パジャマ・パーティ Pajama Party

 

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 フリースタイル・ブーム後期に颯爽と現れた3人組のガールズ・グループである。彼女たちの生みの親はジム・クレインとペギー・センダースのコンビ。クレインは主にロック系のエンジニアとして80年代半ばから活躍していた人で、ペギー・センダースに関しては残念ながら詳細不明だ。
 初代メンバーはニュージャージー州出身のジェニファー・マッキルキン、ミシガン州出身のスージー・ランタ、そしてパナマ生まれのダフネ・ルービン=ヴェガの3人だった。いずれにしても、当時全くの無名だったこのプロジェクトがいきなりメジャーのアトランティックからデビュー出来たというのも、全米を席巻していたフリースタイル・ブームのおかげと言えるだろう。
 89年にリリースされたデビュー曲“Yo No Se”はどちらかというと平凡なフリースタイル・ナンバーだったが、ビルボードのマキシ・シングル・チャートで最高17位、ホット100でも75位というまずまずの成績を収め、幸先の良いスタートを切る。さらに、ポップでキャッチーなセカンド・シングル“Over And Over”はマキシ・シングル・チャートで4位、クラブ・プレイ・チャートで16位、ホット100では59位というスマッシュ・ヒットを記録した。
 その間、ジェニファーとスージーがグループを脱退し、新たにリン・クリテッリとアマンダ・ホーミが加入。このラインナップで、ファースト・アルバム“Up All Night”もリリースされた。ちなみに、その直後にアマンダが脱退し、代わりとしてマリアリサ・コスタンツォが加入している。
 だが、アルバムから3枚目のシングルとなる“Hide And Seek”は比較的地味な作品で、リミックスをロバート・クリヴィリスとデヴィッド・コールの人気コンビが手掛けるという話題性があったにもかかわらず、マキシ・シングル・チャートで17位、クラブ・プレイ・チャートで33位という残念な結果に終ってしまった。
 それでも、ニューキッズ・オン・ザ・ブロックの前座を務めたり、スイート・センセーションやジョージ・ラモンといった大物フリースタイル・アーティストと共演するなど、メジャー・レーベル所属の強みを生かして活躍した彼女たち。
 ところが、セカンド・アルバムからの先行シングルとして91年にリリースされた“Got My Eye On You”はエアプレイ・チャートで77位にランクされたのみ。トップ100はおろか、ダンス系チャートにすらランク・インされず、全くの不発に終ってしまった。セカンド・アルバムそのものも含め、楽曲のクオリティ的にはファーストを遥かに上回る出来だったと思うが、やはりフリースタイル人気の急速な衰退には抗うことが出来なかったのかもしれない。
 翌92年にグループは事実上解散し、メンバーはそれぞれ別の道に。リンとマリアリサの2人は女優となったらしいが、どちらも大して活躍することなく消えてしまった様子。しかし、一番の古株だったダフネは、その後ソロ・シンガー及び女優として成功を収めている。
 93年にシングル“When You Love Someone”でソロ・デビューを果たしたダフネは、95年にリリースした“I Found It”がビルボードのクラブ・プレイ・チャートで見事1位を獲得。これはファンキーなガラージ・ハウスの秀作で、一躍彼女はハウス・ディーヴァとして親しまれるようになった。
 さらに、96年に初演されたブロードウェイ・ミュージカル“レント”のミミ役で高く評価され、シアター・ワールド賞を受賞。その後も“ロッキー・ホラー・ショー”などの舞台に立ち、ミュージカル・スターとしても名を知られるようになった。
 また、映画でも『ワイルドシングス』(98)の女刑事グロリア役や、『フローレス』(99)のロバート・デ・ニーロと心を通じ合うタンゴ・ダンサー、ティア役を好演。最近では映画版『Sex and the City』(08)にもカメオ出演している。

 

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OVER_AND_OVER.JPG HIDE_AND_SEEK.JPG UP_ALL_NIGHT.JPG GOT_MY_EYE.JPG

Over And Over (1989)

Hide And Seek (1989)

Up All Night (1989)

Got My Eyes On You (1991)

(P)1989 Atlantic Recording Corp. (USA) (P)1990 Atlantic Recording Corp. (USA) (P)1990 Atlantic Recording Corp. (USA) (P)1991 Atlantic Recording Corp. (USA)
A side
1,Brooklyn Funk Essential Mix 5:32
2,Brooklyn Funk Dub 4:15
3,Chep's Brooklyn Bonus Beats 4:00
B side
1,Hot Radio Mix 4:45 *
2,Chep's Over And Over Dub 5:48 *

produced by Jim Klein
remixed by The Brooklyn Funk Essentials
* remixed by Dave Darlington
A side
1,Clivilles & Cole Club Version 6:51
2,Clivilles & Cole Hot Radio Mix 4:49
B side
1,Clivilles & Cole Dub Version 8:30

produced by Jim Klein & Peggy Sendars
remixed by Robert Clivilles & David Cole
1,Over And Over 6:05
2,Hide And Seek 4:14 ビデオ
3,Lovelight 4:10
4,Living Inside Your Love 4:56
5,Yo No Se 5:41
7,Surfing In Babylon 4:41
8,Bring All Your Love To Me 4:17
9,Loving You 4:48
10,Over And Over (B.F.E Mix) 5:35
11,Yo No Se (B.F.E./23 West Mix) 5:24

produced by Jim Klein & Peggy Sendars
A side
1,Shaw/Darlington Club Mix 6:22 *
2,23 West Mix 5:28 **
B side
1,Talk To Me Dub 7:22 *
2,Shaw/Darlington Club Mix Edit 4:25 *
3,23 West Crossover Radio Edit 4:00 **

produced by Jim Klein
* remixed by Dave Shaw/Dave Darlington
** remixed by Dave Darlington, Steve Rosen & Bob Gordon
 彼女たちにとって最大のヒットとなった作品。もともとはブレンダ・K・スターのセカンド・アルバムに収録されていた楽曲でした。ポップでキャッチーなラテン風ダンス・ナンバーで、個人的にもかなりのお気に入り。ただ、ブルックリン・ファンク・エッセンシャルによるリミックスはアンダーグランド色が強すぎて、楽曲そのものの良さを殺しているように思います。一方、当時売れっ子だったポップ職人デイヴ・ダーリントンによるB面のリミックスはさすがの出来栄え。最高です。  原曲はさして印象に残らないようなフリースタイル・ナンバーですが、クリヴィリス&コールによるリミックスは、いかにも彼ららしいパンチの効いたファンキーなハウス・ナンバーに仕上がっています。初期のC&Cミュージック・ファクトリーが好きな人だったら十分に満足できるはず。確かに、彼らにとっても代表作と言えるような作品ではないものの、あの原曲をここまでカッコ良く生まれ変わらせたのだから立派なもんです。C&Cファンなら持っておいて損はないと思いますね。  当時アトランティックが彼女たちにどれだけ力を入れたのかは分かりませんが、いくらメジャー・レーベルでもこの内容では売りづらかったんじゃないでしょうかね〜。シングル・カット曲以外は全てクズ…とまでは言いませんが(笑)、あまりにも当たり障りのないダンス・ポップばかりで、正直なところアルバム一枚を聴き通すのは苦痛です。デビュー曲#5もそれほど好きではないし、サード・シングル#2も地味。とりあえず、セカンド・シングル#1だけ聴ければ十分かなと。  純粋なフリースタイルというよりも、もっとポップ・ハウス寄りの作品ですね。キャッチーなサビのメロディが印象的で、決して悪くないナンバーだと思います。ただ、当時はこの手の楽曲が腐るほど出回っていたこともあり、全く見向きもされなかったのは不幸でしたね。デイヴ・ショウとデイヴ・ダーリントンはどちらもエンジニア出身で、ポップのツボを心得たミックスで定評のある人たち。コンビを組むことはあまり多くありませんが、息のあった手堅い職人技を聴かせてくれます。

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Can't Live Without It (1991)

I Found It (1995)

Rocket Man (2003)

(P)1991 Atlantic Recording Corp. (USA) (P)1995 Maxi Records (USA) (P)2003 Emerge Records (USA)
1,Got My Eye On You 4:00
2,I Can't Stop 4:15
3,Cross My Heart 4:10
4,On The Beach 5:41
5,Ecstasy 4:42
6,Can't Live Without It 5:17
7,Domino 4:37
8,I Believe In You 4:16

produced by Jim Klein & Peggy Sendars
co-produced by Dave Darlington
1,Radio Edit 3:50
2,The Dark 'N' Lovely Mix 7:30
3,The Detroit Mix 5:10
4,XS Hard Drive Mix 8:35 *
5,The Lovely Dub 6:32
6,XS Hard Drive Dub 10:30 *

produced by David Anthony
* remixed by J. Philippe
1,Dezrock Radio Edit 4:25 * ビデオ
2,Vibelicious Trance Radio Mix 5:00 **
3,Dezrock Club Mix 10:34 *
4,Vibelicious Chill Out Mix 7:16 **
5,Dezrock Dub 10:10 *
6,Vibelicious Trance Mix 7:57 **

produced by Tony Moran
* remixed by Dezrock
** remixed by Jared Jones & Daniel Cabrera
 前作よりも遥かに充実した内容のセカンド・アルバム。まず、楽曲が粒ぞろいですね。シングル・カットされた#1も悪くありませんが、さらにキャッチーでパワフルなNY風フリースタイル#2やナンシー・マルティネスなどのカナディアン・フリースタイルを彷彿とさせる#5、初期カバー・ガールズを思わせる#7なんかの方がシングル向きだったかもしれません。タイトル曲#6も悪くないし。なかなか楽しめる一枚だと思いますね。

 ビルボードのクラブ・プレイ・チャートで1位に輝いた、ダフネのソロ・シングルです。当時のトッド・テリーやトニー・ハンフリーズの作品を思わせる、ファンキーでソフィスティケイトされたガラージ・ハウスの秀作。キャッチーなサビのインパクトもなかなかです。デヴィッド・アンソニーは、当時ダリル・ジェームスとのコンビで優れたガラージ・ナンバーを次々と生み出していた人。最近すっかり音沙汰がなくなったのは寂しい限りです。

 ダフネにとっては6年ぶりとなったソロ・シングル。こちらもビルボードのクラブ・プレイ・チャートで1位を獲得しました。お察しの通り、エルトン・ジョンのカバー作品ですね。原曲自体があまり好きじゃないんですけど、デズロックによる爽快感溢れるハイエナジー風ハウス・ミックスは結構いけます。逆にヴァイブリシャスのリミックスは出来の悪いオールマイティーみたいな感じで、いまひとつ冴えない出来栄え。全体的にはまずまずですかね。

 

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