The Scribbler (2014)

 

SCRIBBLER.JPG
(P)2014 XLrator Media (USA)
画質★★★★★ 音質★★★★☆
ブルーレイ仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:2.40:1/HD規格: 1080p/音声:5.1ch DTS-HD MA/言語:英語/字幕:英語/地域コード:ALL/90分/制作国:アメリカ

<特典>
オリジナル劇場予告編
監督:ジョン・スーツ
製作:ガブリエル・コーワン
   ケン・F・レヴィン
脚本:ダニエル・シャファー
撮影:マーク・パットナム
音楽:アレック・ピューロ
出演:ケイティ・キャシディ
   ギャレット・ディラハント
   ミシェル・トラクテンバーグ
   イライザ・ドゥシュク
   ビリー・キャンベル
   マイケル・インペリオーリ
   ジーナ・ガーション
   サーシャ・グレイ

<Review>
 シカゴ国際映画祭などで監督賞を獲得した「ザ・スリル」('13)や「バッド・マイロ!」('13)など数々のインディーズ・ホラーを精力的にプロデュースし、自らも「JIGSAW ルール・オブ・デス」('06)などを演出しているジョン・スーツの監督最新作。ビジュアル的にもストーリー的にもアダルト向けグラフィック・ノベル色がかなり強いのだが、案の定というか、どうやら同名グラフィック・ノベルの映画化らしい。「シン・シティ」('05)や「エンジェル ウォーズ」('11)を彷彿とさせる作品だ。
 舞台は社会復帰目前の精神病患者ばかりが暮らす古い高層アパート。新しく入居した多重人格者の女性スーキーは、脳に直接電流を流すことで人格を一つづつ消去していく実験機器で自己治療を続けていた。ところが、彼女がやって来てから一人また一人と入居者の女性が謎の自殺を遂げる。しかも、決まって彼女が自己治療で意識を失っている最中に事件が起きていた。やがて、スーキーは自身が“スクリブラー(乱筆者)”と呼ぶ別人格が犯人なのではないかと疑い始める…。
 暗くジメジメとした場末のアパートが醸し出すノワールなムード、レトロとハイテクが混在したディストピア的な世界観、心の病を抱えた登場人物たちが織り成す殺伐とした人間ドラマ。己の本当のアイデンティティーを模索するヒロインは、一連の不可解な出来事を通じて人間の多面性を受け入れることで、やがて自らの秘められたスーパーパワーに目覚めていく。そういう面では、クリストファー・ノーラン的ダークヒーローの覚醒ドラマとも言えるかも知れない。
 人間は白でも黒でもなくグレーな存在だ、というメッセージは明快。ただ、ヒロインのモノローグを含めた大仰なセリフのわりに、ストーリーの展開は全く捻りがなく単純で、ご都合主義的な印象は否めないだろう。ディープなようでいて実は底が浅いという感じ。それでも、凝りに凝ったフェティッシュなビジュアルは結構好きだし、スーキーと真犯人のカンフーバトルをワーヤーワーク満載で描いたクライマックスのアクションも悪くない。ミシェル・トラクテンバーグにイライザ・ドゥシュクの共演も「バフィー〜恋する十字架〜」のファンとしてはちょっと嬉しかったりする。ジャンル系映画マニアならワリと楽しめる作品かもしれない。

<Story>
 パトカーや救急車が次々と到着して騒然とするジュナイパー・タワー。ここは退院した精神病患者が社会復帰の準備のために暮らす高層アパートだ。その一室で若い女性スーキー(ケイティ・キャシディ)がモス刑事(マイケル・インペリオーリ)の尋問を受けている。このアパートでは近ごろ入居者が次々と投身自殺をしており、スーキーはその関与が疑われていたのだ。そこへ警察の精神科医シルク(イライザ・ドゥシュク)が現れ、この数週間で何が起きたのかを問いただす。
 精神病院を出てジュナイパー・タワーへ越してきたスーキーは、長いこと多重人格に苦しんできた。担当医のシンクレア博士(ビリー・キャンベル)は、自らが開発した実験用の人格除去装置シャムニーズ・バーンを用いて彼女に治療を行い、症状が改善してきたことから退院の許可が出たのだ。
 とはいえ、まだ彼女の中には複数の人格が同居しており、中でも言葉を喋らない代わりに猛烈なスピードで逆さ文字を書き殴る“スクリブラー(乱筆者)”は不穏な存在だった。そんなスーキーにシンクレア医師はシャムニーズ・バーンを託し、自立に備えた生活を送りつつ、自らの手で別人格を一つづつ消去することを促す。
 薄暗く寂れたアパートには、女性の元精神病患者ばかりが暮らしていた。唯一の例外を除いて。それは、以前にスーキーと病院で一緒だった男性患者ホーガン(ギャレット・ディラハント)だ。もともと鬱病を患っていたホーガンだが、実はもう既に全快しており、本来であればジュナイパー・タワーを出ているはずだった。しかし、大の女好きである彼は仮病を使ってアパートに居残り、女性入居者たちと片っ端から肉体関係を持っていた。
 その入居者たちなのだが、いずれもエキセントリックで掴みどころのない女性ばかり。いつも陰鬱な面持ちの皮肉屋バニー(サーシャ・グレイ)、アパート内を全裸で歩き回っているエミリー(アシュリン・イェニー)、階段をうろつきながら他人を突き落としてばかりいるアリス(ミシェル・トラクテンバーグ)などなど。巨大な蛇を体に巻きつけたクレオ(ジーナ・ガーション)だけは、スーキーに好意的で親切だったが、他の入居者たちはみんな敵対的だった。
 ある日、スーキーがシャムニーズ・バーンを使って意識を失っている最中に、入居者の一人が投身自殺を遂げた。さらに、再びシャムニーズ・バーンを使ってアパートの外で意識を取り戻した彼女は、気を失っている間にバニーがやはりアパートから身を投げて死んだ事を知る。しかも、部屋に戻ると壁中に“スクリブラー”のなぐり書きした跡が残されていた。もしかすると意識を失っている間に“スクリブラー”が自分の体を乗っ取り、凶行を重ねているのではないかとの不安がよぎるスーキー。
 そもそも、彼女はシャムニーズ・バーンでの治療を重ねるうちに、アリスの飼い犬がコックニー訛りで言葉をしゃべり始めるなどの奇妙な現象を体験していた。そこで、スーキーはホーガンからビデオカメラを借りて、治療中の自分の姿を撮影してみることに。すると、そこに映っていたのは目から光を放ち別人のような変貌を遂げた自分の姿だった…。

<Information>
 冒頭でも述べたように、ジョン・スーツ監督はホラーを中心としたジャンル系インディーズ映画の監督および製作者として活躍している人物。特にここ数年は大変な勢いでプロデュース作品を量産している。なお、本作のプロデュースを担当しているガブリエル・コーワンは、スーツ監督の自主制作時代からのパートナーだ。
 原作と脚本を手がけたダニエル・シャファーは、欧米でカルトな人気を誇るホラー・コミック“Dogwitch”シリーズの作者として有名なイギリス出身のコミック・アーティスト。映画では、これまでに「ゾンビハーレム」('09)などの脚本に参加している。そのほか、撮影監督のマーク・パットナムや音楽のアレック・ピューロなど、スタッフはいずれもジャンル系インディーズ映画で活躍している人物ばかりだ。

 主演は人気ドラマ「スーパーナチュラル」の悪魔ルビー役で人気を博し、最近では「ゴシップ・ガール」のジュリー役や、「アロー/ARROW」のローレル役でお馴染みの人気女優ケイティ・キャシディ。往年の人気アイドル、デヴィッド・キャシディの愛娘としても知られる。映画でも「ストレンジャー・コール」('06)や「ブラック・クリスマス」('06)、「エルム街の悪夢」('10)などホラー系のスクリームクィーンとして有名だ。
 どこか子供っぽくて憎めないヤリチンのホーガンを演じているのは、最近だと「チョコレートドーナッツ」('12)のアラン・カミングの彼氏ポール役や「それでも夜は明ける」('13)の白人奴隷アームスバイ役などが印象深いギャレット・ディラハント。アメリカでは未成年で子供を持った息子を見守る父親を演じた「シングルパパの育児奮闘記」('10〜'14)など、テレビ俳優としても認知度が高い人だ。
 アパート入居者の中でも最もダークなオーラを放つアリス役には、大人気女子ドラマ「ゴシップガール」('07〜'12)のイカれた悪女ジョージナ・スパークス役で有名なミシェル・トラクテンバーグ。スーキーに少なからず理解を示す警察の精神科医シルク役には、主演ドラマ「トゥルー・コーリング」('03〜'05)や「ドールハウス」('09〜'10)が日本でも大ヒットしたイライザ・ドゥシュク。2人ともテレビの青春ホラー・アクション「バフィー〜恋する十字架」('97〜'03)でブレイクした女優であり、本作における久々の再共演はバフィー・ファンならばポイント高い要素だろう。まあ、スクリーンで直接絡むようなシーンはないのだけれど。
 最初からスーキーを犯人扱いするいけ好かないモス刑事役を演じているのは、テレビ史上に燦然と輝く傑作ドラマ「ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア」('99〜'07)の血気盛んな甥っ子クリス役や「ニューヨーク1973/LIFE ON MARS」('08〜'09)の憎まれっ子刑事レイ役などでお馴染みのマイケル・インペリオーリ。スーキーに怪しげな治療を施すシンクレア博士役には、かつてアメコミ大作映画「ロケッティア」('91)のヒーロー役で華々しく売り出されたもののコケてしまい、最近では主演ドラマ「HELIX -黒い遺伝子-」('14〜)など主にテレビで活躍しているビリー・キャンベル。そして、妖艶な精神病患者クレオ役には、かつて「ショーガール」('95)や「バウンド」('96)などの映画で売れっ子だったジーナ・ガーション。
 そのほか、ハードコアポルノのトップ女優だったサーシャ・グレイや「ムカデ人間」('09)シリーズのアシュリン・イェニー、全米で大ブームを巻き起こしたシットコム「ビッグバン★セオリー/ギークなボクらの恋愛法則」('07〜)のラージ役で有名なクナル・ネイヤーなどが登場。こうやってみると、なかなか豪華なキャスト陣だったりする。

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