50年代カルトSF映画傑作選 Part 3

 

 50年代のSF映画ブームは数多くの傑作・名作を世に送り出したが、その一方でブームに便乗しただけの奇妙な珍作・迷作も大量に生み出した。今となっては殆んどが忘れ去られてしまった作品ばかりだが、今回はその中でもカルト映画として名を残しているものを幾つか紹介してみたい。
 た・だ・し、いずれの作品も根本的に映画としてはかなり特殊な部類に属するので、一般的な価値観で面白いかどうかと言えば、いろいろと疑問の余地は残る。なので、御仏のような広い心を持って鑑賞するべきだろうと思う。でないと、真剣に後悔することになるかもしれないので(笑)。

 

The Phantom From 10,000 Leagues (1955)
日本では劇場未公開
VHS・DVD共に日本発売なし

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(P)2007 MGM/FOX (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
モノクロ/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/ステレオ・モノラル/音声:英語/字幕:英語・スペイン語・フランス語/地域コード:1/80分/製作:アメリカ

映像特典
なし
監督:ダン・ミルナー
製作:ジャック・ミルナー
脚本:ルー・ルソフ
原案:ドリス・ルカサー
撮影:ブライドン・ベイカー
音楽:ロナルド・ステイン
出演:ケント・テイラー
    キャシー・ダウンズ
    マイケル・ウェイレン
    ルーニー・ベル
    フィリップ・パイン
    ヘレーヌ・スタントン
    ヴィヴィ・ジャニス

 放射能によってミュータント化してしまった海洋生物が海辺の人々を襲う、というB級SFホラー映画。このミュータント化というのが最大のミソかもしれない。あくまでも巨大化というわけではないので。まあ、あの姿形から察するに、恐らくもとはタツノオトシゴかと思われる怪物。そう考えると、それなりに巨大化はしているのかもしれないが、ポスターに出てくるような巨大サイズの怪獣を期待していると度肝を抜かれる。等身大の着ぐるみを着たスタントマンが水中をウロウロしているだけだから(笑)。なので、緊張感も恐怖感もスケール感も全くない、高校生の自主制作映画みたいな代物が出来上がってしまったというわけだ。

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海中をウロウロするだけの着ぐるみモンスター

ボートを転覆させて人間を襲う!

 舞台はカリフォルニア。焼け爛れた人間の死体が海岸に打ち上げられるという事件が続いており、連邦当局が捜査に乗り出していた。海洋学の権威スティーヴンス博士(ケント・テイラー)は、その死因が放射能によるものと考え、独自に調査を始める。案の定、死体やボートからは放射能が検出され、海底で探っていた博士は恐ろしいモンスターに遭遇する。
 その
一方で、スティーヴンス博士は海岸近くのビーチ・ハウスに住むキング博士(マイケル・ウェイレン)に接近する。キング博士は海洋学研究所を経営しており、その研究内容には謎が多かったからだ。キング博士にはロイス(キャシー・ダウンズ)という美しい娘がおり、スティーヴンス博士はたちまち魅了されてしまう。
 だが、キング博士の周辺では様々な思惑が渦巻いていた。秘書のエセル(ヴィヴィ・ジャニス)はキング博士が恐ろしい研究をしているのではないかと勘ぐり、何とかそれを暴こうと躍起だった。さらに、キング博士の助手であるジョージ(フィリップ・パイン)も、研究所に来てから一度も博士のラボに入れてもらったことがなく、何とか忍び込もうとあの手この手を画策する。実は、彼はヨーロッパの犯罪組織の手先で、博士の研究を盗み出そうとしていたのだ・・・!

 まずは、これがあのジョン・フォード監督の名作『荒野の決闘』('46)でクレメンタインを演じたキャシー・ダウンズの主演作という事にビックリ。確かに、後期の彼女が『海獣の霊を呼ぶ女』('56)とか、『戦慄!プルトニウム人間』('57)といった低予算映画に出演していた事は知っていたものの、こんなZ級映画にまで出ていたとは知らなんだ。
 スティーヴンス博士役のケント・テイラーにしたって、かつては『妾は天使ぢゃない』('33)でメエ・ウェストと共演し、ヘンリー・キング監督の『ラモナ』('36)ではロレッタ・ヤング、ドン・アメチーと渡り合った2枚目スター。当時はハリウッドのスタジオ・システムが崩壊し始めた頃で、彼らのような落ちぶれ組はこうした低予算映画で食いつないでいかねばならなかったわけだ。

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スティーヴンス博士役を演じるケント・テイラー

キング博士の娘ロイスを演じるキャシー・ダウンズ

 先述したように、最大の呼び物であるはずの怪物は、動きづらそうに海中をウロウロしている等身大の着ぐるみ。手をバタバタさせたり、口を若干パクパクさせるのが関の山で、これっぽっちも怖くない。人を襲うといっても、ちっちゃなボートを転覆させて人間を海底に引きずりこむという程度のものだったりする。
 その他、ひねりのない安直なストーリー展開、大袈裟なだけで科学的根拠の全くないセリフ、見るからに安っぽい屋内セットなど、あらゆる面でクズ映画の条件を満たした立派な迷作だ。明らかに怪物が視界に入っているはずなのに、気付かないふりをしてギャー!と襲われる漁師さんの姿なんて感動もの(笑)。しかも、あんなに軽くて小さいボートで漁に出るもんなのか!?という突っ込みどころもちゃんと用意されているんだから。まあ、作り手は大真面目だったのかもしれないけど。
 監督のダン・ミルナーは30年代から低予算映画の編集者として活躍していた人物で、50年代に弟のジャックと共に映画会社ミルナー・ブラザーズを設立。その第一作目に当たるのがこの作品だった。脚本のルー・ルソフはAIPで『金星人地球を征服』('56)や『海獣の霊を呼ぶ女』('56)といったカルト作品の脚本を数多く手掛けた人。撮影監督はスコット・ブラディ主演の『早射ち拳銃王』('57)や『蝿男の逆襲』('59)を手掛けたブライドン・ベイカー、音楽は『姦婦の生き埋葬』('62)や『古城の亡霊』('63)などのロジャー・コーマン作品や『スパイダー・ベイビー』('68)などのカルト映画で有名な作曲家ロナルド・ステイン。ということで、スタッフの顔ぶれも筋金入りのB級ぶり。
 なお、本作の配給を担当したのはAIPの前身であるアメリカン・リリーシング・コーポレーション。ルー・ルソフやロナルド・ステインが、その後AIPの作品で活躍するようになることを考えれば、本作も単なるクズ映画で片付けるべきではないのかもしれない。恐らく。多分(笑)。

 ちなみに、本作はアメリカでパブリック・ドメインになっているため、あちらでは画質の悪い激安DVDが大量に出回っている。果たして高画質で見る価値があるのかと言われるとそれまでなのだが、安っぽい映画を安っぽい画質で見れば寂しさもひとしお(笑)。上記のMGM盤DVDはメジャー映画並みに高画質な上、ワイドスクリーンのスクィーズ収録、ステレオ音声まで選択できるという優れモノ。MGMはAIP作品の版権を持っているので、その中にまぎれていたのだろう。しかも、『百万の眼を持つ刺客』との2本立てで10ドルちょっとという低価格。もの好きな方は是非どうぞ。

 

百万の眼を持つ刺客
The Beast With A Million Eyes (1955)
日本では劇場未公開・テレビ放送のみ
VHS・DVD共に日本発売なし

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(P)2007 MGM/FOX (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
モノクロ/スタンダード・サイズ/ステレオ・モノラル/音声:英語/字幕:英語・スペイン語・フランス語/地域コード:1/75分/製作:アメリカ

映像特典
なし
監督:デヴィッド・クレイマースキー
製作:デヴィッド・クレイマースキー
    サミュエル・Z・アーコフ
脚本:トム・ファイラー
撮影:フロイド・クロスビー
    エヴェレット・ベイカー
モンスター創造:ポール・ブレイスデル
出演:ポール・バーチ
    ローナ・テイラー
    ドナ・コール
    ディック・サージェント
    レオナード・ターヴァー
    チェスター・コンクリン

 これまたとんでもないZ級SFサスペンス。上記の“The Phantom From 10.000 Leagues”で驚いたり呆れたりしてちゃいけない。こちらは、それをさらに下回る(笑)底抜けの低予算ぶりと、トンチンカンで痛すぎるストーリー展開に思わず全身が痒くなってきそうな怪作だ。
 当時の宣伝ポスターでは眼が沢山くっついたヒゲ怪獣が描かれているが、もちろんそんなもの本編には一切出てこない。というか、あと残り5分程度というラストのラストでようやく出てきたモンスターが、手袋で作ったちっこいパペットなのには誰もが本気でズッこけるはずだ(笑)。しかも、サイズをごまかすために思い切りクローズ・アップさせた上、変な目玉の映像をオーバー・ラップさせるもんだから、画面がゴチャゴチャしてて最初は何が何だかよく分からない。で、ようやく引きの画面になった途端、ウヒャーっとモンスターがのけぞって死んでしまうのだが、その瞬間に手袋じゃん!!ってのがいっぺんにバレてしまうのだ。
 この手袋モンスターをデザインしたのが、伝説的なクリーチャー・デザイナー、ポール・ブレイスデル。AIPが作った一連のSF映画・モンスター映画で独創的なクリーチャー・デザインを手掛けた人物で、確かに本作でもモンスターの造形そのものはインパクトが強い。しかし、手袋というのはちょっと頂けなかった(笑)。

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夫婦喧嘩の絶えないアランとキャロル

凶暴化(?)する家畜たち

 舞台はカリフォルニアの砂漠。アラン・ケリー(ポール・バーチ)は牧場を営んでいるが、ここ数年は収穫が極端に少なく、経営に行き詰まっていた。妻キャロル(ローナ・テイラー)は苦しい家計に嫌気が差しており、アランと口論になってしまうことも少なくない。年頃の一人娘サンドラ(ドナ・コール)は両親の不和に心を痛めている。
 そんなある日のこと、突然近隣一帯に爆音が鳴り響き、地面が大きく揺れ動いた。軍の実験か何かと思っていたアランたちだが、それ以来家畜の様子がおかしくなってしまう。可愛がっていた愛犬が突然キャロルを襲い、牛や鶏たちも暴れだすようになったのだ。
 さらに、アランが雇っていた言葉の不自由な使用人(レオナード・ターヴァー)も奇妙な行動を取るようになる。実は、例の地震はエイリアンの乗った宇宙船が砂漠に墜落したもので、エイリアンは動物や人間の精神をコントロールし、“百万の眼”となって地球侵略を目論んでいたのだ。
 エイリアンは使用人をコントロールしてサンドラを誘拐。アランとキャロルは、サンドラの恋人である保安官助手ラリー(ディック・サージェント)と共に、サンドラを救い出すべく砂漠へと向う・・・。

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エイリアンが捜査する偵察ロボット

遂に姿を現したエイリアンだったが・・・!?

 やたらと大袈裟で仰々しいエイリアンのナレーションもかなりウズウズしてしまうが、家族の愛によってエイリアンを倒すという安直で空々しいクライマックスには思わずクラクラしてしまうこと必至。予算の少なさをセンセーショナリズムと似非ヒューマニズムで補おうとしたのだろうが、完全に裏目に出ちゃったという感じだ。そのトホホさ加減を面白がるというのが本作の正しい見方なのだが、それが出来なければ単に苦痛で退屈なだけの映画に過ぎない。
 本作もAIPの前身であるアメリカン・リリーシング・コーポレーションがディストリビュートを担当しているのだが、本編の撮影に入る前に大作風のポスターやプレス資料を作成し、映画館のブッキングまでしてしまった。で、出来上がった作品がこれだったもんだから、試写を見た映画館主たちは激怒したという。それでも、ちゃんと劇場公開にこぎ着けているのだから、まったくのどかな時代だったと言うべきだろう。今だったら絶対に詐欺で訴えられているはずだ。
 演出を手掛けたのは、これが唯一の監督作になるデヴィッド・クレイマースキー。ただ、実際には助監督出身のルー・プレイスとロジャー・コーマンがノー・クレジットで演出を手伝ったらしい。
 主演のポール・バーチはB級ウェスタンの脇役を数多く務めた俳優で、当時はこの手の低予算SF映画でもお馴染みの顔だった。また、『奥様は魔女』の二代目ダーリン役で知られるディック・サージェントが、サンドラの恋人ラリー役で顔を出しているのにも注目したい。さらに、サイレント時代の名コメディアン、チェスター・コクリンが近隣の農家に住む老人役でチラっと登場する。

 

妖怪巨大女
Attack Of The 50ft. Woman (1958)
日本では劇場未公開・テレビ放送のみ
VHS・DVDは日本発売なし

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(P)2007 Warner Home Video (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
モノクロ/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/モノラル/音声:英語/字幕:英語・フランス語/地域コード:1/66分/製作:アメリカ

映像特典
オリジナル劇場予告編
女優イヴェット・ヴィッカーズ音声解説
監督:ネイサン・ハーツ
製作:バーナード・ウールナー
脚本:マーク・ハンナ
撮影:ジャック・R・マークェット
音楽:ロナルド・ステイン
出演:アリソン・ヘイズ
    ウィリアム・ハドソン
    イヴェット・ヴィッカーズ
    ロイ・ゴードン
    ジョージ・ダグラス
    ケン・テレル
    フランク・チェイス

 こいつは下らなくて面白い。異星人の影響で巨大化した人妻が、浮気性のダンナとその愛人をやっつける・・・というだけの話を、1時間以上に渡って見せてくれる頭の悪い(笑)SFパニック映画。前半は昼メロのようなドロドロ愛憎劇が延々と展開するものの、巨大化した奥さんがノシノシと歩きながら建物を破壊していく辺りから俄然面白くなってくる。いかにもダンボールで作りました!みたいなハリボテの手なんかもご愛嬌。悲劇的なはずのクライマックスも、やけにアッサリとしていて後腐れがない感じだ。
 ちなみに、世の中には巨大女フェチというのがいて、そういう人たちにとって本作は『ボッカチオ'70』('62)の巨大アニタ・エクバーグと並ぶバイブル的な存在。彼らにとっては、巨大女の胸に挟み込まれたり、巨大女の手で握りつぶされたりする映像は、立派なズリネタとして通用するらしい。そういった意味では、本作などはエロ映画としての楽しみ方もあるというわけだ。・・・恐らく(笑)。

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夫の浮気に不満を募らせるナンシー(A・ヘイズ)

夫ハリー(W・ハドソン)と愛人ハニー(Y・ヴィッカーズ)

 愛のない結婚生活から酒浸りの日々を送る人妻ナンシー(アリソン・ヘイズ)。ある晩、レストランで夫ハリー(ウィリアム・ハドソン)と言い争いになった彼女は、一人で車を運転して帰路に着く。ところが、その途中の砂漠で彼女は空飛ぶ円形の物体と遭遇し、中から出てきた巨人にさらわれそうになってしまう。命からがら逃げ出したナンシーはUFOに遭遇したと訴えるが、警察も町の人々も酔っ払いのたわ言として信用してくれない。
 一方、夫のハリーにはハニー・パーカー(イヴェット・ヴィッカーズ)という愛人がいる。二人は資産家であるナンシーを殺害する計画を立てていた。謎の物体を見たと言い張るナンシーを現場に連れて行き、そこで彼女を殺そうと考えたハリーだったが、そこへ再び例の物体が現れる。驚いたハリーはそのまま逃げ出し、ナンシーは巨人に捕らわれてしまった。
 ハニーと高飛びを計画したハリーは荷造りをするために自宅へ戻るが、そこへ妻ナンシーが発見されたという知らせが。意識を失っているものの命に別状はないという。寝室に運び込まれた彼女を、真夜中にこっそり殺そうとするハリー。ところが、そこには巨大化したナンシーの姿が!
 やがて意識を取り戻したナンシーは、さらに身長が50フィートにまで巨大化。自分をこんな目に遭わせた夫とその愛人を成敗するべく、家を突き破って町へと向っていくのだったが・・・。

 監督のネイサン・ハーツとは、『地球へ2千マイル』('57)や『シンドバッド七回目の航海』('58)などの名作特撮映画で知られるネイサン・ジュリアンのこと。さすがに、こんな低予算映画に本名でクレジットされるのは抵抗があったのかもしれない。彼がネイサン・ハーツ名義を使っているのは、やはり超低予算で作られたSFホラー“The Brain from Planet Arous”('57)と本作の2本だけである。
 製作を担当したバーナード・ウールナーは、ロジャー・コーマン監督の処女作『女囚大脱走』('55)をプロデュースした事で知られる人物で、弟ローレンスと共にウールナー・ブラザーズというB級映画会社を経営していた。
 また、脚本のマーク・ハンナは巨人モノの珍作『戦慄!プルトニウム人間』('57)を手掛けた事でも知られている。

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妻を殺そうと寝室に忍び込んだハリーだったが・・・

巨大化したナンシーが夫とその愛人を追う!

 巨大化する人妻ナンシーを演じるアリソン・ヘイズは、『早射ち女拳銃』('56)や『悪魔と魔女の世界』('56)などのロジャー・コーマン作品で悪女役を得意としたB級女優。ディーン・マーティン主演の『僕のベッドは花ざかり』('63)やプレスリーの『いかすぜ!この恋』('65)なんかにもチョイ役で出演していた。
 そして、ナンシーの夫ハリーの愛人ハニー・パーカー役のイヴェット・ヴィッカーズは、“プレイボーイ”誌のプレイメイトだった女優さん。小悪魔的な魅力のあるキュートな人で、歴代のプレイメイトの中でも非常に根強い人気を誇っている。あのスティーブン・キングも熱烈なファンだったらしい。現在もSF&ホラー関係のコンベンションでは積極的にサイン会を行っており、本作のアメリカ盤DVDでも音声解説を吹き込んでいる。

 なお、本作は1993年にダリル・ハンナ製作・主演のテレビ・ムービー『ダリル・ハンナのジャイアント・ウーマン』としてリメイクまでされている。ただし、リメイク版は変にフェミニズムのメッセージを盛り込もうとして大失敗。この手の映画は、とりあえず下らなければ下らないだけ面白いのだが、ダリル・ハンナにはそういうセンスが理解できなかったようだ。だったらリメイクなんかすんなよ!と言いたいところではある。

 

惑星X悲劇の壊滅
Queen of Outer Space (1958)
日本では劇場未公開・テレビ放送のみ
VHS・DVD共に日本発売なし

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(P)2007 Warner Home Video (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録
)/モノラル/音声:英語/字幕:英語・フランス語/地域コード:1/80分/製作:アメリカ

映像特典
オリジナル劇場予告編
女優ローリー・ミッチェルの音声解説
監督:エドワード・バーンズ
製作:ベン・シュワルブ
原案:ベン・ヘクト
脚本:チャールズ・ボーモント
撮影:ウィリアム・ホイットリー
音楽:マーリン・スカイルズ
出演:ザ・ザ・ガボール
    エリック・フレミング
    ローリー・ミッチェル
    リサ・デイヴィス
    デイヴ・ウィロック
    ポール・バーチ
    パトリック・ウォルツ
    バーバラ・ダロウ

 分りやすく言うならば、銀河系の遥か彼方にあるキャバクラ惑星に不時着してしまった男性宇宙飛行士たちのウハウハ・アドベンチャー、ってとこだろうか。日本語タイトルにあるような悲劇も壊滅も一切ナシ。そんな危機感のある映画じゃないってば(笑)。だいたい、真っ赤なイヴニング・ドレスを身にまとったザ・ザ・ガボールが女性科学者を名乗っている時点で、致命的なくらいに能天気なバカ映画だということが分ろうというもの。
 女ばかりのキャバクラみたいな惑星があったらさぞかし楽しかろうな〜、やっぱりママはお色気たっぷりの熟女がええわな〜、んでもってピチピチの若い子たちには思い切りミニスカートはかせてさ〜、という果てしなくオヤジ的な妄想が生み出したSFアドベンチャー。というより、エロベンチャー(笑)。
 そして、こんな映画の原案を書いたのが、あのベン・ヘクトだという事実がまた衝撃的だ。ベン・ヘクトといえば、『暗黒街』('27)と『生きているモレア』('35)の脚本で2度のアカデミー賞に輝き、『マデロンの悲劇』('31)や『暗黒街の顔役』('32)、『バーバリー・コースト』('35)、『ヒズ・ガール・フライデー』('40)、『汚名』('46)、『武器よさらば』('57)など数多くの傑作・名作を世に送り出した、いわば大御所中の大御所的存在。映画史に残る名脚本家も、頭の中はエロい妄想でいっぱいだったということか!?

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金星のミニスカ兵士たちに囲まれた宇宙飛行士

お色気女性科学者タリーア(ザ・ザ・ガボール)

 人類初の金星探検に向う宇宙飛行士パターソン大尉(エリック・フレミング)、クルーズ中尉(デイヴ・ウィロック)、ターナー中尉(パトリック・ウォルツ)、そして彼らに同行する宇宙学者のコンラッド教授(ポール・バーチ)。無事に金星へ到着した彼らだったが、たちまちカラフルなミニスカートに身を包んだ美女軍団に捕えられてしまう。
 金星にもかつては男性が住んでいたが、争いごとばかり起す男を嫌った仮面の女王イラーナ(ローリー・ミッチェル)によって全滅させられてしまったのだった。パターソン大尉たちもまた、地球からのスパイだと間違われて監禁されてしまう。そんな彼らに近づいてきたのが美しい女性科学者タリーア(ザ・ザ・ガボール)。彼女は女王の独裁支配を快く思っておらず、ひそかに叛乱を企てていたのだ。
 そんな女王も夜の寂しさを我慢できないのか、パターソン大尉を自室に呼んで色仕掛けで誘惑しようとする。だが、仮面を外したその素顔は世にも醜いものだった。彼女が男を嫌う最大の理由は、己の醜さに対するコンプレックスだったのだ。
 タリーアと彼女の助手たちの協力で脱出に成功したパターソン大尉たちは、地球を破壊しようという女王の陰謀を阻止するべく立ち上がるのだったが・・・。

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金星を支配する女王イラーナ(左)

女王イラーナ(L・ミッチェル)の醜い素顔

 科学的根拠を一切無視したストーリー展開は勿論のこと、どんな時でも常にイヴニング・ドレスを着てポーズを取っているタリーア、女王に君臨するにしては余りにも無鉄砲・無計画・直情的過ぎるイラーナ、行き当たりばったりにウロウロしているだけの女兵士たちなど、明らかに何も考えていないキャラクターたちのトンチンカンな行動は爆笑を呼ぶこと必至。
 一応、ロケットが宇宙を飛んだりする特撮シーンはあるものの、それとて『火星超特急』('51)や“World Without End”('56)から拝借したフィルムを使っているだけ。ついでに、女兵士たちの衣装だって『禁断の惑星』('56)からの使いまわしだ。辛うじて、巨大グモとの格闘シーンという見せ場が用意されているものの、これにしたってハリボテのクモを俳優が抱えて転がって見せているだけという代物。撮影経費なんか、恐らく『ウルトラマン』1話分よりも安く上がっているはずだ。
 監督のエドワード・バーンズは40年代半ばから50年代にかけて、実に90本以上もの低予算映画を大量生産した人。1946年には、1年間で13本もの長編劇映画を手掛けるという離れ業をこなしている。まさに、質より量というわけだ。
 ベン・ヘクトの原案を脚色したチャールズ・ボーモントは、60年代にAIPで『姦婦の生き埋葬』('62)や『赤死病の仮面』('64)などのロジャー・コーマン作品を手掛けた脚本家。AIPでは優れた仕事を残している人だが、本作は違った意味でいい仕事をしている。パターソン大尉の“彼女はどうやって女王になったんだい?”という質問に、“誰もまともに相手をしなかったからよ”とタリーアに答えさせる投げやりなセンスは、ある意味であっぱれな開き直り方だ。

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これが金星・・・だそうです

襲い来る巨大グモ!

 そのタリーア役を演じているザ・ザ・ガボール(正確にはジャ・ジャ・ガボーアと発音する)は、ハリウッドの誇るスキャンダル女王。映画女優としてよりも、恋愛ゴシップやライバル女優との喧嘩で名を馳せた元祖お騒がせセレブだ。本作でも、演技なんかそっちのけで自分のお色気を見せるほうに神経を集中させているので、叛乱を企む女性科学者というよりも高級クラブの看板ママといった感じ。アタシがアタシが!というオシの強さが前面に出まくっている。それは撮影現場でも同じだったようで、男性スタッフが若い女の子に色目を使おうものなら大変。その度にへそを曲げて撮影が中断されてしまったらしい。おかげで、プロデューサーのベン・シュワルブは胃潰瘍で病院に担ぎ込まれてしまったという。
 そんな感じの人なので、彼女自身もいろいろな意味でカルト的な人気が高い。『エルム街の悪夢3/惨劇の館』('87)ではそのイメージを逆手にとって、悪夢の中に出てくる映画女優ザ・ザ・ガボールとして登場。日本人でピンと来た人は殆んどいないと思うが、アメリカの観客は思わずニンマリしてしまったに違いない。

 なお、似たような映画として、全身黒タイツの女族が月を支配する『月のキャット・ウーマン』('53)という作品も非常に人気が高い。ただし、出てくる美女の数とお色気度数では、本作の方に軍配が上がると思う。とりあえず、興味のある人はそちらもチェックしてみるといいかもしれない。まあ、本当に興味があればの話だけれども・・・(笑)。

 

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