サキス・ルーヴァス Sakis Rouvas
〜ギリシャで最初の男性ポップ・アイコン〜
今ギリシャで最も成功している男性アーティストが、このサキス・ルーヴァス。2004年のユーロビジョン・ソングコンテストでは、ギリシャ代表としては当時過去最高の3位(翌年にエレナ・パパリツォウが1位で優勝)で入賞を果たし、“ギリシャのリッキー・マーティン”としてヨーロッパ各国でも名前を知られるようになった。しかし、そのキャリアは1991年にまで遡ることが出来る。ギリシャにはライカと呼ばれる民族色の強い大衆音楽、日本で言うところの演歌みたいなジャンルがあり、そこにコンテンポラリー・ミュージックの要素を盛り込んだものをモダン・ライカというのだが、こうした民族的な伝統を大切にするのが従来のギリシャ音楽界の大きな特徴だった。ゆえに、いわゆるポップス系のアーティストもモダン・ライカとのクロスオーバーは避けて通れない。そうした中で、民族色が希薄な欧米風のポップ・ナンバーを歌うサキス・ルーヴァスのデビューは、当時のギリシャではかなり衝撃だったようだ。しかも、彼は歌えるだけでなくダンスも踊れて、ルックスもハンサムでセクシー。このようなアイドル的要素を兼ね備えた男性ポップ・スターの出現は、ギリシャでは前代未聞だったという。それだけ、ギリシャはポップス市場としては後進国だったとも言える。
このように、ギリシャで最初の男性ポップ・アイコンと呼ばれ、女性に絶大な人気を誇るセックス・シンボルとなったサキス・ルーヴァス。彼の登場はコンスタンティノス・クリストフォロウやサーベルといった今人気の若手男性アイドルのデビューを促し、ギリシャ音楽界にある種の革命を巻き起こしたと言えるかもしれない。
1972年1月5日、ギリシャはコルフ島の小さな島に生まれたサキス。家は非常に貧しい上に家庭内暴力が絶えず、非常に複雑な少年時代を過ごしたようだ。12歳で両親が離婚してしまい、再婚した父親に引き取られたサキスは、家計を助けるために働きに出された。彼自身は非常に母親想いで、働いた給料の中から父親に内緒で母親に送金をしていたという。幼い頃から音楽が好きだったが、このような家庭環境のため夢を追いかけるのもままならなかったようだ。一方、高校の体操選手として活躍していたサキスは、ギリシャのナショナル・チームからのスカウトを受ける。今の生活から抜け出るにはこれしかないと考えた彼は、高校を卒業してすぐに家族の反対を押し切ってアテネへと向かった。
棒高跳びの選手として国際大会でも活躍するようになったサキスは、その一方で音楽活動にも精力的に取り組む。そんな彼に注目したのが有名なライカ歌手ダキス。彼のサポートを得たサキスはポリグラム系列のマーキュリー・レコードと契約し、1991年に念願の歌手デビューを果たすこととなった。デビュー曲“Parta”はテサロニキ音楽祭のグランプリを受賞し、サキスは一躍注目の的となる。さらに、デビュー・アルバム“Sakis
Rouvas”も大ヒットを記録。まだ欧米風のポップスやロックが一般的ではなかったギリシャ音楽界に新風を巻き起こした。また、93年にリリースされたサード・アルバム“Gia
Sena(君のために)”がゴールド・ディスクを獲得し、以降全てのアルバムがゴールドないしプラチナム・ディスクを記録している。
2000年にEMIに移籍したサキスは、2002年のアルバム“Ola
Kala(全て大丈夫)”でデズモンド・チャイルドをプロデューサーに迎え、インターナショナル・マーケット向けに英語版も製作。本格的にヨーロッパ進出を図った。そして、2004年には“Shake
It”でユーロビジョン・ソングコンテスト3位入賞を果たす。また、2006年12月にリリースされた最新アルバム“Yparhi Agape
Edo(ここには愛がある)”は発売後3週間でプラチナム・ディスクを獲得する驚異的なヒットとなっている。さらに、今年は映画“Alter
Ego”の主演で俳優デビューも果たし、その人気は一向に衰える気配がない。
さて、ギリシャ国内の圧倒的な人気に比べて、国際マーケットではいま一つヒット曲に恵まれていないサキス・ルーヴァス。それは、良くも悪くもオーソドックスなポップ・ロックを歌う彼が、世界的に見れば決して目新しい存在ではないという点に尽きるだろうとは思う。リッキー・マーティンやトルコのタルカンがエスニック色の濃厚なポップ・ナンバーで世界的な成功を収めたのに対し、民族色の希薄なサキスは分が悪いと言わざるを得ない。国際マーケットを狙ったシングル“Ola
Kala”や“Shake
It”ではオリエンタル色やラテン色の強いダンス・ナンバーを披露したが、どちらもリッキーやタルカンの2番煎じに聴こえてしまうのは否定できなかった。
非英語圏のポップ・ミュージックに対する色眼鏡を外して彼の作品を聴けば、ポップスとしての完成度が決して低くないことに気付くはずだ。特に、ここ数年の作品は芸術的な完成度も非常に高い。確かに、非英語圏のアーティストが国際マーケットに進出する際にエスニック色を前面に押し出すのが最近のトレンドではあるが、彼の場合は逆にその魅力を半減させてしまうようにも思う。別に無理に世界進出する必要もないので、このまま良質なポップ・ナンバーを歌い続けて欲しいところだ。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
Me Kommeni Tin Anasa (1998) |
21os Akatallilos (2000) |
Ola Kala (2002) |
Remixes (2003) |
(P)1998 Mercury/Polygram (Greece) | (P)2001 Minos-EMI (Greece) | (P)2002 Minos-EMI (Greece) | (P)2003 Minos-EMI (Greece) |
CD 1 1Intro : ,Gia Sena 2,Ase me na figo 3,Tora Arhizoun Ta Diskola 4,Afiste Tin 5,Min M'agapisis 6,Aima, Dakria & Idrotas 7,Xana ビデオ 8,Ela Mou 9,Kane Me 10,Tha S'ekdikitho 11,Min Antistekese ビデオ 12,Min Kommeni Tin Anasa 13,Girna 14,Gia Fantasou 15,Parta ビデオ 16,Outro : Gia Sena Bonus CD 1,Afiste Tin (Extended Mix 12") 2,Tora Arhizoun Ta Diskola (Latin Dance Remix) 3,Pou Ke Pote (7" Remix) 4,Xana (Reggae Mix) 5,Oh Girl |
1,Antexa 2,Se Thelo San Trelos 3,Askisi Ipotagis 4,Kanoume Onira 5,Ine Oti Kratisa 6,Stin Mama Sou 7,Voudas 8,H Orea Kimomeni 9,Kitaxe Me Sto Fos 10,Rezerva 11,Oi Filoi Ki Oi Gnosti 12,Delfinaki 13,Akatallilos bonus tracks 14,Antexa (Club Mix) 15,Se Thelo San Trelos (Added Mix) |
1,Ola Kala ビデオ 2,Oso Zo ビデオ 3,Mia Zoi Mazi 4,Kati Omorfo 5,Iparhis 6,Aspro Mavro 7,Pou Tha Pas 8,Disco Girl ビデオ 9,Tha Erthi I Stigmi 10,An M'akous 11,Ola Kala (English Version) 12,Disco Girl (English Version) 13,The Light produced by Demond Child, Jules Gondar, Nthan Malki |
CD 1,Ola Kala (Acapella Remix) 2,Ola Kala (Stereodrome Remix) 3,Oso Zo (Samba Remix) 4,Disco Girl (Mykonos Remix) 5,Aspro Mavro (Extended Club Remix) 6,Den Ehi Sidera I Kardia Sou (Positive Energy Remix) 7,Ola Kala (Marsheaux Remix) 8,Se Thelo San Trelos (Added Mix) 9,O Tropos Pou Kitazi (Positive Energy Remix) 10,Ola Kala (feat. Kasmir Extended Remix) 11,Antexa (Club Remix) 12,Disco Girl (Mom Remix) 13,Meta Apo Sena To Haos (Positive Energy Remix) 14,Disco Girl (Booster Remix) 15,Ola Kala (feat. Kasmir Oriental Remix) DVD Video Clips (Antexa/Kanoume Onira/Ola Kala/ Disco Girl/Thelis I De Thelis/I Kardia Mou/Den Ehi Sidera I Karidia Sou/Ipirhes Panta) Making Offs/Live at L'Olympia in Paris |
初期ポリグラム時代の代表曲を集めたベスト盤。全体的にソフトでメロディアスなポップ・バラードや当時のイタロ・ハウス風のダンス・ナンバーが中心です。そんな中でも、ライカ風の哀愁メロディが印象的なロッカ・バラード#3、ノスタルジックで爽やかで美しいバラード#7が特に秀逸。ボーナス・ディスクに収録されている#4のレゲエ・リミックスも良く出来ています。普通にアイドル・ポップスとして楽しみたい1枚ですね。 | EMIへの移籍第一弾。オープニング#1からして、かなりハード・エッジなロック・ナンバーに仕上がっていて、彼の作品の中でも最もロック色の濃厚なアルバムかもしれません。ビジュアル的にも、デビュー当初からの甘いアイドル路線を一新し、この頃から素朴な男っぽさをアピールしていくようになります。ある意味では過渡期だったのかも。個人的には不満の残る内容ながら、ギリシャではバカ売れしました。 | 国際マーケットを意識してエスニック色を強めたメガ・ヒット・アルバム。汎地中海系あり、ラテン系ありといった感じで、あまりギリシャ的なものにはこだわってはいません。エンリケ・イグレシアス辺りを思わせる哀愁ダンス・ポップ#1を聴いても分かるように、あくまでもトレンドを計算した結果。なんたってデズモンド・チャイルドですしね。リッキーやエンリケが好きな人は楽しめること間違いなしの1枚です。 | 大ヒット“Oka Kala”を中心に、シングル曲のクラブ・リミックスを集めた企画盤です。フィルター・ハウスあり、ラテン・ハウスあり、ヒップ・ホップありという感じで、どれも手堅い仕上がり。また、シングルのみのアルバム未収録曲も含まれているので、ギリシャ盤があまり手に入らない外国のファンには嬉しい内容です。また、ボーナスDVDにはプロモ・クリップやらパリでのライブの模様なども収録されています。 |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
Shake It (2004) |
To Hrono Stamato (2004) |
S'Eho Erotefti (2005) |
Iparhi Agapi Edo (2006) |
(P)2004 Minos-EMI (EU) | (P)2004 Minos-EMI (Greece) | (P)2005 Minos-EMI (Greece) | (P)2006 Minos-EMI (Greece) |
1,Eurovision Version 2:58 ビデオ 2,Soumka Mix 3:32 3,Marsheaux Radio Mix 3:52 executive producer : Nikos Terzis |
1,Shake It (Eurovision
Version) 2,To Koritsi Ekeino 3,Ise Ta Panta 4,Se Kathe Anapnoi 5,Oneira Trela 6,Mazi Tha Zisoume 7,Thelo Na Ziso Xana 8,Thelo Na Kitao 9,Hronia Polla ビデオ 10,Milas Kitas Paraxena 11,Lathos Zoi 12,Noise 13,Gia Mia Fora 14,Tha Ime Edo 15,Tha Me Thimithis 16,To Hrono Stamato ビデオ 17,Pes Tis 18,Shake It (Marsheaux Radio Mix) |
CD |
1,O Iroas 2,Den Pirazi 3,Ego Travao Zori ビデオ 4,Psaxe Me 5,Poso Ponai Afto Pou Apofevgo 6,M Ena Antio 7,Mikros Titanikos (Se Latrevo) 8,18 (Iparhi Agapi Edo) 9,Mira Mou 10,Ola Giro Sou Girizou ビデオ 11,Ela Edo 12,Irthes 13,Fila Me Ke Allo 14,Giati Se Thelo 15,To Ergo |
記念すべきユーロビジョン・ソングコンテスト3位入賞曲。ユーロビジョン出場に合わせてヨーロッパ市場向けにリリースされたマキシ・シングルです。路線としてはフェロモン系オリエンタル・ダンス・ポップ。ギリシャのリッキー・マーティンと呼ばれてしまうわけですね。嫌いじゃないでんだけど、あっという間に忘れてしまうようなタイプの曲。リミックスも及第点です。 | ユーロビジョン出場を記念して、“Shake It”の2バージョンをボーナス・トラックとして収録したスペシャル・エディション。その“Shake It”以外は、80年代風の爽やかでストレートなポップ・ロックを中心に構成されています。ちょっと甘めのメロディも程よい感じで、とても気持ちよく聴ける1枚。特に#9のー・イヤー・ソングは、カトリーナ&ザ・ウェイブスみたいでかなり好みです。 | 今のところサキスにとって最大のヒットを記録したアルバム。確かに、楽曲はどれも良く出来てますね。ロマンティックでメロディアス、とてもゴージャスで上質なヨーロピアン・ポップスに仕上がっています。中でも、ドラマチックで美しいシャンソン風哀愁バラード#13は鳥肌モノの傑作です。このCDはトリプル・プラチナムを記念した特別盤で、DVDと大型写真集がオマケで付いてきます。 | ギリシャ国内では、サキスの今までの作品の中で最も芸術性の高いアルバムとして大絶賛されている1枚。モダン・ライカ的なアプローチが濃厚で、ギリシャ音楽らしいムードを生かしつつ、映画のワン・シーンを思わせるような薫り高いポップ・ナンバーを数多く収録しています。勿論、#10のようなダンス・ナンバーも充実。彼にとってターニング・ポイントとなるような作品と言えるかもしれません。 |
戻る