ディスコ・アーティスト列伝<4>
オッタワン 〜Ottawan〜

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 ディスコ・ブームの生んだ最期の打ち上げ花火とでも言うべきグループ。文字通りヨーロッパ中のヒット・チャートを席巻した“D.I.S.C.O.”('80)の凄まじいばかりのキャッチーさは、あらゆる意味でユーロ・ポップ・ディスコの頂点を極めたと言って差し支えないだろう。それこそバカでも覚えられるような“ディー、アイ、エス、シー、オー”という強烈に分りやすいサビ、そして“She Is D!”の掛け声に対して“Desirable”、“She Is I!”の掛け声に対して“Irresistible”といった具合に言葉を当てはめていく遊び感覚いっぱいの歌詞。そのあっぱれとしか言いようのないポップ・センスは、他の追随を全く許さない。ただの悪趣味を通り越して、まさに神の領域にまで達してしまったかのような異彩を放つ驚愕のディスコ・ヒットだった。

 このオッタワンの仕掛け人はフランスの名プロデューサー・チームDaniel VangardeとJean Kluger。あのGibson Brothersの仕掛け人でもあり、シャンソンの女王Dalidaのディスコ・ヒットを手掛けたコンビでもある。オッタワンの前身はBlack Undergroundというジャマイカ系のバンド。VangardeとKlugerの2人は、たまたま入ったクラブで演奏していた彼らのことを気に入りレコード契約を結ぶ。その際に、2人が当時行ってきたばかりだったカナダの都市オタワをヒントにグループ名を変更。さらに、もともとJean Patrickという男性ボーカルだけだったグループに華を添えるため、Annetteという女性シンガーを加入させる。こうして誕生したのがオッタワンだ。
 デビュー曲の“D.I.S.C.O.”は地元のフランス他ヨーロッパ各国でヒット・チャートの1位を記録し、ユーロ・ディスコには比較的冷淡なイギリスでも2位まで駆け上がってしまう。筆者も当時フィンランドかノルウェーを旅行中にこの曲を街中で耳にし、あっという間に覚えてしまったもんだった。
 しかし、このグループの凄いところは、デビュー曲でこれだけ強烈なインパクトのあるヒットを放ちながら、一発屋で終わらなかったところだろう。イギリスでは“D.I.S.C.O.”のB面に収められた“You're O.K.”もセカンド・シングルとしてヨーロッパ各国でヒットし、さらに翌年のセカンド・アルバムからは“Hands Up”を全英3位に送り込んでいる。この“Hands Up”も“D.I.S.C.O.”に負けないくらいのお気楽なユーロ・ディスコ・ポップだった。
 ほぼ全曲の作詞・作曲を手掛けたのはVangardeとKlugerの2人。音楽ジャーナリズムや批評家の声など全く意に介さず、とことんまでコマーシャリズムの高いディスコ・ポップを追求した彼らの潔さこそ、オッタワンの大成功の秘密だったと言えるだろう。

 グループ解散後の82年には、リード・ボーカリストのJean PatrickとAnnetteの2人がPam 'N' Patとしてシングル“To Be Superman”をリリース。思いっきりオッタワン路線のオバカさんユーロ・ディスコだったが、所詮はまがい物。Vangarde&Klugerチームのようなポップ・マジックは皆無で、ほとんどヒットしなかった。一方のVangardeとKlugerも残ったメンバーでBisquitというグループを結成、女性コーラスを配したシングル“Zoo Zoo”をリリースするものの、こちらも不発。やはり魔法はいつか解けてしまうものなのだ。
 なお、その後Jean PatrickはTamaraという女性シンガーを相方にしてオッタワンを名乗り、現在でもロシアを中心に地味にどさ廻りをしている。また、2003年の6月7日にパリの“Zenith de Paris”で行われた“Tribute to the Funk”というライブ・イベントではJean PatrickとAnnetteの2人がオッタワンとして登場、20年ぶりに一日だけの再結成を果たした。
 97年にはイギリスのグループN-Tranceが“D.I.S.C.O.”をカバーして全英トップ10にチャート・インさせた他、87年にはカナダのグループSwayが、2001年にはスウェーデンの人気グループArmy Of Loversが“Hands Up”をカバーしており、その楽曲は今でも脈々と愛され続けている。しかし、N-Tranceが“D.I.S.C.O.”をヒットさせた際、日本では誰もオッタワンについて触れていなかったのは
ちょっと寂しかった。っつうか、ことポップ・ミュージックに関して、日本の音楽ジャーナリズム及びショップの店員があまりにも無知だと思うのは私だけでしょうか?残念ながら、日本のリスナーは偏った知識と情報しか与えられていないというのが現実なのだ。

“D.I.S.C.O.”のテレビ映像 ココ で見れます!(ちょっと重たいかも)

“Hands Up”のテレビ映像 ココ で見れます!(画質悪し)

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D.I.S.C.O.

D.I.S.C.O.(1980)/
Ottawan 2 (1981)

D.I.S.C.O. (1980)

Hands Up (Remix) (1991)

(P)1998 Laser Light (Germany) (P)2001 CD-Maximum (Russia) (P)1980 Carrere (U.K.) (P)1991 Next Plateau (U.S.A.)
1,D.I.S.C.O. (English Maxi Version) 4:58
2,You're O.K. 5:13
3,Hands Up 4:50
4,Crazy Music (Maxi Version) 5:29
5,Shalala Song 3:40
6,Comme aux U.S.A. 4:50
7,A.I.E. Is My Song 3:27
8,Shubidubi Love 2:49
9,Doudou Rumba 3:32
10,Hello Rio 4:26
11,Help, Get Me Some Help
12,Sing Along With The Juke-Box 3:59
13,D.I.S.C.O. (French Maxi Version) 7:04
1,D.I.S.C.O.
2,Hello Rio!
3,Shalala song
4,Tant que durera la nuit
5,Help, Get Me Some Help!
6,You're O.K.
7,Comme aux U.S.A.
8,D.I.S.C.O. (French Version)
9,Hands Up
10,Siesta For Two
11,A.I.E. is My Song
12,Sing Along With The Juke-Box
13,Crazy Music
14,Shubidubi Love
15,Doudou Rumba
16,Hands Up (Instrumental)
17,To Be Superman by Pam 'N' Pat
18,It's All Music by Pam 'N' Pat
19,Zoo Zoo by Bisquit
Side A
1,D.I.S.C.O. (Full Length Disco Version)
Side B
1,It's O.K. (Full Length Disco Version)

produced by Daniel Vangarde.
Hand Side
1,Hands Up (Original Version) 4:50
Up Side
1,Hands Up (1991 Tourist Remix) #
2,Hands Up (1991 Tourist Radio Edit) #

produced by Daniel Vangarde
# remixed by Ralphie Dee & Lenny Dee
 N-Tranceのカバー・ヒットを受けてヨーロッパでリリースされたベスト盤CD。彼らのヒット・シングル全てとアルバム・トラックが収録されており、特に“D.I.S.C.O.”が英語、フランス語共に12インチ・バージョンで聴けるというお徳盤。ハッピーでポップでオバカさん丸出しのユーロ・ディスコ満載で、1曲も捨て曲がないのは立派。“シュビドゥビ・ラブ”とか“ドゥードゥー・ルンバ”なんてタイトル・ネーミングのバカバカしいセンスも好きですねー。音楽は理屈じゃないという事を再認識させてくれる究極のポップ・ナンバーを思う存分楽しめる1枚。  2枚のアルバムに、解散後のPam 'N' PatとBisquitのシングルをカップリングしたコンピ盤。ロシアお得意のセミ・ブートで、一応ライセンス表記はあるものの信憑性は疑問。音質は全く問題なく、恐らくオリジナル・マスターを使用しているものと思われる(#18のみアナログ・ノイズあり)。しかし、こうしてアルバムを通して聴くと、改めて彼らの作品のクオリティの高さに驚かされる。アルバム・トラックでも全く手を抜いておらず、どれもシングルとして十分に通用する仕上がり。UKでセカンド・シングルとなった哀愁のユーロ・サンバ#2はTwo Man Soundを彷彿とさせる名曲。  当時のイギリス盤オリジナル12インチ・シングル。B面の“It's O.K.”はディスコ・バージョンとクレジットされているものの、アルバム・バージョンと同一のもの。当時は、この手の紛らわしいクレジットが多かった。なお、この“It's O.K.”のフランス語バージョンは、イタリアのエットーレ・スコラ監督がフランスで撮ったミュージカル映画「ル・バル」のクライマックスで使用されている。  何故だか1991年にアメリカでリリースされたリミックス盤12インチ・シングル。原曲のイメージをそのまま残した、お気楽でキャッチーなポップ・ハウスに仕上がっている。ファンとしては十分にアリなリミックスながら、どうしてこの時期にアメリカで・・・?という大きな疑問が残る1枚ではある。

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Hands Up (The Ottawan Remixes) (1996)

(P)1996 Metronome (Germany)
Side A
1,Jawad's Club Remix 4:49
2,Jawad's Dub 4:33
Side B
1,Cyclop Remix Corp. 9:11
Side C
1,Brains Love You 6:10
Side D
1,Disco M Injection Mix 5:56
2,Radio Edit 3:26
 96年にドイツでリリースされたリミックス・バージョンの800枚限定プレスのプロモ盤12インチ。通常盤にはRadio Edit/Cyclop Remix/Brains Love Youの3バージョンしか収録されていない。いずれもトランス、ユーロ・ハウス仕様で、オリジナルのファンには賛否両論あるかもしれない。個人的には、オリジナル・バージョンの雰囲気を最大限に残したJawad's Club Remixのみ聴くに耐えるといった感じ。Disco M Injection Mixなんか、オリジナルを完全に無視したジャジーなガラージ・ハウスで、全く“Hands Up”である必要がない仕上がり。何でもリミックスすりゃいいってもんじゃない。

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