パトリシア・マンテローラ Patricia Manterola

 

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 三池崇史監督の『漂流街 THE HAZARD CITY』(00)で彼女のことを記憶している人もいるかもしれない。メキシコのトップ女優にして人気シンガー。01年にリリースしたシングル“The Rhythm”と“Ojos Negros”はメキシコのみならずヨーロッパ各国でも大ヒットし、一躍インターナショナルなスターとなった。
 近年は女優業やデザイナー業、動物愛護及び環境保護活動などに忙しく、音楽活動はすっかりご無沙汰だったが、昨年末に3年ぶりとなるアルバム“Ya Termine”を発表。かつてのダンサンブルなセクシー・アイドル路線から一転、正統派ラテン・ポップ・シンガーへと変貌しつつある。

 1972年4月23日、メキシコ・シティの生まれ。幼い頃から学校劇やコーラス隊などに積極的に参加するような少女だったらしい。12歳の時には子供向けの大きな音楽コンテストに出場して決勝まで残り、コンテストの公式アルバムにも楽曲を吹き込んでいる。
 その後、モデルとして活動するようになったパトリシアは、テレビ製作者にして音楽プロデューサーのルイス・デ・ヤーノにスカウトされ、アイドル・グループ、ガリバルディの初代メンバーに選ばれた。
 1989年にデビューしたガリバルディは、伝統的なメキシコ音楽を今風にアレンジして歌うというスタイルが話題を呼んでブレイク。同グループは、パトリシア以外にも歌手兼女優として成功したピラール・モンテネグロ、テレビ製作者としても活躍するセルヒオ・メイエルなどの有名人を輩出した。
 そのガリバルディでの成功を足がかりに、パトリシアは94年にソロ・デビュー。96年にはシングル“Nina Bonita”がメキシコで大ヒットしている。それと並行して、女優としても数多くのテレノベラ(ラテン版メロドラマ)に主演。アメリカでも映画やドラマに出演し、日本映画『漂流街』にも顔を出した。
 だが、彼女がソロとして本格的にブレイクしたのは2001年。上記でも述べたシングル“The Rhythm”と“Ojos Negros”がドイツやスペイン、イタリア、ポルトガルなどヨーロッパ各国で話題を集め、4枚目のアルバム“Que El Ritmo No Pare(英語版はThe Rhythm)”は売り上げ100万枚を超える大ヒットとなった。
 それまでは欧米のトレンドを真似たようなダンス・ポップばかり歌っていたパトリシアだが、ここではメレンゲやマリアッチを取り入れたメキシコならではのラテン・ディスコ・サウンドを展開。リッキー・マーティンやマーク・アンソニーなどによる、折からのラテン・ダンス・ブームも追い風となった。
 だが、03年に発表したアルバム“Dejame Volar”は前作の脆弱な二番煎じといった仕上がりで失敗。06年には懐メロ・ラテン・ポップスを集めたカバー・アルバム“A Mis Reinas”で本格的ボーカリストへの脱皮を試みた。
 そして約3年ぶりとなった最新アルバム“Ya Termine”ではかつてのダンス色が極力抑えられ、ボレロを中心とした正統派ラテン・ポップ・サウンドを打ち出している。ただ、もともと決して声のある人ではないし、卓越したテクニックがあるわけでもない。どちらかというと、パワーと勢いだけで歌いきってしまう不器用なタイプのボーカリストだ。それだけに、どれだけ豊かな表現力を身につけることが出来るのか、というのが大きな課題であるように感じられる。

 

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Grandes Exitos (2002)

The Rhythm (2002)

Que El Ritmo No Pare/The Rhythm (2002)

Dejame Volar (2003)

(P)2002 Universal Music Latino (USA) (P)2002 BMG Music/Ariola (Germany) (P)2002 BMG Music/Ariola (USA) (P)2003 BMG U.S. Latin/Ariola (USA)
1.Sera Por Ti 3:25 ビデオ
2.Te Voy a Enamorar 3:49
3.Si Te Vas 3:50
4.Olor De Amor 3:23
5.Hoy Me Siento Diferente 4:03
6.Quiero Mas 3:58 ビデオ
7.Tu Y Yo 3:36
8.De Nina A Mujer 4:28
9.Para Vivir Sin Ti 3:49
10.Luna Llena 4:19
11.Nina Bonita 4:21 ビデオ
12.Seb's Latin Jungle Mix 5:43
1.The Rhythm 3:18 ビデオ
2.I'll See You Again 4:12
3.Tell You, Tell Me 3:58
4.All I Need Is Your Love 3:27
5.Magic Eyes 4:22 ビデオ
6.Take My Heart 4:40
7.When U Move Like That 4:24
8.Come Back Again 4:38
9.Salsa 4:15
10.Two Hearts 3:26
11.Ojos Negros 4:06 ビデオ
12.Que El Ritmo No Pare 3:46 ビデオ

produced by Julio Reyes, Marco Flores, Donato Poveda, Juan Vicente Zambrano
side A
1.Que El Ritmo No Pare
 (Fernando Garibay Extended Remix)7:07
2.The Rhythm (Fernando Garibay
    Extended Remix) 7:07
3.Que El Ritmo No Pare
  (Barcelona Remix) 4:49
4.Que El Ritmo No Pare
  (On The Beach Remix) 3:47
side B
1.Ojos Negros (Fernando Garibay
    Extended Mix) 7:58
2.Black Eyes (Fernando Garibay
    Extended Mix) 7:58
1.Te Quiero Todo Para Mi 3:36
2.La Bomba 3:52
3.Dejame Volar 4:29
4.Quedate Conmigo 3:46 ビデオ
5.Me Provoca 3:41
6.Si Te Besara 4:00
7.Me Condenas 4:00
8.Amor En Libertad 3:24
9.Espejismos 3:48 ビデオ
10.Angel 3:22 ビデオ
11.Shake Your Body aka La Bomba 3:51
12.I Believe 3:39

produced by Jose Luis Pagan, Donato Poveda, Francesc Pellicer, Tulio Cremisini, Alex & Sergio Soler, Ramiro Teran, Rene Baumann & Axel Breitung
#10&12 duet with DJ Bobo
 ユニヴァーサル在籍時代(94〜00年)の代表作を集めたベスト盤。いかにも90年代な感じのダンス・ポップが中心で、今聴くと古臭いというか安っぽいというか(笑)。やはり一番の弱点は楽曲でしょうね。楽曲が良ければサウンドの古臭さなんて気にならないはずですし。全体的にラテン色が希薄なのもポイント下がりますね。ただし、哀しげなラテン・ギターの音色が美しいノスタルジックな歌謡ポップ・バラード#9は意外と悪くないかも。  大ヒットした4枚目のアルバムの英語バージョンです。ジェニファー・ロペスやグロリア・エステファンを手掛けたヒットメーカー、エステファーノ一派が全面的にバックアップしていることもあり、ヒット・ポテンシャルの高いナンバーの揃った華やかなラテン・ダンスポップ・アルバムに仕上がっています。中でも個人的に大好きだったのは#11とその英語版#5。メレンゲ風の#11もラテン・ハウスの#5も両方ともカッコ良し。おススメです。  左アルバムからの大ヒット・シングル2曲をカップリングした、ファン垂涎とも言うべきプロモ限定のリミックス12インチ。まずA面はなんといってもフェルナンド・ガリバイのリミックスでしょう。まさにラテン・トライバルといった感じのパーカッシブな仕上がり。90年代イタロハウス風の#3もユニーク。一方、B面のガリバイ・ミックスはアルバムの英語バージョンと同一ですが、8分近くのエクステンデッドでお腹いっぱい楽しめます。  路線的には前作を踏襲しているものの、どうも楽曲的な弱さが目立つ一枚。特にラテン・ダンス系のナンバーが、いまひとつインパクトに欠けるように感じます。逆にボレロっぽい雰囲気を漂わせたポップ・バラード#7や#8が好印象。パトリシアのボーカルも情感たっぷりです。また、カイリーの“Can't Get〜”をパクッたであろうエレクトロ・ディスコ#9や、スイスのヒットメーカー、DJボーボーと組んだ#10と#12なんかも悪くないです。

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A Mis Reinas (2006)

Ya Termine (2009)

(P)2006 Warner/Venevision (USA) (P)2010 Del Angel/PCM (USA)
1.De Mi Enamorate 4:09 ビデオ
2.Como Te Va Mi Amor 3:31 ビデオ
3.Devorame Otra Vez 3:27
4.Maldita Primavera 3:33
5.Cheque En Blanco 3:15
6.El Me Mintio 3:45
7.No Controles 3:31
8.Acariciame 3:54
9.Mentiras 4:17 ビデオ
10.Me Gustas Mucho 3:40
11.Quien Como Tu 4:31
12.Abrazame 4:08
13.No Controles (Remix) 7:37

produced by Adrian Posse & Patricia Man
terola
1.Mas Que Tu Dinero
2.Ya Termine ビデオ
3.Gracias
4.Vive
5.Ganas De Volar
6.Y Llegaras
7.A Contratiempo
8.Da Igual
9.Desnudar El Alma ビデオ
10.Dime
11.Fuerte Pero Fragil
12.Valiente
13.Ya Termine(Version Electro Pop)ビデオ

produced by Patricia Manterola & Adrian Posse
 ダニエラ・ロモやアナ・ガブリエル、ロチオ・ドゥルカルなど、パトリシアが少女時代に影響を受けた女性ラテン・シンガーの名曲ばかりを集めたカバー・アルバム。とにかくアレンジが秀逸。オリジナルへのリスペクトに溢れた、非常に完成度の高い上質な正統派ラテン・ポップスを堪能させてくれます。特にアズカール・モレーノのカバー#3と、本格的なサルサを聴かせてくれるルピータ・ダレッシオのカバー#9はおススメ。じっくりと耳を傾けたい1枚。  収録曲全てでソングライトにも関わった久々のオリジナル・アルバム。一部ダンス・ポップ的な作品も含みつつ、全体的にはバラード中心のアコースティックなラテン・ポップスに仕上がっています。相当気合の入った作品であろう事は、パトリシアのボーカルを聴いただけでもよく分りますが、なにしろ中庸というか凡庸というか。いい意味でも悪い意味でも“普通”のラテン・ポップスなんですよね。なんだか非常に物足りなさが残ります。

 

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