ボリウッド映画界のホラー・マエストロ
ラムサイ兄弟

 

 以前にこちらでも紹介したことのあるボリウッド・ホラー“Purana Mandir(古い寺院)”や“Bandh Darwana(閉された扉)”で知られるラムサイ兄弟。特定のジャンルが育ちにくいインド映画界にあって、35年以上にも渡ってホラー映画を撮り続けている映画ファミリーだ。
 兄弟の中心的役割を担っているのは、シャイアムとクマール、ケシュー、トゥルシ、キランの5人。彼らがそれぞれ交代で監督やプロデュース、脚本などを分担している。その他、ガング、レシュマなどがメイン・スタッフを務め、最近ではトゥルシの息子ディーパクも映画監督として活躍中。“Ramsay House Of Horror”なる製作プロダクションを立ち上げ、今やラムサイ・ブランドはボリウッド・ホラーの代名詞となりつつある・・・かどうかは定かでないものの(笑)、インド国外でも知名度を高めつつあることは確かだ。
 ひとまず、インドにおけるホラー映画の歴史や兄弟のキャリアについては以前のコラムを参照してもらうことにして、ここでは彼らの近作を紹介しつつ、ボリウッド・ホラー独特の摩訶不思議な面白さ(?)について触れて見たい。

 

Dhund (2003)
日本では劇場未公開
VHS・DVD共に未発売

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(P)2005 WEG India/Image (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録
)/5.1chサラウンド・2.0chステレオ/音声:ヒンズー語/字幕:英語/地域コード
:1/153分/製作:インド

映像特典
オリジナル予告編
監督:シャイアム・ラムサイ
製作:ヤショヴァルダン・チャギ
脚本:S・カーン
台詞:サジフ・カプール
撮影:ガング・ラムサイ
音響:キラン・ラムサイ
音楽:ヴィジュ・シャー
出演:アマール・ウパドヤヤ
    アディティ・ゴヴィトリカール
    アプールヴァ・アグニホトゥリ
    ディヴヤ・パラト
    グルシャン・グローヴァー
    イルファン・カーン
    ムケシュ・ティワリ
    シュウェタ・メノン
    トム・アルター
    プレム・チョプラ

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闇夜を駆け抜ける謎の人物

映画スターのサミール(A・ウパドヤヤ)と親友カジャル(D・パラト)

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大富豪の令嬢シムラン(A・ゴヴィトリカール)と親友クナル(A・アグニホトゥリ)

プールで踊り狂うギャルたちに近づくサミールとカジャル

 ハリウッド映画のコピーというのがインド映画でどれほどあるのかどうかは定かでないが、こちらは90年代末に大ヒットしたハリウッドのスラッシャー映画『ラストサマー』(97)の露骨なパクリ。DVDのジャケット・デザインまで本家ソックリなのがご愛嬌だ。
 主人公はリッチでトレンディ(笑)な今どきの若い男女4人グループ。ヒロインがミスコンでグランプリを獲ってしまったことから、逆恨みしたライバルの兄から命を狙われるものの、必死の抵抗で逆に相手を殺してしまう。家族にばれたらマズい!ってなわけで4人は死体をプールの底(!)に沈めるのだが、それ以来彼らの周りでは死んだはずの男が徘徊し、やがて“お前らが何をしたのか知ってるぞ”という謎の脅迫状が届く・・・。
 とまあ、『ラストサマー』の見どころばかりをちゃっかり拝借しましたという感じのストーリーなのだが、単なるパクリでは終らないのがボリウッドの底力(?)というかなんというか。インド映画お得意の歌あり、踊りあり、アクションあり、ロマンスあり、笑いありのてんこ盛り状態。オープニングから30分くらいは、これがホラー映画であるということすら忘れてしまうような賑やかさだ。
 しかも、中盤からは話がどんどんと脱線していき、最後にはミスコンなんか全く関係のない復讐劇へと変貌。結局、前半のストーリーは何だったんだ!?という驚きのクライマックスへとなだれ込んでいく。この有無を言わせぬ強引な展開こそが、ボリウッド映画の醍醐味なのだろう。
 また、2003年という製作年を微塵も感じさせないレトロな映像センスにも脱帽。ほとんど80年代のB級イタリアン・ホラーみたいなノリだ。そればかりか、昭和の大衆演芸ばりにコテコテのお笑いセンスや80年代のMTVを彷彿とさせるクサいミュージカル・シーン、香港のB級カンフー映画みたいなワイヤー・アクションなど、時代錯誤も甚だしい演出のオンパレード。音響効果やBGMも過剰すぎるくらいに派手で、相手の胸ぐらを掴むシーンまでパンチ音なのにはずっこけた。しかも、音楽スコアはヒッチコックの『サイコ』(60)をそのまんまパクっているのだから恐れ入る。
 これでもかこれでもかと同じ場面を繰り返して見せるトゥー・マッチなショック・シーンと耳ざわりなくらいに大袈裟なBGM、見事なまでに緊張感をバサバサと断ち切っていくスケールの大きな歌と踊り、松竹新喜劇も真っ青のハイ・テンションなおとぼけギャグ、そしてストーリーの破綻など一切恐れない大胆不敵なプロットなどなど、我々の持っているホラー映画に対する概念を根底から覆すこと必至のホラー・エンターテインメントだ。

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シムランのライバル、ターニャ(S・メノン)

妹のためにシムランを強迫するアジト(I・カーン)

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姿なき脅迫者に怯えるシムラン

警告を無視してミスコンに出場するシムラン

 夜の闇に紛れ、一軒の豪邸へと侵入する怪しい男。その男は豪邸内に並べられたマネキン人形にガソリンをかけた上で火を放った。その背後から忍び寄る謎の人物。男は首を絞められて殺され、謎の人物が外へと飛び出した直後に屋敷は爆発する。
 映画スターのサミール(アマール・ウパドヤヤ)と親友カジャル(ディヴヤ・パラト)の2人はタレント・エージェントを経営している。モデルのスカウトに出かけた彼らは、プールで踊り狂うギャルたちの中でひときわ輝く美女シムラン(アディティ・ゴヴィトリカール)を発見。サミールは夢中でカメラのシャッターを切った。
 シムランは大富豪の叔父ラジェンドラ(プレム・チョプラ)と暮らす筋金入りのお嬢様。ある日、彼女は部屋にあった雑誌の表紙に、自分の写真が勝手に使われていることを気付いて憤慨する。親友クナル(アプルーヴァ・アグニホトゥリ)とカンナ刑事(グルシャン・グローヴァー)を連れてサミールのオフィスを訪れたシムラン。
 カンナ刑事にお灸を据えてもらうはずだったが、サミールとカジャルに男前だと褒められたカンナ刑事はすっかり上機嫌。カジャルに一目惚れしたクナルまで、別にいいじゃないとサミールの肩を持つ始末。すっかり腹を立てたシムランはオフィスを出て行ってしまう。
 一方、なんとかシムランを振り向かせたいと考えたサミールは一計を案ずる。強盗のふりをしたカジャルがシムランのハンドバックを盗み、それをサミールが捕らえるという寸法だ。ところが、その場に居合わせた男たち全員がカジャルを追い掛け回した挙句、2人は警察に逮捕されてしまう。サミールがそこまで自分のことを思っていたのかと真実の愛(笑)に気付いたシムランは心打たれ、かくしてサミールとシムラン、カジャルとクナルのカップルが成立した。
 そんなある日、サミールとカジャルの事務所に新人モデルがやって来る。それは古い友達ターニャ(シュウェタ・メノン)だった。彼女は今度開かれるミスコンに出場するという。実はシムランも同じコンテストに出る予定だった。そのことを知ったターニャは悲嘆に暮れる。なぜなら、シムランはミスコン荒らしとして有名な美人だったからだ。
 妹の嘆きぶりを心配した兄アジト(イルファン・カーン)は、その日からシムランの自宅に脅迫電話をかけ、ミスコンへの出場を諦めさせようとする。姿なき謎の人物からの脅迫に恐れおののくシムランだったが、意を決してミスコンに出場。見事に優勝を勝ち取ってしまった。
 勝利の歓喜に包まれ、叔父の別荘へと来たシムランとサミール、カジャル、クナルの4人。ところが、サミールとカジャルが買い物に出かけたすきに、復讐の鬼と化したアジトがやって来る。恐ろしい形相で襲いかかるアジト、逃げまどうシムランとクナル。凄まじい格闘の末、シムランとクナルはアジトを殺害してしまった。
 戻ってきたサミールとカジャルに事情を説明するシムラン。警察に通報したら叔父に迷惑がかかる。考え抜いた末に、4人はシムランの自宅プールに死体を沈めることにした。何年も使用されていないプールは水草が茂っていて底が見えない。隠し場所には好都合だと考えたのだ。
 かくして一件落着かと思いきや、その翌日からシムランの身の回りに死んだはずのアジトが姿を現す。サミールたちは何かの見間違いだとなだめるが、シムランは恐怖に怯える。そんなある日、叔父ラジェンドラが召使にプールの清掃を言いつけた。朝目覚めたシムランは水の抜かれたプールを見て愕然とする。そこにアジトの死体がなかったのだ。
 果たして、アジトの死体はどこへ行ったのか?アジトは死んでいなかったのか?それとも・・・!?やがてシムランのもとへ“お前たちが何をしたのか知っているぞ”という匿名の脅迫状が届き、さらに謎が深まっていく・・・のかも?

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復讐の鬼と化したアジトが現れる

屋敷の中を逃げ回るシムランとクナル

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2人は逆にアジトを殺害してしまった

死体の始末に困った4人は・・・

 という、あまりにもおバカさんなストーリー展開に誰もが大爆笑間違いなし。imdbではたったの1.4ポイントという驚くべき低評価だが、まったく以って宜なるかなといったところだろう。普通にホラー映画を期待した観客ならば怒り心頭も当然。常識的に考えても、真っ当な映画作品としては欠陥だらけも甚だしいと言えよう。
 とりあえず、細かい突っ込みどころを挙げていったらキリがない。自分が表紙になっている雑誌を部屋で手に取るまで気付かないってのもどうよ?とか、いくらなんでも自宅のプールに死体を沈めるってのはあり得なくないか?などなど(笑)だいたい、古典的な浅知恵を使って警察に捕まるなんてアホ極まりない男に真実の愛を感じてしまうヒロインも相当なアホだし、いよっ!男前ですね〜、アンタなら映画スター間違いなし!なんて煽てられてその気になるような刑事が殺人事件を担当するなんて説得力のかけらもありゃしない。もちろん、寝耳に水のどんでん返しなんぞ論外だ。ただ、そんなご都合主義の不条理などものともせず、歌に踊りにアクションにと猛邁進していくのがボリウッド流のバイタリティなのだろう。
 シャイアム・ラムサイ監督の演出スタイルは、基本的に“Purana Mandir”や“Bandh Darwana”の頃と全く変わらず。ボリウッド映画の伝統を踏襲しつつ、西欧的なホラー映画の要素をふんだんに盛り込んでいる。ただ、古典的な怪談物語に着想を得ていた“Purana Mandir”や“Bandh Darwana”が伝統的ボリウッド・スタイルにすんなりと馴染んだのに対し、現代的なスラッシャー映画を題材に選んだ本作では唐突に挿入されるミュージカル・シーンやアクション、笑いの要素があまりにも不自然で違和感があり過ぎる。
 その一方、原色カラーのライティングを多用したホラー・シーンはとても美しく、スタイリッシュなカメラ・ワークもなかなか見応えがある。センスが古いと言ってしまえばそれまでだが、往年のハマー・ホラーやイタリアン・ホラーにも通じるようなゴシック・ムードは秀逸だ。ミュージカル・シーンとお笑いを全部カットしてしまえば、もしかしたらそれなりに面白いホラー映画になっていたかもしれない。まあ、それだと本当に『ラストサマー』の単なるパクリになってしまうのだけどね(笑)
 などと言いつつ、ひとまずポップコーン片手に友達と“んなアホな〜!”と突っ込みながら見るには最適な映画。しかも、この内容で2時間半も暇をつぶせるってんだから、なんともお得じゃないですか♪くれぐれも、まともなホラー映画を期待して見たりせぬように。

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インドじゃホラー映画でも踊る!

とにかく、踊る!

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サミールとシムランが踊る!

そして、カジャルとクナルも踊る!

 ヒロイン役のアディティ・ゴヴィトリカールは演技力という点ではイマイチながら、ルックスはスーパーモデル並にゴージャス。なんといっても、インド映画界は美人女優の宝庫。最近ではハリウッド進出も果たしたアリシュワリヤー・ライが注目を集めているが、こちらのエディティも負けず劣らずに美しい。
 対するミスコンのライバル、ターニャ役のシュウェタ・メノンも相当な美人。シムランの親友クナルを演じるアプールヴァ・アグニホトゥリはあからさまに引き立て役という感じで、この2人に囲まれては分が悪いといった印象だ。
 一方の男優陣はというと、サミール役を演じるアマール・ウパドヤヤが一人で足を引っ張っているように思える。とにかく演技が大仰でクサイ、ダンスのステップが鈍い、メイクが濃い、二重あごとメタボ体型が気になるなどなど、まるっきり良いところがないのだ。案の定というか、これが唯一の大役だったらしく、現在は映画界を引退してしまったようだ。
 それとは対照的に、親友カジャル役のディヴィヤ・パラトは甘いマスクの二枚目。彼の方がよっぽど主役に相応しいと思えるのだが、その辺りはインドにおける美的価値観の違いなのかどうなのか。
 とりあえず、男性キャストで一番存在感があるのは、やはりアジト役のイルファン・カーンだろう。インドのみならずイギリス映画でも活躍している名優で、最近では『スラムドッグ$ミリオネア』(08)の警部役が大変印象的だった。また、シムランの叔父を演じているプレム・チョプラは400本以上の映画に出演しているという名脇役。刑事役のグルシャン・グローヴァーもインドでは有名な脇役俳優で、ハリウッド映画にも出演している。

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シムラン役のアディティ・ゴヴィトリカール

サミール役のアマール・ウパドヤヤ(右)

 

Aatma (2006)
日本では劇場未公開
VHS・DVD共に日本未発売

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(P)2008 WEG India/Image (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆

DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録
)/5.1chサラウンド・2.0chステレオ/音声:ヒンズー語/字幕:英語/地域コード:ALL/107分/製作:インド

映像特典
オリジナル予告編

監督:ディーパク・ラムサイ
製作:トゥルシ・ラムサイ
脚本:M・サリム
撮影:ガング・ラムサイ
音楽:アヌ・マリク
出演:カピル・ジャヴェーリ
    ネーハ
    ヴィクラム・シン
    アメリエーナ
    ムケシ・テワーリ
    ディープ・ディロン
    サダシフ・アムラプルカール
    ライラ・パテル

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悪霊に取り憑かれた老婆

祈祷師による悪霊祓いが行われる

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有能な青年医師アマン(K・ジャヴェーリ)と妻ネーハ(ネーハ)

ネーハの妹アルティ(アメリエーナ)と恋人シダート刑事(V・シン)

 トゥルシ・ラムサイの息子ディーパクが監督した、ボリウッド版『エクソシスト』とも言うべきオカルト・ホラー。彼にとってはこれが監督2作目に当るのだが、これがなかなか見どころのあるホラー作家とお見受けした。
 ボリウッド映画お約束の歌とダンス、カンフー・アクション、コテコテのギャグなどを散りばめつつ、それが目立ち過ぎないようにちゃんとバランスが保たれている。ミュージカル・シーンがたったの4箇所しかないというのも、ボリウッド映画としては非常に珍しいはずだ。それも、ストーリーから浮いてしまわないような配慮がなされている。笑いのセンスは相変わらず松竹新喜劇ばりだが、こちらも適度なさじ加減を心得ているようだ。つまり、シリアスなホラー映画としてちゃんと成り立っているのである。
 確かに、今どき悪霊祓いでもなかろうに、という古臭さは否めない。全体的な雰囲気は上記の“Dhund”と同じように80年代っぽいレトロさが漂う。特殊メイクもSFXも初歩的だし、ショック演出もマニュアル通りという印象は拭えまい。
 しかし、鮮烈な原色カラーを駆使したビジュアル・イメージはマリオ・バーヴァの『ブラック・サバス』や『呪いの館』にも匹敵するほどの美しさだし、ゴシック・ムード溢れる豪華なセット美術も素晴らしい。ボリウッド映画のフォーマットをホラー映画のジャンルに無理なく当てはめるという意味で、ヒンズー教の土着的なオリエンタリズムを絡めたのも大正解と言えよう。
 オリジナリティの欠如という点では明らかに致命的だし、ボリウッド映画特有の荒唐無稽さやバカバカしさも否定出来ないところではある。が、しかしインド映画界にも本格的なホラー映画を、という製作サイドの心意気は買いたいもの。ボリウッド・ホラーに免疫のない観客でも比較的すんなりと受け入れることの出来る、入門者向けとしては最適の作品だろうと思う。

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真夜中に玄関のチャイムが鳴り響く

玄関の扉を開けると見知らぬ男(D・ディロン)が

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悪党のボス、ヴィクラム(M・テワーリ)とその手下たち

ネーハの身の回りで次々と怪現象が起きる

 とある家庭で、寝たきりの老婆が悪霊に取り憑かれた。息子は無残にも殺され、その妻は急いで祈祷師アヴィナッシュ(ディープ・ディロン)を呼び寄せる。アヴィナッシュの御祓いで悪霊は消え去ったものの、老婆は静かに息を引き取った。
 大病院に勤める優秀な外科医アマン・ミーラ博士(カピル・ジャヴェーリ)は、裕福な家庭に育った美しい女性ネーハ(ネーハ)と結婚したばかり。2人は大変仲睦まじく、アマンと同じ病院のインターンをしているネーハの妹アルティ(アメリエーナ)も、勇敢な刑事シダート(ヴィクラム・シン)と順調に交際中。心優しいネーハの両親やお茶目なメイドなどに囲まれ、彼らはなに不自由ない幸福な生活を送っている。
 ある晩、アマンとネーハが寝室でくつろいでいると、突然玄関のチャイムが鳴り響いた。こんな遅い時間に非常識な、と無視を決め込んだ2人だったが、訪問者はいつまでもチャイムを鳴らし続ける。仕方がないと玄関へ向ったアマンが扉を開けると、そこには見ず知らずの不気味な男が立っていた。男は重たい口調でこう言い残して去っていく。“明日の朝、病院で検死するアヴィナッシュ・マルホトゥラという男の死亡診断を正確に書け”と。
 翌朝、ネーハと共に海岸沿いをマラソンしていたアマンに、2人の怪しげな男女(ディネシュ・ヒングー、ライラ・パテル)が近づいてくる。2人はアマンに拳銃を向け、これから病院で検死するアヴィナッシュ・マルホトゥラという男の死因を“自然死”と書くよう脅した。
 昨夜の不気味な男と今朝の怪しげな男女。ワケも分からず不思議に思ったアマンは、病院へ到着するなり看護婦に今日のスケジュールを尋ねた。朝一番から検死の予定が入っていた。名前はアヴィナッシュ・マルホトゥラ。しかも、目の前に運ばれてきた死体は、昨夜の不気味な男その人であった。
 検死を終えたアマンのもとに一本の電話がかかってくる。声の主はヴィクラム・マルホトゥラ(ムケシ・テワーリ)。アヴィナッシュの弟だ。彼は手下を従えてアマンの自宅へ押し入り、ネーハを人質にしていた。今朝の男女はヴィクラムの手下だったのだ。検死結果を偽証せねば妻を殺すという。アマンに選択の余地はなかった。
 実は、ヴィクラムは手下と共謀して兄アヴィナッシュを殺害し、その財産を横取りしていたのだ。彼は偽証の見返りとしてアマンにも金を払うという。しかし、それ以来妻ネーハの周囲で奇妙な怪現象が起こるようになった。アヴィナッシュの亡霊がたびたび現れ、ポルターガイスト現象も発生する。妹アルティも似たような体験をするようになった。
 ある晩、ネーハが一人で留守番をしていると、玄関のチャイムが鳴り響いた。扉を開けると、そこにはボストンバッグが残されている。そのボストンバックのチャックを開くと、中に入っていた生首の目がカッと開いた。あまりの恐怖に絶叫するネーハ。
 自宅へ戻ったアマンは放心状態の妻を発見した。彼女をベッドまで運んだアマンだったが、気が付くとその姿が見えない。家の中を探すと、ネーハはキッチンの暗闇に立っていた。だが、その様子がおかしい。不気味な声で喋り始めたネーハの形相が変わり、その体が宙に浮いた。悪魔のような姿でアマンに襲いかかるネーハ。なんとか妻を取り押さえたアマンは、急いで彼女を病院へと担ぎ込んだ。
 精神科の専門医に診せても原因が分からない。こうなったのも死亡診断を偽造したせいだと考えたアマンは、診断書を書き直すことにした。それを知ったヴィクラムは手下を病院に差し向けてアヴィナッシュの死体を盗もうとする。しかし、ネーハの体から抜け出した悪霊によって、手下たちは次々と殺されてしまった。
 一方、殺人事件が起きた時刻だけネーハが正気に戻っていることに気付いたアマンやアルティは、彼女の病気が死んだアヴィナッシュに関係しているのではないかと疑う。そこで、彼らは未亡人シャンタ(ウパスナ・シン)のもとへと向った。すると、アヴィナッシュがヒンズー教の祈祷師であったことが判明する。怨念から悪霊と化したアヴィナッシュがネーハに取り憑いていたのだ。アマンはシャンタや老祈祷師の協力を得て、ネーハの悪霊祓いを行うことを決意するのだったが・・・・。

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ボストンバッグに入った生首の目が開く

ネーハが悪霊に憑依されてしまった

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悪霊と化したアヴィナッシュの亡霊

ヴィクラムの手下が次々と殺されていく

 細かいところで辻褄の合わない設定や馬鹿げた展開が少なからず散見されるものの、ストーリー自体は最後まで破綻することなくまとまっている。ミュージカル・シーンも違和感がないようなタイミングで挿入され、ストーリーの盛り上がる後半30分くらいは歌も踊りも一切ない。また、これまでのラムサイ・ブランド作品に比べて、残酷シーンやショック・シーンがかなり派手で本格的になっているところも注目だ。僅かではあれど、CGを使ったシンプルなSFXも効果的に挿入されている。
 また、悪霊に取り憑かれた老婆やネーハの特殊メイクも型通りではあるものの、撮り方が非常に凝っていて上手い。特にライティング・デザインのセンスは抜群で、簡単なトリック撮影が照明の当て方によって十分な効果を発揮している。この辺はラムサイ兄弟の名カメラマン、ガングの面目躍如たるところだろう。
 もちろん、その一方で先述したような欠点も多く見られる作品ではあるが、ラムサイ・ファミリーの新しい才能ディーパクの将来性を期待させるには十分の仕上がり。ただ、これ以来3年近く作品を撮っていないのは残念だ。
 ちなみに、病院場面でウィリアム・ピーター・ブラッティの隠れた傑作『エクソシスト3』(90)を彷彿とさせるシーンが多いのは意図してのことなのか、それとも全くの偶然なのか・・・?

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アマンたちは未亡人シャンタ(U・シン)を訪ねる

アヴィナッシュはヒンズー教の祈祷師だった

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悪女レイラ(L・パテル)に姿を変えた悪霊

アクション・シーンも満載

 今回もメイン・キャストは若手新人や中堅スターで固め、有名な性格俳優を脇に揃えている。主人公の4人はルックスも演技もダンスもそこそこといった印象。アマンの妻を演じるネーハはこの作品を最後に結婚して休業していたらしいが、近々カムバックを果たすようだ。
 脇役で光っていたのは、悪女ライラ役を演じるニューハーフ顔のセクシー女優ライラ・パテル。悪霊が彼女の姿に化けて現れるシーンはなかなか強烈なインパクトだった。また、ヴィクラムの手下である悪徳弁護士を演じるアダシフ・アムラプカールは、インドではとても有名な悪役俳優。ヴィクラム役のムケシュ・ティワーリも売れっ子の性格俳優だ。

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陽気なメイドさんが踊る!

ついでに悪女ライラも踊る!

 

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