンのデビュー作としても知られるSF映画。キューブリックの「2001年宇宙の旅」から色濃く影響を受けつつ、独特のシュールなユーモアを散りばめた不条理SF喜劇だ。舞台は宇宙開発の進んだ近未来。他の惑星への移住計画を進める人類は、宇宙探査船ダーク・スターを送り出して邪魔となる不安定惑星を爆破させていた。ストーリーの主軸は、そんな退屈なミッションを任された乗組員たちの、うだつの上がらない日常生活。やがて自分の意思を持つ爆弾が命令に従わなくなってしまい、再三の説得にも関わらず宇宙船もろとも自爆しそうになる…ってなわけなのだが、最後の最後までノンビリとしたユルいペースが貫かれていく。
 本来は南カリフォルニア大学の学生だったカーペンターたちによる自主制作の学生映画なのだが、それを見て気に入った低予算SF映画の製作者ジャック・H・ハリスが配給権を買い上げ、追加撮影を行った上で劇場公開された作品。そのコミカルな内容にもかからわず、シリアスな本格的SF映画として宣伝されてしまったせいもあり、当時の観客からは全く理解されずに興業的惨敗を喫してしまった。
 この失敗でキャリアの崖っぷちに立たされたカーペンターだが、彼の才能を買っていたハリスが草稿段階にあったサスペンスの脚本をジョン・ピータースに売り込み、フェイ・ダナウェイ主演の「アイズ」('78)として映画化されることに。おかげで映画界における道が開けた彼は、ヨーロッパで大成功した「要塞警察」('76)を経て、モダン・ホラーの金字塔「ハロウィン」('78)を生み出すこととなる。また、オバノンも本作での雪辱をバネに「エイリアン」('79)の脚本を書き上げたというわけだ。
 作品自体も、VHS時代にソフト化されてから一部に熱狂的なファンを生み、今ではカルト映画として広く認知されている。ただ、決して万人受けする映画ではない。学生映画ということを考えると宇宙空間の特撮は立派な出来栄えだが、ビーチボールに色を塗っただけというエイリアンはショボイし、極めてスローペースなストーリー展開もグダグダした印象は免れまい。脚本に込められた哲学的なメッセージを含め、その青臭いアマチュア感覚を楽しめるか否かで賛否は大きく分かれるはずだ。

 もともと16ミリ・フィルムで撮影されたものを、劇場公開用に35ミリ・フィルムへ拡大プリントされた本作。それゆえに、当時から決して画質のクオリティは高くなかった。上記の米国版BDは、その35ミリの上映用プリントからフルハイビジョンでテレシネを行い、フレームごとにデジタルでレストア処理を施したという。16ミリからのブローアップ&上映用プリントという2重のハンデ。ゆえに画像イメージの粗さは否めないものの、以前に同じ米VCIからリリースされたリマスター版DVDと比較しても、全般的に画質が向上していることは確かだろう。カラーの鮮明さや黒の深みも十分なレベル。これまでのソフト化では最良のバージョンだ。
 なお、パッケージには画面アスペクト比がハイビジョン・サイズの1.78:1と表記されているが、実際には劇場公開時と同じ1.85:1のアメリカン・ビスタサイズでの収録。なので、上下に僅かな黒帯が表示される。音声はDTS-HDの5.1chサラウンドとリニアPCMのモノラルを用意。5.1chはクリアだが概ね軽い印象で、かえって非圧縮リニアPCMのモノラル音声の方が迫力がある。
 特典映像の目玉は約2時間にも及ぶメイキング・ドキュメンタリー。カーペンターおよびオバノンのコメントは過去のビデオ映像や古いインタビュー音声からの抜粋だが、主演俳優ブライアン・ナレルや撮影監督のダグラス・ナップ、美術担当のトミー・リー・ウォレス、大学の後輩ジェフ・バー、配給担当ジャック・H・ハリスといった関係者の新録インタビューは嬉しい。しかも、ダン・オバノンの自主制作学生映画も一部収録されており、大学時代のキャンパスライフに始まり、企画の立ち上がった背景から製作過程、ジャック・H・ハリスの関与、劇場公開時の様子やその後の歩みに至るまで、本作に関わる全ての舞台裏ドラマが克明に語られていく。実に素晴らしいドキュメンタリーだ。
 ちなみに、'15年4月には日本盤ブルーレイの発売も予定されており、そちらは劇場公開版に加えて73分のディレクターズ・カットも収録されるという。特典映像も音声解説を除いた米国盤の内容がそっくり移植される様子で、さらにオリジナル劇場予告編やスチル・ギャラリーも追加されるらしい。どうやら、米国盤の利点は値段の安さだけということになりそうだ。

 

 

Sorceress (1982)

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(P)2014 Scorpion Releasing (USA)
画質★★★★★ 音質★★★★☆
ブルーレイ仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:1.78:1/HD規格: 1080p/音声:2.0ch DTS-HD MA MONO/言語:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/83分/制作国:アメリカ・メキシコ

<特典>
・ロジャー・コーマンのインタビュー
・SFX担当ジョン・カール・ビュークラーのインタビュー
・脚本家ジム・ウィノスキーのインタビュー
・ポスプロ監修クラーク・ヘンダーソンのインタビュー
・オリジナル劇場予告編
監督:ジャック・ヒル
製作:ジャック・ヒル
脚本:ジム・ウィノスキー
撮影:アレックス・フィリップスJr.
出演:リー・ハリス
   リネット・ハリス
   ボブ・ネルソン
   デヴィッド・ミルバーン
   ブルーノ・レイ
   ロベルト・バレストレス

 '80年代の初頭、シュワちゃん主演の「コナン・ザ・グレート」('82)の大成功を受けて、いわゆるヒロイック・ファンタジー映画がちょっとしたブームとなった。B級映画の帝王であるロジャー・コーマン御大も当然ながらその波に乗り、「勇者デスストーカー」('84)などの亜流映画を大量生産したのだが、その第一弾となった作品がこの日本未公開作「Sorceress」だ。
 ストーリーは基本的に「コナン・ザ・グレート」のパクリ。違うのは主人公が双子のブロンド美女で、彼女たちのヌードが必要以上にフューチャーされているということだろうか(笑)。さらに、暗いリアリズム志向を前面に出した「コナン〜」に比べて、こちらは古き良き史劇ファンタジー映画を彷彿とさせる軽いノリが特長だ。
 両親を殺された双子姉妹ミラとマラが、イケメンの放蕩者王子様アーリックや中年バイキングのヴァルダール、そして半獣半人のヒツジ男パンドの助けを借りて、宿敵である魔術師トライゴンを倒すための旅に出る。ところが、実はミラとマラの2人はトライゴンの実の娘で、生まれてすぐに魔神カリガラを復活させるための生贄となるはずだったが、良き魔術師クローナに救われて里子に出されていたのだ。そして、トライゴンは改めて生贄の儀式を行うため、成長した娘たちを捕らえるべく軍隊を出動させる。果たして、ミラとマラは無事に復讐を遂げることができるのか…?
 というわけで、ロジャー・コーマンらしい超低予算のB級映画ながら、あの手この手の旺盛なサービス精神が楽しい作品。特に半獣半人のパンドや機械仕掛けのマスクを使った猿人、地下墓地から甦ったミイラ・ゾンビ軍団、そしてクライマックスに登場する巨大な翼を持った空飛ぶライオンなどのクリーチャー・デザインはインパクト強烈だ。しかも、この空飛ぶライオンと対決する魔神カリガラというのが、お岩さんみたいな顔をしたオバサンの巨大な生首(笑)。低予算を逆手にとったキッチュなセンスが炸裂する。

 監督は「コフィー」('73)や「フォクシー・ブラウン」('74)などのカルト映画でお馴染みのジャック・ヒル。だが、彼の手によるディレクターズ・カットは2時間にも及び、しかも当時宗教にのめり込んでいたこともあってか、やたらとスピリチュアルな内容だったことから、コーマンの指示によって大幅な再編集と追加撮影が行われたため、彼は自らの名前をクレジットから外してしまった。なので、本編にはコーマンの2人の息子の名前を合体させたブライアン・スチュアートという架空の人物が監督としてクレジットされている。
 主演は雑誌「プレイボーイ」のプレイメイトだったハリス姉妹。演技に関しては全くの素人だったようだが、なかなかどうして悪くない。撮影は人件費の安いメキシコで行われ、脇役の俳優も大半がメキシコ人。そのため、セリフは別人が吹き替えているケースが多いらしく、声と顔のイメージが全然合わない役者がいたりするのもご愛嬌だ。トータルの製作費は約50万ドル。しかし、興行収入は最終的に400万ドル以上に達し、この予想外の大ヒットに気をよくしたコーマンは、続々とヒロイック・ファンタジー映画を世に送り出すこととなったわけだ。なお、タイトルのSorceressとは女魔術師という意味。でも、本編には男の魔術師しか登場しない(笑)。

 で、カルト映画専門の米スコルピオン・リリーシングより発売された上記のブルーレイ。オリジナルのインターポジをマスターに使用しており、これが驚くほどの高画質だったりする。まさにツルツルのピッカピカ。輪郭もシャープだし、カラーも鮮明だ。しかも、過去に発売されたVHS(日本では残念ながら未発売)よりも5分ほど長い83分のオリジナル完全版で収録されている。モノラルのDTS-HD音声もすこぶる良好だ。
 特典映像はロジャー・コーマンをはじめとする関係者のインタビュー。特殊効果マンとしての力量を遺憾なく発揮したジョン・カール・ビュークラー、「コナン・ザ・グレート」が劇場公開された翌日にコーマンから脚本の執筆を指示されたジム・ウィノスキー、どちらも完成版の脚本がオリジナルとは違っていることを認めているものの、ユーモラスなセリフに関してはビュークラーがジャック・ヒルのアイディアであると語る一方、ウィノスキーは自分が書いたものだと断言しており、微妙に認識が異なっているのが面白い。
 また、彼らによればコーマンとヒルは編集の段階で大いに揉めてしまい、それが原因で2人は袂を分かつことになったというが、コーマンのインタビューではその件に関して一切触れられておらず、ひたすらヒルの功績を讃えている。30年以上も前のことだから忘れてしまったのか、それともなかったことにしたいのか。まあ、いい意味でも悪い意味でも優れた商売人であるコーマンのこと、今さら触れるべきことではないと判断したのかもしれない。
 ってなわけで、本編も特典も十分に楽しめる逸品。'80年代B級ファンタジー映画のファンなら一見の価値ありのお薦めタイトルだ。

 

 

砂の惑星
Dune (1984)

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(P)2010 Universal Studios (USA)
画質★★★★★ 音声:★★★★★
ブルーレイ仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:2.35:1/HD規格: 1080p/音声:5.1ch DTS-HD MA、2.0ch DTS-HD MA/言語:英語・フランス語/字幕:英語・フランス語・スペイン語/地域コード: ALL/137分/制作国:アメリカ

<特典>
・削除シーン集(ラファエラ・デ・ラウレンティスによるイントロダクション付き)
・「Dune's Design」メイキング・ドキュメンタリー
・「Dune FX」メイキング・ドキュメンタリー
・「Dune Models & Miniatures」メイキング・ドキュメンタリー
・「Dune Warrior Design」メイキング・ドキュメンタリー
監督:デヴィッド・リンチ
製作:ディノ・デ・ラウレンティス
   ラファエラ・デ・ラウレンティス
脚本:デヴィッド・リンチ
原作:フランク・ハーバート
撮影:フレディ・フランシス
音楽:トト
   ブライアン・イーノ
出演:カイル・マクラクラン
   ショーン・ヤング
   フランセスカ・アニス
   ユルゲン・プロホノフ
   ケネス・マクミラン
   スティング
   エヴェレット・マッギル
   ホセ・フェラー
   マックス・フォン・シドー
   サイアン・フィリップス
   ヴァージニア・マドセン
   ポール・スチュアート
   フレディ・ジョーンズ
   ディーン・ストックウェル
   リチャード・ジョーダン
   リンダ・ハント
   シルヴァーナ・マンガーノ

 公開当時は批評家から散々に酷評され、興行成績も失敗に終わり、その後はマニアの間でカルト的な人気を得つつも、依然として賛否両論が大きく分かれている壮大なSF叙事詩。フランク・ハーバートの原作小説は未読だが、確かに宗教色の濃厚なストーリーはダイジェスト版的な駆け足感が拭えないし、やたらと説明臭かったり大袈裟だったり難解だったりするセリフにも困惑させられる。
 しかし、古代エジプトから中世ヨーロッパまで様々な文化を混在させた独特のネオ・バロック調な美術デザインや衣装、グロテスクで粘着度の高いクリーチャー・デザインやキャラクター造形など、デヴィッド・リンチ監督らしいダーク・ファンタジー・テイストの歪んだ世界観は、一度ハマったらやめられなくなる人も多いはずだ。
 かく言う筆者もそのうちの一人。個性が強い玄人好みの名優ばかりを揃えたオールスター・キャストもたまらない。中でも、シアン・フィリップスにシルヴァーナ・マンガーノ、そしてフランセスカ・アニスという強面の演技派美人女優で固められたシスターたちのキャスティングは最高。これはストーリーよりもビジュアルを堪能する映画であり、ごく一部の限られた特殊な趣味の人々にのみ受け入れられるタイプの作品だと言えるかもしれない。

 日本でもアメリカでも過去に幾度かDVDソフト発売されてきた本作だが、いずれも画質的には十分に満足のいくものではなかった。特に日本では僅かな特典映像のみの残念なパッケージ化しか実現しておらず。そうした中でリリースされた上記アメリカ盤ブルーレイは、少なくとも画質の面では過去最高のクオリティだ。
 とはいっても、文句なしにパーフェクトというわけではない。確かに前半の60分ほどはハッと目が覚めるくらいにクリアな映像で、セットの奥行きといい立体感といいい、これまでに見たことがないほど鮮明だ。そのおかげで、当時の原始的な合成技術の粗までモロバレになってしまうものの、細部まで手の込んだプロダクション・デザインを心ゆくまで堪能できるのは嬉しい。背景から文字がクッキリと浮かび上がったオープニング・クレジットなど感動ものだ。
 しかし、中盤を過ぎたあたりから濃厚なフィルム・グレインの目立つシーンがチラホラと見受けられるようになり、ほんの一部ではあるにせよフィルムの擦り切れたようなノイズやホコリも散見される。個人的には全くの許容範囲だが、恐らく気になるユーザーも少なくないかもしれない。
 収録されているのは劇場公開バージョンのみ。テレビ放送用に再編集された3時間オーバーの特別編は未収録だ。しかし、あれは紙芝居なんかを挿入して無理矢理長くしただけの退屈極まりないバージョン。デヴィッド・リンチが自らの名前のクレジットを認めなかったことも納得の出来栄えで、むしろ入れなくて良かったと個人的には思っている。なお、マニアの間ではリンチの編集した3時間バージョンがあるらしいと噂されてきたが、リンチ本人も製作のラファエラ・デ・ラウレンティスもその存在を否定している。
 音声はオリジナルの英語版が5.1chサラウンド、フランス語吹き替え版が2.0chステレオ。5.1chサラウンドは全体的に平坦な印象を受けるものの、かといって視聴に支障をきたすような問題があるわけでもない。セリフは明瞭だし、音楽スコアやSEの重量感もまずまずといった感じだ。
 特典は過去の米国版DVDからの移植で、ブルーレイ用の新しいコンテンツはない。トータルで45分に及ぶメイキング・ドキュメンタリーが5つのパートに分けられており、それぞれテーマに添って制作スタッフが当時の思い出や苦労話を、貴重な撮影風景やリハーサル風景などのビデオを交えながら語っている。リンチ自身が本作についてあまり語りたがらないのは有名だが、それでもなお監督のインタビューなりコメンタリーなりは欲しかった。

 

 

炎の少女チャーリー
Firestarter (1984)

FIRESTARTER.JPG
(P)2014 Universal Studuios (USA)
画質★★★★★ 音質★★★★★
ブルーレイ仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録/画面比:2.35:1/HD規格: 1080p/音声:2.0ch DTS-HD MA MONO/言語:英語/字幕:英語・フランス語/地域コード:ALL/115分/制作国:アメリカ

<特典>
なし
監督:マーク・L・レスター
製作:フランク・キャプラ・ジュニア
脚本:スタンリー・マン
原作:スティーブン・キング
撮影:ジュゼッペ・ルッツォリーニ
音楽:タンジェリン・ドリーム
出演:ドリュー・バリモア
   デヴィッド・キース
   ジョージ・C・スコット
   フレディ・ジョーンズ
   マーティン・シーン
   ヘザー・ロックリア
   アート・カーニー
   ルイーズ・フレッチャー
   モーゼス・ガン
   アントニオ・ファーガス

 スティーブン・キングの小説「ファイアースターター」の映画化で、当時スピルバーグ監督の「E.T.」('82)で脚光を浴びていたドリュー・バリモアの初主演作として大々的に公開された作品だ。'80年代前半といえば「クジョー」('83)や「デッドゾーン」('83)、「クリスティーン」('83)などキング原作のホラー映画やSF映画が矢継ぎ早に製作された時代。完成度にも大きくバラつきがあったわけだが、本作の評価は概ね芳しくなく、興行的にも今ひとつ奮わなかった。
 ストーリーは極めて単純。両親が政府の秘密実験の被験者だったことから強力なテレキネシスを持つ少女チャーリーは、母親を殺されて秘密機関に拉致されそうになったことから、父親と共に安住の地を求めて逃亡。だが結局捕まってしまい、様々な実験を施された挙句に父親も殺され、怒りに燃えた彼女はテレキネシスで起こした火の玉で研究所を破壊し尽くす。
 とりあえず話が長い(笑)。いや、上映時間そのものは物理的に必ずしも長くはないのだが、極秘研究施設での実験シーンやら、チャーリーを手懐けようとする殺し屋との会話シーンやら、どうにも面白みに欠けるような場面が多すぎる。そのせいで中だるみしてしまい、だんだんと“早く終わらねえかなあ…”という気持ちにさせられてしまうのだ。
 ただし、終盤の火の玉攻撃シーンはまずまずの迫力。ジープが吹っ飛んだり、人間が吹っ飛んだり、ヘリが空中爆破されたりと、結構派手にやってくれる。まあ、最近の映画に比べれば技術が追いついていない分だけスピード感には乏しいが、当時映画館で見たときはそれなりにワクワクしたもんだった。なので、今の若い人が見たら“何じゃこりゃ!?”と思われるかもしれないけれど(笑)。

 日本では残念ながら一度もDVD化されたことのない本作。アメリカでは単品の他に、TVミニシリーズ版の続編「炎の少女チャーリー:REBORN」とのカップリングで発売されたこともあったが、今年に入ってようやくブルーレイ版が登場した。どうやら改めてフルハイビジョンによるデジタル・リマスターが施されたらしく、画質は驚くほどのハイクオリティ。キャストの肌の質感が手に取るように分かるのはもちろん、僅かな汗までもがはっきりと目視できる。ただ、その代わりにいろいろと見え過ぎてしまうというのも難点で、炎に包まれたスタントマンの防護用マスクがバッチリと確認できてしまうのは玉に瑕。また、過度にクリアな映像が逆にフィルムらしさを失っていると感じる向きもあるかもしれない。
 音声はオリジナルのモノラル・トラックをDTS-HDマスターオーディオにエンコード。何でもかんでも5.1chサラウンドにリミックスすればいいというわけではないが、こちらのモノラル音声は全体的にパンチが足りず、拳銃音や爆発音などの音響効果があまり生きていない。もともと劇場公開時の音声がどんなものだったかは残念ながら記憶にないが、何かしらの手を加える必要はあったのではないかとも思う。
 だが、本ブルーレイの最大の弱点は特典がゼロだということ。DVDには収録されていたオリジナル劇場予告編までカットされているのはいかがなものか。複数の端末で共有再生できるウルトラヴァイオレット仕様とのことだが、別にスマホやタブレットで映画を見たりはしないので、個人的にはなんの有り難みもなし。まあ、コアなファンのいる作品ではないので、メーカー側も余計なコストをかけられないのだろうけれど。

 

 

スペース・インベーダー
Invaders from Mars (1986)

INVADERS_FROM_MARS.JPG
(P)2014 Koch Media (Germany)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆

ブルーレイ仕様(ドイツ盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:2.35:1/HD規格: 1080p/音声:2.0ch DTS-HD MA STEREO/言語:英語・ドイツ語/字幕:英語・ドイツ語/地域コード:B/100分/制作国:アメリカ

<特典>
・メイキング・ドキュメンタリー
・プロモーション映像
・オリジナル劇場予告編(英語版・ドイツ語版)
・ドイツ語版オープニング
・ドイツ語版エンディング
・ポスター&スチル・ギャラリー

監督:トビー・フーパー
製作:メナハム・ゴーラン
   ヨーラム・グローバス
脚本:ダン・オバノン
   ドン・ジャコビー
原作:リチャード・ブレイク
撮影:ダニエル・パール
音楽:クリストファー・ヤング
出演:カレン・ブラック
   ハンター・カーソン
   ティモシー・ボトムス
   ローレン・ニューマン
   ルイーズ・フレッチャー
   ジェームズ・カレン
   バド・コート

 '50年代の古典的SFホラー「惑星アドベンチャー」('53)をトビー・フーパー監督がリメイク。彼にとっては「スペース・バンパイア」('85)に続くキャノン・フィルム製作のSF映画であり、あの興奮とスペクタクルをもう一度!とばかりに当時は劇場へ足を運んだファンも多かったに違いないが、蓋を開けてみれば違った意味でB級感丸出しのポンコツ映画だった。
 全米での興行成績も前作を大幅に下回る大惨敗。まあ、「スペース・バンパイア」も米国内では製作費を回収できなかったらしいが、少なくとも日本では夏休み映画として結構な話題を呼んだ。しかし、こちらは一転して大不評。ブタゴリラみたいなエイリアンや安上がりな特撮が失笑を買ったもんだったが、同時にそのキッチュなバカバカしさが一部で熱狂的ファンを生んだことも確か。筆者も最初こそ“なんじゃこりゃ?”と思ったが、それこそ人工着色料いっぱいの駄菓子みたいなものと言うべきか、体に悪いと分かっていても後を引く美味しさのようなものにヤられちまったのである(笑)。
 主人公は宇宙に憧れる想像力豊かな少年デヴィッド。ある夜、彼は家の裏山にUFOが不時着する様子を目撃し、両親の寝室に駆け込むが、当然のことながら信じては貰えない。ところが翌朝、裏山の散歩から戻った父親の様子がおかしい。別人のように感情がないのだ。よく見ると、その後ろ首には妙な傷がある。それをきっかけに、母親や学校教師、クラスメートなどが次々と“別人”になっていく。学校保健師リンダを味方につけたデヴィッドは、裏山の地中に隠れたUFOを発見。エイリアンが次々と住人をさらっては後ろ首に機械を埋め込んで支配し、地球侵略計画を着々と進めていたのだ…!
 ということで、舞台の大半が学校と裏山とUFO内部。スケール感の小さいことハンパない(笑)。オスカー女優ルイーズ・フレッチャー演じる学校教師のカエル丸呑みなんて悪趣味なシーンも。UFO内部のケバケバしいライティングといい、そのお下品さがかえって憎めなかったりするのだよねえ…。

 アメリカではレターボックス収録のアンカーベイ版とスクィーズ収録のMGM版の2種類のDVDがリリースされていた本作。日本ではMGM版と同じマスターを使用したキング・レコード版DVDが存在するものの、アメリカ盤に収録されていたメイキング・ドキュメンタリーなどの特典映像は収録されていなかったようだ。
 上記のブルーレイはドイツのコッホ・メディアから発売されており、恐らくマスターは米MGM版DVDと一緒。フィルム自体はきちんとレストアされており、キズやノイズなどは全く見られないが、画質そのものはシャープネスに欠けていて輪郭もボケ気味だ。印象としてはDVDとブルーレイの中間といった感じ。音声もMGM版DVDと同じ2.0chのステレオをDTS-HDマスターオーディオにエンコードしただけである。
 で、特典映像もMGM版とほぼ同じ。メイキング・ドキュメンタリーは劇場公開当時のもので、日本でも「メイキング・オブ・スペースインベーダー」のタイトルでVHS発売されていた。トビー・フーパー監督やジョン・ダイクストラなどの裏方スタッフやカレン・ブラックやハンター・カーソンなど出演者のインタビューに加え、撮影舞台裏風景もたっぷりと収められている。プロモーション映像はその短縮版だ。
 ブルーレイのみのオリジナル特典は、オリジナル劇場予告編やオープニング映像、エンディング映像の各ドイツ語バージョン。さらに、ポスター&スチル・ギャラリーでは、各国の宣伝ポスターやドイツとイタリアのロビーカードが収録されている。
 なお、アメリカのカルト映画専門レーベル、スクリーム・ファクトリーから、新たな特典映像を含むリマスター版ブルーレイが'15年夏に発売される予定。これからの購入を検討しているのならば、米国盤のリリースを待ったほうが得策かもしれない。

 

 

ダーク・エンジェル
Dark Angel (1990)

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(P)2014 Scream Factory (USA)
画質★★★★★ 音声★★★★☆
ブルーレイ仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:1.78:1/HD規格: 1080p/音声:5.1ch DTS-HD MA、2.0ch DTS-HD MA/言語:英語/字幕:英語/地域コード:A/91分/制作国:アメリカ

<パッケージ仕様>
ジャケット2種類(リバーシブル)

<特典>
・メイキング・ドキュメンタリー(クレイグ・R・バクスレー監督、ドルフ・ラングレン、ブライアン・ベンベン出演)
・オリジナル劇場予告編
・ポスター&スチル・ギャラリー
監督:クレイグ・R・バクスレー
製作:ジェフ・ヤング
脚本:ジョナサン・タイダー
   レオナード・マース・ジュニア
撮影:マーク・アーウィン
音楽:ヤン・ハマー
出演:ドルフ・ラングレン
   ブライアン・ベンベン
   ベッツィー・ブラントリー
   マティアス・ヒューズ
   ジェイ・バイラス

 「ロッキー4/炎の友情」('85)のロシア人ボクサー、ドラゴ役でブレイクし、当時B級アクション映画のヒーローとして引っ張りだこだったドルフ・ラングレンの主演したSF刑事アクション。凶悪な麻薬組織を追うテキサスのはぐれもの刑事が、殺した人間の体液を麻薬化して母星で売りさばくエイリアンと戦うことになる。そこに、主人公とは正反対の堅物な若手捜査官との対立と友情、密かにエイリアンの存在を把握しているFBIの陰謀などが絡む。
 監督はテレビ「特攻野郎Aチーム」や映画「プレデター」のスタント・コーディネーターだったクレイグ・R・バクスレー。ドラマ・パートの演出はかなり大雑把だし、全体的に低予算の弱点をカバーしきれていないという印象だが、やはりというかさすがというか、アクション・シーンだけはやたらと力が入っている。特に火薬の使用量はハンパじゃなく、火柱の立ち方なんかも異常(笑)。その点はすげえなと思うが、映画としては凡庸な低予算アクションだ。

 日本でも10年ほど前にDVD発売されたことのある本作。上記の米スクリーム・ファクトリー版は世界初のブルーレイ化で、画質はすこぶる良好だ。部分的にフィルム・グレインがチラつきすぎるシーンはあるものの、全体的には適度な按配。鮮明なディテールは夜間シーンで効果を発揮している。また、一部で画面が白っぽくなりすぎる場面があるのだが、これは撮影監督のマーク・アーウィンが意図したもので、通常よりも多めにスモークを焚いたのだそうだ。
 音声は2種類を用意。ジャケット裏には2.0chステレオのDTS-HDマスターオーディオしか表記されていないが、実際には5.1chサラウンドマスターオーディオも収録されている。5.1chリミックスはイマイチ迫力不足なので、ここは素直にオリジナルのステレオ音声を選択したほうが良かろう。なお、本作は米国内では“I Come in Peace”というタイトルで劇場公開されたのだが、今回のBDではその全米公開バージョンでの収録になる。
 特典の目玉は約25分の最新メイキング・ドキュメンタリー。バクスレー監督と主演ドルフ・ラングレン、ブライアン・ベンベンの3人のインタビューで構成されている。最近では人気ドラマ「プライベート・プラクティス」のウォーレス医師役で親しまれ、映画よりもテレビ俳優として知名度の高いベンベンだが、当時は6年も続く大ヒットとなったコメディ・ドラマ「Dream On」の主演でブレイクしたばかりだった。監督のバクスレーも共演のドルフもバリバリの肉体派だったため、ブロードウェイ出身でバックグランドの全く違う彼は苦労の連続だったようだ。
 ちなみに、これまたジャケット裏には表記されていないものの、予告編に加えてポスター&スチル・ギャラリーも収録されている。これって、やっぱりサプライズのつもりなのだろうか(笑)?

 

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