ロック誕生

 

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2008年10月25日より シアターN渋谷にてレイトロードショー

 

 60年代に一大ブームとなったグループサウンズが、歌謡ポップスという枠から抜け出ることが出来ないまま衰退していった70年代初頭。欧米に負けない本格的なロックを目指した若者たちがアンダーグランドの世界から新しいサウンドを発信し、それがいつしか大きなムーブメントへと進化を遂げていった。そんな激動の時代を、当時の貴重なフィルムを織り交ぜながら浮き彫りにしていくのが、ドキュメンタリー映画『ロック誕生』である。
 頭脳警察にはっぴいえんど、村八分、クリエイション、イエローなど、日本のロック草創期を代表する伝説的なバンドが次々と登場する中、特に衝撃的だったのはフラワー・トラヴェリン・バンドだ。リード・ボーカル、ジョー山中の凄まじいカリスマ性と強烈なパフォーマンスは、ジミヘンなんかと比べても全く遜色がない。『人間の証明』で初めてジョー山中の存在を知った世代としては、まさしく新鮮な驚き。本気でぶっ飛んだ。
 また、近田春夫率いるハルヲフォンの時代を先駆けたファンキーでクールなサウンドと、エネルギッシュなライブ・パフォーマンスも衝撃的。あの時代に、あれだけカッコいい音を、しかも十分にコマーシャルでキャッチーな楽曲を演奏していたとは。70年代ロック・シーンに関して勉強不足の自分としては、全くもって恐れ入ってしまった。
 しかし、本作の魅力はそうした貴重なライブ映像だけに止まらない。内田裕也やミッキー・カーチスを筆頭に、遠藤賢司、近田春夫、加納秀人、森園勝敏、そして雑誌「ミュージック・マガジン」の中村とうようといった、当時のロック・シーンを牽引したキー・パーソンたちのインタビューを織り交ぜている。これがまた、思わずグイグイと引き込まれてしまうくらいに面白いのだ。
 独自の確固たるロック理念をもとに、フラワー・トラヴェリン・バンド誕生の背景や当時の音楽界の状況を歯に衣着せぬ語り口で証言する内田裕也。紳士的で謙虚な言葉の中に、己の音楽に対する揺るぎない信念と誇りを感じさせるミッキー・カーチス。パイオニアならではの苦労話はもちろんのこと、片時もチャレンジ精神を忘れないその生き方に誰もが共感するはずだ。自身の育てたキャロルや外道を巡るミッキー・カーチスの思い出話もかなり興味深い。
 音楽をジャンルによってレッテル貼りすることに異論を唱える遠藤賢司、コマーシャリズムとのバランスについて持論を展開する近田春夫、ロックが単なるファッションではなく生き様であることを思い起こさせてくれる加納秀人。それぞれの言葉にそれぞれの重みと説得力がある。
 文字通りあっという間の75分。全体の流れがとてもよく計算されており、一切のナレーションがないにも関わらず非常に分かりやすい。説明過多になる危険性を一切排除し、一つの物語を綴るように手際よくまとめたのは大正解だ。
 日本のロックという特定のジャンルに焦点を絞ったドキュメンタリー映画だが、同時に音楽というものの原点が何であるかということも改めて考えさせてくれる。あらゆる先入観を抜きにして見て欲しい作品だ。

公式HP www.rock-tanjo.jp

 

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