未公開海外ドラマ
Origins of the Mafia (1976)

 

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1976年/イタリア作品/260分/カラー
RAI-ITC制作 全5話
監督:エンツォ・ムッツィ
製作:ブランド・ジョルダーニ
    バーナード・J・キンガム
脚本:ブランド・ジョルダーニ
    エンツォ・ムッツィ
    デヴィッド・W・リンテルズ
撮影:ジュゼッペ・ロトゥンノ
編集:ビル・レニー
音楽:ニノ・ロータ
出演:リー・J・コッブ(第1話)
    ジョセフ・コットン(第1話)
    エドワード・アルバート(第1話)
    レナート・サルヴァトーリ(第1話)
    メル・フェラー(第2話)
    ジョン・マッケネリー(第2話)
    マッシモ・ジロッティ(第2話)
    コンスタンツァ・スパーダ(第2話)
    トニー・ムサンテ(第3話)
    フェルナンド・レイ(第3話)
    ファウスト・トッツィ(第3話)
    グイド・アルベルティ(第3話)
    トレヴァー・ハワード(第4話)
    トム・スケリット(第4話)
    マッシモ・セラート(第4話)
    キャサリン・ロス(第5話)
    トニー・ロー・ビアンコ(第5話)
    ジェームズ・メイソン(第5話)
    アメデオ・ナザーリ(第5話)
    パオロ・ボナチェッリ(第5話)
    クラウディオ・ゴーラ(第5話)
ナレーター:リチャード・ジョンソン

 マフィアを題材にした作品といえば、何といっても映画「ゴッドファーザー」三部作が有名だろう。最近では悩み多きマフィアのドンの日常をファミリー・ドラマ形式で描いたTVドラマ「ザ・ソプラノズ」の大ヒットが記憶に新しいところだし、6月からFOX CRIMEでスタートするドラマ「ブラザーフッド」ではアイリッシュ・マフィアの兄と政治家の弟という対照的な道を歩む兄弟の姿が描かれている。そんなマフィアのルーツを、16世紀のシチリアにまで遡って描いていくドラマが、この“Origins of the Mafia”だ。
 制作に当たったのはイタリアの国営テレビRAI。「華やかな魔女たち」('66)の脚本家エンツォ・ムッツィを監督に迎え、ハリウッドとイタリアのオールスター・キャストを揃えて作られている。当時は、アメリカでもTVドラマでこれだけの顔ぶれを揃えるのは至難の業だったはずだ。しかも、音楽を担当しているのは巨匠ニノ・ロータ。全編に渡ってシチリアでロケが行われており、RAIがどれだけ力を注いだ作品だったかがうかがい知れる。

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リー・J・コッブ

エドワード・アルバート

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ジョセフ・コットン

レナート・サルヴァトーリ

 ストーリーは5部構成。300年以上に渡るシチリアの権力抗争、汚職、貧困の歴史が1話完結で語られていく。第1話は、シチリアがまだスペインの支配下にあった16世紀半ば。港に面した小さな漁村を舞台に、漁師たちに因縁をつけては魚を安く買い叩き暴利を貪る仲買人バルトロメオ・グラミニャーノ(リー・J・コッブ)とそのファミリーの横暴ぶりが描かれていく。逆らうものは容赦なく殺していく彼らのような悪徳商人の存在が、後のマフィアを生み出す温床となったというわけだ。そうした中、スペイン公使(ジョセフ・コットン)の息子セバスチャン(エドワード・アルバート)がグラミニャーノ・ファミリーの悪事を暴こうと奔走するものの、報復を恐れる住民たちは固く口を閉ざす。なるほど、舞台は中世でも物語はマフィア映画そのものだ。

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メル・フェラー

マッシモ・ジロッティ

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ジョン・マッケネリー

秘密結社の報復


 続く第2話では、時代が1785年に移る。シチリアはブルボン王家による支配のもと“シチリア王国”を形成しており、庶民は圧政に苦しんでいた。そうした中で、秘かに地下で活動を始めていた秘密結社の存在が描かれていく。横暴な権力者に対して独自の制裁を加えていく彼らこそが、後のマフィア組織の原型となっているというわけだ。物語は庶民の苦しみをよそに優雅な毎日を送る貴族デラ・モーラ(メル・フェラー)と秘かに秘密結社を導く貴族ピエトロ(ジョン・マッケネリー)、そしてシチリア国王代理(マッシモ・ジロッティ)らを主人公に、次第に足元をすくわれていく貴族社会の黄昏を描く。
 さらに第3話では、両シチリア王国時代の1831年を背景に、貴族の没落と新しい支配層の台頭が描かれていく。大地主であるデラ・スピーナ男爵(フェルナンド・レイ)は他の貴族たちと同じように、自らの土地や財産を守るために私設軍隊を組織していた。これがマフィアの実質的な原型となる。そのマフィアの中から登場した野心的で聡明な若者ミケーレ・ボレッロ(トニー・ムサンテ)は、そのビジネスの才能を駆使して財力を蓄え、次第にスピーナ男爵の権力を奪っていく。マフィアのドンの誕生だ。

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トニー・ムサンテ

ファウスト・トッツィとフェッルナンド・レイ

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グイド・アルベルティ

ポール・ミュラー


 そして第4話では、マフィアが政治の世界へと力を広げていく様子が描かれる。時は1861年。ガリバルディによるイタリア王国統一の翌年だ。フィレンツェからやってきた新政府の領事(ジャンカルロ・スブラジア)と反抗的な農民たちに悩まされる侯爵(マッシモ・セラート)が対立する中で、マフィアのボスであるドン・サッコーネ(トレヴァー・ハワード)はその政治力を遺憾なく発揮していく。彼らの相談役として仲裁に入るふりをして、逆に彼らを手なずけていくのだ。一方で、イタリアが統一されても一向に貧困から抜け出せないでいる農民たちは、ベルナルディーノ(トム・スケリット)を中心に反政府活動を組織していく。こうした庶民の力までをも、狡猾なドン・サッコーネは呑み込んでいこうとするのだった。

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トレヴァー・ハワード

トム・スケリット

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マッシモ・セラート

ジャンカルロ・スブラジア


 最後の第5話は1875年が舞台になる。イタリア本土からシチリアにやってきた議員(アメデオ・ナザーリ)は、勢力を拡大しつつあるマフィアについての研究をしている。その頃、シチリアではマフィア同士の抗争が激化し、裏切りやスパイ活動が盛んに行われていた。そうした中で、長老であるドン・バルサーモ(クラウディオ・ゴーラ)と対立した若手のドン・マストランジェロ(レンツォ・モンタナーリ)が殺害される。容疑者は忠実な僕であるニーノ(トニー・ロー・ビアンコ)。未亡人ローザ(キャサリン・ロス)は、ニーノが無実であることを信じて敏腕弁護士ヴィアニージ(ジェームズ・メイソン)に弁護を依頼するのだが・・・。マフィア最大の特徴の一つである“沈黙の掟”を題材にした1編だ。

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キャサリン・ロス

トニー・ロー・ビアンコ

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ジェームズ・メイソン

アメデオ・ナザーリ

 このように、“マフィアはどのようにして生まれたのか”ということをテーマに、300年に渡るシチリアの歴史を壮大な叙事詩として描いていくスタイルは、ベルトルッチの「1900年」を彷彿とさせるものがある。ただ、各エピソードが1時間弱しかないため、かなり駆け足で語られているという印象は拭えない。時として唐突にストーリーが展開するので、見てる方が置いてきぼりを食らってしまう事もしばしば。キャラクターの掘り下げ方も浅いため、ただ歴史をなぞっただけのドラマに陥ってしまっているように見受けられる。
 しかし、その一方で他ではなかなか語られてこなかったシチリアの歴史やマフィアのルーツに関する物語が分かりやすく説明されており、非常に興味深いドラマに仕上がっているのも事実。今は亡き往年の名優たちの姿も拝めることだし、映画ファンならば一見の価値アリである。また、マッシモ・ジロッティ、マッシモ・セラート、そしてアメデオ・ナザーリと、ファシスト時代のイタリア映画を代表する国民的スターの共演というのもイタリア映画ファンには嬉しい。

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