50年代カルトSF映画傑作選 Part 4

 

 

地球最後の日
When Worlds Collide (1951)
日本では1952年劇場公開
VHSは日本発売済・DVDは日本未発売

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(P)2006 Paramount (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/スタンダード・サイズ/モノラル/音声:英語・フランス語/字幕:英語/地域コード:1/82分/製作:アメリカ

映像特典
オリジナル劇場予告編
監督:ルドルフ・マテ
製作:ジョージ・パル
原作:エドウィン・バルマー
    フィリップ・ワイリー
脚本:シドニー・ボーム
撮影:ジョン・サイツ
    W・ハワード・グリーン
特殊効果:ゴードン・ジェニングス
音楽:リース・スティーブンス
出演:リチャード・デアー
    バーバラ・ラッシュ
    ピーター・ハンソン
    ジョン・ホイト
    ラリー・キーティング
    ジュディス・エイムス
    スティーブン・チェイス
    フランク・キャディ
    ヘイデン・ローク
    メアリー・マーフィ
    スチュアート・ホイットマン

 50年代SF映画ブームの火付け役となった、ジョージ・パル製作のパニック・スペクタクル大作。惑星の大接近による地球破滅の危機を描いており、言うなれば『アルマゲドン』や『ディープ・インパクト』の先駆けとも言える作品だ。
 オスカーを受賞したゴードン・ジェニングスの特殊効果は、今見ると非常にシンプルで原始的。マット・ペインティングを主として使っているためか、なんとなく雰囲気がアニメっぽい。特に、クライマックスの見せ場である惑星の風景は、イラストで描かれているのがモロバレで、さすがに唖然とさせられてしまう。逆に言うと、この50年余りでいかに特殊効果の技術が進歩してきたかということの証なのだが。
 また、地球規模の壊滅的危機であるにも関わらず、ごく一部の人々のドラマだけに終始しているためスケール感に乏しいのは否めないし、人間模様に焦点を絞りすぎてしまったがために緊迫感にも著しく欠けている。
 とまあ、マイナス面を挙げていくときりがないものの、SFパニック映画の原点として忘れてはならない作品であることは確かだろう。この2年後には、あの傑作『宇宙戦争』('53)が誕生しているわけだから、当時のSF映画というのはまさに日進月歩だったわけだ。そうした点も踏まえながら見れば、そのドン臭くて垢抜けない部分も味わいとして楽しめるのではないかと思う。

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重要な任務を与えられたデイヴ(R・デアー)

デイヴと急接近するジョイス(B・ラッシュ)

ジョイスの父親であるヘンドロン教授(L・キーティング)

 南アフリカの天体観測所に務める天文学者ブロンソン博士(ヘイデン・ローク)は、ある衝撃的な事実を発見していた。二つの惑星が地球に異常接近してきているのだ。一つ目の惑星ザイラは地球の側を通過していくだけだが、二つ目の惑星ベラスは激突する可能性がある。
 ブロンソン博士は、ニューヨークのヘンドロン教授(ラリー・キーティング)に詳しい軌道計算を依頼するため、詳細なデータをトップ・シークレット扱いで届けることにする。その任務を仰せつかったのが、軟派な遊び人パイロット、デイヴ・ランドール(リチャード・デアー)だった。
 博士から書類の入ったアタッシュケースを預かったデイヴは、一路ニューヨークへ。空港ではヘンドロン博士の愛娘ジョイス(バーバラ・ラッシュ)が待ち受けていた。教授の待つ研究所へと急いで向った彼らは、ブロンソン博士の予測が正しいことを知る。
 ヘドロン教授はすぐさま国連の議会で対策の必要性を訴えるが、各国の科学者からは一笑に付されてしまった。だが、それでも一部の理解ある富豪や資産家から資金援助を受け、地球脱出用のロケット建設に着手することになる。
 とはいえ、ロケットはまだ開発段階にあり、脱出が成功するという保証はなかった。また、地球を脱出した人類は接近する惑星ザイラへ移住する計画なのだが、実際にザイラが居住可能な惑星なのかどうかも定かではない。しかし、それ以外に選択肢はないのだ。
 そんな教授のもとへ、車椅子に乗ったスタントン(ジョン・ホイト)という老人が現れた。彼は世界的な大富豪で、不足分の費用を提供する代わりに、自分や身内の人間だけをロケットに乗せるよう要求して来る。だが、教授は毅然とした態度で、それを断った。
 ロケットに乗ることが出来る人間は限られている。ならば、人類の未来を託すことが出来る若者や子供を優先しなくてはいけない。また、地球の自然や人類の文化を残すため、様々な動物やデータ化した書物なども積まなくてはならない。スタントン一人だけならば構わないが、後の人間に関しては一切の口出しを遠慮して欲しい、と。自分の脅し文句にも屈しない教授の態度に根負けしたスタントンは、渋々その条件を呑んだ。
 やがて、選ばれた若者たちがロケット建設に従事するため集められた。その中には、ジョイスやデイヴ、そしてジョイスのフィアンセであるトニー・ドレイク博士(ピーター・ハンセン)も含まれていた。ジョイスは自由奔放だが誠実で頼りがいのあるデイヴに心を惹かれるようになる。デイヴへの想いとトニーへの後ろめたさに悩むジョイスに、父であるヘンドロン教授は“自分の気持ちに従うように”と言葉をかける。
 そうこうしている間に、惑星ザイラが地球へと接近してきた。世界各地で激しい地震や洪水が発生し、ニューヨークも水没してしまった。惑星ザイラが地球を直撃する日も近い。ロケットの建設は急ピッチで進められたが、作業中の事故でブロンソン博士が命を落としてしまった。
 そして、いよいよロケットは完成し、地球脱出の日が迫ってきた。ロケットに乗れる人間は建設計画の中枢に携わった人々が優先で、それ以外はくじ引きで決められる。デイヴも優先組に名前を連ねていた。娘ジョイスの気持ちを考えたヘンドロン教授の配慮だった。しかし、そうとは知らないデイヴは、自分が優先されるのは間違っていると異を唱える。また、抽選から漏れた人々の間からも不満の声が沸きあがった。
 果たして、ロケットは無事に地球を脱出することが出来るのか?そして、デイヴの運命はどうなるのか・・・?

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国連の会議で地球存亡の危機が話し合われるが・・・

横柄で我が儘な大富豪スタントン(J・ホイト)

ジョイスのフィアンセ、トニー(P・ハンセン)

 本作で最も興味深いのは、選ばれた人間と動物しか脱出できないという“ノアの箱船”的なコンセプトだ。この11年後に、日本の東宝が同じような設定の特撮パニック『妖星ゴラス』('62)という作品を作っているのだが、こちらでは地球の位置を移動させることによって人類全体を救おうとする。これは個人主義のアメリカ、全体主義の日本、という国民性の違いもあるのかもしれないが、その根底にあるのは恐らく宗教観の違いなのだろう。どちらが良いとか悪いとかは言わないが、本作の冷淡とも言える割り切り方に違和感を覚えてしまうのは、やはり日本人的な感性なのだろうか。
 監督を手掛けたルドルフ・マテは、『リリオム』('34)や『美女ありき』('40)、『生きるべきか死ぬべきか』('42)、『ギルダ』('46)などの撮影監督として知られる名カメラマン。監督としては『都会の牙』('50)というフィルム・ノワールの傑作を残しているが、興行的に最も成功したのは本作だった。しかし、以降は主にB級映画ばかり撮らされる羽目になり、晩年はイタリアで低予算のスペクタクル史劇なんかを作っていた。
 脚本のシドニー・ボームはマテ監督作品の多くを手掛けている人物で、ジーン・バリー主演のサスペンス“The Atomic City”('52)ではオスカーにノミネートされた経験もある。撮影監督のジョン・サイツは『失われた週末』('46)や『サンセット大通り』('50)でオスカーにノミネートされた名カメラマン。共同のW・ハワード・グリーンも、『ジャングル・ブック』('42)や『アラビアン・ナイト』('42)でオスカー・ノミネートの経験があり、特撮を使ったカラー撮影には定評のある人物だった。

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ロケットの建設は着々と進む

大洪水に見舞われたニューヨーク

一心不乱になって作業する人々

 デイヴ役のリチャード・デアーは主にB級西部劇で活躍した俳優で、本作が最大の代表作。フィリピンのジェラルド・デ・レオン監督による怪作『残酷の人獣』('59)では、南海の孤島に漂着する主人公を演じていた。
 バーバラ・ラッシュは『イット・ケイム・フロム・アウター・スペース』('53)でもお馴染みの美人女優。その後、マーロン・ブランドの恋人役を演じた『若き獅子たち』('58)やポール・ニューマンの相手役を演じた『都会のジャングル』('59)で人気スターとなったが、お上品過ぎたせいなのか、あまり大成できなかった。
 ちなみに、命に異常な執着を見せる老大富豪スタントン役のジョン・ホイトは、史上初のSFポルノとして話題になった『フレッシュ・ゴードン』('74)でゴードン博士役を演じている人。また、ブロンソン博士役のヘイデン・ロークは、テレビ『かわいい魔女ジニー』のベローズ大佐役でお馴染みの名脇役だ。
 その他、『乱暴者』('53)でマーロン・ブランドの恋人役に抜擢されたメアリー・マーフィが学生役で、『殺人会社』('60)や『略奪戦線』('70)で知られるタフガイ・スター、スチュアート・ホイットマンが暴動に加担する若者役で、それぞれ一瞬だけチラッと顔を出している。

 なお、本作は今年スティーブン・スピルバーグのプロデュースでリメイク版が製作される予定。監督は『ハムナプトラ』シリーズや『ヴァン・ヘルシング』のスティーブン・ソマーズ。彼の『グリード』は大好きな映画だったが、そのいい意味でのB級感覚が生かされることを切に願っている。

 

水爆と深海の怪物
It Came From Beneath The Sea (1955)
日本では1958年劇場公開
VHS・DVD共に日本発売済
(下記2枚組DVDは日本未発売)

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(P)2007 Sony Pictures (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤2枚組)
モノクロ&カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/5.1chサラウンド&モノラル
/音声:英語・スペイン語・ポルトガル語
/字幕:英語・フランス語・スペイン語・ポルトガル語/地域コード:1/79分/製作:アメリカ

映像特典
レイ・ハリーハウゼンらによる音声解説
メイキング・ドキュメンタリー
ティム・バートン&ハリーハウゼン対談
M・バカライニコフのドキュメンタリー
ストップモーション・アニメ解説
コミック版『水爆と深海の怪物』続編
フォト・ギャラリー
アートワーク・ギャラリー
オリジナル劇場予告編
監督:ロバート・ゴードン
製作:チャールズ・H・シニーア
製作総指揮:サム・キャッツマン
脚本:ジョージ・ワーシング・イェーツ
    ハル・スミス
撮影:ヘンリー・フリューリッヒ
特殊効果:レイ・ハリーハウゼン
音楽:ミーシャ・バカライニコフ
出演:ケネス・トビー
    フェイス・ダミューア
    ドナルド・カーティス
    イアン・キース
    ディーン・マドックス・ジュニア
    チャック・グリフィス

 深海に生息していた巨大タコが水爆実験の影響で水面に姿を現し、大都市サンフランシスコを襲うというSFパニック映画。巨大タコ物というのは意外と根強い人気があって、比較的最近だとNU IMAGE製作の『オクトパス』('00)がそれなりに良く出来ていたし、かつてイタリア産の『テンタクルズ』('76)なんてポンコツ映画もあった。その元祖というべき作品が、この『水爆と深海の怪物』なわけだ(前年の『海底二万哩』にも出てきたけど)。
 ストーリーはいたって単純。レイ・ハリーハウゼンの手掛けたストップモーション・アニメによる巨大タコも、現在のCGに比べてしまえば何とも稚拙なのは致し方ない。しかし、あの手作り感覚のヌメっとした動きや質感はCGにはない独特の味わいだし、逃げまどう群衆とミニチュアの合成シーンは今見てもなかなか見事なもの。海軍の出撃するシーンは記録フィルムからの借用だが、全く違和感を感じさせないのは巧い。他愛ないと言えば他愛ない作品だが、少年時代のワクワクするような感覚を思い起こさせてくれる痛快な娯楽映画だと思う。

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潜水艦を指揮するマシューズ司令官(K・トビー)

ジョイス教授(F・ダミューア)

 潜水艦に乗船していた海軍司令官ピート・マシューズ(K・トビー)は、航海中に正体不明の巨大生物と遭遇した。彼は破壊された機器に残された巨大生物の組織サンプルを持ち帰り、海洋学研究者のジョン・カーター博士(ドナルド・カーティス)とレスリー・ジョイス教授(フェイス・ダミューア)に委ねた。彼らの調査結果によると生物の正体は深海に棲息する巨大なタコで、周辺の水爆実験によって餌が無くなったために浮上してきたのだった。しかし、軍の上層部は荒唐無稽だと言って、まったく取り合おうとしない。
 しかし、その数日後に大型漁船が遭難事故に遭い、救助された乗組員たちが巨大なタコに襲われたと証言したのだ。すぐさま、カーター博士とジョイス教授は海軍から呼び出され、マシューズ司令官に協力して巨大タコの行方を追うことになる。
 やがて、巨大タコはサンフランシスコ湾に出現し、ゴールデン・ゲート・ブリッジに絡みついた。現場に急行したマシューズ司令官が襲われるが、間一髪でカーター博士に助けられた。さらに、タコはその長い脚で市街を襲撃。次々と建物を破壊し、逃げまどう人々を餌食にして行った。駆けつけた軍隊の火炎放射器攻撃で、一端は水中に逃げた巨大タコだったが・・・。

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カーター博士(D・カーティス)らの調査を報告するマシューズ

大型漁船を襲撃する巨大タコ

 随所にマシューズとジョイス教授の恋愛模様だったり、カーター博士を絡めた三角関係なんかが描かれるが、こちらは殆んど刺身のつまといった感じ。かえって、無かった方がスッキリとしたかもしれない。その辺りは、アメリカ映画の悪い癖だろう。最近でもニコラス・ケイジ主演の『NEXT−ネクスト−』('07)が、原作にはないラブ・ロマンスを盛り込んだせいで大層腑抜けた映画になってしまった(まあ、それだけが原因ではないけど)。
 とまあ、ストーリーはともかくとして、先述したようにハリーハウゼンの手掛けたストップモーション・アニメの仕上がりはまずまず。市外ロケによる群衆パニック・シーンもなかなか迫力がある。クライマックスの呆気なさには多少の不満が残るものの、それでも特撮モンスター映画ファンならお腹いっぱい楽しめること請け合いだ。
 監督のロバート・ゴードンは俳優出身で、主にテレビ・ドラマの演出を手掛けていた人物。本作の場合、基本的に特撮シーンは全てハリーハウゼンが演出を手掛けているので、ほとんど現場指揮といったポジションだったのだろうと思う。
 ちなみに、本作は極端な低予算で撮られており、一番お金がかかっているのはフェイス・ダミューアの出演料だったらしい。しかも、撮影にかかった総経費と彼女のギャラがほぼ同額という安さ。また、ゴールデン・ゲート・ブリッジでロケをする許可が下りなかったため、実際には全く別の場所で撮影したのだという。
 そうした低予算ぶりも、製作総指揮がサム・キャッツマンということで大いに納得。キャッツマンは30年代からピューリタンやモノグラムといった極貧スタジオでZ級映画を数多く手掛けてきたプロデューサーで、当時はコロムビアでB級映画を量産していた人物だった。その後、MGMでプレスリー映画を次々と手掛け、さらにAIPに移ってバイカー映画をバンバン作った。安い・早い・下らないの三拍子揃った商売人だったわけだが、ビル・ヘイリーを起用した『ロック・アンド・ロール/狂熱のジャズ』('56)を世に送り出し、ロックン・ロール・ブームの火付け役となるなど、アメリカのサブ・カルチャーを語る上で欠かせない名物プロデューサーだ。

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マシューズへの想いをカーター博士に打ち明けるジョイス教授

ゴールデン・ゲート・ブリッジに絡みついた巨大タコ

 マシューズ司令官役のケネス・トビーは、ハワード・ホークス製作の『遊星よりの物体X』('51)の主演で知られるB級映画スター。ハリーハウゼン絡みでは『原始怪獣現る』('53)にも出ていたし、バート・ランカスターとカーク・ダグラスの名作『OK牧場の決斗』('57)ではバット・マスターソン役を演じていた。ジョー・ダンテ監督は彼の大ファンで、『グレムリン』シリーズや『インナースペース』にカメオ出演させている。
 フェイス・ダミューアはハワード・ヒューズの秘蔵っ子として映画界入りしたグラマー女優。本作と『宇宙水爆戦』('54)でカルト女優として名を残すこととなった。詳細は、本HP内のカルト女優コーナーを参照して頂ければと思う。
 カーター博士役のドナルド・カーティスは『世紀の謎・空飛ぶ円盤地球を襲撃す』('56)にも出ていたが、アメリカでは宗教家としても有名だったらしい。若い頃からチベット仏教を学び、晩年は新興宗教の司祭を務めていたようだ。

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サンフランシスコを襲撃する巨大タコ

逃げまどう人々が餌食となっていく

 なお、上記のアメリカ盤2枚組DVDは、ハリーハウゼンの監修によるカラライゼーション版が収録されており、モノクロとカラーを選択できるようになっている。もともと、彼はカラーで本作を撮影したかったらしいが、予算の関係で断念せざるを得なかったという。そういった意味では、本来あるべき姿で甦ったということなのだろう。着色を行ったのはレジェンド・フィルムズ。『洞窟の女王』('35)や『来るべき世界』('36)などのカラライゼーションで注目を集め、ここ数年アメリカではとても評判になっている会社だ。部分的に多少の違和感は残るものの、当時のカラー映画の色合いを再現した着色はなかなか見事だと思う。

 

The Giant Behemoth (1958)
日本では劇場未公開
VHS・DVD共に日本未発売

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(P)2007 Warner Home Video (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
モノクロ/ワイドスクリーン(スクィーズ仕様)/モノラル/音声:英語/字幕:英語・フランス語/地域コード:1/90分/製作:イギリス

映像特典
オリジナル劇場予告編
デニス・ミュレンとフィル・ティペットによる音声解説
監督:ユージン・ローリー
製作:テッド・ロイド
    デヴィッド・ダイアモンド
脚本:ユージン・ローリー
    ダニエル・ジェームス
撮影: ケン・ホッジス
特殊効果:ウィリス・H・オブライエン
       ピート・ピーターソン
       ジャック・ラビン
       アーヴィン・ブロック
       ルイス・デ・ウィット
音楽:エドウィン・アストリー
出演:ジーン・エヴァンス
    アンドレ・モレル
    ジョン・ターナー
    リー・マディソン
    ジャック・マッゴウラン
    モーリス・コーフマン
    レオナード・サックス

 『怪獣ゴルゴ』('59)と並ぶ、英国産SFモンスター映画の名作。とは言っても、内容的には怪獣映画の王道を行くB級映画。単純明快でシンプル。特殊効果のパイオニアであるウィリス・H・オブライエンの遺作としても有名だが、オブライエンが関わったわりには特撮も意外とあっさりしている。
 しかし、核実験で甦った恐竜が放射能を撒き散らしながら暴れまわるというアイディアはユニークで、逃げまどう人々が放射能に汚染されて次々と倒れていくというパニック・シーンはなかなかの迫力。焼け爛れたような顔で恐怖感倍増だった。予算がなかったためか、怪獣が姿を現すのはクライマックスだけ。でも、そこそこ派手に大暴れしてくれるので、それまでのドラマ部分はじっと我慢して待ちたい。

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核実験に警鐘を鳴らすカーンズ博士(G・エヴァンス)

調査に乗り出したビックフォード教授(A・モレル)とカーンズ博士


 イングランド南西部に位置するコーンウォール地方の小さな漁村で、トム・トレヴェンサム(ヘンリー・ヴィドン)という老人が謎の死を遂げた。彼は漁に出たまま家に帰らず、心配した娘ジーン(リー・マディソン)と恋人ジョン(ジョン・ターナー)が海岸を探したところ、砂浜で倒れているところを発見されたのだった。その顔は激しく焼け爛れており、“ビヒモス”という言葉を残して息を引き取った。
 また、その数日後には海岸で無数の魚の死骸が発見され、たちまちニュースとして取り上げられて話題になった。怪獣を海で目撃したという噂も広まり、マスコミは“第2のネッシー騒動”として面白おかしく騒ぎ立てる。
 だが、テレビを見ていたカーンズ博士(ジ−ン・エヴァンス)は、そのニュースに嫌な胸騒ぎを覚える。彼はアメリカから講演のためにロンドンを訪れている海洋学者で、大西洋における数多の核実験が引き起こす海洋生物の放射能汚染や生態系の破壊に警鐘を鳴らしていた。
 早速、カーンズ博士は英国原子力研究所のビックフォード教授(アンドレ・モレル)の協力を仰ぎ、問題となっている漁村へと向った。海岸で発見された魚の死骸を調査したところ、大量の放射能が検出される。
 さらに、彼は怪獣が目撃されたとされる海域へと向かい、そこで正体不明の巨大生物と遭遇する。その直後に海岸で無残に破壊された大型船が見つかり、こちらからも大量の放射能が検出された。ビックフォード教授の研究班は大型船の船内から未確認生物の組織を発見。両者の報告を受けた英国軍はNATO加盟各国に警告を発し、ビヒモスと名づけた謎のモンスターを捜索することにする。
 その数日後には、田舎町で恐竜のような巨大な足跡が発見され、近隣に住む農家の親子が惨殺された。その写真を見たカーンズ博士とビックフォード教授は、古生物学者サンプソン博士(ジャック・マッゴウラン)の協力を仰ぐ。サンプソン博士によるとこれは“パレオザウルス”と呼ばれる恐竜で、うなぎのように電気を発して相手を攻撃するのだという。それが核実験の影響で放射能を浴びてしまったものと考えられた。そして、この恐竜はテームズ川を目指して北上しているという。
 軍隊は懸命になってビヒモスの行方を追跡するが、レーダーを使っても発見することができない。そうこうしているうちに、テームズ川名物のフェリー船がビヒモスに襲撃された。フェリーは転覆させられ、川に投げ出された人々は放射能を浴びて殺されていく。
 この事件でロンドン中が大パニックとなり、軍による迎撃作戦の準備が始まった。しかし、住民の大量避難が行われている最中、遂にビヒモスがロンドンへと上陸してしまう・・・。

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漁村で暮らす老人トム(H・ヴィドン)が殺される

被害者はいずれも放射能によって顔が焼け爛れていた

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ロンドンに姿を現した怪獣ビヒモス

逃げまどう群衆の後を追うビヒモス

 ビヒモスとはヒンズー教に出てくる魔神の名前に由来しているらしい。その造形にはこれといった特徴もないので、ゴジラやゴルゴ、レプティリカスみたいな強烈なインパクトに欠けている。動きも何となくぎこちないのだが、ロンドンに上陸してからの暴れっぷりはなかなか豪快。群衆パニック・シーンの合成も十分に合格点の出来映えだ。なお、パレオザウルスという種類は全くのオリジナルで、古生物学的に実在するものではない。
 監督・脚本のユージン・ローリーはロシア人。若い頃にパリへ移住し、『大いなる幻影』('37)をはじめとするジャン・ルノアール作品の美術監督として知られるようになった。その他にも、チャップリンの『ライムライト』('52)や『バルジ大作戦』('65)、『民衆の敵』('78)などを手掛けている。監督としては、ハリーハウゼンの『原始怪獣現る』('53)や『ニューヨークの怪人』('58)、『怪獣ゴルゴ』('59)などのSFモンスター映画を得意とした人物だった。
 ウィリス・H・オブライエンと共に特撮を手掛けたピート・ピーターソンはオブライエンの愛弟子で、『黒い蠍』('57)を一緒に手掛けている。また、ジャック・ラビン、イーヴィン・ブロック、ルイス・デ・ウィットの3人は、50年代に数多くのB級映画で特撮を手掛けたトリオ。ラビンとデ・ウィットの二人はチャールズ・ロートンの傑作『狩人の夜』('55)のミニチュア撮影も担当している。

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シンプルかつ巧みな合成シーンが魅力

ビッグ・ベンを背景にそびえ立つビヒモスの勇姿

 熱血漢のカーンズ博士を演じているジーン・エヴァンスは、サミュエル・フラーやサム・ペキンパーの常連として知られるタフガイ俳優。中でも、タイトル・ロールを演じたフラーの『鬼軍曹ザック』('51)は戦争映画の傑作で、彼にとっても代表作と言える1本だった。
 一方、温厚で理知的なビックフォード教授を演じるアンドレ・モレルは、『戦場にかける橋』('57)や『ベン・ハー』('59)で知られるイギリスの名脇役。『吸血ゾンビ』('66)や『ミイラ怪人の呪い』('67)などのハマー・ホラーにも出演しており、ジャンル系ファンにもお馴染みの顔だ。
 また。ロマン・ポランスキーの名作『吸血鬼』('67)でアブロンシウス教授を演じたジャック・マッゴウランが、変わり者のサンプソン博士役で顔を出しており、そのオーバー・ザ・トップな怪演には思わずニンマリとさせられる。

 

Invisible Invaders (1959)
日本では劇場未公開
VHS・DVD共に日本未発売

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(P)2003 MGM Home Enter. (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
モノクロ/スタンダード・サイズ/モノラル
/音声:英語/字幕:英語・フランス語・スペイン語/地域コード:1/67分/製作:アメリカ
※『S.F.第7惑星の謎』とカップリング

映像特典
オリジナル劇場予告編
監督:エドワード・L・カーン
製作:ロバート・E・ケント
脚本:サミュエル・ニューマン
撮影:マウリー・ガーツマン
音楽:ポール・ダンラップ
出演:ジョン・エイガー
    ジーン・バイロン
    フィリップ・トング
    ロバート・ハットン
    ジョン・キャラダイン
    ハル・トーレイ
    ポール・ラングトン

 月からやって来た透明エイリアンたちが死者の身体を乗っ取って地球を侵略しようとする、という独創的な発想のSFサスペンス・ホラー。まさしく『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』('68)の原型とも言えるような作品だ。基地に立て篭もった主人公たちが押し寄せる死者の群と戦うという展開も、まるで『死霊のえじき』('85)である。
 バジェット的にはエド・ウッドの『プラン9・フロム・アウター・スペース』('59)とどっこいどっこいといった感じだが、面白さという点ではこちらの方が遥かに上。ストーリーは荒唐無稽だし、脚本もあちこち突っ込みどころ満載だが、無駄な人間ドラマを省いたテンポの良さは全く飽きさせない。地上にゾンビがあふれ出る後半のスリリングな展開も十分に怖い。SF映画ファンのみならず、ホラー映画ファンにも是非オススメしたい一本である。

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死んだはずのノイマン博士(J・キャラダイン)が甦る

不思議な出来事に困惑するペンナー博士(P・トング)

フィリス(J・バイロン)とラモント博士(R・ハットン)

 原子力を研究していた科学者ノイマン博士(ジョン・キャラダイン)が実験中に爆死してしまった。この事件にショックを受けた親友のペンナー博士(フィリップ・トング)は、人類の平和のためにも核実験を中止するようペンタゴンに求めるが、国防を理由に却下されてしまう。落胆したペンナー博士は引退を決意し、故郷で営まれるノイマン博士の葬儀へと向うのだった。
 その晩、真夜中に死んだはずのノイマン博士がペンナー博士のもとを訪れる。呆然とするペンナー博士。しかし、それはノイマン博士の死体を操るエイリアンの仕業だった。エイリアンは人類が24時間以内に降伏せねば、地球への総攻撃を始めるという。彼らは銀河系の遥か彼方からやってきたが、2万年前に月の文明を破壊し、中継基地として支配していた。地球からは月に何もないように見えるが、それは彼らが全てを透明にしてしまう技術を持っているからだという。地球人には彼らの姿は見えないし、宇宙船も見えない。彼らの侵略を阻止したければ、24時間以内に地球の人々を説得して降伏させろ、さもなくば全ての死人を甦らせて人類を皆殺しにするというのだ。
 途方に暮れたペンナー博士は娘フィリス(ジーン・バイロン)と助手ラモント博士(ロバート・ハットン)に相談するが、もちろん彼らはペンナー博士が錯乱したものと思って信じてくれない。なんとかラモント博士を説得してペンタゴンに警告してもらうが、当然のように相手にされず、タブロイド紙に面白おかしく書きたてられる始末だった。
 エイリアンとコンタクトを取るためにノイマン博士の墓を訪れたペンナー博士は、もう少し時間が欲しいと懇願する。そこで、エイリアンはもう一度だけ人類にチャンスを与えることにした。彼らが直接人類に向って警告を発するというのだ。その場に居合わせたフィリスとラモント博士は、ペンナー博士の言葉が真実出会った事を知る。
 その翌日から、各地で死者が甦り、アイス・ホッケーの会場や野球スタジアムの放送席を乗っ取って、人類に向って警告のメッセージを送る。世間はたちまち大パニックに陥ってしまった。しかし、各国の政府はエイリアンへの降伏を拒絶する事を決定し、ついに地球侵略の火蓋が切って落とされた。
 世界中で死者が甦り、凄まじい破壊活動を行っていった。ロシアやフィンランドなど数多くの国が絶滅してしまった。ペンタゴンからの依頼を受けたペンナー博士は、エイリアンによる地球侵略を阻止するための研究を行うため、軍の地底基地へと向う。フィリスやラモント博士も同行した。
 地底基地の警備責任者は冷静沈着なジェイ少佐(ジョン・エイガー)。しかし、基地の周囲は既に生ける屍たちによって包囲されてしまっていた・・・。

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透明エイリアンの足跡

死者がゾンビとなって次々と甦る

アナウンス・ルームを占拠するゾンビ

 先述したように突っ込みどころは満載だ。例えば、ペンナー博士に頼まれてラモント博士がペンタゴンを説得に行くが、その日のタブロイド紙にその内容が書きたてられてしまう。どう考えてもあり得ない速さだ。というよりも、情報が筒抜けってことである。そんなことでは、国防もクソもなかろうに。また、アイスホッケーの試合中にエイリアンが警告メッセージをアナウンスするが、それを聞いた観客はパニックに陥って我先にと逃げ出す。そもそも、ホッケーの試合中にいきなり“我々はエイリアンだ。降伏しないと地球を侵略するぞ”なんてアナウンスが流れても、“そりゃ大変だ!”って逃げ出すヤツがいるだろうか!?失笑されるかブーイングが起きるかのどちらかだろう。
 その他、胸を撃たれて銃殺されたはずの人間が、ゾンビになって起き上がってみたら額に銃弾の穴が空いていたり、街が破壊されるシーンでは廃墟ビルの爆破工事を記録したドキュメンタリー・フィルムが堂々と使用されていたりと、そりゃもういい加減で適当な演出がそこかしこに(笑)。
 まあ、低予算ならではの苦肉の策と考えれば怒る気にもならないし、逆に個人的には微笑ましく感じられる。だいたい、昔の低予算映画には、この手の意図しない爆笑シーンが付き物。いちいち目くじらを立てるような輩に見る資格はあるまい。ただの娯楽映画なのだから。ひとまずは、笑って受け流すべし(笑)。
 監督のエドワード・L・カーンは、50年代にAIPで数多くのB級SF映画やホラー映画を手掛けた名物監督。『海獣の霊を呼ぶ女』('56)や『暗闇の悪魔・大頭人の襲来』('57)など低予算のキワモノ映画が十八番だった。しかし、その一方でコメディやメロドラマ、西部劇、フィルム・ノワールなども数多く手掛けており、生涯で120本以上もの作品を監督した根っからの職人だ。
 脚本のサミュエル・ニューマンはテレビ『弁護士ペリー・メイソン』の脚本を数多く手掛けた人で、映画では主にB級西部劇や冒険活劇を得意としていたようだ。

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ゾンビたちによって(?)破壊されていく地球

地底基地を警備するジェイ少佐(J・エイガー)

基地の周りはゾンビ軍団に囲まれてしまう

 主演はジェイ少佐役のジョン・エイガー。クラシック映画ファンには『黄色いリボン』('49)や『硫黄島の砂』('49)、『チザム』('70)などジョン・ウェイン作品でお馴染みの名優だが、その一方で『半魚人の逆襲』('54)や『世紀の怪物/タランチュラの襲撃』('55)など50年代の低予算映画には欠かせないスターでもあった。
 ペンナー博士役のフィリップ・トングはサイレト期から活躍する傍役俳優。若い頃は主演クラスの作品もあったようだが、トーキー以降はクレジットにも名前が載らないような仕事を数多くこなしていた。恐らく、本作が晩年で一番の大役だったに違いない。
 ラモント博士役のロバート・ハットンは主に西部劇や戦争映画の二番手を演じていたB級映画俳優で、“The Slime People”('63)というモンスター映画では監督兼主演を務めている。60年代末にはイギリスへ渡り、アミカス・プロのホラー映画に出演していた。

 

S.F.第7惑星の謎
Journey To The Seventh Planet (1962)
日本では劇場未公開
VHSは日本発売済・DVDは日本未発売

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(P)2003 MGM Home Enter. (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(レターボックス収録)/モノラル/音声:英語/字幕:英語・フランス語・スペイン語/地域コード:1/77分/製作:アメリカ・デンマーク

映像特典
オリジナル劇場予告編

監督:シドニー・ピンク
製作:シドニー・ピンク
    サミュエル・Z・アーコフ
脚本:イブ・メルキオー
    シドニー・ピンク
撮影:エイジ・ウィルトラップ
特殊効果:バート・I・ゴードン
       ジム・ダンフォース
       ワー・チャン
音楽:ロナルド・ステイン
出演:ジョン・エイガー
    グレタ・ティッセン
    アン・スミルナー
    ミミ・ヘンリッヒ
    カール・オットーセン
    ピーター・モンク

 50年代の作品ではないものの、ついでということで紹介させてもらいたい。人間の記憶や意識を具現化させる惑星を舞台にした、ちょっと風変わりなSFアドベンチャー。と、聞いただけでピンと来る人もいるかもしれない。そう、タルコフスキーの名作『惑星ソラリス』('72)に設定がソックリなのである。『惑星ソラリス』の原作(スタニスラフ・レム著)が書かれたのは1961年。時期的に微妙ではあるが、本作の脚本を書いたシドニー・ピンクとイブ・メルキオーの二人が、レムの小説を読んでいた可能性は十分にあるだろう。
 ただし、人間の存在と意識を問うサイコロジカルなSFドラマであった『惑星ソラリス』と違い、こちらは純然たるエンターテインメント作品。登場人物たちの恐怖心や妄想を具現化したモンスターなんかも出てくる。そういった意味では、やはり『惑星ソラリス』に影響を受けたロジャー・コーマン製作の『ギャラクシー・オブ・テラー/恐怖の惑星』('81)に近いものがあるかもしれない。カラフルな色彩や幻想的な特殊効果なども非常にユニーク。SF映画ファンなら一度は見ておきたい作品である。

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天王星へと旅する宇宙ロケット

和気藹々とした乗組員たち

 舞台は2001年。人類は国連によって統一され、宇宙開発は飛躍的な進歩を遂げていた。銀河系の惑星はほぼ全て国連の宇宙艦隊によって調査されていたが、生命の存在する惑星はまだ発見されていない。そんな中、エリック中佐(カール・オットーセン)率いる宇宙探検隊が天王星へと調査に向う。
 いよいよ天王星へ近づいたその時、隊員たちの思考が停止してしまう。謎の生命体が、彼らの意識を読み取っているのだ。我に返った隊員たちは、何事もなかったかのように天王星への不時着を開始する。すると、彼らのロケットが着地した途端、天王星の風景はみるみるうちに変わってしまった。
 ロケットを降りた隊員たちは、まるで地球のような光景に驚く。中でも、ドイツ出身の隊員スヴェン(ルイス・ミーヘ・レナード)は驚きを隠せなかった。なぜなら、目の前に広がっている風景は、彼が生まれ育ったドイツの森とまるっきり瓜二つだったからだ。さらに、彼らは森の木に根っこがない事に気付く。つまり、目に見える表層だけが地球の自然と似ているのである。さらに、森の茂みの向こうには謎の空間が広がっていた。中を探ろうとして隊員カール(ピータ・モンク)が手を伸ばしてみたところ、そこは冷却バリアーによって覆われていた。
 さらに、焚き火を囲みながらエリック中佐が故郷の村の思い出話をしていると、丘の向こう側に瓜二つの光景が現れる。驚いた隊員たちは村へと向う。そこにはエリック中佐の生家もあり、中では初恋の女性イングリッド(アン・スミルナー)が彼を待っていた。また、プレイボーイのドン(ジョン・エイガー)が憧れる女優グレタ(グレタ・ティッセン)までが姿を現す。
 翌日、防護服で身を固めた隊員たちは、バリアーを超えて異空間へと入っていく。そこには、荒涼とした世界が広がっていた。これが天王星の本来の姿だったのだ。調査を続ける彼らの前に、一つ目の巨大なモンスターが現れる。それは、彼らの恐怖心が生み出した怪物だった。何とか怪物を倒した隊員たちは、命からがら異空間を抜け出す。
 かくして、自分たちの潜在意識が何者かによって読み取られていると確信した彼らは、その正体を暴こうとするのだったが・・・。

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謎の生命体が乗組員たちの潜在意識を読み取る

天王星に降り立った乗組員たち

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エリックの初恋の人インリッド(A・スミルナー)が現れる

バリアーの向こう側には天王星の本当の姿が・・・

 隊員たちが直面する最大の敵というのが己自身の煩悩である、というのはとても面白い。惑星を支配する巨大頭脳を破壊して地球へ戻るという彼らの計画を、潜在意識から甦った愛する女性たちの誘惑が邪魔をするのだ。
 監督・脚本・製作を務めたシドニー・ピンクは、3D映画のパイオニアとして知られる人物。一部の怪獣映画ファンの間では名高い『原始獣レプティリカス』('61)でも監督・脚本・製作を手掛けたほか、イブ・メルキオー監督の名作『巨大アメーバの惑星』('59)の脚本も担当している。
 で、そのイブ・メルキオーが、本作では逆に脚本のみで参加している。彼はデンマークから渡米して映画監督・脚本家となったという人物。『原始獣レプティリカス』でも脚本に参加していた。低予算を逆手に取った独創的なアイディアを持った人で、結構根強いファンも多い。タイム・トラベルを題材にした傑作『タイム・トラベラーズ』('64)は、まさにその真骨頂と言えるだろう。
 なお、本作は『原始獣レプティリカス』と同じく、メルキオーの故郷であるデンマークで撮影が行われた。人件費などのコストを抑えるためだろう。ただ、デンマークの撮影チームによるSFXの出来が悪く、完成版を見た配給元AIPはSFXシーンの撮り直しを指示。そこで白羽の矢を立てられたのが、『ラオ博士の7つの顔』('64)や『恐竜時代』('69)でオスカーにノミネートされたジム・ダンフォースと、テレビ『スター・トレック/宇宙大作戦』で知られるワー・チャンの二人だった。一つ目モンスターのストップモーション・アニメなどは、なかなかインパクトがあって秀逸。また、巨大モンスター映画でお馴染みのバート・I・ゴードンもノー・クレジットで参加している。

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隊員の恐怖心が生み出した一つ目モンスター

プレイボーイの隊員ダンを演じるジョン・エイガー

 キャストに関して触れておくと、先述したようにデンマークで撮影が行われたため、主演のジョン・エイガー以外は全てデンマークの俳優で固められた。セリフも一部を除いてデンマーク語で撮影されているので、全編に渡って吹替えがなされている。
 ジョン・エイガー扮するドンが憧れる女優グレタを演じているのは、元ミス・デンマークのグレタ・ティッセン。モンロー主演の『バス停留所』('56)で映画デビューし、ブロンドのグラマー女優として活躍した。
 隊長エリックの初恋の女性イングリッドを演じるアン・スミルナーは、『原始獣レプティリカス』でヒロイン役を演じた女優さん。イギリスのアクション映画『指令7で5人消せ』('64)や西ドイツのスパイ映画『細菌弾をぶっ飛ばせ!』('67)など、60年代から70年代にかけてヨーロッパ各国の娯楽映画で引っ張りだこだった人だ。
 その他、エリック役のカール・オットーセンや、カールの恋人ウルスラ役のミミ・ヘンリッヒも、『原始獣レプティリカス』に出演している。

 

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