50年代カルトSF映画傑作選 Part 5

 

 

宇宙水爆戦
This Island Earth (1955)
日本では1955年劇場公開
VHSは日本発売済・DVDは日本未発売

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(P)2006 Universal (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/スタンダード・サイズ/モノラル/音声:英語/字幕:英語・スペイン語・フランス語/地域コード:1/86分/製作:アメリカ

映像特典
オリジナル劇場予告編
監督:ジョセフ・M・ニューマン
製作:ウィリアム・アランド
原作:レイモンド・F・ジョーンズ
脚本:フランクリン・コーエン
    エドワード・G・オキャラハン
撮影:クリフォード・スタイン
視覚効果:ロズウェル・A・ホフマン
音楽:ジョセフ・ガーシェンソン
出演:ジェフ・モロー
    フェイス・ダミューア
    レックス・リーズン
    ランス・フラー
    ラッセル・L・ジョンソン
    ダグラス・スペンサー
    ロバート・ニコルス

 ホラー映画の老舗ユニバーサル・スタジオが、『イット・ケイム・フロム・アウター・スペース』('53)に続いて発表したSF映画。ユニヴァーサルのSF映画といえばエイリアンの醜悪なクリーチャー・デザインにあると言えるが、本作で登場する脳みそをむき出しにした昆虫型ミュータントも強烈なインパクトだった。
 ストーリーそのものは全く他愛がない。絶滅寸前の惑星から来たエイリアンが地球人の科学者を利用し、地球への侵略を試みようとするというもの。ミステリー仕立ての前半はかなり退屈だが、主人公たちがUFOに乗って惑星メタルーナへ連れて行かれる辺りから一気に面白くなる。特にスケールの大きいマット合成は完成度も高くて見応え十分。ピアノ線がもろに見えてしまうシーンも結構目立つが、それも古いSF映画に付きものの“味”として楽しみたいところだ。今見ると原始的なテクニックを使ったB級映画という印象も拭えないが、当時としては立派な大作映画だった。

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原子力研究の第一人者であるミーチャム博士(R・リーズン)

モニターから語りかける謎の男エクセター(J・モロー)

無人の飛行機に乗り込んだミーチャム博士

 原子力研究の第一人者として注目されている科学者ミーチャム博士(レックス・リーズン)の周辺で、ある時から不可解な出来事が起きるようになった。博士の運転するジェット機が飛行中に故障。あわや墜落かと思われたその瞬間、ジェット機が緑色の光に包まれ、無事に着陸することが出来たのだ。
 さらに、正体不明の業者から謎の機械部品が勝手に送られてきた。その部品の驚くべき質の高さに興味を持ったミーチャム博士は、カタログに載っている部品を全て注文し、同僚のウィルソン(ロバート・ニコルス)と共に組み立ててみた。すると、今までに見たこともない通信機器が出来上がる。モニターには奇妙な風貌をしたエクセター(ジェフ・モロー)という男が現れ、自分たちの研究施設で働かないかとミーチャム博士を誘う。
 その高度な科学技術に好奇心をかき立てられた博士はその申し出を受け、指定された待ち合わせ場所へと向った。そこにやって来たのは遠隔操作で動く無人の飛行機。ウィルソンの反対を押し切って飛行機に乗った博士は、人里離れた空港へと到着する。待っていたのは女性科学者アダムス博士(フェイス・ダミューア)だった。ミーチャムとアダムスは旧知の仲だったが、なぜかアダムスは人違いだと言い張る。
 アダムス博士に連れられて研究所へやって来たミーチャム博士。そこには世界各国から超一流の科学者たちが集まっていた。しかし、すぐに彼はエクセターやその部下たちの様子を怪しむようになる。それにはアダムス博士も同意見だった。彼女はミーチャムと二人で行動しても怪しまれないために、初対面を装っていたのだ。
 同じくエクセターたちの研究に疑問を抱くカールソン博士(ラッセル・L・ジョンソン)と共に研究所から脱走を図るミーチャムとアダムス。ところが、エクセターたちは研究所を爆破させ、UFOを操ってミーチャムたちを追ってきた。カールソン博士は爆殺され、プロペラ機で逃げようとしたミーチャムとアダムスはUFOにさらわれてしまった。
 実はエクセターたちは惑星メタルーナからやって来た宇宙人だった。メタルーナは敵対する惑星ザーゴンの攻撃によって絶滅の危機に瀕していた。そこで、彼らは地球の科学者たちを使って新たな武器の開発を進めようとしていたのだ。なぜなら、地球人はザーゴン人と同じように好戦的な種族だからだ。
 ミーチャムとアダムスを連れてメタルーナへと向うエクセター。そこは、長年の宇宙戦争によって荒廃してしまった死の惑星だった。エクセターはここで二人に研究の続きを行ってほしいという。しかし、ザーゴンの攻撃は日増しに激化する一方で、メタルーナの支配者(ダグラス・スペンサー)は最終手段に打って出るしかないと考えていた。それは地球への侵略である。それを知ったエクセターは、ミーチャムとダグラスの脱走を手助けする。彼は地球の自然や文化に親しみを感じていたのだ。
 何とかUFOへたどり着くことに成功した3人。しかし、メタルーナの軍用生物である昆虫型ミュータントが、彼らを追ってUFOにもぐり込んでいたのだ・・・。

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空港で出迎えたアダムス博士(F・ダミューア)

研究所には世界各国の科学者が集められていた

UFOに捕らえられたミーチャムとアダムス

 監督のジョセフ・M・ニューマンはもともと西部劇やギャング映画を得意とした職人監督で、SF映画を手がけたのは後にも先にもこれ一本だけ。だからというわけではないが、全体的に特撮の見せ方などはあっさりとしていて、そつなくこなしているという印象が強い。ストーリー・テリングも非常に淡白。それゆえに、特殊効果やマット・ペイントのスケール感に比べると、話そのものが小ぢんまりとまとまってしまった印象だ。
 レイモンド・F・ジョーンズの短編小説を脚色したのはフランクリン・コーエンとエドワード・G・オキャラハン。コーエンはジョン・フランケンハイマー監督の名作『大列車作戦』('64)でオスカーにノミネートされた脚本家だ。撮影を担当したのは『イット・ケイム・フロム・アウター・スペース』や『ペティコート作戦』('59)のクリフォード・スタイン。
 そして、本作の目玉であるカラフルで独創的な美術デザインを担当したのは『オペラ座の怪人』('44)や『スパルタカス』('60)などで3度のオスカーに輝いた大御所アレクサンダー・ゴリツェンと、ドリス・デイ主演の『夜を楽しく』('59)やダグラス・サーク監督の『悲しみは空の彼方に』('59)などを手がけたリチャード・H・リーデルの二人。さらに。オプチカル合成はヒッチコックの『鳥』('63)やパニック映画『大地震』('74)のロズウェル・A・ホフマンが担当している。また、昆虫型ミュータントのクリーチャー・デザインを手がけたのは、『大アマゾンの半魚人』('54)で有名なミリセント・パトリック。彼らの見事な職人技こそが、本作における最大の武器と呼べるかもしれない。
 また、音楽監督としてジョセフ・ガーシェンソンの名前がクレジットされているが、実際にスコアを書いたのはヘンリー・マンシーニやハワード・ステインだったようだ。当時の映画会社は自社作品で自由に使える音楽ライブラリーを持っており、数多くの作曲家が様々なタイプのスコアを提供していた。その中から場面に相応しいスコアをピック・アップしていくのが、いわゆる音楽監督の仕事だったわけだ。

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メタルーナは死の惑星と化していた

惑星ザーゴンからの攻撃を受けるメタルーナ

昆虫型ミュータントがアダムス博士を襲う

 おでこの広い宇宙人エクセター役を演じているジェフ・モローは、当時『聖衣』('53)や『異教徒の旗印』('54)といったスペクタクル史劇に数多く出演していた俳優。その一方で、この『宇宙水爆戦』や“Kronos”('57)、“The Giant Claw”('57)などのSF映画やモンスター映画にも引っ張りだこだった。
 また、ミーチャム博士役のレックス・リーズンは戦争映画や冒険映画の脇役として活躍していた俳優だが、代表作はこの『宇宙水爆戦』と言えるだろう。彼はSF映画“The Creature Walks Among Us”('56)でも科学者役でジェフ・モローと共演している。
 そして、ヒロインであるアダムス博士役で登場するのが、50年代SF映画の女王であるフェイス・ダミューア。本作と“Cult of the Cobra”('55)は彼女の代表作である。

 なお、日本では未だにDVD化されていない本作だが、アメリカでは2年前に発売済み。ところどころでフィルムの傷が散見されるものの、それ以外は状態すこぶる良好だ。特にカラフルな色彩の美しさは見事なもので、テクニカラーの魅力を存分に味わうことが出来る。

 

怪獣ゴルゴ
Gorgo (1959)
日本では1961年劇場公開
VHS・DVD共に日本発売済

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(P)2005 VCI Entertainment (USA)
画質★★☆☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(レターボックス収録)/モノラル/音声:英語・フランス語
/地域コード:ALL/78分/製作:イギリス

映像特典
メイキング・ドキュメンタリー
フォト・ギャラリー
オリジナル劇場予告編
バイオグラフィー集
監督:ユージン・ローリー
製作:ウィルフレッド・イーデス
脚本:ジョン・ローリング
    ダニエル・ハイアット
撮影:F・A・ヤング
特撮:トム・ハワード
音楽:アンジェロ・フランチェスコ・ラヴァニーノ
出演:ビル・トレイヴァース
    ウィリアム・シルヴェスター
    ヴィンセント・ウィンター
    ブルース・シートン
    ジョセフ・オコナー
    マーティン・ベンソン

 欧米では非常に珍しい着ぐるみ怪獣映画。“The Giant Behemoth”('58)で見事な特撮シーンを披露したユージン・ローリー監督が、さらにスケールアップした破壊パニック・シーンを存分に見せてくれる傑作だ。特に合成技術やミニチュア・セットの完成度の高さには舌を巻くこと請け合いだ。
 巨大怪獣ゴルゴの足元で逃げまどう人々、破壊されていくタワーブリッジやビッグ・ベン。ゴルゴがもぎ取った橋の欄干から、人間が次々とテムズ川へ投げ落とされていくのには驚いた。怪獣が暴れると人が死ぬ、というのはごく当たり前のことなのだが、『ゴジラ』をはじめとする数多の怪獣映画では殆ど描かれることがなかった視点だ。崩れ落ちてきた建物の下敷きになって死ぬ人々、逃げ場を失ってアパートの窓から次々と落下していく人々など、まさに戦争映画さながらの徹底したリアリズムが貫かれている。
 大勢の群衆が地下鉄のホームになだれ込むシーンでは、いち早く危険を察知した主人公たちが線路に飛び出してトンネルへと逃げ込むが、遅れを取った人々は崩れ落ちてきた天井に呑み込まれてしまう。この生と死を分ける運命の非情さ。怪獣映画というと往々にして子供向けと思われがちだが、本作に限っては大人の鑑賞にも十分堪えうる出来栄えだ。

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一攫千金を夢見るジョー(B・トレヴァース)とサム(W・シルヴェスター)

港町に現れた怪獣と逃げまどう人々

 アイルランド沖で海底火山が噴火し、宝探しをしていた船が激しい津波に襲われた。船長ジョー(ビル・トレイヴァース)と相棒サム(ウィリアム・シルヴェスター)の二人は、近隣のナラ島で船の修理をすることにした。
 彼らは島でショーン(ヴィンセント・ウィンター)という孤児の少年と知り合う。ショーンは港の責任者であるマッカーティン(クリストファー・ローズ)の家に身を寄せていた。ジョーとサムはそこでバイキング船の財宝を発見する。この島の沖合いから発見されたものだった。二人は一攫千金の欲に目がくらむ。
 しかし、島では夜な夜な漁師が謎の死を遂げていた。死因は極度の恐怖による心臓発作だった。やがて、真夜中に沖合いの海から巨大な怪獣が現れ、小さな港町を恐怖のどん底に陥れた。怪獣は火山の噴火によって蘇った古代生物だった。島の人々の激しい抵抗の結果、ようやく怪獣は海へと姿を消す。そこで、ジョーとサムの二人は仲間を集め、怪獣を生け捕りにするべく船を出航させた。
 何とか怪獣を生け捕りにすることに成功したジョーとサム。そこへ新聞のニュースで事件を知った生物学者ヘンドリックス博士(ジョセフ・オコナー)とフラハティー博士(ブルース・シートン)が現れ、大学での研究用に怪獣を譲って欲しいと申し出る。しかし、欲に目の眩んだ二人は、より高額の条件を提示してきたロンドンのサーカス団に怪獣を売り払うことにした。
 怪獣を連れてロンドンへと出航する船。二人は仲良くなった少年ショーンも一緒に連れて行くことにした。囚われた怪獣の姿を見て哀れに感じたショーンは、こっそり網をほどいて逃がそうとする。それに気付いたジョーは激怒するが、サムは怪獣に同情するショーンの孤独な心に胸を痛めた。

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ロンドン市内を運ばれる怪獣ゴルゴ

ゴルゴを一目見ようと集まってきた観客たち

 一行はロンドンへと到着。ゴルゴと名づけられた怪獣はトラックの荷台に載せられて市内を巡り、物見高いロンドン市民の注目を一身に集めた。ゴルゴはサーカスの巨大な檻の中に入れられ、見世物として披露されることになる。一方、古代生物について様々な調査を行っていたフラハティー博士らは、ゴルゴがまだ子供であるという結論にたどり着いた。となると、どこかに親がいるはずだ。
 その頃、ナラ島の沖合いではゴルゴをさらに上回る巨大な怪獣によって、港町が完全に破壊しつくされていた。ゴルゴの母親が現れたのである。その情報を知った博士たちは、母怪獣がゴルゴを追ってロンドンへ向っていると推測する。その行く手を阻止するべく、すぐさま海軍が召集された。しかし、母怪獣の驚異的な破壊力には海軍の軍艦や潜水艦も全く歯が立たず、次々と撃沈されていった。
 やがて、母怪獣はロンドンへと上陸。迎え撃つ陸軍をことごとく蹴散らし、我が子を取り戻すべく街を破壊しながら前へと進んでいった。ロンドンはたちまち大パニックに陥る。そんな中、母怪獣の姿を一目見ようと、ショーンはロンドン市街へと向う陸軍のジープに乗り込んだ。後を追うジョーとサム。阿鼻叫喚の地獄絵図を目の当たりにしたジョーは、金に目の眩んだ自分の愚かさを改めて後悔する。果たして、彼は無事にショーンを救い出すことが出来るのか?そして、火の海に包まれたロンドンの運命は・・・?

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タワーブリッジを破壊する母怪獣

ロンドン市内を逃げまどう人々の背後に母怪獣が迫る!

 驕り高ぶった人類に対する自然の逆襲、というテーマそのものは日本の『ゴジラ』の二番煎じ。しかし、あくまでも怪獣を純真無垢な犠牲者として描いており、その点では非常にユニークな発想の作品だったと言えるだろう。日活の特撮怪獣映画『大巨獣ガッパ』('67)は明らかに本作のパクりだったし、そもそも後の和製怪獣ものに多く見られる“親子”テーマのルーツと考えてもいいかもしれない。
 また、欧米のSF映画や怪獣映画はなにかと女性キャラクターを登場させ、ストーリーとは無関係な恋愛ドラマを入れたがる傾向が強い。しかし、本作ではその辺りをバッサリと切り捨てており、その潔さにも好感が持てる。ローリー監督の前作“The Giant Behemoth”でも女性キャラが登場していたが、本作では主要キャストに一人も女性がいない。そのおかげもあって、非常に硬派で説得力のある脚本に仕上がっている。
 ちなみに、脚本に参加したジョン・ローリングとは、西部劇の脚本家として鳴らしたロバート・L・リチャーズの偽名。ジェームズ・スチュワート主演の『ウィンチェスター銃’73』('50)で全米脚本家組合賞にもノミネートされた実績を持つ人物だ。
 そして、圧倒的な迫力の特撮シーンを担当したのが、デヴィッド・リーン監督の『陽気な幽霊』('45)とジョージ・パル監督の『親指トム』('58)で2度のオスカーに輝く巨匠トム・ハワード。ミニチュアと実写の合成シーンなどは、どこからがミニチュアなのか全く見分けがつかないくらい精巧に仕上がっている。怪獣が街中を闊歩するその足元で、大勢の群衆が逃げまどっている光景などは圧巻としか言いようがないだろう。
 そもそも、ミニチュア・セットの完成度が素晴らしかった。レンガが崩れていく様子なんか全くの本物にしか見えない。そこに何百というエキストラの逃げまどう姿が合成され、まるでドキュメンタリー映画のような緊張感と臨場感が再現されるのだ。スピルバーグの『宇宙大戦争』のパニック・シーンにも驚かされたが、スケールの大きさとリアリズムという点では本作も負けてはいない。CGなど全くない時代に、これだけの特撮シーンを作り上げたというのは本当に驚きだ。
 ただ、唯一の欠点が怪獣のクリーチャー・デザイン。時代が時代なだけに、いかにも着ぐるみに見えてしまうのは仕方ないにしても、頭でっかちの野暮ったい姿はちょっと拍子抜けだった。
 なお、撮影を担当したF・A・ヤングとは、『ドクトル・ジバゴ』('65)でアカデミー賞を受賞した大御所カメラマン、フレディ・ヤングのこと。音楽にはスペクタクル史劇で有名なイタリアの名匠アンジェロ・フランチェスコ・ラヴァニーニが参加。これだけ一流のスタッフを揃えた怪獣映画というのも、当時としてはかなり珍しかったと言えるだろう。

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壮絶なパニック・シーンは見もの

ロンドンの名所ピカデリー・サーカスも大パニックに

 欲に目の眩んだ船長ジョーを演じるビル・トレイヴァースは、ハリウッドでも活躍したタフ・ガイ俳優。妻ヴァージニア・マッケンナと共に主演した『野生のエルザ』('65)で広く知られ、野生動物の保護活動にも尽力した人物だ。他にも『野生のポリー』('70)や『ベルストーン・フォックス』('73)といった動物映画に主演し、映画監督としても活躍した。
 相棒サム役のウィリアム・シルヴェスターは『2001年宇宙の旅』('68)のドクター役で知られる俳優。もともとアメリカの出身だが、イギリスで演技の勉強をしたという。『吸血鬼シニスターの復讐』('65)のような主演作もあった。
 その他、ゴルゴに同情する少年ショーン役には“The Kidnappers”('55)でアカデミー特別賞を受賞した名子役ヴィンセント・ウィンターが、ヘンドリックス博士役には『オリバー!』('68)の老優ジョセフ・オコナー、フラハティー博士役には当時イギリスで人気のあった“ファビアン警部”シリーズに主演した名優ブルース・シートンが登場する。

 なお、上記のアメリカ盤はデジタル・リマスターと銘打っている割に、画質はあまり良くない。恐らく上映用のポジからテレシネされているのではないかと思うのだが、全体的に映像の肌理が粗いのだ。日本盤は内容未確認。また、本国のイギリスでは未だにDVDソフト化されていない模様。

 

合衆国の恐怖・火星からの伝言
Red Planet Mars (1952)
日本では劇場未公開・TV放送のみ
VHS・DVD共に日本未発売

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(P)2006 Cheezy Flicks (USA)
画質★★☆☆☆ 音質★★☆☆☆

DVD仕様(北米盤)
モノクロ/スタンダード・サイズ/モノラル
/音声:英語/字幕:なし/地域コード:1
/87分/製作:アメリカ

映像特典
なし

監督:ハリー・ホーナー
製作:ドナルド・ハイド
    アンソニー・ヴェイラー
原作:ジョン・L・ボルダーストン
    ジョン・ホエール
脚本:アンソニー・ヴェイラー
撮影:ジョセフ・F・バイロック
音楽:マーロン・メリック
出演:ピーター・グレイヴス
    アンドレア・キング
    ハーバート・バーグホフ
    ウォルター・サンド
    マーヴィン・ミラー
    ウィリス・ボーシェイ
    モーリス・アンクラム

 異星人とのファースト・コンタクトに東西冷戦問題を絡めた、かなり政治的プロパガンダ色の強いSFドラマ。赤狩りの時代に作られた映画だけに、ソビエトや社会主義に関する描写は偏見だらけも甚だしい。さらに、イエス・キリストの教えこそが世界を救うというクライマックスも荒唐無稽そのもの。もしかして共和党辺りから製作資金が流れてるんじゃないか?と思わず勘ぐってしまいたくなるような作品だ。
 とはいえ、映画の中に出てくる宇宙人といえば地球に侵略してくるのが当たり前だった時代に、宇宙人が一切スクリーン上に姿を見せず、なおかつその存在すら疑問の余地を残しているストーリー展開というのは面白い試みだったと言えよう。宇宙人を物語の鍵として活用しつつも、あくまで地球人たちの争いを描いたドラマとして展開していく辺りは独創性が高い。宇宙からも侵略もなければ、派手な特撮シーンもない。それゆえに、いわゆるSF映画的な楽しみは皆無に等しい。まあ、もともとは舞台劇だったというのだから、それも仕方あるまい。当時の時代背景を理解した上で見れば、これはこれで興味深い点のある作品だろうと思う。

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宇宙科学者クリス(P・グレイヴス)とリンダ(A・キング)夫妻

一家はアメリカの理想的な家族そのもの

夫婦は自宅のラボで宇宙との交信を試みていた

 カリフォルニア在住の宇宙科学者夫妻クリス(ピーター・グレイヴス)とリンダ(アンドレア・キング)は、自宅に建設した通信機を使って異星人とのコンタクトを試みていた。ある日、彼らは宇宙からのメッセージを受け取る。最初は全くの意味不明だったが、独自の暗号ルールを解読することによって、それが火星人からのものであることが分かった。
 一方、その頃アンデス山脈の麓にある秘密基地で、ある男が同じメッセージを傍受していた。その男とはフランツ・カルダー博士(ハーバート・バーグホフ)。彼は元ナチスの科学者で、現在は亡命してソビエトのスパイとして活動していた。クリスとリンダ夫妻の使っている通信機はもともと彼が設計したものだったのだ。アメリカ人が火星人とのコンタクトに成功したことを知ったKGBは、その内容を逐一報告するようカルダー博士に命じる。
 宇宙との通信を続けることによって、火星では文明技術の発達により食料や資源の問題が一切解決されており、地球に比べて人々の寿命も遥かに長いことが分かる。ところが、その内容がマスコミを通じて発表されるや否や、世界各国で思わぬ現象が起きた。火星の文明が伝われば市場経済が根底から覆されるということで株価が暴落し、たちまち世界中に失業者があふれ出したのだ。西側世界はパニックに陥り、一時は英雄視されていたクリスとリンダも混乱の元凶として批判の矢面に立たされた。
 そんな折、火星からの新たなメッセージが解読された。それは聖書の一説を引用したもので、火星の文明に平和をもたらしたのが人々の信仰心であったことを語っていた。火星人たちはイエス・キリストと同じように、神からのメッセージを受け取っていたのだ。
 さらなる混乱をきたすことを危惧したアメリカ大統領(ウィリス・ボーシェイ)は、マスコミへの公表をためらう。しかし、リンダは信仰心こそが人類の危機を救う最後の手段だと大統領に訴えた。また、過去のメッセージがアメリカ政府の公表よりも早くロシアのラジオ局で放送されている事が発覚し、ソビエト政府が通信を傍受しているという疑惑が深まった。とすれば、この新しいメッセージは宗教を禁じているソビエトにとって痛手となるかもしれない。そう考えた大統領は、マスコミへの公表に踏み切った。
 大統領の目論見は正しかった。たちまち世界各国でキリスト教信者が立ち上がり、宗教の大切さが見直された。ロシアのラジオ局はこのニュースを報道しなかったが、密かに外国放送を聴いていた庶民が立ち上がる。当局は武力で押さえつけようとしたが、最終的には革命にまで発展。クレムリンは陥落し、ロシア正教の司祭によって新たな政府が樹立されるに至った。その波はたちまち東欧諸国や中国、キューバなどを呑み込んでいった。
 こうして悪の元凶である共産圏が崩壊し、世界に平和がもたらされた。クリスとリンダは再び英雄として祭り上げられる。ところが、そんな二人の前にカルダー博士が現れた。博士は夫妻に衝撃的な事実を告げる。火星からのメッセージは全て彼が捏造したものだというのだ。果たして、博士の真の目的とは?そして、本当に火星人など存在しないのだろうか?

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KGBスパイ(M・ミラー)とカルダー博士(H・バーグホフ)

当局の目を盗んで外国放送に耳を傾けるロシア市民

ロシア市民もイコンを手に立ち上がった

 先述したとおり、もともとが舞台劇なためにセリフが必要以上に多く、映画的な醍醐味に著しく欠けるのが難点。上映時間そのものは1時間半にも満たないのだが、かなり長く感じられる。大恐慌によるパニック・シーンなども見るからにニュース・フィルムの使いまわしで、相当な低予算で作られたことは明白だ。
 しかし、まるで中世そのままといった感じのロシア市民の生活風景や、滑稽なくらいに愚かで頭の固いクレムリンの権力者たちといった描写は、当時のアメリカにおける典型的なソビエト観を如実に物語っていて興味深い。結果として、この約40年後にソビエトは本当に崩壊してしまうわけだが、かといって本作になんら先見の明があったわけではないことも申し添えておきたい。まあ、ソビエトの崩壊に火星人が絡んでいたなんて、ネタとしては面白いのかもしれないが(笑)。
 監督のハリー・ホーナーはもともと美術監督として鳴らした人。『女相続人』('49)と『ハスラー』('61)で2度もアカデミー賞の最優秀美術監督賞を受賞している。これが初めての監督作だったようだ。その後、ジーン・クレインを主演に迎えたフィルム・ノワールの秀作“Vicki”('53)を世に送り出したが、結果的に映画監督としてはあまり大成しなかった。
 製作と脚本を手がけたアンソニー・ヴェイラーは、戦前から数多くの名作を生み出してきた名脚本家。『ステージ・ドア』('37)と『殺人者』('46)でオスカーにノミネートされたほか、『赤い風車』('52)や『ソロモンとシバの女王』('59)などの脚本でも知られる。
 撮影のジョセフ・F・バイロックも、『ラスベガス万才』('63)や『バイ・バイ・バーディ』('63)、『北国の帝王』('73)、『ロンゲスト・ヤード』('74)、『ハメット』('82)などを手がけたカメラマンで、『タワーリング・インフェルノ』('74)でアカデミー賞を受賞した大御所。さらに、美術監督を担当したチャールズ・D・ホールは、『魔人ドラキュラ』('31)や『フランケンシュタイン』('31)、『フランケンシュタインの花嫁』('35)、『恐竜百万年』('40)の美術デザインを手がけた大ベテランである。編集のフランシス・D・ライオンもロバート・ロッセン監督の『ボディ・アンド・ソウル』('47)でオスカーを受賞しているし、音楽のマーロン・メリックもオスカー候補経験者。低予算のキワモノ映画にしては、スタッフの顔ぶれが驚くほど豪華なのも面白い。

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苦しい立場に立たされるクリス

ついに革命によってクレムリンが陥落した

夫妻の前にカルダー博士が現れる

 主人公のクリスとリンダ夫妻を演じるのは、人気ドラマ『スパイ大作戦』でお馴染みの名優ピーター・グレーヴスと、ワーナー専属のB級ヴァンプ女優として鳴らしたアンドレア・キング。グレーヴスは当時駆け出しの新人だったわけだが、まだ26歳とは思えないほどの貫禄と存在感に驚かされる。確かにハンサムなのだが、相当に老けて見えるのだ。なかなか芽が出なかったのは、そのせいだったのかもしれない。
 また、元ナチスの科学者カルダー博士役を演じているハーバート・バーグホフは、スティーヴ・マックイーンやジャック・レモン、イーライ・ウォラック、ジェイソン・ロバーツなど数多くの名優を育てたことで有名なオーストリア出身の演劇コーチ。リー・ストラスバーグと並び称される、アメリカ演劇界の伝説的人物だ。
 KGBのスパイ役を演じたマーヴィン・ミラーは、50年代の人気テレビ・ドラマ『ミリオネア』に主演して一世を風靡したバイ・プレイヤー。主人公夫妻と親しい軍人ケリー役を演じたウォルター・サンドはボギー&バコールの『脱出』('44)やゲイリー・クーパーの『無宿者』('45)で知られる脇役俳優で、『宇宙大戦争』や『惑星アドベンチャー』といったSF映画でも軍人役を演じていた。また、大統領役のウィリス・ボーシェイはジョン・フォード映画の常連俳優。国防大臣役のモーリス・アンクラムは、『惑星アドベンチャー』や『世紀の謎・空飛ぶ円盤地球を襲撃す』('56)など50年代のSF映画には欠かせない名脇役だった。

 なお、上記のアメリカ盤DVDはパブリック・ドメイン素材を使用しており、正直なところ画質的にはあまりオススメできない。このCheezy Flicksというメーカーは、他にもPD素材を使ったタイトルを大量にリリースしているのだが、何故だかクォリティと反比例して価格設定はかなり高め。なにを基準に作品を選んでいるのか分からないが、正規盤がリリースされているタイトルまで出してしまう神経の太さには恐れ入る。それも、正規盤と同じ価格帯で。ただ、本作に限っていえば他にDVDリリースしているメーカーもなく、過去にMGMが発売していた正規盤VHSも既に廃盤となっているため、コアなSFマニアにとっては貴重な存在と言えるかもしれない。

 

大怪獣出現
The Monster That Challenged The World (1957)
日本では1960年劇場公開
VHS・DVD共に日本未発売

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(P)2004 MGM (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
モノクロ/スタンダード・サイズ/モノラル
/音声:英語/字幕:フランス語・スペイン語/地域コード:1/84分/製作:アメリカ
※『恐怖の火星探検』と2本立て

映像特典
なし
監督:アーノルド・レイヴン
製作:ジュールス・V・レヴィ
    アーサー・ガードナー
原作:アーサー・ダンカン
脚本:パット・フィールダー
撮影:レスター・ホワイト
特殊効果デザイン:テッド・ヘイワース
特殊効果:オージー・ローマン
音楽:ハインツ・ロームヘルド
出演:ティム・ホルト
    オードリー・ダルトン
    ハンス・コンリード
    バーバラ・ダロウ
    ケイシー・アダムス
    ハーラン・ウォード
    ゴードン・ジョーンズ
    ミミ・ギブソン

 50年代のSF映画は蟻やら蠍やらタコやら、ありとあらゆる生物が巨大化して人間を襲ってきたわけだが、本作で巨大化するのはカタツムリ。厳密にはカタツムリというよりも、広く軟体動物と表現したほうがいいのかもしれないが、まあ、そんなところである。
 明らかに『放射能X』('51)の影響を受けた作品なのだが、巨大生物が海中で人間を襲うというのが当時としては珍しかった。深夜に泳いでいた女性が海の中に引きずり込まれるシーンなんかは、まさに『ジョーズ』('74)の先駆けと言っていいだろう。ダミー人形を使って犠牲者の無残な死体を見せるというのも、当時としてはかなり衝撃的だったに違いない。少なくとも、他ではあまり見たことのないショック・シーンだ。
 巨大生物のクリチャー・デザインはなかなか印象的で、等身大のハリボテも当時としてはかなり出来がいい。他愛ないストーリーの低予算映画と言ってしまえばそれまでだが、SFモンスター映画ファンなら一度は見ておいて損のない作品だと思う。

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行方不明の兵士たちを捜索するボート

訓練兵の変死体が海に浮かんでいた

トウィリンジャー大尉(T・ホルト)

 太平洋上でパラシュートの降下訓練が行われていたが、訓練を行った兵士と引き上げに向ったボートの乗組員が消息を立ってしまった。捜索に向ったトウィリンジャー大尉(ティム・ホルト)らは、ボートの上でショック死した乗組員の遺体を発見する。さらに、付近には訓練兵の変死体が浮かんでいた。
 海軍はボートに付着していた粘膜組織の分析を海洋学研究所のロジャース博士(ハンス・コンリード)に依頼。すると、そこから放射能が検出された。一方、トウィリンジャー大尉は博士の秘書ゲイル(オードリー・ダルトン)と知り合う。彼女は夫を亡くした未亡人で、幼い娘サンディ(ミミ・ギブソン)を女で一つで育てていた。研究所職員の妻でゲイルの親友コニー(マージョリー・スタップ)は彼女が大尉に好感を持っていることを見抜き、キューピッド役を買って出ようとするが、夫を亡くした痛手から立ち直っていないゲイルは躊躇する。
 一方、海辺でダイナーを経営する女性の一人娘ジョディ(バーバラ・ダロウ)が、ボーイフレンドとデートに出かけたまま行方が分からなくなってしまった。報告を受けたトウィリンジャー大尉らは、海岸で脱ぎ捨てられた男女の衣服を発見する。
 海洋研究所のスタッフが海底を捜索すると、海藻に絡まったジョディの死体を発見した。すると、そのすぐ傍から謎の巨大生物が現れ、スタッフの一人が犠牲になってしまった。巨大生物は海上に姿を現し、待機していたボートをも襲う。トウィリンジャー大尉は近くにあった棒で巨大生物の目を潰し、なんとか撃退することが出来た。犠牲になったのはコニーの夫だった。知らせを受けたゲイルはコニーを慰める。
 海洋研究所ではロジャース博士が海底から発見された巨大な卵を分析していた。その結果、巨大生物の正体が太古に絶滅したはずの軟体動物であることが分かる。最近行われた原爆実験の影響で地殻の割れ目から姿を現したのだ。放射能の影響で巨大化したものと考えられるという。
 だが、海底に卵があったということは、既に孵化してしまったものが他にいるとも考えられる。直ちに沿岸の警備体制が強化された。案の定、海辺では次々と人間が巨大生物に襲われていった。海軍は総力を挙げて、巨大生物の巣窟を探す。一方、研究所に保管されていた卵が孵化し始めていた。娘サンディの悲鳴を聞いて駆けつけたゲイルは、研究所内を暴れまわる巨大生物を発見する・・・!

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海洋学研究所の秘書ゲイル(A・ダルトン)

行方をくらました女性ジョディ(B・ダロウ)

海底でジョディの変死体が発見される

 監督のアーノルド・レイヴンは西部劇や戦争映画の監督・プロデューサーとして鳴らした人物。60年代に一世を風靡した西部劇ドラマ『バークレー牧場』の生みの親でもある。徐々にサスペンスを盛り上げていくあたりの演出や、ダイナミックな水中シーンの見せ方など、ちゃんと娯楽映画のツボを心得た職人技は好感が持てる。
 製作を手がけたジュールス・V・レヴィとアーサー・ガードナーのコンビも『バークレー牧場』に絡んでおり、アーサー・レイヴン監督とは幾度となくタッグを組んでいるチームだ。彼らは低予算ホラーから西部劇、アクションまで幅広い作品を手がけており、ジョン・ウェインが晩年に主演した現代劇アクション『マックQ』('73)と『ブラニガン』('75)のプロデューサーとしても知られている。
 特殊効果を手がけたのは『ダンディー少佐』('65)や『バーバレラ』('68)、『ソイレント・グリーン』('73)のオージー・ローマン。特殊効果デザインを手がけたのは『サヨナラ』('57)でオスカーを受賞した大御所美術デザイナー、テッド・ヘイワース。はっきりとしたクリーチャー・デザインの担当クレジットは見当たらないが、この二人のどちらかが手がけたのだろう。
 また、撮影監督として『初恋合戦』('35)や『二人の青春』('41)などミッキー・ルーニー&ジュディ・ガーランドのコンビ作品を数多く手がけたカメラマン、レスター・ホワイトがクレジットされている。

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原爆実験で巨大化した太古の軟体動物

巨大生物を撃退するトウィリンジャー大尉たち

娘サンディ(M・ギブソン)を助けようとするゲイル

 トウィリンジャー大尉役を演じているのは、『荒野の決闘』('46)や『黄金』('48)などで有名な西部劇スター、ティム・ホルト。50年代初頭に映画界を引退していたが、本作が久々のカムバック作品となった。一方、その相手役である女性ゲイルを演じたのは、パラマウントの専属スターだったオードリー・ダルトン。清純派女優として『タイタニックの最期』('53)やラナ・ターナーと共演した『プロディガル』('55)などに出演したが、小粒だったせいかあまり大成しなかった。
 ロジャース博士役のハンス・コンリードはディズニー・アニメ『ピーター・パン』('53)のクック船長の声を演じたことで知られる脇役俳優。また、巨大生物の犠牲になる若い娘ジョディ役のバーバラ・ダロウは、『惑星X悲劇の壊滅』('58)にも出ていた女優。その美貌はオードリー・ダルトンなんかよりも遥かに印象的だが、演技力という点ではまるでダメ。お色気担当の脇役一辺倒だったのも仕方あるまい。

 

恐怖の火星探険
It! The Terror From Beyond Space (1958)
日本では劇場未公開(TV放送アリ)
VHSは日本未発売・DVDは日本発売済

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(P)2004 MGM (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
モノクロ/スタンダード・サイズ/モノラル
/音声:英語/字幕:フランス語・スペイン語/地域コード:1/69分/製作:アメリカ

映像特典
オリジナル劇場予告編
監督:エドワード・L・カーン
製作:ロバート・E・ケント
脚本:ジェローム・ビクスビー
撮影:ケネス・ピーチ
モンスター・デザイン:ポール・ブレイスデル
音楽:ポール・ソーテル
    バート・シェフター
出演:マーシャル・トンプソン
    ショーン・スミス
    キム・スポールディング
    アン・ドラン
    ダブス・グリアー
    ポール・ラングトン
    ロバート・バイス

 『エイリアン』('79)の元ネタとして名高いB級SFサスペンス。宇宙船に潜り込んだ火星モンスターが、宇宙飛行士たちを次々と餌食にしていくというストーリーは、SF映画というよりもホラー映画に近い。『遊星よりの物体X』('51)の舞台を北極から宇宙に移しただけという見方もできるかもしれない。
 宇宙船の中で手榴弾やバズーカ砲をバンバン使うという展開も、後のSFアクションを先駆けた発想だと言えるかもしれないし、クライマックスのモンスター撃退法は『エイリアン4』と全く同じだ。そういった意味で非常に興味深い映画ではあるのだが、出来不出来の話になると問題は別。正直なところ、無駄な会話シーンや余計なサイド・ストーリーが多すぎて、69分という上映時間がかなり長く感じられるくらいに退屈だ。
 また、インパクト勝負のヘンテコなクリーチャー・デザインで悪名高いポール・ブレイスデルによる火星モンスターも微妙な印象。水牛みたいな顔がいまひとつ怖さに欠ける。ちなみに、このモンスター・スーツ、同じエドワード・L・カーンが監督した“Invisible Invaders”('59)でも一瞬だけ流用されている。
 いずれにせよ、話のタネに一度見ておくぐらいで十分な作品だろうと思う。

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火星で連絡を絶ってしまった探索ロケット

殺人容疑に問われたカルザース大佐(M・トンプソン)

変わり果てた姿で発見された乗組員

 舞台は近未来の1973年。人類は初めて火星着陸に成功したのだが、探査ロケットとの連絡が途絶えてしまう。真相を探るために火星へ向った救援隊は、カルザース大佐(マーシャル・トンプソン)以外の乗組員が全員死んでいるのを発見した。宇宙局はカルザース大佐を殺人犯として逮捕することを決定し、地球へ連れ戻すことになる。
 地球へ向けて出発した救援ロケット。しかし、カルザース大佐の様子が落ち着かない。彼は火星で謎の生物が仲間を殺したと主張していたが、誰も信じてはくれなかった。唯一、彼に好意を寄せる女性乗組員アン(ショーン・スミス)だけが、その声に耳を傾ける。
 そんな中、乗組員の一人が突然姿を消した。船内を探したところ、通気口の中から変わり果てた姿の乗組員が発見された。その奥から姿を現す不気味なモンスター。船内はたちまちパニックに陥った。手榴弾を使った罠を仕掛けてモンスターを爆殺しようとしたが、全く歯が立たない。
 乗組員たちはモンスターのいる最下層部を封鎖して避難する。しかし、モンスターの力は圧倒的で、次々と封鎖を破って上の階層へと迫ってくるのだった・・・。

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驚異的な力を見せるモンスター

大佐に好意を寄せる女性乗組員アン(S・スミス)

水牛みたいな顔をしたモンスター

 監督のエドワード・L・カーンは『暗闇の悪魔・大頭人の襲来』('57)などAIP製作のB級SF映画で知られる人物。本作は主にB級西部劇で知られるロバート・E・ケントのヴォーグ・ピクチャーズが製作し、ユナイテッド・アーティスツが配給を担当した。
 脚本のジェローム・ビクスビーは『ミクロの決死圏』('66)の原作やテレビ『スター・トレック』の脚本で知られる人物。撮影監督のケネス・ピーチはアーウィン・アレンの海洋アドベンチャー『海底都市』('70)も手がけていた。また、宇宙船などの美術デザインを手がけたウィリアム・グラスゴウは、後に『何がジェーンに起きたのか?』('62)や『ふるえて眠れ』('64)などのセット・デザインを担当している。

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女医ロイス役を演じる名脇役女優アン・ドラン

宇宙船内を徘徊する火星モンスター

いよいよ最終決戦を迎える乗組員たち

 主演のマーシャル・トンプソンはMGM専属のスターとして、50年代から60年代にかけて主に戦争映画や西部劇のヒーローとして活躍した俳優。ただ、どちらかというと低予算映画が多く、50年代半ばにはテレビへと活動の場を移してしまった。相手役のショーン・スミスはもともとシャーリー・パターソンの名前で40年代に活躍したB級女優。シリアル版の『バットマン』('44)ではブルース・ウェインの恋人リンダ役を演じていた。元ミス・カリフォルニアだったらしいが、あまり華のある女優ではなかった。
 そして、宇宙船の専属女性医師ロイス役を演じているのが、ハリウッドを代表する名脇役女優アン・ドラン。生涯に出演した映画の数は実に500本以上と言われているが、中でも有名なのは『理由なき反抗』('55)で演じたジェームズ・ディーンの母親役だろう。

 

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