オヴィディオ・G・アッソニティス Ovidio G. Assonitis
〜イタリア産パチもの映画の帝王〜

 

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 まあ、基本的にイタリア映画はパチもの映画で成り立っていたようなもんなので、帝王もクソもないだろうと言われればそれまでなのだが(笑)それにしても、このオヴィディオ・G・アッソニティスという人物、『デアボリカ』(74)に『テンタクルズ』(76)という70年代を代表する2大イタリア産パチもの映画を生み出したという事実だけで十分、帝王と呼ぶに相応しいと言えるだろう。
 1943年1月18日、エジプトはアレキサンドリアに生まれたギリシャ人。もともとは、東南アジアや香港を中心に映画配給ビジネスを手掛けていたという。どのような経緯で映画製作へ手を出すことになったのかは不明だが、少なくとも60年代末にはイタリアを基盤にプロデューサーとして活躍するようになっていたようだ。
 最初の商業的なヒット作は、ウンベルト・レンツィ監督による『怪奇!魔境の裸族』(72)。いわゆるイタリア産カンニバル映画の先駆け的な怪作だ。その後も、名子役レナート・チェステの演技が日本中の涙を誘った大ヒット・メロドラマ『メリーゴーランド』(73)や、テレンス・ヤング監督の『アマゾネス』(73)の大ヒットにあやかった『空手アマゾネス』(74)に『アマゾネス対ドラゴン/世紀の激突』(75)、『ある愛の詩』(71)にインスパイアされた悲恋ドラマ『ラストコンサート』(76)、『エマニエル夫人』(74)以降のソフト・ポルノ・ブームに便乗したアニー・ベル主演の『卒業生』(76)、『未知との遭遇』(78)の大ヒットとオカルト映画ブームにあやかったオールスター映画『ザ・ビジター』(79)など、ジャンルやクオリティ、オリジナリティに関係なく“当たる映画”を嗅ぎ分ける才能は超一流だった。
 本人も“市場で何が求められているのかということは自分が一番よく知っている”と豪語するほど自分の嗅覚には自信を持っており、それだけに“プロデューサーとして現場でもついつい口を挟んでしまうことが多かった”という。なので、監督からは嫌われるタイプの製作者だったらしく、そのことは彼自身も十分に自覚していたようだ。
 ただ、それが原因で監督がなかなか決まらないというケースも多く、結果的に自ら監督せざるを得なかったというのが、冒頭で述べた『デアボリカ』と『テンタクルズ』だったというわけだ。
 『エクソシスト』の露骨なパクリとしてワーナーから訴えられた『デアボリカ』は、アメリカにおける興行収入だけでも1500万ドルという大ヒットを記録。製作費が総額たったの35万ドルというのだから、これはまさしくボロ儲けのウハウハ状態だったと言えるだろう。
 さらに、巨大タコがミニチュアの港町を襲うポンコツ・パニック映画『テンタクルズ』も、『ジョーズ』ブームとパニック映画ブームの波にまんまと乗って、こちらもどうやら大ヒット(笑)日本では“トレンブル・サウンド”という眉唾モノの立体音響効果システムで上映され、当時は大人から子供まで大いに話題を独占したもんだった。
 当時はイタリア産パチもの映画の全盛期だったわけだが、中でも特に世間の注目を集めたこの2作品を製作・監督したというだけでも、アッソニティスの功績というものは高く評価されて然るべきかもしれない。

 で、そのアッソニティス作品の面白さとは?興行的に当たった理由とは何だったのか?という話になるわけだが、これはもう企画の勝利という他ないだろう。大ヒット映画や人気ジャンルにいち早く目をつけ、観客が求めているような見せ場を惜しげもなくバンバンと詰め込む。
 このお祭り騒ぎのような賑やかさこそが、アッソニティス作品の重要な要だったと言えよう。それはすなわち、当時のイタリア産B級映画そのものの醍醐味だったわけだが、観客に受けるようなセールスポイントを的確に捉え、低予算映画を娯楽大作のように見せてしまう腕前は商売人アッソニティスの真骨頂だった。
 また、アメリカのディストリビューターと強いコネクションを持っていたというのも、彼にとって強みだったと言えよう。一度は『デアボリカ』で自分を訴えたワーナー・ブラザーズと、最終的には映画配給の提携を結ぶにまで至ってしまうのだから、ビジネスマンとして相当なやり手だったのだろう。
 80年代以降はアメリカへ拠点を移し、ジェームズ・キャメロン監督の『殺人魚フライング・キラー』(81)やカルト映画として人気の高いハード・アクション『激突!空中アトミック戦略/ヒーロー・ボンバー』(86)、ラヴクラフト作品の映画化『デッドウォーター』(87)などの優れたB級映画を連発。一時期はキャノン・フィルムの重役も務めていた。イタリアのB級映画製作者で、これだけアメリカ映画界にガッツリと食い込むことが出来た人は他に見当たらない。
 てなわけで、プロデューサーとしての商才には長けていたアッソニティスだが、残念ながら映画監督としては及第点。決して下手っクソだとは言わないものの、あくまでもプロデューサー目線で映画を撮っているため、作品に全く血肉が通っていないのだ。
 なので、『デアボリカ』は十分すぎるくらい恐怖シーンを盛り込んでいるにも関わらずちっとも怖くないし、『テンタクルズ』もパニック・シーンやスペクタクル・シーンを存分に用意しておきながら全く緊張感がない。
 それはアッソニティス本人も十分自覚しており、“自分が監督した映画の出来については私自身が一番懐疑的だ”と述べている。なにしろ、自ら望んで監督を手掛けたわけではないのだから、それも仕方ないのかもしれない。なので、“どれがベスト・ワークだと思うかと訊かれたら、次の作品だと答えるようにしている”という。その率直さというか正直さこそが、もしかしたら彼がプロデューサーとして周囲の信頼を得ることが出来た秘訣なのかもしれない。

 

デアボリカ
Chi sei? (1974)

日本では1975年劇場公開
VHS・DVD共に日本発売済
※日本盤DVDと北米盤DVDは別仕様

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(P)2008 Code Red (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆

DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/109分/製作:イタリア・アメリカ

映像特典
35周年記念ドキュメンタリー
R・ジョンソン インタビュー
スチル・ギャラリー
オリジナル劇場予告編
J・ミルズ、S・スピーゲルの音声解説
O・G・アッソニティスの音声解説

監督:オリヴァー・ヘルマン
   ロバート・バレット
製作:オヴィディオ・G・アッソニティス
   エンツォ・ドリア
   エドワード・L・モントロ
脚本:オリヴァー・ヘルマン
   リチャード・バレット
   アントニオ・トロイソ
   ジョルジョ・マリーニ
   アルド・クルード
   アレックス・レバー
   クリストファー・クルーズ
撮影:ロベルト・デットーレ・ピアッツォーリ
音楽:フランコ・ミカリッツィ
出演:ジュリエット・ミルズ
   リチャード・ジョンソン
   ガブリエル・ラヴィア
   ニーノ・セグリーニ
   エリザベス・ターナー
   デヴィッド・コリン・ジュニア
   バルバラ・フィオリーニ
   カルラ・マンシーニ
   ヴィットリオ・ファンフォーニ

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かつてカルト教団に在籍していたジェシカ(J・ミルズ)

オープニングを飾るシュールなサバト・シーン

 アッソニティスがオリヴァー・ヘルマン名義で初監督を手掛けたオカルト・ホラー。クランクインの直前になってもなかなか監督が決まらず、仕方なく自分でメガホンを取ることになったのだという。ただ、さすがに最初から一人で演出することには不安があったらしく、撮影監督のロベルト・デットーレ・ピアッツォーリがロバート・バレット名義(日本ではリチャード・バレットとされているが、これは間違い)で共同監督を務めている。
 で、中身はというと、悪魔の子供を身ごもった主婦が宙に浮いたり緑色の汚物を吐いたりして暴れまわる姿を描いただけの作品(笑)明らかに『エクソシスト』のパクリなわけだが、本家で描かれた宗教的なバックグランドやゴシック・ムードは完全に無視されている。その代わり、『エクソシスト』で話題になったSFXや特殊メイクの見せ場だけを片っ端から拝借して、いかにもそれらしいオカルト作品に仕上げましたという印象だ。
 なので、ストーリーの辻褄どころか意味そのものが不明瞭だし、“神々のお遊び”ならぬ“悪魔のお遊び”的なクライマックスに至っては、ほとんどモンスターエンジンの笑えないコント(失礼)並みに寒々しいことこの上ない。
 筆者も子供の頃にテレビで見たことがあるが、それなりに怖くて面白かったように記憶している。しかし、大人になって見直してみると、“なんじゃこりゃ!?”というのが正直な感想。なぜにこんなツマらん映画があれだけヒットしたのか首を傾げてしまうところだが、そういう時代だったと言ってしまえばそれまでか(笑)
 ひとまず最大の問題はアッソニティス監督自身が、ホラー映画の肝心要である“恐怖”という感覚を全く理解していないところにあるだろう。なにしろ、本人が“基本的に私はホラー映画が嫌いだ”と豪語しているのだから。
 なので、どんなに残酷で不気味でシュールなシーンを描いても、作り手側がちっとも怖いと思っていないもんだから、それが観客側にも伝わってしまう。だいたいホラー映画ってものは、作り手自身が怖いと思わなければ根本的に成立しないもの。あくまでもプロデューサー目線で現場に臨んだのだろうが、実はそれこそが映画監督オヴィディオ・G・アッソニティスにとって最大の弱点なのだろうと思う。
 74年11月にイタリアで劇場公開された本作。映画館では心臓発作で倒れて救急車で病院に運ばれる人が続出したというが、実はこれ、アッソニティスが手配したサクラの役者だった。もちろん、救急車も予め用意されていた偽物。この騒動はマスコミでセンセーショナルに報道され、おかげで本作は当時のイタリア国内における興行記録を塗り替えるほどの大ヒットとなった。
 さらに、翌年の全米公開時にはチャイニーズ・シアターで堂々のプレミア上映を実施。というのも、たまたま1週間だけチャイニーズ・シアターのスケジュールが空いており、格安で滑り込ませることが出来たというのだ。とはいっても、チャイニーズ・シアターといえばアメリカ映画の殿堂。ここでプレミアを行うというのは一流の証だ。これが大きな宣伝効果となり、全米でも1500万ドルを稼ぎ出す大ヒットを記録した。
 一方、特殊メイクやSFXがあまりにも『エクソシスト』と酷似していたため、大手ワーナー・ブラザーズから著作権の侵害で訴えられてしまう。だが、アッソニティス自身はあくまでも『エクソシスト』のパクリではない、『ローズマリーの赤ちゃん』をヒントにしただけだ、そもそも『エクソシスト』なんて見たことないと主張。さらに、ワーナーの訴える“ビジュアル著作権”というのが当時の法律では一般的でなかったことから、訴訟そのものが取り下げられてしまった。
 そして、抜け目のないアッソニティスはこれをチャンスと考え、すかさずワーナーの担当者に接近。家族ぐるみで付き合うようになり、最終的にはワーナーの出資で“There was a Little Girl”(81)というホラー映画を撮ることになる。転んでもただでは起きないとはこのことか。
 ちなみに、アメリカでの劇場公開タイトルは“Beyond The Door”。本作の大ヒットに味を占めたアメリカの配給会社FVIは、後にマリオ・バーヴァ監督のホラー映画『ショック』(77)を“Beyond the Door U"として全米公開している。もちろん、本作との関連性は一切ない。

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悪魔崇拝者のディミトリ(R・ジョンソン)

ディミトリの運転する車が崖から転落する

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夫ロバート(G・ラヴィア)と幸せな生活を送るジェシカ

妊娠しているジェシカの体に異変が

 山道で車を走らせている男ディミトリ(リチャード・ジョンソン)。そこへいきなり悪魔の声が響き渡り、ディミトリの運転する車は崖から転落してしまう。その瞬間、悪魔は彼に対してある提案を持ち出した。
 舞台は変わってサンフランシスコ。音楽プロデューサー、ロバート・バレット(ガブリエル・ラヴィア)の妻ジェシカ(ジュリエット・ミルズ)は三人目の子供を身ごもっていた。だが、ある日突然体調を崩してしまい、ファミリー・ドクターであるステイトン(ニーノ・セグリーニ)の診察を受ける。
 その結果、彼女の体には異常が見られなかったものの、お腹の中の胎児が異常なスピードで成長していることが分かる。やがて、ジェシカの様子が徐々に変化していく。真夜中に起き上がったかと思うと、無意識のままベッドの上を浮遊しながら外へ出て行ってしまう。癇癪を起こして水槽を破壊してしまう。そして、子供たちに声をかけられると首を180度回転させる。
 さらに、子供たちの身の回りでもポルターガイスト現象が起り、人形たちが動き出したり、子供部屋が揺れ動くなどの怪現象が続いた。全ての原因がお腹の中の赤ん坊にあると直感したジェシカは中絶を希望するが、ロバートやステイトンはジェシカの思い過ごしだとして反対した。
 しかし、ジェシカの異常行動はさらにエスカレートし、しまいには悪魔のような形相でロバートに掴みかかってくる。彼女は恐ろしい声で悪魔自身を名乗り、その様子はまるっきり別人だった。
 そんなある日、ロバートの前にディミトリという男が現れる。彼はジェシカを助けるために来たという。そして、お腹の中の子供はなんとしてでも生まれてこなくてはならないというのだ。
 実は、ジェシカのお腹の中にいるのは悪魔の子供だった。かつてカルト教団でジェシカと一緒だったディミトリは、自分の命を救ってもらう代わりとして、赤ん坊を無事に出産させるという約束を悪魔と交わしていたのだ。そうとは知らず、ディミトリに協力を頼むロバート。
 だが、その様子に不信感を抱いた彼は、ディミトリの周辺を探る。そして、彼がもう何年も前に死んでいるということを突き止めた。果たして、ディミトリはジェシカに何をするつもりなのか・・・?

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睡眠中に空中浮遊するジェシカ

中絶を決意するジェシカだったが・・・

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不気味な光を放って動き出す人形

子供たちがポルターガイスト現象に襲われる

 アッソニティスのお気に入りの街という理由から、アウトドア・シーンの撮影は主にアメリカのサンフランシスコで行われた(室内シーンはローマのスタジオ)。だが、街頭での撮影許可を一切取っておらず、ロケは完全なゲリラ撮影だったそうだ。
 脚本はアッソニティスと『メリーゴーランド』のアントニオ・トロイソが書き上げ、当時ローマ在住だった『溶解人間』(77)の主演俳優アレックス・レバーや、フェリーニの『カサノバ』(76)の英語版監修を務めたクリストファー・クルーズらがセリフの加筆修正などを行っている。
 撮影監督のロベルト・デットーレ・ピアッツォーリは、デ・シーカの『ああ結婚』(64)や『大泥棒』(68)などのカメラ助手を務めていた人物で、『メリーゴーランド』以降のアッソニティス製作作品には欠かせないカメラマン。編集を手掛けたアンジェロ・クーリもアッソニティス組の常連スタッフだ。
 さらに、特殊効果には『2001年宇宙の旅』(68)や『ワン・フロム・ザ・ハート』(82)を手掛けたSFXマン、ウォリー・ジェントルマンが参加。美術デザインにはロッセリーニの『ドイツ零年』(48)や『イタリア旅行』(54)を手掛けたピエロ・フィリッポーネが参加している。
 また、『風来坊』シリーズで知られる名匠フランコ・ミカリッツィが音楽スコアを担当。いわゆるホラー映画のサントラとはかけ離れたイメージの、ジャジーでファンキーなスコアを聴かせてくれており、映画音楽ファンの間でも圧倒的に評価が高い。

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子供たちの目の前でジェシカの首が180度回転する

ジェシカの力になるというディミトリ

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ジェシカを看護するバーバラ(E・ターナー)

別人のように豹変してしまったジェシカ

 ヒロインのジェシカ役を演じるのは、イギリスを代表する名優ジョン・ミルズの愛娘ジュリエット・ミルズ。妹のヘイリーもハリウッドで一世を風靡した元子役スターで、彼女自身も当時は巨匠ビリー・ワイルダーの『お熱い夜をあなたに』(72)の主演に起用されて話題となったばかり。それだけに、当時はなぜこんなB級ホラーに出演を!?と正統派映画ファンをビックリさせたもんだが、彼女自身は大好きなローマに行けるという理由だけで出演を軽くオーケーしたそうだ。
 一方のディミトリ役を演じるリチャード・ジョンソンは、イギリスの渋い2枚目スター。巨匠ロバート・ワイズによるオカルト映画の古典的傑作『たたり』(63)に主演しており、ホラー映画ファンにも馴染み深い役者と言えるだろう。『ナイトチャイルド』(75)や『サンゲリア』(80)などイタリアン・ホラーへの出演も少なくない。アッソニティスとは本作をきっかけに親交を深め、彼の製作したメロドラマ『ラスト・コンサート』にも主演していた。
 ジェシカの夫ロバート役を演じているのは、ダリオ・アルジェントの『サスペリアPART2』(75)や『インフェルノ』(80)でも御馴染みの俳優ガブリエル・ラヴィア。80年代には映画監督にも進出し、現在はイタリアの演劇界を代表する有名な舞台俳優だが、当時はまだ無名の新人だった。見た目がアメリカ人っぽいこと、そして英語が堪能であることから、このロバート役に起用されたそうだ。
 そのロバートの友人である医師ステイトン役を演じているのは、『メリーゴーランド』にも出演していた俳優ニーノ・セグリーニ。その後映画プロデューサーに転向し、現在は玩具の卸売業に成功して巨万の富を築いているという。
 その他、ステイトンの妻バーバラ役にはフルチの『ザ・サイキック』(77)やアンソニー・ドーソンの『地獄の謝肉祭』(80)で知られるアメリカ人女優エリザベス・ターナー、主人公夫婦の娘ゲイル役にはイタリア人の子役バルバラ・フィオリーニ、息子ケン役にはバーヴァの『ショック』(77)にも出ていた子役デヴィッド・コリン・ジュニアが扮している。ちなみに、デヴィッド・コリン・ジュニアは当時ローマのアメリカン・スクールに通っていたアメリカ人で、アッソニティスの息子のクラスメートだったそうだ。

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現在のジュリエット・ミルズ

 

生体ジャンク!狂殺の館
There Was a Little Girl (1981)

日本では劇場未公開
VHSは日本発売済・DVDは日本未発売

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(P)2008 Dark Sky Films/MPI Media (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/ステレオ/音声:英語/字幕:英語/地域コード:1/93分/製作:イタリア

映像特典
O・G・アッソニティス インタビュー
スチル・ギャラリー
監督:オヴィディオ・G・アッソニティス
製作:オヴィディオ・G・アッソニティス
   ピーター・シェパード
脚本:オヴィディオ・G・アッソニティス
   スティーブン・ブレイクリー
   ロバート・ガンダス
   ピーター・シェパード
撮影:ロベルト・デットーレ・ピアッツォーリ
音楽:リズ・オルトラーニ
出演:トリッシュ・エヴリー
   マイケル・マクレー
   デニス・ロバートソン
   モーガン・ハート
   アリソン・ビッガース
   エディス・アイヴィー
   ジェリー・フジカワ
   リチャード・ベイカー

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オープニングを飾るヒロインの悪夢

石で顔面を潰されていく少女

 『13日の金曜日』に始まるスラッシャー映画ブームの真っ只中に発表されたのが、この『生体ジャンク!狂殺の館』。誕生日を目前に控えた美女の周囲で次々と猟奇的な殺人事件が起きるというお話で、明らかにJ・リー・トンプソン監督のスラッシャー映画『誕生日はもう来ない』(81)をパクッた作品。アッソニティス本人は“そうだったかもしれない”とイマイチ記憶が定かではないようだが、クライマックスの誕生パーティ・シーンなんぞはソックリそのまんまだ。
 主人公は聾唖学校の教師を務める女性ジュリア。彼女にはメアリーという双子の姉妹がいる。だが、メアリーは幼い頃から凶暴な性格で、実家を出てからは全く連絡を取っていなかった。そのメアリーが原因不明の病気で醜い姿となり、入院先の精神病院を脱走。やがてジュリアの周囲で次々と殺人事件が起き、彼女はそれがメアリーの犯行ではないかと疑う。
 イタリア産の猟奇ホラーといえばジャッロが定番だが、本作の演出スタイルはかなりアメリカナイズされており、元ネタの『誕生日はもう来ない』や『ハロウィン』、『プロムナイト』などの系譜に属する純粋なスラッシャー映画と言って差し支えないだろう。当時のイタリア映画と違って音声が同録であること、出演者が全てアメリカ人であること、撮影がニュージャージー州で行われていることなど、イタリア映画らしさを全く感じさせない要素が強い。
 当初決定していた監督がクランクイン10日目で降板してしまったことから、仕方なくアッソニティス自身が演出を手がけることになったという。先述したように、映画監督としては決して才能に恵まれていたと言えないアッソニティス。だが、本作は意外にもマトモな出来栄えで、彼の数少ない監督作の中でもベスト・ワークと呼ぶに相応しい作品だ。
 スラッシャー映画の醍醐味であるゴア・シーンを全編に散りばめながらも、サイコロジカルな視点からジワジワと恐怖を盛り上げていく演出はなかなかのもの。随所に挿入された辛口のブラック・ジョークもユニークで、数多のB級スラッシャー映画とは一線を画するような風格すら感じさせる。
 また、脚本もシンプルながら非常によくまとまっており、早々に犯人の正体を明かしてしまいながらも、最後まできっちりとサスペンスを持続させるストーリー展開は悪くない。ちょうど、ケン・ヴィーダーホーン監督の『他人の眼』を彷彿とさせるような小品佳作と言えるだろう。
 ちなみに、本作はワーナー・ブラザーズの出資で製作されており、アメリカ及びヨーロッパではワーナーとコロムビア映画の共同配給で劇場公開された。他にも“And When She Was Bad”や“Scared To Death”などのタイトルで上映されており、イギリスでは“Madhouse”のタイトルでビデオ発売。その後、アメリカでも“Madhouse”名義でDVD発売されている。

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聾唖学校の教師として働くジュリア(T・エヴリー)

叔父のジェームズ神父(D・ロバートソン)に呼び出されたジュリア

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双子の姉妹メアリーと会うために病室へ・・・

メアリー(A・ビッガース)は心も顔も醜く歪んでいた

 ニュージャージーの聾唖学校で教師を務める女性ジュリア(トリッシュ・エヴリー)。生徒たちからの信頼も厚い彼女だが、実は心に深い傷を負っている。彼女にはメアリーという双子の姉妹がいるのだが、メアリーは幼い頃から残忍な性格で、ジュリアに対しても陰湿なイジメを繰り返していた。その悪夢のような思い出が、未だに彼女を苦しめていたのだ。
 そんなある日、叔父のジェームズ神父(デニス・ロバートソン)から連絡が入る。幼い頃に両親と死に別れた姉妹を、実の子供のように育ててくれたのがジェームズ神父だった。叔父によると、精神病院に入院しているメアリーの容態が悪化しているという。
 10代の頃に家を飛び出して以来、久々に叔父やメアリーとの再会を果たしたジュリア。細菌に感染して醜い容姿となったメアリーは、以前にも増して凶暴な性格になっていた。ジュリアの腕を力づくで掴んだ彼女は、“あんたも同じ目に遭わせてやる”と狂ったように叫ぶ。
 その晩、メアリーは精神病院から姿を消し、犬に噛み殺された警備員の死体が発見される。その事実を知らされたジュリアは、メアリーが自分の命を狙っているのではないかという不安に駆られるのだった。
 かつてメアリーは獰猛な番犬を飼っており、ジュリアに向ってけしかけることすらあった。警備員を殺害したのは、きっとその番犬に違いない。不安に怯えるジュリアだったが、セラピストである恋人サム(マイケル・マクレー)は考えすぎだと慰める。
 だが、彼女の周囲では次々と不可解な事件が起きるようになった。まず、彼女の住むアパートの管理人ミスター・キムラ(ジェリー・フジカワ)が忽然と姿を消した。アパートの地下に潜んでいたメアリーに殺害されたのだ。
 さらに、ジュリアが可愛がっている生徒サーシャ(リチャード・ベイカー)が、公園で犬に噛み殺されてしまう。ジュリアの精神的なショックは大きかった。出張で家を留守にすることとなったサムは、ジュリアの親友へレン(モーガン・ハート)に頼んで一晩彼女の傍にいてもらうことにする。
 ところがその晩、物音に気付いて目を覚ましたヘレンは、アパートの階段で犬に襲われて首を噛み切られてしまう。翌朝へレンの姿が見えないことに気付いたジュリアだったが、自由奔放なヘレンのことだからと、さして気にも留めなかった。
 そして、いよいよジュリアとメアリーの誕生日がやって来た。帰路につくジュリアの前に、叔父のジェームズ神父が現れた。誕生日のビッグ・サプライズを用意しているという。目隠しをされたまま叔父の車に乗り込むジュリア。案内された場所で目隠しを取った彼女は、目の前に広がった恐るべき光景に戦慄する。果たして、殺人鬼の正体はジェームズ神父なのか、それとも・・・!?

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恋人のセラピスト、サム(M・マクレー)

メアリーが精神病院を脱走したと知らされる

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メアリーに殺されるミスター・キムラ(J・フジカワ)

聾唖学校の生徒サーシャまでもが死体で発見される

 ゴア・シーンの特殊メイクは決して派手ではないものの、その見せ方はスタイリッシュで効果的。中でも、メアリーがミスター・キムラに襲いかかるシーンや、地下室の廊下でメアリーがカメラに向って迫ってくるシーンはなかなか怖い。特殊メイクやSFXが派手な割りにちっとも怖くなかった『デアボリカ』とは好対照だ。
 アッソニティスと共に製作・脚本を手掛けたピーター・シェパードはローマ在住のイギリス人。パゾリーニの『アラビアン・ナイト』(74)やベルトルッチの『1900年』(76)の助監督を務めていた人物で、アッソニティスの『デアボリカ』や『テンタクルズ』にも第一助監督として参加していた。本作をきっかけにプロデューサーへと転向し、アッソニティスとのコンビで『激突!空中アトミック戦略/ヒーロー・ボンバー』(86)や『ランバダ/青春に燃えて』(90)などを手掛けている。
 なお、脚本に参加しているロバート・ガンダスは、ウーゴ・リベラトーレ監督のカルト・ホラー“Nero Veneziano”(78)やランベルト・バーヴァ監督の『生首の情事』(80)を手掛けた脚本家。
 さらに、『世界残酷物語』(62)や『食人族』(80)で知られるリズ・オルトラーニが音楽を手掛けている。メロディアスでロマンティックなスコアで名高いオルトラーニだが、本作ではアメリカのスラッシャー映画を意識したせいか、これといって印象に残らない仕事をしているのが残念だ。
 その他、撮影監督のロベルト・デットーレ・ピアッツォーリ、編集のアンジェロ・クーリなど、アッソニティス組の常連スタッフが揃っている。

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ジュリアはメアリーの犯行だと主張するのだが・・・

親友へレン(M・ハート)も無残な姿に

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目隠しをされたまま誕生パーティへと案内されたジュリア

そこで彼女が見た恐るべき光景とは・・・

 本作はアッソニティス作品の中でも特に極端な低予算映画だったらしく、出演俳優はいずれも全くの無名俳優ばかり。ジュリア役のトリッシュ・エヴリーはこれが唯一の映画出演作だったようだが、なかなか演技力のあるキレイな女優さんだ。
 その親友へレン役を演じているモーガン・ハートも、なかなかキュートで魅力的な女優。彼女は往年の有名なストリッパー、マーガレット・ハートの娘で、その後は人気ファミリー・ドラマ『ハッピー・デイズ』(74-84)で知られるテレビ俳優ドン・モストと結婚したらしい。
 一方、ジェームズ神父役でノリノリの怪演を披露しているデニス・ロバートソンも印象的。見た目はあまりパッとしない普通のオジサンだが、後半のクレイジーな悪ノリ演技はとても面白かった。テレビ・ドラマのチョイ役一筋という地味な俳優人生だったようだが、作品にさえ恵まれていれば、意外にカルト俳優として名を残すことが出来たかもしれない。
 ちなみに、アパートのオーナー、ビューリガード夫人役で登場するエディス・アイヴィーは、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(08)でピアノ教師メイプル夫人役を演じていた女優さんだ。

 

デッドウォーター
The Curse (1987)

日本では劇場未公開
VHSは日本発売済・DVDは日本未発売

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(P)2007 MGM/20th Century Fox (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/ステレオ/音声:英語・スペイン語/字幕:英語・スペイン語・フランス語/地域コード:1/90分/製作:アメリカ
※『ブラッド・バイター』とカップリング

映像特典
オリジナル劇場予告編
監督:デヴィッド・キース
製作:オヴィディオ・G・アッソニティス
原作:H・P・ラヴクラフト
脚本:デヴィッド・チャスキン
撮影:ロベルト・デットーレ・ピアッツォーリ
特殊効果:ケヴィン・アーマン
オプチカル効果:ルチオ・フルチ
音楽:フランコ・ミカリッツィ
出演:ウィル・ウィートン
   クロード・エイキンス
   マルコム・ダネア
   クーパー・ハッカビー
   ジョン・シュナイダー
   エイミー・ウィートン
   キャスリン・ジョーダン・グレゴリー
   スティーヴ・カーライル

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農村に暮らす多感な少年ザック(W・ウィートン)

横暴な義父ネイサン(C・エイキンス)と義兄サイラス(M・ダネア)

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再婚した母(K・J・グレゴリー)を気遣って逆境に耐えるザック

迷信深いネイサンは妻との夜の営みも拒絶している

 アメリカの片田舎に落ちた隕石から流れ出す未知の物質が周囲の自然環境を破壊していく様子と、それを神の啓示だと信じる保守的な農家の人々が徐々に狂っていく過程を、思春期にさしかかった多感な少年の目を通して描いていく異色ホラー。後半に登場するチープな特殊メイクが興醒めではあるものの、保守的なレーガン政権下における農村地帯の閉塞感をなかなか上手く描き出しており、単なるB級ホラーと片付けることのできないユニークな作品に仕上がっている。
 原作は恐怖小説の大家H・P・ラヴクラフトの名作『異次元の色彩』。過去にもAIPの製作により、『襲い狂う呪い』(65)として映画化されている。ラヴクラフト映画としては『襲い狂う呪い』の方が遥かに優れた傑作だったが、よりスティーブン・キング的なアプローチを試みた本作も捨てがたい出来栄えだ。特に、保守的で信心深い典型的なアメリカの農夫ネイサンが暴走していく様子は、“アメリカ的”なるものの偽善を痛烈に暴き出していて興味深い。
 聖書に書かれた教えを厳格に守って生きているネイサンは、無教養で頑固者の暴君だ。子作りのため以外の快楽は神への冒涜だとして、妻との夜の営みも拒絶。それが原因で妻が小作人と浮気をしても、プライドが高くて体面を重んじる彼は見て見ぬふりを決め込んでいる。
 やがて、隕石の影響で農作物が異常な速さで成長。神の祝福だとして豊作を喜ぶものの、収穫されたリンゴやキャベツの中身は腐敗して蛆が湧いていた。しかも、ニワトリは狂ったように人間を襲い、乳牛たちも次々と生きたまま腐って死んでいく。これは神の与えた天罰だと恐れおののくネイサンは、“罪深き人間”である妻とその連れ子たちを虐待する。
 ところが、汚染された水や農作物を口にしていた妻が真っ先に狂い始め、世間体を気にするネイサンは彼女を地下室へと監禁。しかし、彼自身も次第に凶暴化して行き、しまいには本物の“モンスター”と化してしまう。
 監督は『愛と青春の旅立ち』(82)や『炎の少女チャーリー』(84)で知られる俳優デヴィッド・キース。これが初監督作品だったわけだが、平和な農村地帯の裏に潜む偽善、陰惨、狂気を浮き彫りにしていく前半のアメリカン・ゴシックな描写は非常に上手い。
 これが後半になると、一転して凄惨なゴア描写連発のスプラッター・カーニバルと相成るわけだが、この辺りの過剰なサービス精神は製作者オヴィディオ・G・アッソニティスの個性なのかもしれない。いずれにせよ、ホラー映画ファンなら一度は見ておきたい秀作だ。
 ちなみに、必ずしも興行的に大成功を収めたとは言いがたい本作だが、一部のホラー・ファンの間ではカルト映画として熱狂的な支持を集めた。そのため、その後シリーズとして『ブラッド・バイター』(89)、『サンタリアの復活/血塗られた暗黒大陸』(91)が作られているものの、いずれも本作との直接的な関連性はない。

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巨大な隕石が空をかすめて行く

農場の近くに墜落した隕石

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隕石から得体の知れない物質が流れ出る

その様子を目撃したザックは漠然とした不安を抱く

 舞台は開拓時代の伝統を今に残すテネシー州の農村地帯。思春期を迎えたザック(ウィル・ウィートン)は、聡明で思慮深い繊細な少年だ。彼の母親フランシス(キャスリン・ジョーダン・グレゴリー)は農家を営む中年男ネイサン(クロード・エイキンス)と再婚したばかり。保守的で封建的な頑固者ネイサンは、あくまでも世間体と慈悲の心で若くもないフランシスを嫁に迎えたと考えている。まるで使用人のような扱いを受けるフランシスは、秘かに小作人マイクと不倫の関係にあった。
 また、ネイサンは亡くなった先妻との間に出来た知恵遅れの息子サイラス(マルコム・ダネア)を溺愛しており、フランシスの連れ子であるザックとアリス(エイミー・ウィートン)には辛く当たることが多い。そのことで調子に乗ったサイラスはザックやアリスを小バカにしてイジメているが、彼らは母親の肩身が狭くなることを気にして黙って耐えていた。
 一方、政府がこの近辺にダムの建設を検討していることを知った不動産屋デヴィッドソン(スティーヴ・カーライル)は、将来的な土地開発を見込んで近隣の農地を買収し始めていた。この辺りはここ数年不作が続いており、農家の足元を見たデヴィッドソンは次々と土地を安値で買い叩いている。彼はネイサンの農場にも目をつけていたが、頑なに断られ続けていた。
 そんなある晩、農場の近くに巨大な隕石が墜落した。それ以来、農作物が異常な速さで成長していく。近年稀に見るような豊作に、これは神の祝福だと手放しで喜ぶネイサン。だが、ザックは隕石から流れ出る異様な物質が土地や水源に滲みこんでいくのを目撃していた。
 こんなに早く農作物が成長するのは普通ではない、きっと隕石から流れ出た毒物の影響だと警告するザックだったが、逆に“神を信じない不届き者”としてネイサンの怒りを買ってしまう。唯一の味方は妹のアリス。2人はネイサンからの体罰に耐えながらも一切の水や食事を拒否し、密かに倉庫から持ち出した缶詰やお菓子で飢えを忍んでいた。
 そして、いよいよ農作物が収穫の時期を迎えた。ところが、一見すると見事に大きく成長したリンゴやキャベツなどを割ってみると、中から蛆や腐敗物がドロドロと涌き出る。さらに、凶暴化したニワトリがアリスを襲い、衰弱した乳牛たちは生きたまま体内から腐っていった。
 時を同じくして、フランシスの様子がおかしくなっていく。その言動は常軌を逸し、性格も次第に凶暴化していった。妻の頭がおかしくなったと思ったネイサンは、世間体を考えて彼女を地下室に監禁する。全ての原因は隕石にあると考えたザックは、近隣に住む若い医師フォーブス(クーパー・ハッカビー)に救いを求めた。しかし、他人を信用しないネイサンはフォーブスを手荒く追い返す。
 一方、ザックの訴えに引っかかるものを感じたフォーブスは、井戸の水を採取して町の科学研究所に調査を依頼する。また、ダム建設予定地付近の水質調査に訪れた調査員ウィリス(ジョン・シュナイダー)も、農村地帯の異常現象に気付いていた。
 やがて、科学研究所の調査結果により、地球上には存在しない未知の物質が水の中に含まれていることが判明する。急いで村へと戻ろうとするフォーブス。だが、その頃農村地帯では汚染が急速に進み、ザックとアリスの身に想像を絶するような危険が迫っていた・・・。

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神の祝福だとして豊作を喜ぶネイサンだったが・・・

頑なに水や食物を拒否するザックとアリス(A・ウィートン)

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母フランシスの様子が徐々におかしくなっていく

井戸野水を採取する医師フォーブス(C・ハッカビー)

 ラヴクラフトの原作を大胆に脚色したのは、『エルム街の悪夢2/フレディの復讐』(85)やカルト・ホラーの傑作『ハードカバー/黒衣の使者』(88)を手掛けた脚本家デヴィッド・チャスキン。撮影にはアッソニティス作品の常連カメラマンであるロベルト・デットーレ・ピアッツォーリが、ロバート・D・フォージェス名義で参加している。
 また、本編のクレジットには共同製作者としてルチオ・フルチがルイス・フルチ名義で名を連ねているが、実際には第2班チームでオプチカル効果の一部を監修しただけだったという。
 その他、音楽スコアにはフランコ・ミカリッツィ、編集には『バンパイア・イン・ベニス』(88)や『地獄のファイター2』(88)のクラウディオ・クトリ、美術デザインには『ショック』(77)や『ドッグ・イン・パラダイス』(90)のフランコ・ヴァノリオなど、イタリアの職人スタッフが勢ぞろい。
 ロケ撮影はテネシー州やジョージア州で行われたようだが、屋内シーンは基本的にローマで撮影されており、アメリカ映画といいつつも実際はイタリア映画みたいなものだったようだ。

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牛の乳もグジョグジョに腐っていて・・・

衰弱した乳牛たちの体からうじ虫があふれ出す

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モンスターと化してしまった母フランシス

ザックとアリスの身にも危険が迫る・・・

 主人公ザック役を演じているのは、『スタンド・バイ・ミー』(86)で一世を風靡した少年スター、ウィル・ウィートン。スティーブン・キング的な世界を意識した上でのキャスティングだったろうと思われるが、農村に暮らす素朴な少年という役柄にはピッタリだった。ちなみに、妹アリス役を演じているエイミー・ウィートンは、彼の実の妹である。
 偏屈で頑固な農夫ネイサン役を演じているクロード・エイキンスは、『リオ・ブラボー』(59)や『西部開拓史』(62)などの西部劇で悪役として鳴らした名脇役。ゴリラみたいな顔が印象的な俳優で、アッソニティス作品では過去に『テンタクルズ』でも保安官役として顔を出していた。
 また、70年代の人気ドラマ『爆走!デューク』のデューク役や、最近だと『ヤング・スーパーマン』のクラーク・ケントの父親ジョナサン役などで御馴染みの人気テレビ俳優ジョン・シュナイダーが水質調査員ウィリス役で登場。
 その他、『ファンハウス/惨劇の館』(81)に出ていたクーパー・ハッカビー、『クリスティーン』(82)や『ポップコーン』(91)のマルコム・ダネア、バート・レイノルズの大親友としても知られるスティーヴ・カーライルなどが脇を固めている。

 

ブラッド・バイター
Curse U: The Bite (1989)

日本では1992年劇場公開
VHSは日本発売済・DVDは日本未発売

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(P)2007 MGM/20th Century Fox (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/スタンダードサイズ/ステレオ/音声:英語/字幕:英語・スペイン語
・フランス語/地域コード:1/98分/製作:アメリカ・日本・イタリア

映像特典
なし
監督:フレッド・グッドウィン
製作:オヴィディオ・G・アッソニティス
   ケンイチ・トミナガ
   フェデリコ・プロスペリ
脚本:フェデリコ・プロスペリ
   スーザン・ジローフ
撮影:ロベルト・デットーレ・ピアッツォーリ
特殊メイク:スクリーミング・マッド・ジョージ
音楽:カルロ・マリア・コルディオ
出演:ジル・ショエレン
   J・エディー・ペック
   ジェイミー・ファー
   ボー・スヴェンソン
   サヴィーナ・ゲルサック
   マリアンヌ・ミューラーライル
   アル・ファン
   シドニー・ラシック
   サンドラ・セクストン
   シリ・アップルビー

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主人公リサ(J・ショエレン)とクラーク(J・E・ペック)

砂漠を横切ろうとした彼らの目前に大量のヘビが

トランクに隠れていたヘビがクラークの腕を噛む

 で、こちらがその続編。放射能汚染された毒蛇に噛まれた若者が、次第にミュータントと化していく姿を描いたクリーチャー・ホラーだ。ストーリーは至ってシンプルかつ単純、全く以ってナンセンスなわけだが(笑)、アッソニティス作品お得意のエグい残酷描写はサービス満点。B級映画ファンにはたまらないトラッシュ・ムービーに仕上がっている。
 主人公は若いカップル、リサとクラーク。車で田舎道を旅していた彼らだったが、クラークがトランクに紛れ込んでいた毒ヘビに腕を噛まれてしまう。この毒ヘビというのが実は放射能に汚染されており、噛まれたクラークは次第に凶暴化。やがて彼の腕は毒ヘビへと変化していき、勝手に人々を襲っていく。クラークの暴走を止めようとするリサだったが、遂に彼はヘビ人間へと変態してしまい・・・。
 クローネンバーグの『ザ・フライ』(86)をパクッたと思われるこの作品、最大の難点は前半のダラダラとしたストーリー展開だ。尺を稼ぐためとはいえ、無駄に退屈なエピソードの連続には少々辟易させられる。特に、クラークに血清を投与する旅回りのセールスマン、ハリーとその仲間たちのヘンテコなやりとりは、コミック・リリーフを意図したものと思われるが全くの的外れだ。
 だが、クラークの腕がヘビ化してしまう辺りから徐々にエンジンがかかり始め、物語はそれなりに面白くなっていく。特に、スクリーミング・マッド・ジョージによるクレイジーな特殊メイクが炸裂するラスト20分は必見。過去に発売されていたVHSでは暗くてイマイチ分かりづらかった部分も、上記の米国盤DVDではかなり鮮明になっている。クラークの眼球や舌が次々とこぼれ落ち、しまいには裂けた口から大蛇が飛び出すというシーンはなかなか痛快だった。
 監督を手掛けたのは、フレッド・グッドウィンことフェデリコ・プロスペリ。imdbやAllcinemaではフレデリコ・プロスペリと表記されているが、これはどうやら間違いのよう。プロスペリは動物パニック映画『猛獣大脱走』(84)のプロデューサーを務めた人物だが、詳しいプロフィールは不明。監督としての技量は可もなく不可もなくといったところで、本作はスクリーミング・マッド・ジョージの特殊メイクにかなり助けられているという印象だ。

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旅回りのセールスマン、ハリー(J・ファー)

クラークは体調不良を訴えるようになる

クラークを怪しむ保安官(B・スヴェンソン)

 アルバカーキを目指して車の旅を続けるカップル、リサ(ジル・ショエレン)とクラーク(J・エディー・ペック)。2人はガソリンスタンドの店員の忠告を無視して、イエロー・サンズという砂漠を横切ろうとする。そこは軍の核実験が行われた場所で、近隣の人々は放射能汚染を恐れて近寄らなかった。
 近道をしようとイエロー・サンズへ向って車を走らせる2人。ところが、彼らの目の前に大量のヘビが横たわっていた。驚いて車を止めるクラーク。その隙に、一匹のヘビがトランクに紛れ込んだことを2人は気付かなかった。
 イエロー・サンズを抜けて一見のガソリンスタンドに立ち寄ったリサとクラーク。黒人の店員(アル・ファン)は警戒心が強く、2人は早々に立ち去る。実は、このガソリンスタンドで飼われている犬はミュータント化しており、エサを与えようとした店員はそのまま食われてしまった。
 やがて、小さな町のドライブインへ到着した2人。トランクから荷物を出そうとしたクラークは、飛び出してきたヘビに腕を噛まれてしまう。だが、たまたまモーテルに泊まっていた旅回りのセールスマン、ハリー(ジェイミー・ファー)が血清を持っていた。この近辺ではヘビが多いため、用心のためにと常日頃から携帯しているのだ。傷口から見てヤシマヘビの一種と判断した彼は、心配することはないと言って2人を安心させる。
 その翌朝、リサとクラークがホテルをチェックアウトした後、ルームサービスのメイドがヘビの死体を発見した。それは、この近辺には生息しないはずの熱帯型大蛇だった。ハリーはこれが突然変異ではないかと推測。だとすれば、クラークに投与した血清は効果がない。それどころか、下手をすると逆効果にもなりかねない。そこでハリーは無線を使って仲間の長距離トラック・ドライバーたちに呼びかけ、リサとクラークの行方を捜すことにする。
 その頃、クラークは体の調子がおかしいことに気付いていた。しかも、腕の傷が化膿して酷くなっている。精神的も不安定となり、ちょっとしたことで怒りを爆発させる。そのため、パトカーに車を止められた時も保安官(ボー・スヴェンソン)に食ってかかり、その場で逮捕されてしまった。ところが、保安官が目を放した隙にクラークの腕が勝手に動き出し、保安官助手の口から内臓を引きずり出して殺してしまう。
 動転したクラークはその場を逃げ出した。意味不明の言葉を叫び続けるクラークを心配したリサは、彼を近くの病院へ連れて行く。治療を担当した女医マーダー(サンドラ・セクストン)は、レントゲン写真を見て愕然とした。クラークの腕部分の骨格がヘビそっくりだったからだ。恐る恐るクラークの腕に注射しようとするマーダー。その瞬間、ヘビの目がパッと開き、彼女の顎から下を食いちぎって殺してしまった。
 病院を逃げ出したクラークとリサ。ガソリンスタンドのトイレに駆け込んだクラークは、ヘビと化した腕を自ら切り落とす。そこへ保安官率いるパトカー隊が彼を捕まえようとやって来るが、近隣に住む一家によって助けられる。
 ようやく、束の間の休息を得ることが出来た2人。だが、切り落とされたクラークの腕から再びヘビが飛び出し、助けてくれた一家を惨殺してしまう。なんとかクラークを助けようとするリサだったが、彼はもの凄い勢いで凶暴化していく・・・。

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クラークの手当てをする女医マーダー(S・セクストン)

クラークの腕はヘビのように変化していた

そして、ヘビと化したクラークの腕が目覚める

 プロスペリと共に脚本を手掛けたスーザン・ジローフの本業は女優だったらしく、同時期にアッソニティスがプロデュースした『ザ・トレイン』(89)に女教師役でチラリと顔を出している。脚本家としての仕事はこれ一本だけだったようなので、もしかしたら英語セリフの監修的な役回りだったのかもしれない。
 撮影監督はアッソニティス組のロベルト・デットーレ・ピアッツォーリ。第2班撮影監督としてフルムーン・エンターテインメント作品を数多く手掛けたアドルフォ・バルトーリが参加しているのも注目だ。
 また、『キリング・バード』(87)や『怒霊界エニグマ』(87)、『エクソシストの謎』(88)などイタリア産トラッシュ映画で御馴染みの作曲家カルロ・マリア・コルディオが音楽スコアを手掛けている。
 そして、本作最大の目玉である特殊メイクを担当したのは、『ソサエティー』(89)や『死霊のしたたり2』(89)などで脚光を浴びた日本人SFXマン、スクリーミング・マッド・ジョージ。低予算のためか他の作品に比べると若干地味な印象を受けるが、クライマックスの凄惨な人体崩壊スプラッターは見物。やっぱり手作りの特殊メイクというのは、CGなんかに比べても遥かにイマジネイティブで楽しい。
 なお、本作は日本の東宝東和が製作に関わっており、アメリカではビデオ・スルー扱いだったにも関わらず、ここ日本では単館ながら劇場公開されている。

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切り落とされたクラークの腕からヘビが飛び出す

徐々にミュータント化していくクラーク

リサが目の当たりにしたものとは・・・!?

 リサ役を演じているジル・ショエレンはサイコ・ホラー『W/ダブル』(87)のヒロイン役で注目された美少女スター。ロバート・イングランド主演のスプラッター版『オペラ座の怪人』(89)でも若く美しいプリマドンナ役を演じていた。その他、『処刑教室−最終章−』(89)や『ポップコーン』(91)など出演作はB級映画ばかりだったが、未だに一部で根強い人気を誇っているカルト女優だ。ちなみに彼女、ブラッド・ピットとキアヌー・リーヴスの元カノだったそうな。90年代後半にストーカー事件の被害に遭い、そのまま芸能界を引退。現在は2人の子供を持つお母さんだという。
 一方のクラーク役を演じているJ・エディー・ペックは、当時テレビの2大人気ドラマ『ダラス』と『ダイナスティ』にレギュラー出演して注目されていた俳優。典型的な王子様系ハンサムで、これといって特徴のいない役者だが、現在もテレビを中心に活躍を続けているようだ。
 旅回りのセールスマン、ハリー役を演じているのは、70年代の人気テレビ・ドラマ『マッシュ』でブレイクしたコメディアン、ジェイミー・ファー。日本では『キャノンボール』シリーズに出ていた鼻のデカいおじさんという程度の印象しかないものの、アメリカでは非常に知名度の高い人気スターだ。
 そして、保安官役で登場するのは、『華麗なるヒコーキ野郎』(75)や『ウォーキング・トール』シリーズで有名なスウェーデン出身のタフガイ俳優ボー・スヴェンソン。イタリア映画への出演も多く、タランティーノ監督でリメイクされる『地獄のバスターズ』(76)でも御馴染みだ。アッソニティスのプロデュース作品にもたびたび顔を出しているが、本作はゲスト出演的な扱いで大した見せ場はない。
 その他、当時イタリア産B級映画に多数出演していた旧ユーゴスラヴィア出身の女優サヴィーナ・ゲルサックが主人公たちを助ける一家の母親役を、アメリカでは昼メロ女優として知られるマリアンヌ・ミューラーライルが女トラック運転手ビッグ・フロー役を、『キャリー』(76)や『恐怖のいけにえ』(80)で御馴染みの怪優シドニー・ラシックがモーテルのマネージャー役を演じている。
 また、人気ドラマ『ロズウェル/星の恋人たち』でブレイクした女優シリ・アップルビーが子役として顔を出しているのも見逃せない。

 

ザ・トレイン
Beyond The Door V (1989)

日本では1990年劇場公開
VHSは日本発売済・DVDは日本未発売

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(P)2008 Shriek Show (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/ステレオ/音声:英語/字幕:なし/地域コード:1/94分/製作:イタリア・ユーゴスラヴィア・アメリカ

映像特典
O・G・アッソニティス インタビュー
A・バルトーリ インタビュー
オリジナル劇場予告編
フォト・ギャラリー
監督:ジェフ・クイニー
製作総指揮:オヴィディオ・G・アッソニティス
脚本:シーラ・ゴールドバーグ
撮影:アドルフォ・バルトーリ
特殊効果:アンジェロ・マッテイ
音楽:カルロ・マリア・コルディオ
出演:メアリー・コーナート
   ボー・スヴェンソン
   ヴィクトリア・ジニー
   サヴィーナ・ゲルサック
   サラ・コンウェイ・チミネラ
   ウィリアム・ガイガー
   アレックス・ヴィターレ
   ロン・ウィリアムス
   ルネ・ランコート
   ジェレミー・サンチェス
   イゴール・ペルヴィッチ

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母(V・ジニー)に見送られて旅立つビヴァリー(M・コーナート)

セルビアに到着したアメリカ人の学生たち

 世間的には大変評判が悪いようだが(笑)、個人的には大・大・大好きな作品である。ユーゴスラヴィアを旅するアメリカ人の学生たちが、悪魔に操られた暴走機関車の中で次々と殺されていくというけったいなお話。アホ臭いと言ってしまえばそれまでだが、アッソニティス作品らしいスプラッター描写の過剰サービスに意味の分からん不条理な展開、そして東欧独特のダークで陰鬱なムードなど、筆者の琴線に触れまくる要素がてんこ盛りの素晴らしいトラッシュ・エンターテインメントだ。
 主人公はセルビア系アメリカ人の女子大生ビヴァリー。彼女は大学の修学旅行でユーゴスラヴィアの小さな村へと行く。ところが、そこは悪魔を崇拝するカルト教団の巣窟だった。辛くも逃げ出した学生たちだったが、飛び乗った蒸気機関車が目に見えない力によって暴走。学生たちは一人また一人と殺されてゆく。悪魔が狙うのはビヴァリーただ一人。果たして、彼女の運命やいかに・・・!?
 というのが大まかな粗筋だ。冒頭からいきなり、空港で娘を見送ってタクシーに乗ったビヴァリーの母親が、前を走るトラックの荷台から外れた鉄筋に頭を吹っ飛ばされるという痛快なスプラッター・パンチ。列車の機関士が線路に挟まって首をもがれたり、女子大生の顔面が剥がれて蛆虫がウジャウジャ出てきたり、列車の連結部分に挟まれた若者の下半身がチェーンでバッサリ切り落とされたりと、愉快な残酷描写がこれでもかと盛りだくさん。
 さらに、中世の暗黒時代から抜け出てきたかのようなセルビアの不気味な村や荘厳なサバトの儀式などのエキゾチックなゴシック・ムードもバッチリだ。旧ユーゴスラヴィアでの撮影とあって、人件費もかなり安くついたのだろう。この種の低予算映画としてはかなり上等のスケール感が味わえる。
 また、暴走機関車が線路を外れて森の中や沼地などを縦横無尽に駆け回るミニチュア特撮も楽しいことこの上ない。確かに一目でミニチュアと分かってしまうくらいチープではあるものの、そこはやはり“心の目”で見て楽しみたいもの。
 もともと、本作はアッソニティスの息子の友達にせがまれて立ち上げられた企画だったらしい。アメリカン・スクールに通っていた息子の友達グループには俳優志望の者も多く、彼らから“ホラー映画に出てみたい”と言われたアッソニティスが一肌脱いだというわけだ。そう、本作に出てくるアメリカ人の大学生たちは、みんなアッソニティスの息子のお友達なのである。なんつー親バカというか、気前の良いオッサン(笑)そういういい加減さというか、公私混同したユルさというのが、アッソニティス作品におけるサービス精神の源なのかもしれない・・・ってなわきゃないか(笑)

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学生たちを案内するアンドロモレック教授(B・スヴェンソン)

学生たちが案内された村はカルト教団の巣窟だった

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ビヴァリーが処女であることを確認する女祈祷師

学生たちの宿泊する小屋が炎に包まれる

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村を逃げ出して機関車に飛び乗る学生たち

先頭車両には謎の男マリウス(I・ペルヴィッチ)が乗っていた

 父親に先立たれて以来、周囲に心を閉してしまったロサンゼルス在住の女子大生ビヴァリー(メアリー・コーナート)。彼女は大学の修学旅行で、両親の故郷であるユーゴスラヴィアのセルビアを訪れることとなった。だが、彼女がセルビアへと旅立った直後に母親(ヴィクトリア・ジニー)が事故死。その行く手に暗雲が立ち込める。
 セルビアで学生たちを出迎えたのはアンドロモレック教授(ボー・スヴェンソン)。彼らは東欧の伝統文化を学ぶため、片田舎にある小さな村を訪れることとなる。ところが、どうもその村は様子がおかしい。ビヴァリーだけは教授と共に祈祷師の家に通され、それ以外の学生たちは窮屈な小屋へと押し込められた。
 実は、この村は悪魔を崇拝するカルト教団の巣窟だった。彼らは悪魔ルシファーをこの世に甦らせるため、村の出身者の血を引くビヴァリーを“悪魔の花嫁”として捧げるつもりだったのだ。祈祷師の老婆は寝ているビヴァリーの下半身に手を入れ、彼女が処女であることを確認した。
 そして、村人たちは学生の寝ている小屋の入り口を塞ぐ。すると、小屋の中が自然に燃え上がった。何とか脱出することに成功した学生たちは、事態に気付いて外へ飛び出したビヴァリーと合流。森を抜けると鉄道の線路があり、彼らは通りかかった蒸気機関車に次々と飛び乗った。しかし、メラニー(ルネ・ランコート)とラリー(ロン・ウィリアムス)の2人だけが取り残されてしまう。
 客室に乗り込んだ学生たちは緊急事態を知らせようとするが、乗客たちには英語が通じなかった。辛うじて片言の英語を喋れる車掌が彼らを先頭車両に案内し、次の駅で警察に連絡を取ってくれるという。
 ところが、機関車の行く手を巨大な炎がさえぎった。炎の中から現れたのはアンドロモレック教授。何事かと外へ出た機関士は線路の下敷きになって首がもげ、もう一人の機関士は燃えさかるボイラーの中に吸い込まれてしまう。やがて機関車は勝手に動き出し、異常に気付いた車掌は車両と車両の間に挟まれて砕け散った。
 学生たちが気付くと、後方の客席車両が切り離されている。先頭のボイラー室を確認に行ったビヴァリーは、機関車が無人のまま走っていることに驚く。しかも、彼女の目の前に悪魔の僕となった母親が現れる。そもままビヴァリーはショックで気を失った。
 翌朝、ボイラー室からビヴァリーを救い出した学生たち。無人のまま暴走する機関車を止めなければならない。機関車には彼らの他に2人の同乗者がいた。一人はサヴァ(サヴィーナ・ゲルサック)という女泥棒。そして、もう一人はマントを被った謎の男マリウス(イゴール・ペルヴィッチ)である。ビヴァリーは無言のままフルートを吹くマリウスのことが気になる。
 その頃、地元の鉄道会社は機関車が暴走していることに気付き、職員や物資を総動員して機関車を止めようとする。だが、驚くべきことに機関車は線路を外れて荒野や森、沼地などを自由自在に動き回り、鉄道会社の先を読むかのように進路を変えていく。ボートに乗って沼地を進んでいたメラニーとラリーも、突っ込んできた機関車に激突して木っ端微塵となる。
 さらに、クリスティー(サラ・コンウェイ・チミネラ)は口からうじ虫を出しながら顔面崩壊し、ケヴィン(ウィリアム・ゲイがー)は連結部分に挟まれて胴体を切断、エンジェル(アレックス・ヴィターレ)は警報機に突っ込んで串刺し状態となって息絶える。
 なんとか機関車を止めようとしたサヴァが爆薬を仕掛けるが、逃げ遅れて巻き添えになってしまった。そして、ようやく機関車は停車。すると、周囲の森の奥からカルト集団たちが続々と現れる。逃げ場を失ったビヴァリー。そんな彼女の目の前に、マントを脱ぎ捨てたマリウスが立ちはだかる。果たして彼の正体とは?天使なのか、それとも悪魔なのか・・・?

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炎の中から現れるアンドロモレック教授

ボイラーの中に吸い込まれていく機関士

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女泥棒サヴァ(S・ゲルサック)

クリスティ(S・C・チミネラ)の顔面が剥がれていく

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線路を外れて暴走する機関車

機関車は森の中や荒野、沼地などを駆け回る

 監督のジェフ・クイニーはアメリカのインディペンデント系ホラー監督で、超低予算のスラッシャー映画『ウィンター・スクール/新・金曜日の訪問者』(88)という作品を手掛けたことがある人。他にも数本の監督作があるようだが、詳しいプロフィールについては全く分からない。
 脚本を担当したシーラ・ゴールドバーグは、もともとイタリア映画界で英語バージョンのダイアログ・コーチを務めていた女性。その実績を買われて英語版シナリオのセリフ・ライターとなり、さらに脚本家へと転身した。本作以外にも、ルッジェロ・デオダート監督のスラッシャー映画『ブラッディ・キャンプ』(87)の脚本を手掛けている。ちなみに、アッソニティスの話によると、本作のストーリーはアンドレイ・コンチャロフスキーの『暴走機関車』(85)とジョルジュ・パン・コスマトスの『カサンドラ・クロス』をヒントにしたという。まあ、いろいろと異論もありそうだが、いかんせん本人がそう言っているもんだから・・・(笑)
 撮影監督には『ブラッド・バイター』で第2班カメラマンを務めていたアドルフォ・バルトーリ。彼はもともとパスカリーノ・デ・サンティスやトニーノ・デリ・コリ、ジュゼッペ・ロトゥンノといったイタリアを代表する撮影監督たちの助手を務めていた人物だ。その後、イタリア映画界と強い結びつきのあったリチャード・バンドが主宰するアメリカのフルムーン・ピクチャーズに招かれ、『ペンデュラム/悪魔のふりこ』(91)や『地底人アンダーテイカー』(92)などに参加。ロベルト・ベニーニ監督の『ピノッキオ』(02)では第2班撮影監督を務めている。
 特殊効果チーフを担当したアンジェロ・マッテイは、『首だけの情事』(80)や『デモンズ』(85)、『グレイブヤード』(87)のランベルト・バーヴァ作品でおなじみのSFXマン。その他、音楽のカルロ・マリア・コルディオ、編集のクラウディオ・クトリなど、アッソニティス組のスタッフが揃っている。

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連結部分に胴体を挟まれて死んだケヴィン(W・ゲイガー)

ようやく停車した機関車

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逃げ場を失ったビヴァリー

森の中からカルト教団の信者たちが迫ってくる

 先述したように、学生役を演じている俳優たちはアッソニティスの息子の友達ばかり。その中でも唯一、ヒロインのビヴァリーを演じているメアリー・コーナートは、本作以前にも映画出演経験があったようだ。また、ラリー役のロン・ウィリアムスは、その後『カラテ・キッド』シリーズのパート3〜6に主演している。
 本作で唯一の有名スターは、アンドロモレック教授役を演じているボー・スヴェンソン。いかにもアメリカンなタフガイ・スターの彼がセルビア人の大学教授というのはミス・キャストのようにも思えるが、実は彼はスウェーデン出身。意外にもしっくりとハマっており、なかなか悪くないキャスティングだ。
 また、ビヴァリーの母親役を演じているヴィクトリア・ジニーは、60年代からマカロニ・ウェスタンやマフィア映画などの脇役を務めていたイタリア女優。『デモンズ』や『グレイブヤード』などランベルト・バーヴァ作品でお馴染みのヤンキー系2枚目俳優カール・ジニーは彼女の息子だ。
 その他、『ブラッド・バイター』にも出ていた旧ユーゴスラヴィア出身の女優サヴィーナ・ゲルサックが女泥棒サヴァ役を、セルビア出身の美形俳優イゴール・ペルヴィッチが謎の男マリウス役を演じている。

 

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