サンドラ Sandra
ディスコ・アーティスト列伝<8>
日本ではアラベスクの元リード・ボーカリストとか、エニグマのボーカリストという肩書きで紹介されることの多いサンドラ。だが、ヨーロッパでは80〜90年代にかけて最も成功した女性ボーカリストとして、マドンナに匹敵するほどの絶大な人気を誇っていた。地元のドイツはもとより、イタリア、フランス、スペイン、ギリシャ、ロシア、スイス、スウェーデン、オーストリアなど各国のヒット・チャートを席巻する大スターだった。アラベスクなどはサンドラが在籍していたグループとして、後になってから知られるようになったくらいだという。
今回はアラベスクからの流れがあるためにディスコというカテゴリーで紹介しているが、サンドラの作品は厳密に言うとディスコではない。ダンサンブルなエレクトロ・ポップスと呼ぶべきだろう。それも、どこか陰があってアンニュイ、幻想的でダークなムードを漂わせた作品が多い。その特徴はキャリアを重ねるごとに濃厚となっていき、90年代半ば以降になると、もはやダンス・ミュージックとは呼べないくらいにディープになっていく。
そんなサンドラのサウンドを支えた人物がマイケル・クレトゥ。ソングライターであり、プロデューサーであり、ミュージシャンであり、そしてサンドラの夫でもある。グレゴリアン・チャントとクラブ・ミュージックを融合して90年代に一世を風靡し、日本でも大人気だったエニグマが彼のソロ・プロジェクトであることは有名な話だろう。もともとドイツの人気テクノ・ポップ・バンド、ヒューバート・カーのプロデューサーだった人だが、そのマイケル・クレトゥにとってもサンドラのディスコグラフィーは80年代のテクノ・ポップから90年代のエニグマへと連なっていく創作活動の軌跡でもある。
1962年5月18日、ドイツはザールランド州の都市ザールブリュッケンに生まれたサンドラは、本名をサンドラ・アン・ラウエルという。父親はワイン・ショップを経営するフランス人、母親はドイツ人だった。幼い頃からバレエを習い、10歳の誕生日に両親からギターをプレゼントされたサンドラ。音楽好きなのは勿論のこと、かなり度胸の据わった少女だったようだ。それを物語るのが、彼女のデビュー秘話だろう。
当時13歳だったサンドラは、地元で開催されたオーディション大会“ヤング・スター・フェスティバル”を観客として見に行った。出場者の歌が全て終わり、審査員が審議に入ったところで、彼女は母親に“トイレに行ってくる”と席を立った。ところが、そのまま彼女はステージの上へ。驚いている司会者にオリビア・ニュートン・ジョンの曲をリクエストすると、そのまま歌いだしてしまったのだという。この逸話が話題となり、同年の1975年に彼女はサンドラ・アンとしてシングル“Andy
Mein
Freund(私の友達アンディ)”で見事デビューを果たした。これはディスコ風にアレンジされた典型的なアイドル歌謡ポップスで、サンドラのパワフルな歌声は見事だったが、セールス的には全く伸びなかったらしい。
その後、アイドル予備軍としてテレビに出るなどしていたサンドラは、1979年にアラベスクのリード・ボーカリストとして起用される。アラベスクは当時既に「ハロー・ミスター・モンキー」を日本で大ヒットさせており、彼女はたちまちハード・スケジュールに追われるようになる。当時の日本において、アラベスクがその他大勢のディスコ・アーティストやキャンディ・ポップ系アーティストのような一発屋で終わらなかったのは、やはりサンドラの功績と見ていいだろうと思う。それまでは固定したリード・ボーカリストという存在のなかったグループに、キュートで可愛らしい17歳のサンドラが加わることで、アラベスクはアイドル・グループ的な要素を兼ね備えるようになったのだ。
さて、アラベスクが主にレコーディングを行っていたのがボニーMで有名な大物プロデューサー、フランク・ファリアンの所有する“ヨーロッパサウンド・スタジオ”だったのだが、このスタジオで専属ミュージシャンとして働いていたのがマイケル・クレトゥだった。誕生日が同じということもあって意気投合したサンドラとマイケルは、アラベスク解散直後の1984年にミュンヘンへ活動の拠点を移した。マイケルのソロ・アルバム“Legionare”にゲスト・ボーカルとして参加したサンドラは、同年彼のプロデュースでソロ・デビュー・シングル“Japan
ist weit”をリリース。これはアルファビルの大ヒット曲“Big In
Japan”のドイツ語カバーで、アラベスク時代に日本で大スターだったサンドラのキャリアを意識しての作品だったが、セールス的には全くの惨敗を喫してしまう。
そして1985年、サンドラにとって転機となるシングル“Maria
Magdalena”がリリースされた。マグダラのマリアをテーマにした幻想的かつスケールの大きいダンス・ナンバーだったが、発売当初は地元のドイツでも全く無視されていたという。プロモーション・ビデオを作る資金も無く、テレビ出演を交渉しても断られるという状態だったらしい。ところが、ギリシャのヒット・チャートで1位を記録したのを皮切りに、トルコやフランスなどヨーロッパ各国でナンバー・ワンを獲得する大ヒットとなった。それがちょうど8月のバカンス・シーズンで、ヨーロッパ旅行からドイツに戻った人々がレコード店で“Maria
Magdalena”を買い求めるようになり、最終的にはドイツでもナンバー・ワンを獲得するに至ったのだった。
“私がドイツ人だということすら、みんな知らなかったはずよ”とサンドラ自身も語っているが、アラベスクが地元ドイツではほぼ一発屋だったこともあって、母国での彼女の知名度というのは当時かなり低いものだったようだ。
さて、続いて発売されたセカンド・シングル“In
The Heat Of The
Night”もイスラエルで1位、ドイツとスイスとスウェーデンで2位、フランスで5位、イタリアで4位という大ヒットとなり、アルバム“Long
Play”もスウェーデンで2位、スイスで4位、ドイツで12位とまずまずの成績を記録。ちなみに、“In The Heat Of The
Night”はドイツで数週間に渡って2位に止まっていたが、その間に1位を独占していたのがエルトン・ジョンのシングル“Nikita”だった。どうしても1位を取れなかったのが悔しかったと語っていたサンドラは、その後生まれた長男にニキータと名づけている。
こうしてヨーロッパ全土を席巻するトップ・スターとなったサンドラは、半年に及ぶ武者修行を行うためにロンドンへ渡った。ベルリッツで英語の発音を学び、有名な声楽コーチのヘレナ・シェレンのもとでボーカル・トレーニングを行った。さらに、リズム感を身に付けるためにドラムの演奏まで勉強したという。
帰国後の1986年10月、セカンド・アルバム“Mirrors”がリリースされる。同時発売のシングル“Hi!
Hi!
Hi!”はドイツで7位、イタリアで8位、南アフリカで4位、イスラエルで5位を記録し、アルバムもドイツで16位、スイスで13位などを記録。翌年には初のベスト盤“Ten
To One”がリリースされ、新曲として収録されたシングル“Everlasting
Love”がドイツとスイス、イスラエルで5位を記録した他、ヨーロッパのナショナル・チャートでも5位まで上る大ヒットとなった。
このシングル“Everlasting
Love”の成功に目を付けたのが、当時カイリー・ミノーグやバナナラマなどを大成功させていたイギリスのPWL。88年にはPWLのリミックスによって“Everlasting
Love”はイギリスとアメリカでもリリースされ、サンドラにとって本格的な全米進出となったが、イギリスで45位、アメリカではダンス・チャートで22位と、残念ながら大ヒットには至らなかった。やはり、どうしてもユーロポップの括りで見られてしまうのが、イギリスやアメリカではハンデだったようだ。
その一方で、88年にはサード・アルバム“Into A
Secret
Land”をヨーロッパ全土でリリース。これは、地中海的なオリエンタリズムを盛り込んだ非常に野心的な作品で、サンドラのディスコグラフィーの中でもターニング・ポイント的なアルバムだった。エキゾチックで壮大なスケールのダンス・ナンバー“Heaven
Can
Wait”がファースト・シングルとしてリリースされ、フランスで6位、ドイツで12位、イスラエルで2位などのヒットを記録。続くセカンド・シングル“Secret
Land”もドイツで7位、イスラエルで1位、スイスで9位、南アフリカで8位などを記録し、アルバムもドイツとフランスで14位、スイスで9位など、まずまずの成績を収めている。
そして、1989年にはウィッシュフル・シンキングのカバーであるシングル“Hiroshima”をリリース。これはアラベスク時代に広島を訪れて大きな衝撃を受けたというサンドラが長年温めていた企画で、まさにエニグマ・サウンドの原点とも言うべきアンビエントなエレクトロ・ナンバー。ドイツやスイス、イスラエルで4位を記録した他、各国で大変な評判となった。
翌1990年にはアルバム“Paintings
In
Yellow”をリリース。“Hiroshima”の流れを受け継いだ幻想的でファンタジック、なおかつダークで深遠なムードの作品で、ドイツで4位、スイスで8位を記録するなど、オリジナル・アルバムとしては最大のヒットを記録した。さらに、92年には彼女にとって2枚目となるベスト・アルバム“18
Greatest
Hits”をリリース。ドイツで10位、フィンランドで1位、フランスで7位をマークしている。
同じ92年にはオリジナル・アルバム“Close To
Seven”もリリースしている。こちらもドイツで7位、フランスで13位、スイスで8位を記録する大ヒットとなったが、シングル“Don't Be
Agressive”はドイツで17位、フランスで39位、スイスで24位と、いま一つ奮わなかった。これは、よりマニアックに、よりアンビエントに傾倒して行ったサウンドがポップ・チャート向きではなかったという事が最大の要因だと考えられる。ちょうど前年の1991年にエニグマの“Sadness”が世界的な大ヒットとなり、マイケル・クレトゥの思い描いてきたゴシック・スタイルのアートなクラブ・サウンドというのが世界に通用する事が証明された。その路線をサンドラの作品にも踏襲した結果が、この“Close
To
Seven”というアルバムだったのだが、それまでの彼女のファンが求めていたものとのギャップというのが数字に表れてしまったのかもしれない。セカンド・シングル“I
Need Love”はチャート・インすらせず、サンドラにとって“Japan ist
weit”以来の失敗作となってしまった。
この流れは次のアルバム“Fading
Shadows”でも止まらず、さらにコアでマニアック、アート志向の強い作品に仕上がってしまった結果、ドイツで42位、スイスで37位という散々なセールスとなってしまった。ムーディ・ブルースのカバー“Nights
In White
Satin”がファースト・シングルとしてリリースされ、イスラエルではナンバー・ワンを獲得するも、その他の国では軒並み失敗。また、95年にニキータとセバスチャンという双子を出産したこともあり、サンドラは子育てに専念するため音楽界を一時引退することになった。
1999年にヒット曲のリミックス・バージョンを含めた2枚組ベスト・アルバム“My
Favorites”をリリースしたサンドラ。高額な2枚組であるにも関わらず、ドイツとフランスで16位、ノルウェーで15位など、まずまずのヒットを記録している。
2000年には友人である男性シンガー、アンドルー・ドナルドのシングル“Precious
Little Diamond”にゲスト・ボーカルとして参加したサンドラは、2002年のアルバム“The Wheel Of
Time”で7年ぶりのカムバックを果たした。幻想的で洗練されたエレクトロ・サウンドはまさにエニグマ路線という感じだったが、新作を待ち望んでいたファンはすぐさま飛びつき、ドイツではアルバム・チャート8位という久々の大ヒットを記録。しかし、前年にリリースされたシングル“Forever”や“Such
A
Shame”は相変わらずの低調ぶり。サンドラ自身、ポップ・チャートにはもう興味がなくなってしまったかのようにも思えるような感じだった。
いずれにせよ、カムバック・アルバム“The
Wheel Of Time”は結果的には大成功で、2003年にはプロモ・クリップなどを集めたDVD“The Complete
History”も発売されている。さらに、2005年にはスイスの人気ダンス系アーティスト、DJボーボーとのデュエット・シングル“The Secrets Of
Love”をリリース。久々に夫以外のアーティストと組む作品だったが、スイスで5位、ドイツで13位というヒットとなった。
さらに、2006年には過去のヒット曲を21世紀スタイルのダンス・ポップとしてリメイクした企画盤“Reflections”をリリース。サンドラ自身はあまり乗り気ではなかった企画らしいが、ポーランドなど東欧を中心に好評を博した。
そして、2007年には最新アルバム“Art
Of
Love”をリリース。エニグマの新作で多忙を極めたマイケル・クレトゥに代わって、彼の右腕であるジェンス・ガドがプロデュースを務めた作品で、これまた環境音楽みたいにディープで幻想的な作品に仕上がっていたが、ドイツでは初登場16位をマーク。根強いサンドラ人気を証明した形となった。
先述したように、日本ではアラベスクのリード・ボーカリストというイメージの強かったサンドラ。その知名度にあやかって、ソロ・デビュー当初は日本でもかなり大々的なプロモーションが行われていた。86年には東京音楽祭に出場するために来日も果たしているが、結局日本では人気が定着しなかった。その最大の理由は、やはりアラベスク時代との大きなギャップにあるだろう。キャッチーでポップでダンサンブルという日本人好みのアラベスクに比べると、幻想的で暗くてアート志向の強いサンドラの作品はリスナーを選んでしまったのかもしれない。
特に90年代半ば以降はポップスという形容詞を付けることすら躊躇してしまうような楽曲が大多数を占めていくのだが、その一貫した美意識にはヨーロッパ的な耽美主義や象徴主義が息づいていて、他のアーティストには見られない独特の妖しい輝きを放っていると言える。それゆえに、アメリカやイギリスでは受け入れられなかったのだろう。すっかりシングル・チャートとは縁のないアーティストになってしまったが、その孤高ともいえる音楽性を貫き通す限り、ボクも含めたファンはいつまでも付いていくはずだ。
Maria Magdalena
(1985) The Long Play
(1985) Innocent Love
(1986) The Mirrors
(1986)
(P)1985 10 Records (UK)
(P)1985 Virgin (Germany)
(P)1986 Virgin (Germany)
(P)1986 Virgin
(Germany)
Side 1
1,Maria Magdalena
(Extended Version) 7:12
Side 2
1,Party Games (Instrumental)
3:25
2,Maria Magdalena 3:58
produced by Michael Cretu1,In The Heat Of The Night ビデオ
2,On The Tray
(Seven Years)
3,Little Girl ビデオ
4,You And
I
5,Maria Magdalena ビデオ
6,Heartbeat
7,Sisters
And Brothers
8,Change Your Mind
produced by Michael
CretuSide 1
1,Innocent Love
(Extended)
Side 2
1,Innocent Theme
produced by Michael Cretu
and Armand Volker1,The Second Day
2,Don't Cry (The
Breakup Of The World)
3,Hi! Hi! Hi! ビデオ
4,Midnight
Man
5,You'll Be Mine
6,Innocent Love ビデオ
7,Two Lovers
Tonight
8,Mirror Of Love
9,Loreen ビデオ
produced
by Michael Cretu & Armand Volker
やっぱりオープニングのシンセでしょう。あの豪快なスケール感、文句なしのカッコ良さです。ニューウェーブの流れを汲んだ80年代テクノ・ダンス・ポップの傑作。このアンニュイな幻想感も大好き。ほど良くキャッチーで、そのサウンドとメロディのバランス感も絶妙です。ただ、エクステンデッド・バージョンならもうちょっと遊びがあっても良かったかな。
記念すべきサンドラのファースト・ソロ・アルバム。ダンス・ポップというよりも、どちらかというとロック寄りのジャーマン・テクノ・ポップという感じですね。彼女の特徴と言える幻想的な世界観は、この頃から一貫しています。マイケル・クレトゥのデジタル・オタクぶりが伺えるような、凝ったサウンド・プロダクションもグッド。#5の他、#1と#3がシングル・カットされています。
アルバム“Mirrors”に先行する形でリリースされたシングル。全作の路線を踏襲しつつも、よりロマンチックでエレガントな幻想感を描き出したエレクトロ・ダンス・ポップに仕上がっています。この叙情的なムードは、後期のアバ作品にも通じるものがあるかもしれません。ジャケットも美しいですね。B面収録の“Innocent
Theme”はインスト・バージョンです。
よりドラマチックで重厚なサウンドを聴かせる、実に素晴らしい仕上がりのセカンド・アルバム。当時、神田の予備校に通ってたボクは、このアルバムをカセットにダビングして、授業そっちのけで聴きまくってました。この完成された作品世界というか、近未来的なビジュアルを容易に思い描けるようなサウンド構成は見事としか言いようがないですね。テクノ・ポップ・ファン必聴です。
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Hi! Hi! Hi! (1986) |
Ten On One (The Singles) |
Heaven Can Wait (1988) |
Into A Secret Land (1988) |
(P)1986 Virgin (Germany) | (P)1987 Virgin (Germany) | (P)1988 Virgin (Germany) | (P)1988 Virgin (Germany) |
Side 1 1,Hi! Hi! Hi! (Extended Version) 6:12 Side 2 1,You'll Be Mine 4:33 2.Hi! Hi! Hi! 3:31 produced by Michael Cretu & Armand Volker |
1,Everlasting Love ビデオ 2,Hi! Hi! Hi! 3,Stop For A Minute 4,Innocent Love 5,Little Girl 6,Maria Magdalena 7,In The Heat Of The Night 8,Midnight Man 9,Don't Cry (The Breakup of the World) 10,Loreen produced by Michael Cretu & Armand Volker |
1,Heaven Can Wait (Extended Version)
7:38 2,Heaven Can Wait (Dub Mix) 4:01 3,Heaven Can Wait (Single Version) 4:05 produced by Michael Cretu |
1,Secret Land ビデオ 2,We'll Be Together 3,Heaven Can Wait ビデオ 4,Just Like Diamonds 5,Around My Heart ビデオ 6,Crazy Juliet 7,La Vista De Luna 8,Celebrate Your Life 9,Children of England produced by Michael Cretu |
アルバム“Mirrors”の中でも、特にキャッチーでポップなエレクトロ・ダンス・ナンバー。ブリッジ無しで、サビで一気にドカンと転調するメロディ展開も見事で、サンドラの作品としては珍しく爽快感溢れる作品に仕上がってます。このエクステンデッドではドラムのステレオ感で遊びまくったブレイク・ビーツが楽しめます。アルバム・バージョンよりも遥かにカッコいいっすよ〜!! |
ファースト・アルバムとセカンド・アルバムからのベスト・トラックに、新曲#1を加えたサンドラ初のベスト・アルバム。その#1は1968年にイギリスのロック・バンド、ラブ・アフェアが大ヒットさせた曲のカバーで、グロリア・エステファンも歌っている作品です。このドイツ盤に収録されているのはオリジナル・バージョン。今はいろいろとベスト盤も出ているので、このCDは必要ないかも。 |
サンドラの楽曲でどれが一番好きかときかれたら、迷わずこの曲を挙げます。とにかく、傑作。この地中海的な透明感とファンタジックな幻想感、無機質なデジタルと有機質なアナログを絶妙なバランスで融合させたサウンド、哀切感溢れるサンドラの適度に湿ったボーカル。奇跡のような仕上がりです。特に、様々な実験を施したエクステンデッド・バージョンは必聴。 | もうジャケットのイメージそのもの。幻想的で、ロマンチックで、透明感溢れる地中海風エレクトロ・ダンス・ポップ。88年の1月にスペインのイビザ島へ移住したサンドラとマイケル・クレトゥですが、明らかにその影響が濃厚ですね。シンセサイザーの音色がこんなにオーガニックに聴こえるというのも不思議。ポップスとアートが理想的な融合を遂げたアルバムと言えるでしょう。 |
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Secret Land (1988) |
We'll Be Together (1989) |
Around My Heart (1989) |
Painting In Yellow (1990) |
(P)1988 Virgin (Germany) | (P)1989 Virgin (Germany) | (P)1989 Virgin (Germany) | (P)1990 Virgin (Germany) |
A Side 1,Secret Land (Reverse Mix) 6:44 B Side 1,Secret Land (Single Version) 4:05 2,Secret Land (Dub Mix) 3:33 produced by Michael Cretu |
A Side 1,We'll Be Together (Extended Version) 6:45 B Side 1,We'll Be Together (Dub Version) 3:43 2,We'll Be Together (Single Version) 3:49 produced by Michael Cretu |
A Side 1,Around My Heart (Extended Version) 6:02 B Side 1,Around My Drums (Instrumental) 3:13 2,Around My Heart (Single Version) 3:11 produced by Michael Cretu |
1,Hiroshima ビデオ 2,(Life May Be) A Big Insanity ビデオ 3,Johnny Wanna Live 4,Lovelight In Your Eyes 5,One More Night ビデオ 6,The Skin I'm In 7,Painting In Yellow 8,The Journey 9,Hiroshima (Extended Club Mix) produced by Michael Cretu |
これまた素晴らしい楽曲です。この透明感、この幻想感、ほんのりと漂うセンチメンタリズムが、遥か彼方の地中海へと聴く者を誘ってくれるような作品ですね。この頃のマイケル・クレトゥはメロディ・メーカーとしても絶頂期だったと思います。この作品にしても、凝ったサウンド・プロダクションに負けないくらい完璧なメロディが最大の魅力。リミックスは純粋にエクステンデッドです。 | “Into A Secret Land”から3枚目のシングル・カットですが、新たにリミックスし直されています。確かに、アルバム・バージョンはちょっと地味めな感じでした。どことなくオリエンタルな味わいのあるメロディが特徴ですが、ここではゴリゴリにヘヴィーで切れのあるエレクトロ・サウンドを聴かせてくれていて、かなり派手な仕上がり。オリジナルはイマイチでしたが、これは好きですね。 | アルバム“Into A Secret Land”の中でも一番ポップでキャッチーだった作品。シングル・カットに際してはリミックスが施されています。エレガントでフェミニンなメロディは絶品。パリ・コレとかのショーなんかでも映えそうな感じの楽曲だと思いますね。ほど良くラウンジっぽいテイストに味付けされているのもグッド。このプチ・ゴージャスな感じがたまりません。 | サンドラが初めてエニグマ路線を打ち出したアルバムと言っていいでしょう。全体的にメッセージ性の強い作品が多いのも特徴。幾重にもレイヤーを重ねた複雑な音作りも聴き応え十分。サンドラのボーカルも非常に情熱的で、かなりスケールの大きな歌声を聴かせてくれます。一方で、ポップ色は影を潜め、ディープで暗い音世界を繰り広げているので、好き嫌いも分かれるかな。 |
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(Life May Be) A Big Insanity (1990) |
Close To Seven (1992) |
Don't Be Aggressive (1992) |
Johnny Wanna Live (1992) |
(P)1990 Virgin (Germany) | (P)1992 Virgin (Germany) | (P)1992 Virgin (Germany) | (P)1992 Virgin (Germany) |
Side 1 1,(Life May Be) A Big Insanity (Radio Edit) 2,(Life May Be) A Big Insanity (Club Mix) Side 2 1,(Life May Be) A Big Insanity (Dance Mix) 2,(Life May Be) A Big Insanity (Dub Mix) produced by Michael Cretu |
1,Don't Be Aggressive ビデオ 2,Mirrored In Your Eyes 3,I Need Love 4,No Taboo 5,When The Rain Doesn't Come 6,Steady Me 7,Shadows 8,Seal It Forever 9,Love Turns To Pain 10,Your Way To India produced by Michael Cretu |
1,Don't Be Aggressive (Radio Edit)
4:22 2,Don't Be Aggressive (The Midnight Hour Mix) 6:23 # 3,Seal It Forever 4:51 produced by Michael Cretu # arranged by Michael Cretu & Jens Gad |
1,Johnny Wanna Live 3:50 ビデオ 2,Johnny Wanna Live (Extended Version) 5:18 3,Mirrored In Your Eyes 3:26 produced by Michael Cretu |
アルバム“Painting In Yellow”の中で唯一ポップでキャッチーなダンス・ナンバー。ヒップ・ホップ風のハードな打ち込みをベースに、シニカルで遊び心のなる独特のポップ・ワールドが繰り広げられます。その捻くれた感覚がいいですね。リミックスの中では、オリジナルを派手に演出したダンス・ミックスがベストです。さらに派手な遊びを繰り広げるクラブ・ミックスも聴き応えは十分。 | 全作よりもさらにディープで暗い作品に仕上がったアルバム。ほとんどエニグマのアルバムと言っても分らないかもしれません。ポップ・ミュージックというよりもヒーリング・ミュージック的な要素が濃厚といった感じですね。当時は、あまりにもマニアック過ぎてピンと来なかったもんでしたが、今聴くと意外と心地良く感じるのは不思議ですね。じっくりと聴き込みたい1枚。 | ディープなグランドビートを基調に、地中海的なオリエンタリズムを盛り込んだ摩訶不思議な雰囲気の作品。特に#2のリミックスは非常にエキゾチックな仕上がりで、緻密かつ丁寧に構成されたアレンジはお見事!といった感じ。深遠な美しさというか、何とも言えない耽美的なムードが味わえます。ヘッドホンで大音量にしながら聴くと、かなりトリップ出来ますね。 | アルバム“Paintings In
Yellow”に収録されていた楽曲を、ベスト盤“18 Gre atest Hits”の発売に併せてシングル・カットしたのがコレ。動物愛護のメッセージを込めた作品で、サンドラ自身最も気に入っている作品の一つだそうです。耽美的でもの悲しいメロディが秀逸で、とても美しい名曲だと思います。派手さを抑えた叙情的で厚みのあるリミックス#2も見事。 |
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Maria Magdalena (1993) |
Fading Shades (1995) |
Nights In White Satin (1995) |
Secret Land (1999) |
(P)1993 Virgin (Germany) | (P)1995 Virgin (Germany) | (P)1995 Virgin (Germany) | (P)1999 Virgin (Germany) |
1,Radio Edit 3:58 ビデオ 2,Clubmix 6:01 3,Original Version 3:58 4,Vega Sicilia Mix 5:36 produced by Michael Cretu |
1,Fading Shades (Part 1) 2,Nights In White Satin 3,Son Of A Time Machine 4,Won't Run Away 5,Tell Me More 6,will You Whisper 7,Invisible Shelter 8,You Are So Beautiful 9,I Need Love 10,First Lullaby 11,Fading Shades (Part 2) produced by Michael Cretu & Jens Gad |
1,Radio Edit 3:35 2,Club Mix 6:05 3,Techno Mix 5:29 4,Jungle Mix 6:09 5,Dub Version 4:02 produced by Michael Cretu & Jens Gad |
1,Radio Edit 3:20 2,Ultra Violet Club Mix 5:34 3,La Danza Club Mix 6:12 4,Ultra Violet Radio Edit 3:41 produced by Michael Cretu #1,#2 remixed by Peter Reis #3 remixed by Wolfgang Fliz |
ベスト盤の大ヒットを受けて急遽リリースされた“Maria Magdalena”のリミックス・バージョン。ん〜・・・という感じです(汗)。クラブ・シーンを意識し過ぎたというか、サンドラらしい幻想的ムードを残しながらも、まるでスナップ!のようなユーロ・テクノ・ハウスに仕上がってしまってます。もっと違うアプローチもあったんじゃないのかな・・・とも思うのですがね〜。残念。 | なんだかサラ・ブライトマンみたいなジャケットですが(笑)。ここまで来たら、もう既にポップスじゃないんじゃないの !?といった感じの、非常にディープで幻想的なヒーリング・ミュージックを聴かせてくれます。これはやっぱり賛否両論でしょうね。当時、セールス的に伸び悩んだのも頷けます。少なくとも、ポップ・チャート向きのアルバムとは言えないでしょう。 | サンドラにしては珍しく、複数のリミックスを集めたマキシ・シングルとなってます。原曲はムーディ・ブルースの大ヒット作。とはいえ、完全にサンドラ・スタイルに染め上げています。幻想的でファンタジックなエレクトロ・ヒーリング・サウンド。リミックスはどれもBPM140とか150。このノリは、ほとんどアンビエント・ハウスですね。個人的には、ここまで来るとちょっと苦手ですね。 | ベスト盤“My Favorites”のリリースに併せて発売された名曲“Secret Land”のリミックス盤。オリジナルのアレンジを生かした#1は大変グッドで、サンドラにとって久々の良質なポップ・ナンバーといった感じです。ただね、その他のミックスがどうも・・・。原曲のメロディを完全に壊してしまったハッピー・トランス#2は無理だし、NY風のハード・ハウスに仕上げた#3も及第点。 |
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My Favourites (1999) |
Forever (2001) |
The Wheel Of Time (2002) | |
(P)1999 Virgin (Germany) | (P)2001 Virgin (Germany) | (P)2002 Virgin (Germany) | |
CD 1 Remixes 1,Mirrored In Your Eyes 2,Secret Land 3,We'll Be Together 4,Won't Run Away # 5,Maria Magdalena 6,Heaven Can Wait 7,Hiroshima 8,Tell Me More # 9,Celebrate Your Life 10,Around My Heart 11,In The Heat Of The Night 12,Way To India produced by Michael Cretu # produced by Michael Cretu & Jens Gad remixed by Peter Reis & Wolfgang Fliz |
CD 2 Originals 1,No Tabbo 2,Johnny Wanna Live 3,Don't Be Aggressive 4,One More Night 5,Steady Me 6,Love Turns To Pain 7,Seal It Forever 8,I Need Love # 9,When The Rain Doesn't Come 10,Nights In White Satin # 11,First Lullaby # 12,Fading Shadows # produced by Michael Cretu # produced by Michael Cretu & Jens Gad |
1,Radio Edit 3:45 2,Straight 4 U Radio Edit 3:31# 3,Beatnik Club Mix 8:57## 4,Straight 4 U Remix 5:43# produced by Michael Cretu & Jens Gad # remixed by Peter Reis ## remixed by Wolfganf Fliz |
1,Forgive
Me 2,Footprints 3,Motivation 4,I Close My Eyes 5,Perfect Touch 6,Silent Running 7,Such A Shame ビデオ 8,Now! 9,Free Love 10,Forever ビデオ 11,The Wheel Of Time produced by Michael Cretu & Jens Gad |
2枚組という豪華仕様のベスト盤。1枚目は目玉とも言えるリミックス集ですね。基本的に、どれもオリジナルを尊重した仕上がりで、非常に安心して聴ける1枚ではあります。とはいえ、やはりオリジナルの完成度には遠く及ばず。#6なんかシンセのアレンジが薄っぺらくて、かなり安っぽいんですよね。どうせなら、マイケル・クレトゥ自身がリミックスすれば良かったのに・・・。 | 一方の2枚目は、オリジナル・バージョンによるベスト盤。これがね、“Close To Seven”以降からの選曲なんですよ。サンドラのCDやレコードだったら何でも集める!という熱心なコレクターでない限りは、ちょっと厳しいかもしれませんね。最近は廉価版でちゃんとしたベスト・アルバムも出ているので、初心者はそちらを購入する事をオススメします。 | 6年振りの新曲となった作品で、アルバム“Wheel Of Times”の先行シングル。フワフワとしたドリーミーで穏やかなバラード・ナンバーで、アンビエント色が強いものの、どことなく暖かさが滲み出た優しい作品です。#2と#4のリミックスは、そのソフトな感じを生かしたポップ・ハウスに、#3はハードなユーロ・トランスに仕上がってます。まあ、可もなく不可もなくといったところでしょうか。 | 相変わらずヒーリング系のサウンドを聴かせながらも、随所に80年代のサンドラっぽいポップ・センスを光らせた7年ぶりのオリジナル・アルバム。全体的に暖かな優しさを漂わせながらも、耽美的な美しさを持った作品と言えるでしょう。ただ、本当に和み系なので、油断すると子守唄代わりになってしまう危険性も(笑)。最後まで通して聴くのは辛いかもしれません。 |
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Such A Shame (2002) |
Reflections (2006) |
Secrets Of Love (2006) |
Art Of Love (2007) |
(P)2002 Virgin (Germany) | (P)2006 Virgin (Germany) | (P)2006 DJ BOBO Records (EU) | (P)2007 Virgin/EMI (Russia) |
1,Radio Edit 4:18 2,Straight Dance Mix 7:54# 3,Cool Club Mix 5:22## 4,Karaoke Version 4:18 produced by Michael Cretu & Jens Gad # remixed by Wolfgang Fliz ## remixed by Peter Reis |
1,Around Me Heart ビデオ 2,Stop For A Minutes 3,Hi! Hi! Hi! ビデオ 4,Maria Magdalena ビデオ 5,In The Heat Of The Night 6,Heaven Can Wait ビデオ 7,Everlasting Love 8,Hiroshima ビデオ 9,One More Night 10,Secret Land ビデオ 11,Innocent Love ビデオ 12,We'll Be Together Reproduced by Felix J.Gauder, Christian Geller, Schalibau, Offenbach, Ivo Moring and Mirka von Schlielfen, Mathias Menck |
1,Radio Version 3:17 2,Club Mix Radio Edit 3:59 # 3,Club Mix 6:42 # 4,Instrumental 3:19 bonus video produced by Rene Baumann, Axel Breitung. # remixed by Jens Gad. |
1,What D'ya Think Of Me 2,The Way I Am ビデオ 3,The Art Of Love 4,What Is It About Me 5,Dear God, If You Exist 6,Silence Beside Me 7,Once Upon A Time 8,Put Your Arms Around Me 9,What's Left To Say 10,Casino Royale 11,Love Is The Price (with DJ Bobo) 12,Shadow Of Power 13,All You Zombies 14,The Way I Am (Extended Club Edit) 15,The Way I Am (Lounge Edit) 16,Logical Love 17,Sleep (Alternative Version) produced by Jens Gad |
どことなく80年代のジャーマン・ユーロっぽいリズム・パターンが懐かしい作品です。とはいえ、そこはサンドラのこと。ダークで捻った雰囲気のクセモノな楽曲に仕上がっています。リミックスはというと、#2はありきたりな感じのユーロ・トランス。#3は80年代っぽいボコボコとしたエレクトロ・サウンドが心地よい仕上がりで、決して悪くはないと思います。 | こちらは、ドイツの若手クラブDJと組んだベスト・リメイク集。ボーカル・トラックだけは当時のものを使用しています。“My Favourites”のリミックスが期待外れの出来だったのに対し、こちらのリメイクは原曲のイメージを保ちつつ、かなり遊び心溢れる音作りを聴かせてくれます。もちろん原曲がベストですが、これはこれでアリだろうな、と。古くからのファンにはオススメです。 | ヨーロッパでは絶大な人気を誇るユーロ・ハウス系アーティスト、DJボーボーと組んだ作品で、サンドラにとっては本当に久しぶりのストレートなダンス・ポップ・ナンバーに仕上がっています。しかも、シャウトまでしまくる大熱唱を聴かせてくれていて、結構こういうのもやりたいんじゃない!?と思わせられますね〜。楽曲的には平凡ですが、古いファンには嬉しい1枚だと思います。 | サンドラ・ファン待望の最新作。これはちょっとキツいかもなあ・・・(笑)。アート路線に走りすぎてしまい、ポップスとしては非常に物足りない作品になってしまいました。また、メッセージ性を全面に押し出し過ぎたという感じもありますね。完成度は非常に高いです。ただ、ポップスとしては・・・。でも、サンドラの歌は上手くなりましたね。これはボーナス・トラック盛り沢山のロシア盤。 |
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The Complete History (2003) |
(P)2003 Virgin (Germany) |
画質★★★☆☆ 音質★★★★★ |
DVD仕様(ドイツPAL盤) |
収録曲 1,Maria Magdalena 2,In The Heat Of The Night 3,Little Girl 4,Innocent Love 5,Hi! Hi! Hi! 6,Loreen 7,Midnight Man 8,Everlasting Love 9,Stop For A Minute 10,Heaven Can Wait 11,Secret Land 12,We'll Be Together 13,Around My Heart 14,Hiroshima 15,(Life May Be) A Big Insanity 16,One More Night 17,Don't Be Aggressive 18,I Need Love 19,Johnny Wanna Live 20,Maria Magdalena Remix '93 21,Nights In White Satin 22,Secret Land Remix '99 23,Forever |
サンドラのプロモ・クリップを全て収録したファン必携のDVD。しかも、全曲にサンドラ自身のインタビュー・コメントが付きます。撮影秘話や彼女自身の思い入れなど、かなりたっぷりと語っていますね。また、特典ではアラベスク時代のテレビ・ライブの様子も収録。観客の冷ややかな反応が何とも言えないというか・・・(笑)。誰!?って顔して見てる人もいるので、やっぱり当時はドイツでは人気なかったのだと再認識。 |