イタリア産マッスル史劇の全貌
RETURNS

 

 以前にも特集コラムを組んだことのあるイタリア産マッスル史劇ことスペクタクル史劇映画。50〜60年代に世界中で大ブームを呼んだのだが、その後に登場したマカロニ・ウェスタンの隆盛によって、あっという間に衰退してしまった。
 しかも、マカロニ・ウェスタンがブームの終焉した後も現在に至るまで根強い人気を保ち続けているのに比べ、スペクタクル史劇は過去の遺物として半ば忘れ去られてしまっている。ハリウッドの真っ当な歴史映画と違ってイタリア物はヒロイック・ファンタジー的な要素が強く、モンスターから黒魔術、宇宙人まで文字通りなんでもアリな娯楽性の高さが魅力だったわけだが、その一方で子供だましのような作品も多かったことから、レベルの低いジャンルと見なされがちだったことは否めないであろう。
 特に、主役を務める俳優の多くがマッチョな肉体だけが売りで、演技に関しては素人同然というボディビルダーだったのは最大の弱点。しかもカリスマ性に乏しいので、みんな同じ顔に見えてしまう。さらに、ストーリーよりもセットの大きさやエキストラの数、特撮の見せ場などに重点が置かれていたことも問題だった。要は、どれも似たり寄ったりで区別がつかず、ほとんど印象に残らないような作品が多かったのである。
 とはいえ、みんながみんなクズみたいな映画だったというわけではない。ホラー・ファンタジーとしてすこぶる出来の良いマリオ・バーヴァ監督の『ヘラクレス 魔界の死闘』(61)みたいに、現在もカルト映画として愛されている作品だって少なからず存在する。そこで、今回は以前のコラムをアップデートする意味も含め、ファンタジー映画やホラー映画のファンも楽しめるようなスペクタクル史劇映画の名作を幾つか紹介してみたい。

 

 

ロード島の要塞
Il colosso di Rodi (1961)
日本では1962年劇場公開
VHSは日本発売済・DVDは日本未発売

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(P)2007 Warner Home Video (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/モノラル/音声:英語/字幕:英語・フランス語/地域コード:1/128分/製作:イタリア・スペイン・フランス

特典映像
オリジナル劇場予告編
セルジョ・レオーネ研究家C・フレイリングによる音声解説
監督:セルジョ・レオーネ
製作:エドゥアルド・デ・ラ・フエンテ
   チェザーレ・セッチア
脚本:セルジョ・レオーネ
   エンニオ・デ・コンチーニ
   ルチアーノ・マルティーノ
   ルチアーノ・キタリーニ
   カルロ・グアルティエリ
   アジェオ・サヴィオーリ
   チェザーレ・セッチア
   ドゥーチョ・テッサリ
撮影:アントニオ・L・バレステロス
音楽:アンジェロ・フランチェスコ・ラヴァニノ
出演:ロリー・カルホーン
   レア・マッサリ
   ジョルジュ・マルシャル
   コンラード・サン・マルティン
   アンヘル・アランダ
   ジョルジュ・リゴー
   メイベル・カー
   ミンモ・パルマーラ
   ロベルト・カマルディエル

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大空高くそびえ立つ太陽神ヘリオスの巨像

その完成式典で国王暗殺未遂事件が発生した

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反政府ゲリラを率いる戦士ペリオクレス(G・マルシャル)

叔父リシポ(G・リゴー)を訪ねたギリシャの英雄ダリオス(Rカルホーン)

 マカロニ・ウェスタンの巨匠セルジョ・レオーネが手掛けたスペクタクル史劇。それ以前にも『トロイのヘレン』(56)や『ベン・ハー』(59)といったハリウッド史劇大作の第2班監督を務め、『ポンペイ最後の日』(59)ではマリオ・ボンナルド監督の代役としてノー・クレジットで演出を手がけたレオーネだが、映画監督としてスクリーンに大きく名前が出た作品はこれが最初である。
 舞台は紀元前3世紀のロードス島王国。太陽神ヘリオスを模った巨大な彫像が建設され、王国はエーゲ海の交易拠点として栄華を極めていたが、その内部では様々な火種を抱えていた。奴隷制度をはじめとする圧政によって庶民の不満は高まり、その一方で享楽的な生活を送る貴族たちは堕落し、さらに王国の支配権を巡る陰謀が秘かに張り巡らされていたのだ。
 そんな王国の内紛に巻き込まれたのが、ギリシャの英雄ダリオス。ロードス島に住む叔父のもとを訪れた彼は、ギリシャに援助を求める反政府ゲリラと関わったことから叛逆者の烙印を押されてしまう。しかも、国王セルセはフェニキアと組んで同盟国ギリシャに反旗をひるがえすつもりだったが、腹心タールはそのフェニキアに王国を売り渡して自らが最高権力者の座に就くことを目論んでいた。
 虐げられた民衆を救うべく反政府ゲリラに協力して死闘を繰り広げるダリオス。だが、やはり多勢に無勢。強大なフェニキア軍を従えたタールが遂にロードスを手中に収めようとしたその時、まるで神が驕れる者を罰するがごとく、恐るべき天変地異が島の全土に襲いかかる・・・。
 世界の七不思議として知られ、現在はギリシャの領土であるロードス島に実在したとされる伝説の巨像。その崩壊にまつわる物語を壮大なスケールで映画化したのが、この『ロード島の要塞』という作品だ。
 ただし、ストーリーそのものは完全なフィクション。原題にも使われている巨像やロードス島を襲った大地震は史実に基づいているものの、それ以外は全て本作のオリジナルだ。ここでは巨像が軍事要塞の役割を果たしていたとされているが、そのような事実ももちろん無い。設定されている年代も史実からは若干ずれている。
 とはいえ、レオーネ監督はイタリア産史劇特有の荒唐無稽を極力排除し、あくまでも正統派スペクタクル史劇としてガッツリと取り組んでいる。後のマカロニ・ウェスタン作品では、本場のハリウッド産西部劇以上にリアルな西部劇を指向したレオーネ。やはり、もともとハリウッド映画に対する憧憬やライバル意識が強かったのであろう。映画史を遡ってみても、スペクタクル史劇の元祖はイタリア映画。製作費などの規模ではハリウッド産史劇に到底敵わないものの、これが本場の史劇だ!という意気込みと誇りは十分に感じることが出来るはずだ。
 なんといっても最大の見せ場は、数千人規模の膨大な人数のエキストラを動員した戦闘シーン、そして実物大セットとミニチュアを駆使して描いた大地震のパニック・シーンであろう。マット合成やオプチカル効果といった特撮の技術はまだまだ未熟だったイタリア映画だが、人件費の安い労働力をフル活用したスペクタクルはお手のもの。中でもMGMが世界配給を手掛けた本作は予算も潤沢であったことから、同時代のイタリア産史劇に比べると遥かにスケールがデカい。
 ただ、やはり合成技術には問題があったのだろうか、肝心の巨像があまり出てこないのは少々物足りない。レオーネの演出も堂々たる貫禄こそあれど、やはり一連のマカロニ・ウェスタン作品に比べると垢抜けない印象だ。
 しかしながら、三つ巴のスリリングなストーリーを見せ場に次ぐ見せ場で盛り上げていくサービス精神、絢爛豪華なセットやコスチューム、ハリウッド俳優ロリー・カルホーンをはじめとする魅力的なキャストなど、娯楽映画としては十分すぎるほど立派な出来栄え。イタリア産史劇の黄金時代を代表する名作と言えよう。

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ダリオスの好意を弄ぶ妖艶な美女ディアラ(L・マッサリ)

ロードスは同盟国ギリシャを裏切ってフェニキアと結託していた

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ロードスでは港からの船舶の出入りが厳しく規制されていた

ペリオクレスの船へ乗り込むダリオス

 紀元前280年。エーゲ海に浮かぶロードス島は地中海交易の拠点として栄えていたが、その水面下では国王の抑圧的な政治に反発する反政府勢力が徐々に力を強めていた。折りしも、太陽神ヘリオスを模った巨大な彫像が完成し、街は祝賀ムードに包まれる。
 だが、その完成式典で国王セルセ(ロベルト・カマルディエル)を狙った暗殺未遂事件が発生。有力貴族の叔父リシポ(ジョルジュ・リゴー)を訪ねて母の故郷であるロードス島へ来ていたギリシャ軍の英雄ダリオス(ロリー・カルホーン)は、エーゲ海の楽園とも呼ばれるロードスの暗部を垣間見て少なからず衝撃を受けた。
 暗殺未遂事件を起こした青年リアノスは、反政府ゲリラのメンバーだった。リーダーのペリオクレス(ジョルジュ・マルシャル)はもともとロードスの将校だったが、奴隷制度に異を唱えたために投獄され、仲間たちの手によって救出されたばかり。国王暗殺が未遂に終ってしまった今、彼らはギリシャに助けを求めようと考える。しかし、どのようにしてギリシャと連絡を取るのか?ペリオクレスはダリオスの説得を試みようと考える。
 一方、王宮へ招かれたダリオスは華やかな宴を楽しんでいた。しかし、ここでも国王セルセを狙った毒殺未遂事件が起きる。“ロードスは安全な島ではなかったのか?”そう首を傾げてみせるダリオスに、叔父のリシポは“ワインの一口めを自分で飲んだりしなければ大丈夫だ”と自嘲気味につぶやいた。
 そんなダリオスは、王宮で知り合った妖艶な女性ディアラ(レア・マッサリ)に惹かれる。彼女は巨像を設計した建築家カレーテ(フェリックス・フェルナンデス)の娘。ダリオスの好意を弄ぶディアラは、冗談で彼を王宮の地下霊廟に閉じ込めてしまった。困ったダリオスだったが、なんとか出口の通路を見つける。
 ちょうどその頃、王宮の会議室では国王セルセと腹心の宰相タール(コンラード・サン・マルティン)らがフェニキア大使(アントニオ・カサス)を交えて密談を行っていた。地中海における交易権を牛耳りたい国王セルセは、同盟国ギリシャを裏切って対立するフェニキアと手を組もうとしていたのだ。そこへ、地下霊廟から抜け出したダリオスが偶然通りがかってしまった。一堂は彼がギリシャのスパイではないかと疑う。
 その晩、ロードス島は激しい嵐に見舞われた。雷の苦手な叔父リシポは耳栓をして一足先に寝てしまい、ダリオスは寝しなのワインを楽しんでいる。そこへ、反政府ゲリラのメンバーが侵入し、ダリオスを力づくで外へ連れ出そうとした。だが、彼らを強盗と勘違いしたダリオスは激しく抵抗。仕方なくゲリラのメンバーは彼を殴り倒して気絶させる。だが、異変に気付いた叔父リシポがドラを鳴らしたことから、ゲリラのメンバーは退散して行った。
 散々な目に遭ったダリオスはアテネへ戻ろうとする。ところが、港の船は出航が制限されており、ギリシャへ帰ることは不可能だった。フェニキアとの同盟計画がギリシャへ知られることを危惧した宰相タールの画策だ。
 憤慨するダリオスにミルテ(メイベル・カー)という美女が接触する。彼女もまた反政府ゲリラのメンバーであり、国王暗殺未遂事件を起こした青年リアノスの姉だった。彼女は真夜中に仲間が船を出す、必要ならば乗せてあげてもいいとダリオスに伝え、去って行った。

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巨像の下を通ろうとした船に炎の塊が落とされる

宰相タール(C・サン・マルティン)に捕えられたダリオスたち

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ロードスに到着した奴隷たちの正体はフェニキア軍だった

国王を殺害してロードスを我が物にしようと企む宰相タール

 当初は宰相タールに直訴して船を出してもらうつもりだったダリオス。しかし、当然のことながら拒絶される。そこで、彼は真夜中にミルテから指定された場所へ行く。そこには、ペリオクレスたちが船を準備して待っていた。警備の目を避けながら静かに出港する船。だが、港の入り口にそびえ立つヘリオスの巨像の下を通りがかったその時、船へめがけて炎の塊が落ちて来た。巨像は軍事要塞の機能を兼ね備えており、港の出入りを常時監視していたのだ。
 命からがら船を脱出したダリオスやペリオクレスたちだったが、叛逆者として宰相タールに捕えられてしまう。反政府ゲリラのメンバーたちは壮絶な拷問を受け、ダリオスもギリシャのスパイであるとの自白を強要されるが、ペリオクレスたちの素性すら知らなかった彼は断固として拒否するのだった。
 その頃、ロードスの港にはマケドニアの奴隷が大量に運び込まれてきていた。しかし、これだけの奴隷を何の目的で連れてきているのか?誰の目から見ても不自然に感じられた。ゲリラのメンバーである若者マテオス(アンヘル・アランダ)は、秘かに奴隷たちの後をつける。
 奴隷たちはバール神を祭る神殿へと連れて行かれた。そこで奴隷の一人と堅く握手を交わすフェニキア大使。なんと、奴隷たちの正体はフェニキア軍の兵士だったのだ。そんな彼らを迎えたのは、他でもないロードスの宰相タール。彼は国王セルセ以下の支配層を虐殺してロードスをフェニキアへ明け渡し、自らが統治者となってロードスを支配しようと企んでいたのだ。
 やがて、同じ神殿でダリオスたちの処刑が行われることとなった。彼らはバール神への生贄として捧げられるのだ。ところが、そこへ武装した反政府ゲリラの仲間たちが乱入。たちまち激しい戦闘が繰り広げられ、ダリオスはペリオクレスらと共に神殿を脱出する。一行は外で待機していた叔父リシポの手引きで、森の奥のアジトへと逃げおおせた。
 宰相タールの陰謀が明らかとなった今、もはや最終決戦以外に道は残されていなかった。しかし、強大なフェニキア軍と戦うには味方の数が少なすぎる。だが、大勢の心ある兵士たちが奴隷として炭鉱の強制労働に従事させられている。彼らを解放すれば必ずや味方について戦ってくれるだろう。
 しかし、炭鉱は巨大なゲートで封鎖されており、巨像の内部からしか開閉できない仕組みになっていた。ペリオクレスらは有志を募って巨像の中へ侵入することを計画するが、ダリオスは自殺行為だと猛反対。だが、それ以外に方法はないものと思われた。
 その晩、仲間が寝静まった後にアジトを抜け出したダリオスは、ディアラのもとへと向った。巨像を設計した彼女の父カレーテにロードスの危機を伝え、兵士たちを解放するために協力してもらおうというのだ。
 宰相タールの裏切り行為を知らされたディアラは、ダリオスを巨像の内部で研究している父のもとへ案内することを約束する。だが、それは罠だった。ディアラはタールの愛人だったのである。待ち構えていたフェニキア兵士と死闘を展開したダリオスは、海へと飛び込んで辛くも逃げ切った。
 アジトは既に襲撃されていた。捕えられたペリオクレスたちは、コロッシアムで公開処刑にされるという。ミルタとマテオスは、ダリオスが裏切ったものと思っていた。二人の追跡をのがれ、コロッシアムへとたどり着いたダリオス。彼は熱狂する観衆を静まらせ、国王の前で宰相タールの陰謀を暴露する。
 だがその直後にフェニキア軍の矢が放たれ、国王セルス以下の貴族たちは皆殺しにされてしまった。パニックに陥るコロッシアム。その混乱の中、ダリオスはペリオクレスらを救出する。一部始終を見ていたミルタとマテオスは、ダリオスに対する誤解を解くのだった。
 宰相タールとフェニキア軍はロードスを制圧しつつあった。もはや一刻の猶予も許されない。ダリオスとマテオスは巨像の内部へ侵入してゲートを開き、ペリオクレスらが奴隷兵士たちを外へ誘導することとなった。次々と解放される大勢の兵士たち。だが、ダリオスは宰相タールに捕えられ、マテオスは命を落としてしまう。
 もはやロードスは我等のものも同然と、不敵な笑みを浮かべるタールとディアラ。ところが、突然大空に真っ黒な雲がたちこめ、島全体が嵐に巻き込まれる。さらに、どこからともなく地鳴りが響き渡り、やがて大地が激しく揺れ始めるのだった・・・。

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処刑されようとしたダリオスたちを反政府ゲリラが救う

ダリオスはディアラに助けを求める

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巨像の内部へダリオスを案内するディアラだったが・・・

ディアラの裏切りで窮地に追い込まれたダリオス

 一般的にイタリア産スペクタクル史劇というのは古代ギリシャや古代ローマの神話をベースにしたものが多く、本作のようにヘレニズム時代の歴史を背景にした作品は比較的珍しいと言えるだろう。ヘラクレスやゴライアスといった神話の英雄ではなく、一介のギリシャ将校を主人公にしている点も興味深い。
 ちなみに、本作に出てくる太陽神ヘリオスの巨像は港の入り口で仁王立ちをしているが、これは7世紀以降の文献や言い伝えなどから発生した誤解に基づいているのだそうだ。古代の記述によると巨像は港近くに設置された台座の上に立っていたらしく、映画のように股の下を船が通れるようにするのは力学的に不可能だという。
 脚本家としてスクリーンにクレジットされているのは、セルジョ・レオーネ、エンニオ・デ・コンチーニ、チェザーレ・セッチア、ルチアーノ・マルティーノの4人。しかし、実際には8人〜9人の脚本家が携わったと言われており、ドゥーチョ・テッサリやルチアーノ・キタリーニなどの参加が確認されている。複数の脚本家がアイディアを出し合いながら脚本を完成させるというというのはイタリア映画界の伝統。ヴィスコンティやフェリーニの作品も同様だ。
 エンニオ・デ・コンチーニはアントニオーニの『さすらい』(57)からピエトロ・ジェルミの『イタリア式離婚狂想曲』(61)、マリオ・バーヴァの『血ぬられた墓標』(61)からティント・ブラスの『サロン・キティ』(76)に至るまで、ありとあらゆるジャンルの名作を手掛けた大御所脚本家。『ヘラクレス』(57)や『ポンペイ最後の日』(59)などスペクタクル史劇の脚本に携わることも少なくなかった。
 一方、ルチアーノ・マルティーノは実弟セルジョ・マルティーノ監督作品のプロデューサー兼脚本家として知られているが、もともとは『蒙古の嵐』(61)や『豪勇ペルシウス大反撃』(63)などの史劇映画に腕を奮った脚本家。ドゥーチョ・テッサリもマカロニ・ウェスタンやポリス・アクションの監督として有名だが、当時は脚本家として数多くの史劇映画に関わっていた。
 撮影監督を担当したアントニオ・L・バレステロスはスペイン出身のカメラマンで、『ポンペイ最後の日』でもレオーネと組んだことがある人物。セット美術担当のラミロ・ゴメスや衣装デザインのヴィットリオ・ロッシ、編集のエラルド・ダ・ローマ、音楽のアンジェロ・フランチェスコ・ラヴァニーノなどの主要スタッフも、全て『ポンペイ最後の日』に引き続いての登板だ。
 なお、本作は後に映画監督として成功する人々が助監督として携わっている。まずは『別れのスキャット』(69)やフレンチ・ノワールの隠れた名作『汚れた刑事』(70)で知られるフランスの名匠イヴ・ボワッセ。そして、スパニッシュ・ホラーの傑作『悪魔の墓場』(74)で有名なホルヘ・グラウ。さらには、『南から来た用心棒』(66)や『ザ・ビッグマン』(72)などを手掛け、あのタランティーノも敬愛するイタリアン・アクションの名匠ミケーレ・ルーポ監督が、レオーネの演出を手助けしたのだそうだ。

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コロッシアムでは捕虜たちの公開処刑が行われていた

ダリオスは国王の前でタールの陰謀を暴露するのだが・・・

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ロードス島を未曾有の天変地異が襲う

猛烈な嵐と大地震によって次々と崩れていく建物

 主人公ダリオス役を演じているのは、『百万長者と結婚する方法』(53)と『帰らざる河』(54)でマリリン・モンローと共演したハリウッド・スター、ロリー・カルホーン。当時彼は冒険活劇大作『豪快!マルコ・ポーロ』(62)に主演するためイタリアを訪れていたのだが、そちらのスケジュールが延びてしまったことから急きょ本作へ出ることとなったらしい。彼のようにキャリアのある俳優が主役を務めるというのも、当時のイタリア産史劇では珍しかった。
 一方、その相手役である妖艶な悪女ディアラに扮しているのは、アントニオーニの『情事』(60)やルイ・マルの『好奇心』(71)など、ヨーロッパ各国の巨匠の名作に数多く主演した演技派女優レア・マッサリ。彼女がこのような娯楽映画に出るというのも、これまた非常に珍しいことだ。
 反政府ゲリラのリーダー、ペリオクレス役を演じているジョルジュ・マルシャルは、40〜50年代にフランスで人気の高かったトップ・スター。『テオドラ』(54)や『ローマの旗の下に』(58)など、初期イタリア産史劇映画のヒーローとしても活躍した。
 そのほか、スペインの名脇役俳優コンラード・サン・マルティン、『ポンペイ最後の日』にも出ていたアンヘル・アランダ、スペインを代表する名優フェルナンド・レイの奥さんだったメイベル・カー、ディック・パーマーの名前でマカロニ・ウェスタンでも活躍したマッチョ俳優ミンモ・パルマーラ、同じくマカロニ・ウェスタンの名脇役として悪人から好々爺まで幅広く演じたロベルト・カマルディエル、巨匠ブニュエルの『哀しみのトリスターナ』(70)でも知られる名優アントニオ・カサスなどが脇を固めている。
 また、巨匠ルネ・クレールの傑作『巴里祭』(32)で知られる戦前の2枚目スターで、戦後はイタリアやスペインでホラー映画やアクション映画などの脇役として活躍した老優ジョルジュ・リゴーが、ダリオスの叔父リシポ役として登場。飄々とした三枚目演技でお茶目なところを見せてくれるのが良かった。

 

 

アトランティス征服
Ercole alla conquista di Atlantide (1963)

日本では1966年劇場公開
VHS・DVD共に日本未発売

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(P)2007 Retromedia Entertainment (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★☆☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/95分/製作:イタリア・フランス

※『ヘラクレスの怪獣退治』を同時収録

特典映像
なし
監督:ヴィットリオ・コッタファーヴィ
製作:アキーレ・ピアッツィ
脚本:サンドロ・コンティネンザ
   ドゥーチョ・テッサリ
   ヴィットリオ・コッタファーヴィ
撮影:カルロ・カルリーニ
音楽:ゴードン・ザーラー
出演:レグ・パークス
   フェイ・スペイン
   エットーレ・マンニ
   ルチアーノ・マリン
   ローラ・アルタン
   サルヴァトーレ・フルナーリ
   エンリコ・マリア・サレルノ
   イーヴォ・ガラーニ
   ジャン・マリア・ヴォロンテ
   ミンモ・パルマーラ
   マリオ・ペトリ

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アンドロクレス(E・マンニ)とヘラクレス(R・パークス)は怪現象を目撃

預言者イシスは未知の敵がギリシャを狙っているという

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誰だか分からぬ相手に先制攻撃を主張するアンドロクレスだが・・・

無理やり航海に参加させられたヘラクレス

 ボディビルの元世界チャンピオンで売れないハリウッド俳優だったスティーヴ・リーヴスが、イタリアに招かれて主演した『ヘラクレス』(57)の大ヒットで一躍世界的なトップ・スターになったことから、数多くのボディビルダーが一攫千金を求めてイタリアへと殺到した。本作はその中の一人、イギリス出身のレグ・パークスが主演した作品。ギリシャ神話の英雄ヘラクレスが、邪神を崇拝する悪の大陸アトランティスを壊滅させるというヒロイック・ファンタジーだ。
 本作に登場するヘラクレスは、テーバイ王アンドロクレスの親友。未知の敵がギリシャに脅威をもたらすとの預言を知ったアンドロクレスとヘラクレスは、その誰だか分からない相手を先に倒すべく航海へと出る。ところが、その途中で嵐に見舞われて船が難破。たどり着いた大陸アトランティスは邪神を崇拝する魔の王国だった。しかも、邪悪な女王アンティネアは人民を犠牲にしてアンドロイド軍団を作り、世界征服の野望を燃やしていたのだ。果たして、ヘラクレスはアトランティスに囚われた親友アンドロクレスを救い出し、アンティネアの野望を打ち砕くことが出きるのか・・・!?
 ということで、謎の大陸アトランティスを沈没させたのはヘラクレスでした、というお話。まあ、実際にプラトンの書いた著書でもアトランティスはゼウスの怒りに触れて沈没したことになっているので、そのゼウスの息子であるヘラクレスが手を下したとしてもおかしくはないのだけれど(笑)。
 ヘラクレスがテーバイで暮らしているというのも、彼がテーバイを助けてオルコメノス軍を倒したという神話に基づいているわけだし、妻デイアネイラや息子ヒュロスといったお馴染みのキャラクターもちゃんと登場する。もちろん、それ以外は完全な創作だ。
 監督を手掛けたのは『剣闘士の反逆』(59)や『豪勇ゴライアス』(60)などのスペクタクル史劇で鳴らしたベテラン職人ヴィットリオ・コッタファーヴィ。さすが手馴れたものといった感じで、戦闘シーンやパニック・シーンなどの見せ場はきっちりと押さえている。SFやホラーの要素もふんだんに盛り込み、カラフルで賑やかな娯楽作品に仕上げているのは評価できるところだと思う。
 確かにストーリー自体は相当に荒唐無稽で稚拙。そもそも誰なんだか分からない敵を探して旅に出るなんてのが馬鹿げているし、アンドロクレスの調達した討伐隊が奴隷20〜30人と軍艦一隻だけというのもズッコケる話だ。議会で猛反対されたからというのが理由らしいのだが、アンタ王様だよね!?と誰もが思わず突っ込みたくなるはず。かといって、予算の都合がつきませんでしたと白状するわけにもいかんだろうし。・・・というか、ほとんど白状しているようなものなんだが(笑)。
 ただ、それ以外はワリとスケールの大きなスペクタクルが展開する。セットの規模やエキストラの数も迫力があるし、クライマックスの災害パニックなんかも見応え十分。当時のイタリア産史劇の中では、全体的に予算が潤沢な方だったのではないかと思われるような出来栄えだ。
 その一方で、当時のイタリア映画の弱点である特撮に関しては、やはり見劣りしてしまうことは否めないだろう。特に、中盤で出てくる等身大の着ぐるみ爬虫類モンスターは拍子抜けすること必至。クライマックスのアトランティス沈没にしても、セットやエキストラをフル動員した実物大のパニックは迫力満点なのだが、沈み行く大陸の全景をミニチュアで見せる特撮は猛烈にチャチな仕上がり。なんとか頑張りました、という努力だけは認めたいところなのだけれど。
 そんなこんなで、ところどころ至らない部分は数あれど、トータルではなかなか見栄えのいいファンタジック・アドベンチャー。是非とも、童心に帰ったつもりで楽しみたい作品だ。

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一行は激しい嵐に巻き込まれてしまう

怪しげな島へと上陸したヘラクレス

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囚われの身となった王女イスメーネ(L・アルタン)

洞窟の中から現れた妖怪プロテウス


 古代ギリシャの王国テーバイ。親友の国王アンドロクレス(エットーレ・マンニ)と酒場でひと暴れしたヘラクレス(レグ・パークス)は、その帰り道に不思議な幻を見る。これは何を意味するのか?ヘラクレスとアンドロクレスは預言者イシスのもとを訪れた。すると、未知の敵がギリシャへと侵略して来ることを知らされる。
 すぐさまアンドロクレスは各地の王を集めて、この新たなる脅威について話し合った。彼は先制攻撃を仕掛けるべきだと強く主張。だが、怠慢なメガリア王(イーヴォ・ガラーニ)は戦争を面倒くさがり、慎重なメガラ王(エンリコ・マリア・サレルノ)は預言について懐疑的で、合理主義のスパルタ王(ジャン・マリア・ヴォロンテ)は誰だか分からない相手との戦を拒絶する。結局、アンドロクレスは自ら一人で軍隊を率いることにした。
 自分も同行するつもりだったヘラクレスだが、妻デイアネイラ(ルチアーナ・アンジョリーロ)は反対。彼は妻と息子ヒュロス(ルチアーノ・マリン)の3人で余生を過ごすことを決意した。アンドロクレスも彼の意志を尊重。旅の安全と戦いの勝利を願って、ヘラクレスとアンドロクレスは夜通し酒を飲み明かすことにする。
 その翌朝、テーバイを出航した軍艦の上には、酔いつぶれたヘラクレスの姿があった。息子ヒュロスが親友の小人ティモテーロ(サルヴァトーレ・フルナーリ)の協力で運び込んだのである。父親に怒られることを恐れたヒュロスは船底へ身を隠す。
 やがて目を覚ましたヘラクレスは、意外にも上機嫌だった。しかし、戦へ向うというのに軍艦は一隻だけ、しかも乗組員は貧弱そうな奴隷ばかり。首を傾げるヘラクレスに、アンドロクレスは議会の猛反対で軍隊を調達できなかったのだと説明する。
 しかし、この奴隷たちがクセモノだった。彼らはわざと飲料水を捨て、飲み水を探すために近くの島へ上陸した隙を狙い、軍艦を乗っ取ろうとしたのだ。だが、ヘラクレスの怪力で船は岸へと引き戻され、奴隷たちを島へ置き去りにして再び出航する。
 やがて船は激しい嵐に巻き込まれた。アンドロクレスが波に呑まれてしまい、それを助けようと海へ飛び込んだヘラクレスも気を失う。やがて目を覚ましたヘラクレスは、板の上で海を漂流していた。どこからともなく、助けを求めるアンドロクレスの声が聞こえてくる。すると、深い霧の向うに入江が見えてきた。
 そこは怪しげな雰囲気の島。ふと見ると、若くて美しい女性が岩の中に幽閉されている。彼女は妖怪プロテウスの生贄にされるのだという。すると、洞窟の中からトカゲのようなモンスターが現れ、トラや鷹などに姿を変えてヘラクレスに襲いかかる。だが、その角をへし折ったところ、怪物は息絶えてしまった。
 女性の名前はイスメーネ(ローラ・アルタン)。この島の対岸にあるアトランティスが彼女の故郷だという。二人は王宮へと到着。イスメーネは女王アンティネア(フェイ・スペイン)の娘、つまりアトランティスの王女だった。
 この王国では邪神ユレイニアスを崇拝しており、その息子プロテウスに生贄を捧げることで外敵から守られているのだという。それゆえに、娘が生きて帰ってきたこと、そしてプロテウスがヘラクレスに殺されたことを知ったアンティネアは顔を曇らせた。側近たちも怒りと不安を露わにする。そんな彼らの態度にヘラクレスも憤慨した。そのような理不尽を要求する神は間違った神だと。
 その言葉を聞いたアンティネアは考えを改め、ヘラクレスに対して無礼を詫びる。アンティネアによると、この王国へやって来た異邦人はヘラクレスが初めてだという。彼女はアンドロクレスの行方探しに力を貸すことを約束し、ヘラクレスを客人として歓迎した。
 愛する母と二人きりになり、安堵の表情を浮かべるイスメーネ。しかし、アンティネアはそんな娘を冷たく突き放す。お前は死ななくてはいけない。さもなくば、アトランティスが神の怒りに触れて滅びてしまう。そう聖書に記されているのだ、と。

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禁断の大陸アトランティスの宮殿

アトランティスの人々は邪神を崇拝していた

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冷酷な女王アンティネア(F・スペイン)

イスメーネを救出するヒュロス(L・マリン)

 その頃、アトランティスの海岸にはヒュロスとティモテーロが漂着していた。二人はイスメーネが兵士たちによって処刑されようとしている現場を目撃し、命がけで戦って彼女を救う。だが、最愛の母から見放されたイスメーネは、生きる気力すら失っていた。
 一方、アンティネアはヘラクレスをなんとかアトランティスへ留まらせようと説得する。だが、親友アンドロクレスの行方を心配する彼の気持ちは揺らがなかった。ところが、客室へ戻ったヘラクレスは何者かに襲撃される。なんと、それはアンドロクレスだった。
 だが、アンドロクレスはヘラクレスのことを全く覚えていない様子で、ワケの分らない言葉を口走るばかり。再び襲い掛かろうとする彼をヘラクレスは殴り倒すしかなかった。そこへ、騒ぎを聞きつけたアンティネアがやって来る。彼女はアンドロクレスを保護していたが、気の触れた親友を見たらヘラクレスがショックを受けるだろうと考え、あえて隠していたのだと説明する。
 アンティネアは気付け薬になると言って、ヘラクレスに寝しなのワインを勧めた。彼は侍女の怯えた表情からワインに何か入っていると気付いたが、あえて飲むふりをしてみせる。そして、頃合を見計らって秘かに王宮を抜け出すのだった。
 実はアンドロクレスは気が触れたのではなく、何らかの実験台にされていたのだ。それが失敗に終ったと考えたアンティネアは、彼を渓谷へ捨ててくるよう命じる。ヘラクレスはその後を追った。すると、渓谷では大勢の人々が奴隷として強制労働に従事させられていた。
 ヘラクレスは息子ヒュロスらと合流し、奴隷となった人々を解放する。彼らの話によると、アンティネアは新たな人類を作ることに成功し、不要になった庶民を次々と奴隷にしているのだという。山の頂上には“魔法の石”があると言われており、幼い子供たちをそこへ連れて行っては無敵の超人に変えているのだそうだ。
 その話を聞いたヘラクレスは、すぐさま山へと向った。そこにあったのは、洞窟の中で光り輝きながら破壊的なパワーを放つ不思議な石。ゼウスの息子ヘラクレスを信じる司祭ゼニス(マリオ・ペトリ)によると、それは邪神ユレイニアスから与えられた石なのだという。この石を破壊させる唯一の方法は、太陽の光を与えること。だが、石を破壊すればアトランティスも滅んでしまう。まずは人々を脱出させることが先決だ。
 だがその頃、アンティネアに対する復讐心に駆られた奴隷たちが暴動を起こしていた。そして、魔法の石で造られた超人兵士軍団によって一人残らず殺されてしまう。王宮へ戻って死体の山を発見したヘラクレスは、アンティネアやその右腕アストル将軍(ミンモ・パルマーラ)を倒そうとするが、その行く手に超人兵士軍団が立ち塞がる。なんと、仮面を取った彼らは全員アストル将軍と同じ顔をしていた。つまり、将軍もまた“魔法の石”によって変身した超人だったのだ。
 実は、アンティネアがヘラクレスを王国に止めようとした理由も、彼を魔法の石で自分の手下にするためだった。そして、超人軍団を率いてギリシャを攻め、最終的には世界を支配しようという魂胆なのだ。
 追いつめられたヘラクレスは地下室へ閉じ込められる。そこには息子ヒュロスも囚われていた。やがて部屋に充満し始めるガス。アンドロクレスはこのガスによって記憶を失ったのだ。間一髪で地下室を脱出したヘラクレスとヒュロス。ヘラクレスは山へと向かい、ヒュロスは海岸でイスメーネたちと合流する。
 洞窟の天井へよじ登ったヘラクレスは、その怪力で大きな穴をあけた。石の方へと少しづつ向きを変えていく太陽の光。ヘラクレスは大急ぎで山を下りる。やがて太陽の光が石へと到達。その次の瞬間、山は大きな音を立てて噴火し、アトランティスに天変地異が襲いかかる…。

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ヘラクレスを留まらせようとするアンティネア

記憶を失ったアンドロクレスがヘラクレスを襲う

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渓谷には大勢の人々が奴隷として強制労働させられていた

人々から“魔法の石”の存在を知らされるヘラクレス

 コッタファーヴィ監督に加えて、『さいはての用心棒』(67)などのマカロニ・ウェスタンで有名な脚本家サンドロ・コンティネンザとイタリアン・バイオレンスの名匠ドゥーチョ・テッサリが脚本を担当。ストーリーは荒唐無稽でバカバカしいものの、逆に言えばそれこそがイタリア産スペクタクル史劇の醍醐味。とりあえずアクションからロマンス、ファンタジー、ホラー、そして災害パニックまで、なんでもかんでも片っ端から詰め込んじゃいましたというサービス精神が嬉しい。
 撮影監督には巨匠ロッセリーニの『ロベレ将軍』(59)や『ローマで夜だった』(60)、フェリーニの『青春群像』(53)などで有名な大物カメラマン、カルロ・カルリーニが参加。壮大なスケールのセットやロケーションを70ミリのスコープサイズめいっぱいに捉えた映像は、B級映画とは思えないような風格と迫力があって美しい。それだけでも、脚本の稚拙さを補って十分余りあると言えよう。
 なお、『復讐の用心棒』(67)や『シシリアン・クロス』(76)の監督マウリツィオ・ルチディが編集を担当。彼は後に“La sfida dei giganti”(65)というレグ・パークス主演のヘラクレス物を撮っているのだが、そちらには本作の怪獣プロテウスとの対決シーンがそのまま流用されている。
 また、本来のイタリア・オリジナル版の音楽スコアはアルマンド・トロヴァヨーリとジーノ・マリウッツィ・ジュニアが手掛けているのだが、上記のアメリカ盤DVDに収録されている全米公開バージョンではゴードン・ザーラーが担当。大半がストック・ミュージックを使用しているほか、一部のスコアはユニバーサルの『大アマゾンの半魚人』から拝借されている。
 そのほか、『豪勇ゴライアス』(60)や『ヘラクレス 魔界の死闘』(61)を手掛けたアキーレ・ピアッツィが製作を、『テオドラ』(54)や『コンスタンチン大帝』(60)などの史劇大作で知られるフランコ・ローリが美術デザインを、『ポンペイ最後の日』(59)のヴィットリオ・ロッシが衣装デザインを担当している。

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アンティネアたちを倒そうとするヘラクレスだったが・・・

行く手を阻む超人兵士軍団たち

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アトランティスを天変地異が襲う

みるみるうちに崩壊していく神殿

 ヘラクレス役を演じるのは、3度のミスター・ユニバース世界チャンピオンに輝くイギリスのボディビルダー、レグ・パークス。あのシュワルツェネッガーに多大な影響を与えたと言われる人物だ。本作が映画デビューだった彼は、もちろん俳優としては完全な素人。ただ、大して演技力を要求されるような役柄ではないので、ワリと気楽に演じているような印象を受ける。本人も映画俳優を目指していたわけではなかったらしく、わずか5本の主演作を残してさっさと引退してしまった。
 その相棒アンドロクレス役を演じているエットーレ・マンニは、アントニオーニの『女ともだち』(55)やフェリーニの『女の都』(80)などで知られるタフ・ガイ系の名優。当時は戦争映画や歴史劇のヒーロー役としても人気の高いスターだった。
 そして、アトランティスを支配する悪の女王アンティネア役として強烈なインパクトを放つのが、50年代にアメリカのB級映画で活躍したカルト女優フェイ・スペイン。ロッド・スタイガー主演の『暗黒の大統領カポネ』(59)で演じたアル・カポネの愛人モーリーン役で、欧米では結構人気が高い。この人もレグ・パークスと同じく演技力に関しては限りなく大根に近いものの、なにしろその面構えがいい。出てくるだけでサマになるという点で、トゥーラ・サターナに匹敵する理想的な悪女だ。
 また、女王アンティネアの娘イスメーネ役を演じるローラ・アルタンの可憐な美貌にも注目。彼女は本名をラウラ・エフリキアンというイタリア人で、当時トップ・アイドルだったジャンニ・モランディとのコンビで『貴方にひざまづいて』(65)などの青春映画で売り出されたスターだった。
 そのほか、『ロード島の要塞』にも出ているマッチョ俳優ミンモ・パルマーラ、ピエトロ・ジェルミ監督の『わらの男』(58)にも出ていたルチアーノ・マリン、ヴァレリオ・ズルリーニ監督の『鞄を持った女』(61)で主人公の厳格な叔母を演じていたルチアーナ・アンジョリーロなどが出演。
 さらに、ギリシャの各ポリスを統治する王様役として、『バンディドス』(66)や『黒い警察』(71)のエンリコ・マリア・サレルノ、マリオ・バーヴァの『血ぬられた墓標』(60)やヴィスコンティの『山猫』(63)で知られるイーヴォ・ガラーニ、『殺人捜査』(70)や『死刑台のメロディ』(71)などで左翼映画のカリスマとなったジャン・マリア・ヴォロンテという、錚々たる名優が顔を合わせているのも興味深い。

 

 

Maciste contro il vampiro (1961)
日本では劇場未公開
VHS・DVD共に日本未発売

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(P)2007 Wild East Productions (USA)
画質★★☆☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(レターボックス収録)/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/91分/製作:イタリア
※『鉄腕ゴライアス・蛮族の恐怖』を同時収録

特典映像
オリジナル劇場予告編
ポスター&スチル・ギャラリー
監督:ジャコモ・ジェンティローモ
   セルジョ・コルブッチ
製作:パオロ・モッファ
脚本:セルジョ・コルブッチ
   ドゥーチョ・テッサリ
撮影:アルヴァーロ・マンコリ
音楽:ゴードン・スコット
   ジャンナ・マリア・カナーレ
   ジャック・セルナス
   レオノーラ・ルッフォ
   ロッコ・ヴィトラッツィ
   アナベラ・インコントレッラ
   マリオ・フェリチアーニ
   グイド・チェラーノ

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村へと戻るマチステ(G・スコット)と少年チロ(R・ヴィトラッツィ)

マチステの村は軍隊の襲撃で全滅してしまう

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若い娘ばかりが連れ去られてしまった

吸血鬼コブラクに娘たちの生血を捧げる将校

 イタリア語タイトルは“マチステとヴァンパイア”。その名の通り、イタリア映画でお馴染みの英雄マチステがヴァンパイアを相手に戦うというホラー仕立てのスペクタクル史劇だ。しかも、物語の後半ではヴァンパイアの宿敵として青い肌をした人々、その名もずばり“ブルーマン”が登場。あのブルーマンの元ネタか!?・・・なんてわけはないと思うが、様々な趣向を凝らした遊び感覚が実に楽しい一本と言えよう。
 舞台は地中海沿岸の西アジア、現在のトルコ辺りなのではないかと思われる。マチステの住む村が軍隊によって襲われ、若い女性ばかり連れ去られてしまう。その連れ去られた場所とはサルマナックというイスラムの国。実は、サルマナックのスルタンは吸血鬼コブラクによって操られていたのだ。
 愛する女性ジュリヤを探してサルマナックへ潜入するマチステ。しかし、その行く手にはコブラクとその手下である悪女アストラが立ち塞がる。罪なき人々をコブラクの魔手から救い、ジュリヤとの平和な生活を取り戻すべく立ち上がるマチステ。そんな彼を、青い肌をしたブルーマンと呼ばれる人々が助太刀する。
 もともとイタリア産スペクタクル史劇はファンタジー度が濃厚なジャンルだが、特に本作は荒唐無稽な設定や見せ場がてんこ盛り。まさしく何でもアリといったところだ。ただし、バラエティ豊かな内容であることは確かなのだが、知的レベルとしてはちびっ子向けの特撮怪獣映画とほぼ変わらない程度。あくまでも軽いB級エンターテインメントとして楽しみたい作品だ。
 特に、ゴードン・スコット扮するマチステのキャラクターの単細胞なことといったら(笑)。そもそもスコット自身がムキムキの筋肉以外はまるでパッとしない地味な俳優なので、ものすごくオツムの弱いヒーローに見えてしまうというのがちょっと痛い。
 ちなみに、マチステというのはイタリア産史劇映画の金字塔『カビリア』(14)で初めて登場したキャラクター。ヘラクレスをモデルにした怪力の大男で、映画の大ヒットと共にイタリアでは庶民の人気ヒーローとなった。つまり、映画から生まれた完全なオリジナル・キャラだったわけだ。
 監督としてクレジットされているのは、『ジークフリード』(57)や『海賊王バイキング』(60)などの歴史劇で知られるジャコモ・ジェンティローモ。しかし、実際には脚本にも参加しているセルジョ・コルブッチが共同監督を務めたそうだ。
 コルブッチと言えばマカロニ・ウェスタンの巨匠だが、当時は『闘将スパルタカス』(62)や『逆襲!大平原』(62)といったスペクタクル史劇も少なからず手掛けている。ただ、どのような形で演出に参加したかは分らないものの、一連のウェスタン作品で披露した気骨を本作に垣間見ることは残念ながら出来ない。
 ということで、ホラー映画ファンにも優しい(?)痛快な異色スペクタクル史劇。アメリカでもカルト映画として根強い人気を誇っている。ただ、マチステというイタリア映画オリジナルの英雄がアメリカでは馴染みがなかったため、全米公開バージョンでは主人公の名前が旧約聖書に出てくる英雄ゴライアスに変更。タイトルも“Goliath and the Vampires(ゴライアスとバンパイア)”に変えられている。

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サマナック島へやって来たマチステとチロ

敵の軍隊を相手に戦いを繰り広げる

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カーティック(J・セルナス)の屋敷にかくまってもらう

スルタンを意のままに操る悪女アストラ(G・マリア・カナーレ)

 今日も力仕事に精を出す大男マチステ(ゴードン・スコット)。すると、海の方から助けを呼ぶ声が聞こえてくる。海で泳いでいた少年チロ(ロッコ・ヴィトラッツィ)がモンスターに襲われたのだ。すぐさま海中へ飛び込み、モンスターを退治するマチステ。幸いにもチロは無事だった。
 チロを連れて村へと帰るマチステ。チロは恋人ジュリヤ(レオノーラ・ルッフォ)の弟だ。大切な弟を危険な目に遭わせたと知ったら怒られるに違いない。冗談交じりにそんな話をしていると、遠く村の方から火の手が上がっているのが見えた。マチステは急いで馬を走らせる。
 その頃、村では異様な姿をした兵隊たちが村人を虐殺していた。彼らは男や年寄り、子供を皆殺しに殺してその生血を抜き取り、若い女性は生かしたまま連れ去っていく。マチステとチロが村へ到着したのは、残念ながら女性たちが連れ去られた後だった。
 瀕死の母から恋人ジュリヤも一緒に連れて行かれたことを知らされたマチステ。同じような被害にあった近隣の村人によると、兵隊たちは海の向うになるサマナック島からやって来たのだという。復讐に燃えるマチステは、女性たちの奪還を誓うのだった。
 一方、連れ去られた女性たちは奴隷船の船底へ押し込められていた。ジュリヤは親友マグダ(アナベラ・インコントレッラ)と肩を寄せ合って恐怖に震えている。すると、兵士たちが次々と女性の体に傷をつけて血を絞り取っていった。なぜかジュリヤだけが血を取られなかったことから、不満を持った他の女性たちが暴動を起こす。そのため、ジュリヤは別の部屋へと連れて行かれてしまった。
 サマナックへ到着したマチステとチロは、広場の一角で行われている奴隷のオークションでマグダを発見。二人は彼女を助け出すため、大勢の兵士を相手に戦いを繰り広げる。すると、事態を見守っていた水色の服の男性が、混乱に乗じてマグダをこっそりと広場から連れ出した。
 次から次へと集まってくる兵士を煙にまいて街中へと紛れ込んだマチステとチロは、たまたま扉の開いていた家の中へと逃げ込む。そこには例の水色の服の男とマグダが隠れていた。水色の服の男はカーティック(ジャック・セルナス)といい、ここは彼の住居だったのだ。カーティックはジュリヤをさらった相手が共通の敵であるといい、救出のために協力することを約束する。
 一見すると平和なように見えるサマナックの街だったが、民衆は恐怖政治に怯えながら暮らしていた。実は、この王国を影で操っているのは吸血鬼コブラク(グイド・チェラーノ)。統治者であるスルタン(マリオ・フェリチアーニ)は気弱な性格で、コブラクの妖艶な部下アストラ(ジャンナ・マリア・カナーレ)の言いなりだった。民衆を苦しめていることに罪悪感は感じているものの、黒魔術を使うコブラクとアストラに逆らうような勇気はない。
 広場での騒動を聞いたコブラクとアストラは、あの有名な英雄マチステがこのサマナックにいることを知る。アストラはマチステの抹殺を主張するが、コブラクの考え方は違っていた。彼を生け捕りにして洗脳すれば、間違いなく最強の部下となるからだ。そのため、アストラは奴隷として捕えられたはずの恋人ジュリヤを探すことにする。彼女をエサにして、マチステをおびき寄せようというのだ。

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コブラクはマチステを生け捕りにするようアストラに命じる

マチステの恋人ジュリヤ(L・ルッフォ)は囚われの身となった

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その怪力で牢獄を破壊するマチステ

スルタン(M・フェリチアーニ)はマチステとジュリヤを逃がした

 カーティックの仲間がジュリヤの居所を掴んだ。奴隷商人が街の酒場に彼女をかくまっているというのだ。すぐに酒場へ向ったマチステとカーティックだったが、一足早く来たアストラが彼女を捕えてしまった。アストラは奴隷商人を殺害し、酒場はパニック状態に。そこへ彼女が呼び出した兵隊が到着し、マチステとカーティックは乱闘に巻き込まれる。カーティックはなんとか脱出に成功したものの、マチステは捕えられてしまった。
 カーティックの家で留守番をしていたチロとマグダ。そこへコブラクが現れ、マグダが殺されてしまう。カーティックはチロを安全な場所へ移すことにした。一方、マチステは王宮の牢獄につながれた。同じく王宮へ連れてこられたジュリヤは、マチステの命と引き換えにスルタンの慰み者になることを強要される。
 ところが、マチステはその怪力で牢獄そのものを破壊。王宮の外へ脱出すべく広間を通りがかったところ、スルタンにマチステの命乞いをするジュリヤと遭遇した。今こそ正しい行いをすべきだと感じたスルタンは、コブラクの魔手から民衆を救って欲しいと言ってマチステとジュリヤを逃がす。だが、それがコブラクの怒りに触れ、スルタンは無残にも殺害されてしまった。アストラはスルタン殺害の罪をマチステになすりつけ、その捜索を軍隊に命じる。
 なんとか街を抜け出したマチステとジュリヤだったが、砂漠をあてどもなく彷徨ううちに体力が尽き果ててしまった。さらに、運悪く発生した大砂塵に巻き込まれてしまう。もはや命運尽きたかと思われたその時、二人は地下洞窟を発見して逃げ込むことが出来た。
 そこは青い石に囲まれた不思議な空間だった。しかも、そこら中に蝋人形が並んでいる。ここはどこなのか?すると、いつの間にか二人は青色の肌をした兵隊たちに囲まれていた。彼らは“ブルーマン”。この洞窟はブルーマンの王国だったのである。
 扉が開くと、中からチロが出てきた。ブルーマンは人間の味方なのだという。なんと、カーティックこそがブルーマンの王様だった。彼らは宿敵コブラクを倒し、人間をその魔手から救うため秘かに戦っていたのである。肌の色が人間と同じカーティックは自らスパイとして暗躍し、コブラクの犠牲になった人々を生き返らせる薬の開発に勤しんでいた。先ほど蝋人形かと思われたのは、コブラクに血を抜き取られた人々の亡骸だったのだ。
 しかし、薬の研究は全くはかどっていなかった。実は、コブラク自身が解毒剤となる秘薬を持っているのだが、森の奥地の隠れ家に隠していて手が出せない。そこで、カーティックはアストラを捕えて解毒剤の秘密を吐かせようとする。だが、アストラは何も知らないの一点張りだった。
 アストラをモンスターの餌食にしようとするカーティック。しかし、女性を傷つけることに反対するマチステは、アストラの言葉を信じて彼女を助けるのだった。そんなマチステを誘惑してコブラク退治を諦めさせようとするアストラ。だが、英雄マチステに女の色香は通用しなかった。
 ブルーマンの軍隊を引き連れてコブラク退治に向うマチステ。ところが、ジュリヤを人質にしたアストラが先回りをし、コブラクと共に罠を仕掛けていた。コブラクに洗脳されて怪物化したヴァンパイア軍団の餌食となるブルーマンたち。果敢に戦ったマチステだったが、ジュリヤの命と引き換えに捕らわれてしまう・・・。

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砂漠で地下洞窟に避難したマチステとジュリヤ

そこは青い肌をしたブルーマンの王国だった

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カーティックはコブラクの犠牲者を生き返らせる研究をしている

マチステを誘惑しようとするアストラだったが・・・

 もはや歴史とは全く無関係の時代劇アドベンチャーといった感じの作品。低予算のB級映画とはいえセットやロケーションはなかなか豪華だし、マリオ・バーヴァの名作『ヘラクレス 魔界の死闘』には遠く及ばないものの、随所に織り込まれた怪奇的ムードも決して悪くはない。ただ、オープニングと中盤にチラリと登場するモンスターは、どちらも見るからに着ぐるみ&パペットといった感じのお寒い出来栄えなのだけど。
 脚本を担当したのはセルジョ・コルブッチとドゥーチョ・テッサリ。また、『ポンペイ最後の日』(59)や『戦場のガンマン』(68)のパオロ・モッファが製作を手掛けた。彼はもともとヴィットリオ・デ・シーカ監督の『子供たちは見ている』(44)などの助監督だった人物で、自身の監督作も何本か残している。
 さらに、イタリア映画の誇る世界的プロデューサー、ディノ・デ・ラウレンティスが製作総指揮を担当。盟友カルロ・ポンティもそうだったわけだが、彼はこうしたB級娯楽映画で儲けたお金で、赤字が目に見えているヴィスコンティやフェリーニの芸術映画の製作費をまかなっていたのである。
 撮影監督を担当したのは、喜劇王トト主演のコメディ映画を数多く手掛けたカメラマン、アルヴァーロ・マンコリ。『戦場のガンマン』(68)や『炎の戦士ストライカー』(87)のサンドロ・マンコリ、『バニンシング』(76)や『マンハッタン・ベイビー』(82)のグリエルモ・マンコリを弟に持つ、イタリア映画界でも珍しいカメラマン三兄弟“マンコリ・ブラザーズ”(勝手に命名)の長男だ。
 そのほか、ヴィスコンティの『ベリッシマ』(51)やアントニオーニの『女ともだち』(55)で知られるジャンニ・ポリドーリが美術デザインを、『無防備都市』(45)や『自転車泥棒』(48)などロッセリーニやデ・シーカのネオレアリスモ作品を数多く手掛けたエラルド・ダ・ローマが編集を、カルト・ホラー『ザ・ブッチャー』(71)のグイド・ズールリ監督が助監督を担当。
 また、『ポンペイ最後の日』(59)や『ロード島の要塞』(61)、『皇帝のビーナス』(62)など史劇映画には欠かせない作曲家アンジェロ・フランチェスコ・ラヴァニーノが音楽を担当。ただし、上記アメリカ盤DVDにも収録されている全米公開バージョンでは、一部を除いてエキゾチック音楽の始祖レス・バクスターの書いたスコアに差し替えられてしまっている。

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ブルーマンの軍隊を従えてコブラク退治に向うマチステ

コブラクに洗脳されたヴァンパイア軍団が待ち構えていた

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ジュリヤまでもがコブラクの犠牲になってしまう

ついにその正体を現した吸血鬼コブラク

 マチステ役を演じているゴードン・スコットは、8代目ターザン役者として50年代にハリウッドで活躍したB級アクション・スター。もともとラスベガスのホテルで警備員をしていたところをスカウトされて俳優になったという人で、演技に関しては本人も素直に認めるくらい大根だった。ヘラクレス役者スティーヴ・リーヴスの親友だったことから、ターザン・シリーズ終了後はイタリアへ活動の拠点を移し、スペクタクル史劇やマカロニ・ウェスタンに出演。だが、やはり演技力不足とカリスマ性不足はいかんともしがたく、60年代後半には映画界を引退。晩年は生活に困窮し、ファンの自宅に居候をしていたのだそうだ。
 悪女アストラ役を演じているのは、『テオドラ』(54)や『ヘラクレス』(57)など数多くのスペクタクル史劇に出演し、当時は“史劇映画の女王”として一世を風靡していた女優ジャンナ・マリア・カナーレ。リカルド・フレーダ監督の奥さんだった人で、ダンナが監督したイタリアで最初の本格的ホラー“I Vampiri”(56)に主演したことでも知られている。彼女も演技力に関しては疑問な点も多々あるが、その存在感と妖艶な美貌はピカイチ。本作でも共演者を完全に食っている。
 一方、マチステの恋人ジュリヤ役には、フェリーニの名作『青春群像』(53)で演じた清純なヒロイン、サンドラ役が有名な女優レオノーラ・ルッフォ。『青春群像』の頃よりも幾分か垢抜けており、タイプが全くの正反対とはいえ、こちらもまたジャンナ・マリア・カナーレに負けず劣らずの美しさ。
 しかも、本作ではそのジュリヤの親友マグダ役として、イタリア映画ファンに根強い人気を誇る美人女優アナベラ・インコントレッラが顔を出している。まだちょっとあどけない初々しさが残っていて、後の妖艶なセクシー美女ぶりとは違った魅力がグッド。この女優陣の顔合わせだけでも、十分に見る価値があると言えよう。
 そして、マチステに力を貸すブルーマンの王様カーティック役には、ハリウッドの史劇大作『トロイのヘレン』(56)でヒーローのパリス役を演じた美形スター、ジャック・セルナス。彼もまた類稀な美貌のワリに演技力はイマイチで、当時は既に人気も下火だった。
 そのほか、『黄金の矢』(63)や『クリスマス・ツリー』(69)のマリオ・フェリチアーニ、『河の女』(54)や『バラバ』(61)のグイド・チェラーノが脇を固めている。

 

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