ロサリオ Rosario
スペインの伝説的な大スター、ロラ・フローレスの娘であり、大物ベテラン歌手ロリータを姉に持つロサリオ。自らもスペインを代表するトップ・アーティストの1人であり、2度のラテン・グラミー賞に輝く国際的なフラメンコ・シンガーでもある。
ロサリオの魅力というのは、フラメンコの伝統を脈々と受け継ぎながらも、その枠にとらわれないグローバルな音楽性にあると言えるだろう。影響を受けたアーティストとしてジャニス・ジョプリンやジミ・ヘンドリクス、ローリング・ストーンズ、アレサ・フランクリン、キャロル・キングらの名前を挙げ、“ジプシー版レニー・クラヴィッツ”とも評される彼女の作品は、フラメンコを基盤にしつつボサノバやファンク、サンバ、ルンバ、サルサ、ジャズ、ロックなど様々なジャンルを織り交ぜ、官能的で大胆で繊細な薫り高いラテン・ポップスに仕上げられている。
一方、ボーカリストとしてのロサリオは母ロラ・フローレスとも、姉ロリータとも一味違った個性の持ち主と言えるかもしれない。母や姉がカンタオーラの王道とも言うべきボーカリストだったのに対し、ロサリオはよりポップス的なアプローチで聴かせる歌い手だ。その歌声は情熱的かつ繊細。官能的であると同時にナチュラル。豊かな表現力と凛としたカッコよさは、特に女性から支持されるのではないかと思う。
1963年11月4日、スペインはマドリードの生まれ。本名はロサリオ・フローレス。母親はロラ・フローレス、父親はフラメンコ・ギタリストのアントニオ・ゴンザレス。ショービジネスの世界にどっぷりと浸かって育った彼女は、5歳の頃から両親のステージに立ってフラメンコを歌っていた。
そんなロサリオが最も影響を受けたアーティストは、伝説的なカンタオール、カマロン・デ・ラ・イスラ。その他、アレサ・フランクリンやジャニス・ジョプリン、ローリング・ストーンズ、ジミ・ヘンドリクスなどが彼女のアイドルだったという。
芸能界になかなか馴染めなかった姉ロリータとは対照的に、天性のエンターテイナーであった彼女は、小学生の頃から子役としても映画やテレビに出演するようになる。82年には兄アントニオと共に映画“Colegas(友達)”の主役に抜擢され、以降は女優として数多くの映画に出演した。
その後、92年に歌手へ転向してアルバム“De
ley(訴え)”でデビュー。スペイン国内だけで30万枚を売り上げるヒットとなり、同名シングルもヒット・チャートでナンバー・ワンを獲得した。さらに、96年リリースされたサード・アルバム“Mucho
por vivir(生きていれば)”は40万枚を超えるヒットとなり、“Que Bonito(それは素敵)”と“A tu
lado(あなたの隣)”という2曲のナンバー・ワン・ヒットを生み出す。
そして、2001年にリリースされたアルバム“Mucho
flores(沢山の花)”はスペインのみならず南米各国やアメリカでも爆発的な大ヒットとなり、トータルで売り上げ100万枚を突破。ラテン・グラミーの最優秀女性ボーカル・アルバム賞を受賞し、シングル“Como
quieres que te
quiera(どのようにして求められたいのか)”も大変な話題となった。翌年にはペドロ・アルモドヴァル監督の『トーク・トゥ・ハー』(02)で女優復帰も果たし、植物人間になってしまう女性闘牛士を演じている。
2003年のアルバム“De
mil
colores(幾千もの色彩)”も再びラテン・グラミーを受賞し、ブラジルやアルゼンチン、メキシコ、ペルー、ベネズエラなど南米各国を巡るコンサート・ツアーも大成功させた。
ここ数年は出産と子育てで芸能活動もマイ・ペースだが、最新アルバム“Parte
de
mi(私の一部)”は昨年のラテン・グラミーにノミネートされたほか、スペイン国内の音楽賞を幾つも受賞。デビュー以来所属していたソニー・ミュージックからユニヴァーサル系列のヴァレ・ミュージックに移籍し、ラテン・オールディーズの名曲を独自のスタイルでカバーしている。
ちなみに彼女、日本でも話題になったホアキン・コルテス主演の映画『ジターノ』(00)に本人役としてワン・シーンだけ出演し、歌も披露しているので是非チェックして欲しい。
De ley (1992) Siento (1995) Mucho por vivre
(1996) Muchas Colores
(2001) 信じられないくらいの音楽的成長を遂げたセカンド・アルバム。ボーカリストとしてもまるで別人のような貫禄です。フラメンコの叙情をファンク・ロックのグルーヴ感に絡めた#1からして圧巻。続く#2ではボサ・スタイルの穏やかなラブ・ソングを聴かせ、#3では情熱的で哀愁溢れるフラメンコ・ロックを・・・という具合に、楽曲の完成度の高さも特筆に価しますね。前作に引き続き兄アントニオがソングライト全般に関わっていますが、メロディ・メーカーとしての成長著しいという印象ですね。ロサリオは当時33歳。大人の女性らしいエレガンスを感じさせる素晴らしい作品です。
(P)1992 Epic/Sony (Spain)
(P)1995 SDI/Sony (USA)
(P)1996 Sony Latin (USA)
(P)2001 Sony BMG (USA)
1,Mi gato
2,Te llamo a
gritos
3,Sabor, Sabor ビデオ
4,Mia
mama
5,Adivinalo
6,Escucha primo
7,De ley ビデオ
8,Mira qu e
boda
9,Quiero que me veses
10,La gaviota
produced by Fernando
Illan & Arturo Soriano1,Estoy aqui ビデオ
2,Puede
ser
3,Sus fantasias
4,Yo te dare
5,Quitamelo
todo
6,Siento
7,Ay que calor !
8,Ese beso
9,La estrella ビデオ
10,Era un
garaje
11,Leccion de amistad
produced by Arturo Soriano &
Fernando Illan1,Mucho por vivir ビデオ
2,A tu
lado
3,Hay un lugar
4,Mis ojos negros
5,Que bonito ビデオ
6,La llama
del amor
7,Oye al rio
8,En la cuesta de
aranjuez
9,Presagio
10,Mi rosa
11,Quiero cantar
12,Ay que bien
!
produced by Fernando Illan & Arturo Soriano1,Al son del tambor ビデオ
2,Como
quieres que te quiera ビデオ
3,Agua y
sal ビデオ
4,Muchas
flores
5,Rosa y miel
6,Buscame
7,La casa en el aire
8,Tuyo
siempre ビデオ
9,Dejame
ver ビデオ
10,Meneito
11,Diferente
produced
by Cachorro Lopez & Fernando Illan
まだ歌声に初々しさの残るデビュー・アルバム。兄アントニオがソングライターとして全面的に関わっています。サウンド的にはフラメンコ・スタイルのポップ・ロックという印象ですが、#3では爽やかなボサノバ、#5ではR&Bといった具合に、多彩な音楽性を聴かせてくれます。シングル・カットされた#6はジプシー・キングス・スタイルのカタロニアン・ルンバという感じで、父アントニオ・ゴンザレスに対するオマージュなのでしょう。アーティストとしてはまだ未完成というイメージが拭えませんが、将来の可能性を感じさせるには十分のアルバムだと思います。
母と兄の相次ぐ死という悲劇を経て発表されたサード・アルバム。そのタイトルからも、彼女がこのアルバムに込めた思いが強く感じられると思います。悲しみを乗り越えた強さや逞しさが全編にみなぎり、非常にポジティブで生命力溢れる作品に仕上がっていると思いますね。#8以外は全てロサリオ本人が作曲にも関わっており、相当な意気込みをもって臨んだのでしょう。この躍動感、このバイタリティ。ファンクからサイケ・ロック、ボサノバなど様々な音楽的要素を盛り込みながら、まさに大いなる命の賛歌を歌い上げているという感じ。ロック・ファンも必聴です。
ロサリオの名を一躍世界的に高めた大ヒット・アルバム。ボサノバのリズムを基調に、切ないメロディと哀愁のフラメンコ・ギター、そして情感溢れるロサリオの歌声がむせ返るようなエロティシズムを醸しだす#2は傑作中の傑作。個人的に、あらゆるラテン・ナンバーの最高峰に位置する名曲だと思います。本当、体中がとろけまくりますって。作詞・作曲はロサリオ自身。凄い才能です。同じくロサリオの書いたバラード#9も素晴らしい作品。ため息が出るほどに耽美的で、それでいて切なくて叙情的。アルバム・トータルでも非常に完成度の高い傑作です。猛烈にオススメ!
De mi colores
(2003) Contigo me voy
(2006) Parte de mi
(2007)
(P)2003 Sony BMG (USA)
(P)2006 Norte/Sony BMG
(USA)
(P)2007 Vale Music/Universal
(USA)
1,De mi colores ビデオ
2,Aguanta
ahi
3,Jura de samba
4,La vida es sueno
5,Como
tu
6,Vueltas
7,Atado a esa mujer (con Antonio Carmona)
8,En mi
casa
9,Tado vive en mi-eso es amor
10,Los tangos de mi
abueta
11,Viviras
produced by Fernando Illan
*#8&10
produced by Fernando Illan & Antonio Carmona)1,El beso (Contigo me voy) ビデオ
2,Mientras me
quede corazon ビデオ
3,El nino de
tus ojos
4,Que me dejen vivir
5,En el mismo
lugar
6,Cayetano
7,Si me llevas
8,Parece que fue ayer
9,Rumba
del bongo
10,A flor de piel
11,Mi amor por ti
produced by
Fernando Illan, Graeme Pleeth & Mauri Stern1,Por tu ausencia
2,Algo
contigo ビデオ
3,Algo de
mi
4,Ojala que llueva Cafe ビデオ
5,La
distancia
6,No dudaria ビデオ
7,Te quiero
te quiero
8,El sitio de mi recreo
9,Nada de nada
10,Palabras de
amor
11,Como me las maravillaria yo
produced by Fernando
Illan.
前作があまりにも良く出来ていたために、多少地味な印象を受けるアルバムではありますが、客観的に見て非常に完成度の高い作品であることは間違いないでしょう。前作のイメージが“情熱と哀愁”だとすれば、本作は“幸福と癒し”といったところですかね。穏やかでメロディアスなフラメンコ・ボサ#1で幕を開け、全編に渡ってフワフワとしたドリーミーな幸福感が漂っています。この夢心地感が実に気持ち良い名盤だと思いますね。中でもオススメは、同世代のカンタオール、アントニオ・カルモナとデュエットしたノスタルジックなボサ・ナンバー#7。思わず優しい気持ちになってしまいそうな暖かいラブ・ソングです。
抜きんでたヒットには恵まれなかったアルバムではありますが、トータルでの完成度は見事なもの。全体的に情感溢れる落ち着いた仕上がりで、とても安心して聴くことの出来る秀作です。中でも、賑やかでエネルギッシュなサルサに挑んだ#6は素晴らしい出来栄え。テンションが一気に上がります。ロサリオのソングライターとしての実力を改めて思い知らされた気分ですね。“Como
quieres que te
quiera”路線の官能ボサ#3も好みだし、母ロラ・フローレスやセリア・クルーズを思わせる哀愁ルンバ#9も最高。古くからのラテン・ファンにも自信を持ってオススメできる1枚ですね。
レコード会社を移籍しての第一弾。とはいえ、きっちりとこれまでの路線を踏襲した素晴らしいラテン・ポップスに仕上がっています。チコ・ノヴァロやロベルト・カルロス、ホアン・マヌエル・セラトなどのカバー作品で構成されているということもあり、これまでにも増してラテン・スタンダード的な色合いが濃厚。とてもノスタルジックかつ叙情的でロマンティックな作品だと思いますね。#6では兄アントニオの作品も取り上げています。個人的にオススメは故ラファエル・デ・レオンのラブ・ソングをカバーした#7と、若くして亡くなった伝説的な女性シンガー・ソングライター、セシリアの名曲をカバーした#9。滲みます。
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