ニコレッタ Nicoletta
〜フレンチ・ゴスペルの女王〜
60年代から70年代にかけて一世を風靡したフランスの女性シンガー。ブルースやゴスペルに強い影響を受けたソウルフルなボーカルは、当時のフランス音楽界においてかなり異彩を放っていた。しゃがれた渋い低音を絞り出すように歌うスタイルが非常に個性的で、ブルースやゴスペルをベースにシャンソン、ジャズ、ロック、クラシックなど様々なジャンルを積極的に取り入れていた。最大のヒット曲である“Mamy
Blue”などはゴスペルにシャンソン、サイケデリック・ロックをミックスした名曲で、まさに彼女にはうってつけの作品だったと言えるだろう。
しかし、その名声と実力にも関わらず、彼女のキャリアは決して平坦ではなかった。経済的にも行き詰まり、世間からは殆ど忘れ去られてしまった時期もあった。非常に頑固で気難しい性格が災いして、たびたび関係者と衝突する事もあったという。特に、当時フランスのテレビでは当たり前だった音楽番組の口パクには徹底的に抵抗し、扱いづらい歌手というレッテルを貼られてしまう。完璧主義者で反骨精神の旺盛な彼女は、絶対に周囲に押し流されるような事がなかった。芸能界のルールやしきたりなど、彼女にとってはそれこそクソ食らえだったのだろう。
1944年4月11日、スイスにほど近いサヴォア地方ヴォンギーに生まれたニコレッタは、本名をニコール・グリソーニ(Nicole
Grisoni)という。父親はイタリア人で、彼女が幼い頃に失踪している。母親が病気がちだったため、祖母のもとで育てられた。リヨンにある芸術学校を卒業したニコレッタは、歌手を目指してパリへ。芸術家や学生の集まるサン・ジェルマン・デュ・プレのディスコでディスク・ジョッキーの職を得る。そこで知り合ったレコード会社バークレーのディレクター、Leo
Missirにスカウトされ、1966年にレコード・デビュー。
翌年にアメリカの歌手スコット・ウォーカー(ウォーカー・ブラザーズ)のヒット曲“Angelica”をカバーした“La
musique”で注目され、続いてリリースしたバラード“Il est mort le
soleil”が爆発的なヒットとなって一躍スターの仲間入りを果たす。シャンソンらしい哀愁感あふれるメロディ、幻想的なストリングスとハープの音色、そしてブルージーなニコレッタの歌声が絡み合うドラマチックなナンバーで、あのレイ・チャールズも英語でカバーしているという傑作。
71年には先述した“Mamy
Blue”が大ヒット。73年には自らのレーベルRapa Nuiを立ち上げた。この年にはブラジルのジョルジュ・ベンの大ヒット曲をカバーした“Fio
maravilla”をリリース。気だるいアフロ・ビートとニコレッタのダミ声の相性が絶妙な作品で、ファンキーかつグルーヴィー。オリジナルよりも遥かにカッコよく仕上がっていた。さらに、75年にはミシェル・ルグランのペンによるジャジーでメロディアスなシャンソンの傑作“Ou
es-tu passe mon
Saint-German-des-pres”をリリース。念願のオリンピア劇場でのリサイタルも実現し、名実共にトップ・スターの地位を手に入れた。
しかし、80年代以降はヒット曲に恵まれなくなる。83年にBernard
Lavilliersとデュエットしたシングル“Idees
noires”がヒット・チャートで1位を記録したものの、その他のアルバム・シングルは全くの不発で、ミュージカル“Quasimodo”への出演やライブを中心に細々と活動を続けていった。
最愛の祖母の死をきっかけに宗教に目覚めた彼女は、90年代後半からゴスペルに傾倒するようになり、黒人のコーラス・グループを率いて数多くのゴスペル・コンサートを行っている。
ここ数年、フランスでは若いリスナーを中心にニコレッタの再評価熱が高まっているという。2001年にはベスト・アルバム“30
ans de
passion”がリリースされ注目を集めた。伝統的なシャンソンから黒人音楽まで、ジャンルに囚われない彼女の音楽は今聴いても十分に新鮮でカッコいい。特にフリーソウル世代の人には是非とも聴いてもらいたいアーティストだ。
“Quand on n'a que l'amour”のファン・クリップ ココ で見れます!(素晴らしい出来です)
“L'homme a la moto”のテレビ映像 ココ で見れます!
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Nicoletta (1967) |
Nicoletta 73 (1973) |
J'attends, J'apprends (1995) |
Connivences (1998) |
(P)2000 Universal/Barclay (France) | (P)1997 Barclay/Polygram (France) | (P)1995 Disques VOGUES (France) | (P)1998 BMG/Mikado (France) |
1,Donne-moi 2,Il est mort le soleil 3,Tu m'entendras au bout du monde 4,Alors fermez la porte 5,J'en aimais un 6,Je ne pense qu' a t'aimer (How Can I Be Sure) 7,La musique (Angelica) 8,Encore un jour sans toi 9,Les orgues d'antan (A Whiter Shade of Pale) 10,Pour oublier qu'on e'est aime 11,Ca devait arriver ( I Put a Spell on You) 12,Pense a L'ete |
1,Fio maravilla 2,Les volets clos 3,Le meilleur de l'amour 4,C7est pour toi que je vis 5,Des musiques dorees 6,Pour la paix 7,Introduction 8,Une larme dans la mer 9,Ripaille 10,Il neige au Sahara 11,La vallee 12,Un vieil air 13,Coda |
1,J'attends, J'pprends 2,Les annees tendresse 3,L'amour confidentiel 4,Hey man 5,Comme une pluie d'etoiles 6,Mon seul refuge 7,L'amour pour l'amour 8,Un homme qui pleure 9,Les montagnes de Savoie 10,Une chanson pour touz les gens |
1,Jezabel 2,L'amour qu'il me donne 3,Monsieur l'amour 4,Disco Queen 5,Le temps d'une heure de ciel bleu 6,Ricky 7,Mrs Wan 8,J'ai eu ma dose 9,T'en fais pas 10,Lune rouge |
出世作#2を含む記念すべきファースト・アルバム。とても23歳の新人歌手とは思えないドスの効いた貫禄のダミ声が圧巻。アレサばりのシャウトまで聴かせてくれるのには恐れ入る。基本はシャンソンなのかもしれないが、ロックやリズム&ブルース、ゴスペルの要素を取り入れたサウンドは、当時のフランスでは画期的だったろうと思う。ダスティー・スプリングフィールドの名曲をミュゼット風ソウル(?)に仕上げた#6、プロコル・ハルムの大ヒットをゴスペル・ロック風にカバーした#9も秀逸。いろんな意味で、1967年という時代を生々しく感じさせてくれるアルバム。オススメ。 | ジョルジュ・ベンのカバー#1がとにかくカッコいい。エロくてファンキーなアフロ・グルーヴの傑作です。一転してクラシカルな雰囲気溢れるエレガントなミュゼット・ナンバー#3、バロック風のメランコリックで美しいバラード#4、ジャズ・ファンクにゴスペルのエッセンスを取り入れたスケールの大きなナンバー#6、ショパンを思わせるロマンティックなピアノの旋律が印象深いバラード#11など、実に多彩な楽曲が並ぶ。アルバムとしてのコンセプトにはいまひとつ疑問は残るものの、それぞれの楽曲のクオリティは申し分なし。 | ニコレッタにとっては12年振りとなるアルバム。レア・グルーヴ風のジャズ・ファンク・ナンバー#1からニコレッタ節が炸裂。若い頃よりも柔らかくなった歌声が年輪を感じさせるが、ブルースやゴスペルを基調にした作風は相変わらず。下手に流行を追うような事もせず、文字通りわが道を行くといった感じ。セールス的には奮わなかったものの、アルバムとしての完成度はとても高いと思う。中でも、アコーディオンの音色がノスタルジックな佳作#2、Didier Barbelivienのペンによる故郷サヴォアへの想いを歌った#9が印象深い。 | コマーシャリズムを前面に押し出したのが裏目に出てしまった残念な出来映えの作品。ブルース・ロックやレゲエ、ハウス、オルタナなどにも挑戦しているが、どれも消化不良で中途半端。前作のセールス不振に学んだのかもしれないが、方向性を見誤ってしまったようだ。オリジナル・アルバムとしては今のところ、これが最後の作品となっている。ちなみに、#4はシルヴィー・ヴァルタンのヒット曲とは同名異曲。 |
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Nicoletta : Master Serie |
Nicoletta : Talents |
(P)1991Polygram (France) | (P)2006 Universal (France) |
1,Ma vie c'est un manege 2,La solitude ca n'existe pas 3,Mamy Blue 4,Pour oublier qu'on s'est aime 5,La musique 6,Glory Alleluia 7,Encore un jour sans toi 8,L'homme a la moto 9,Quand on n'a que l'amour 10,Il est mort le soleil 11,Fio maravilla 12,Les volets clos 13,La bande a nico 14,Broadway 15,Ou es-tu passe mon Saint-German des pres 16,A quoi sert de vivre libre? 17,Vivre pour l'amour 18,Aie, Aie, Caramba |
1,Ma vie c'est un manege 2,La solitude ca n'existe pas 3,Mamy Blue 4,Pour oublier qu'on s'est aime 5,La musique 6,Glory Alleluia 7,Encore un jour sans toi 8,L'homme a la moto 9,Quand on n'a que l'amour 10,Il est mort le soleil 11,Fio maravilla 12,Les volets clos 13,La bande a nico 14,Broadway 15,Ou es-tu passe mon Saint-German des pres 16,A quoi sert de vivre libre? 17,Vivre pour l'amour 18,Aie, Aie, Caramba |
ジュスト・ジャカンが撮影したポートレートをジャケットに使用したベスト盤。最近になって矢継ぎ早にベスト盤がリリースされている彼女だが、ほんの数年前まではこれが唯一手に入るベスト盤だった。フレンチ・ゴスペルの傑作#3からスタイリスティクスの「愛がすべて」をカバーした#16まで、60年代〜70年代のヒット曲を網羅した1枚。 | 左のベスト盤をリマスター&リパッケージしたもの。ここ数年で何枚もベスト盤がリリースされているが、こちらは価格的にもかなり手ごろなので、初心者向けには最適かも。 |