Naboer (2005)

 

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(P)2005 TLA Releasing (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録
)/5.1chサラウンド/音声:ノルウェー語
/字幕:英語/地域コード:1/76分/製作
:ノルウェー

映像特典
メイキング・ドキュメンタリー
出演者インタビュー
精神世界ドキュメンタリー
オリジナル劇場予告編
監督:ポール・シュレットアウネ
製作:ポール・シュレットアウネ
脚本:ポール・シュレットアウネ
撮影:ヨン・アンドレアス・アンデルセン
音楽:サイモン・ボスウェル
出演:クリストファー・ヨネール
    セシリエ・モスリ
    ユリア・シャクト
    アンナ・バッハ=ウィーグ
    ミカエル・ニクヴィスト

 日本では滅多に見る機会のないノルウェー映画。隣国のスウェーデンやデンマークは古くから映画産業が盛んで、世界的な映画監督や映画スターを輩出しているが、ノルウェー映画は長い間その陰に隠れてきた。例えば、スウェーデンの巨匠イングマール・ベルイマン作品のミューズとして知られる女優リヴ・ウルマンはノルウェー人。母国でも女優兼監督として活動しているが、世界的に注目を集めるのはスウェーデンでの仕事だ。
 ただ、この10年ほどで急速にノルウェー映画が各地の国際映画祭で注目を集めるようになっている。きっかけは、やはりエーリク・ショルビャルグ監督の「不眠症」('97)だろう。これはカンヌ映画祭の監督週間に出品されて話題になり、ハリウッドで「インソムニア」('02)としてリメイクされた。ショルビャルグ監督自身も「私はうつ症の女」でアメリカに進出。さらにピーター・ナエス監督の“Elling”がアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされ、スウェーデン映画「ハミルトン」('98)で注目されたハラルド・ズワルト監督が「エージェント・コディ」('03)シリーズなどハリウッドでメジャー・ヒットを放つようになった。
 2003年には年間の映画製作本数が史上最高を記録。映画産業が誕生してまだ100年にも満たないというノルウェーだが、ここへきてようやく最盛期を迎えようとしているようだ。

 そして、エーリク・ショルビャルグやピーター・ナエスなどと共に、90年代に頭角を現した新世代の監督の一人と言えるのがポール・シュレットアウネ監督。日本でも劇場公開された「ジャンク・メール」('97)が東京国際映画祭銀賞、カンヌ国際映画祭監督週間大賞、サン・パウロ国際映画祭国際審査員賞などを受賞して注目を集めた人だ。その彼の、今のところ最新作に当たるのが、この“Naboer”という作品。直訳すると“隣人”といったところだろうか。
 「ジャンク・メール」では静かなノルウェーの街を舞台に、ストーカー行為を続ける孤独な郵便配達員の男を描いたシュレットアウネ監督。今回は謎めいた隣人姉妹の存在に翻弄される若者の姿を描いた、奇妙なサイコ・スリラーに仕上がっている。

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主人公の若者ヨン(クリストファー・ヨネール)

別れた恋人イングリッド(アンナ・バッハ=ウィーグ)

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謎めいた隣人アンネ(セシリエ・モスリ)

アンネの妹で情緒不安定なキム(ユリア・シャクト)

 主人公は神経質な若者ヨン(クリストファー・ヨネール)。彼は同棲していた恋人のイングリッド(アンナ・バッハ=ウィーグ)に振られたばかりだ。ある日、イングリッドは恋人アーケ(ミカエル・ニクヴィスト)と共に、私物を取りにヨンの部屋を訪れる。久々の再会にぎこちなさを覚える二人だったが、たちまち口論になってしまった。
 陰鬱とした表情で仕事から帰って来るヨン。エレベーターを降りて自室の鍵を開けようとした彼に、アンネ(セシリエ・モスリ)という女性が声をかけてくる。彼女はヨンの部屋の隣に住んでいるらしい。しかし、ヨンは今まで隣人の存在に気付いたことすらなかった。
 部屋の家具を移動したいから手伝って欲しいというアンネ。隣の部屋に行くと、彼女の妹キム(ユリア・シャクト)がいた。ミステリアスでセクシーなキムに目を奪われるヨン。その様子を眺めていたアンネも不気味にほくそ笑む。しかも、姉妹はヨンとイングリッドの会話や行動を詳細に知っていた。彼女たちの存在に薄気味悪さを感じたヨンは部屋を出て行く。
 それでも、再びアンネに請われて姉妹の部屋を訪ねるヨン。アンネの話によると、キムは過去に侵入者の男性から暴行を受け、それ以来部屋から一歩も外に出ないのだという。キムを探して廊下に足を踏み入れたヨンだが、まるで迷路のように入りくねっているため迷子になってしまう。なぜこの家はこんなに広いのか?ふと疑問に思うヨン。
 ようやくたどり着いた部屋で待っていたキムは、セクシーな下着姿でヨンを誘惑する。思わず彼女の肉体に自分の身を重ねようとするヨン。そんな彼をキムが殴る。挑発的な視線を送るキムを殴り返すヨン。口元から血を流しながら恍惚の表情を浮かべるキム。二人は殴りあいながら血みどろのセックスに溺れる。

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迷路のように入り組んだ廊下

殴られて欲情するキム

 翌日、仕事から戻ったヨンは、すぐに姉妹の部屋を訪れた。しかし、キムの様子がおかしい。なぜ自分を殴ったりしたのかと涙ながらに訴えるのだ。さらに、ヨンはアンネが謎めいた男に殴られている様子を目撃する。慌てて逃げようとするヨンだったが、男に気付かれてしまう。男はイングリッドの新しい恋人アーケ。
 彼はヨンのサディスティックな一面を非難する。困惑するヨンにアンネが、“覚えていないの?あなたのために私たちがしてあげたことを?”と囁く。彼女はヨンがキムを殺したのだという。目の前の扉を開けると、そこは何故かヨンの部屋にソックリだった。アンネの言うがままにベッド・ルームへ入ったヨン。彼はそこでキムの死体を発見する。
 パニック状態のまま自室に戻ったヨン。気を取り直して姉妹の部屋へ戻ろうとするが、彼の部屋の隣は行き止まりだった。果たして全ては彼の妄想だったのか?それとも・・・!?

 バラエティ誌の批評によると“デヴィッド・リンチ的な解釈をしたロマン・ポランスキーへのオマージュ”ということだが、確かにポランスキーの「テナント/恐怖を借りた男」('76)とデヴィッド・リンチの「ロスト・ハイウェイ」('97)を足したような雰囲気のある作品。シュールで皮肉な結末も「ロスト・ハイウェイ」をかなり意識しているように思える。
 それゆえに、物語の中盤でだいたいの展開が読めてしまうのも事実だ。何か予想外のサプライズが待っているのでは・・・と期待していると、あっけなく静かに幕を閉じてしまう。「ジャク・メール」の時も感じたのだが、基本的にシュレットアウネ監督は淡白な人なのだろう。バイオレンスやエロティシズムにもどこか引いた目線があり、エモーションよりもスタイルを重視する傾向が強い。その辺りは本当に好き嫌いの問題になってしまうと思うのだが、やはりどうしても物足りなさを感じてしまうのが正直なところ。もう少し常軌を逸して欲しかった。
 ただ、舞台をほぼアパートメント内だけに限定したのは賢明だったように思う。シュレットアウネ監督自身も述べているが、どこにでもあるような室内を舞台にすることで、文化の違いを意識する必要がなくなっているのだ。ニューヨークやロンドン、パリが舞台でもおかしくはない。確かにセリフはノルウェー語だが、別にそこがノルウェーである必要もないのだ。ゆえに、すんなりと物語の世界に入っていく事が出来る。

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すっかり姉妹に翻弄されるヨン

イングリッドの恋人アーケ(ミカエル・ニクヴィスト)とアンネ

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無残な死体で発見されるキム

ヨンは混乱してパニックに陥る

 主演のクリストファー・ヨネールは本作でアマンダ賞(ノルウェー版オスカー)の主演男優賞を受賞しているが、ほっそりとした無機質なルックスで独特の存在感がある。“Himmelfall”('02)ではコペンハーゲン国際映画祭の男優賞を受賞しており、ヨーロッパ映画界期待の若手スターとして注目されているという。
 アンネ役のセシリエ・モスリも母国ノルウェーでは人気の高い若手女優。ミステリアスな雰囲気のある人で、美人ではないが存在感がある女優と言えるだろう。その妹キムを演じているユリア・シャクトは本作が映画初出演だったようだが、彼女もまたいい顔をした女優だ。
 そして、イングリッドの新しい恋人アーケ役で顔を出しているミカエル・ニクヴィストはスウェーデンの俳優。アカデミー賞の外国語映画賞にもノミネートされた「歓びを歌にのせて」('04)で、音楽の本当の素晴らしさに目覚める世界的な指揮者ダニエル役を演じていた名優だ。
 また、ダリオ・アルジェントやランベルト・バーヴァ監督の作品でもお馴染みのイギリスの作曲家サイモン・ボスウェルが音楽を手掛けているのにも注目したい。

 

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