ナザン・オンジェル Nazan Oncel
トルコを代表するクセ者女性シンガー・ソングライター
トルコ音楽界の女王セゼン・アクスと並んで、トルコ国内で最も尊敬されている女性シンガー・ソングライターが、このナザン・オンジェル。かなり遅咲きの人で、アーティストとして軌道に乗った頃は既に30代後半だった。もともとロック志向の強い人だったようで、時代が彼女について来るのに時間がかかったのかもしれない。
欧米のポップス/ロックに強い影響を受けながらも、従来のトルコ歌謡ともまた違った独特の音楽世界を確立している。どこかアバンギャルドな匂いのする人で、かなりひねったポップ・センスが特徴。2004年にリリースしたタルカンとのデュエット曲“Hay
Hay”の大ヒットでトルコ以外の国でも知られるようになったが、あのストレートな分かりやすさは例外中の例外と言ってもいいだろう。
1956年2月6日、役人の娘として生まれたオンジェルは、15才の頃からダンス・バンドのギタリスト兼ボーカリストとして祭りや結婚式などで演奏していたという。20才の時にラジオ局の主催する音楽コンテストに優勝し、1978年に歌手デビューを果たす。1981年にはファースト・アルバムをリリースするものの、レコード会社から与えられる楽曲に満足出来なかった彼女は、そのまま第一線から遠ざかってしまう。そして、1992年にアルバム“Bir
Hadise
Var(問題がある)”をリリース。本人が全曲の作詞・作曲を手掛け、共同プロデュースにも参加した作品で、彼女自身このアルバムがデビュー作と認識しているようだ。
続くアルバム“Goc(移動)”ではトルコの伝統音楽にフォーク・ロック的アプローチを盛り込み、批評家にも“トルコ音楽史上最も優れた作品”として大絶賛された。さらに、96年にリリースしたアルバム“Sokak
Kizi(彷徨う娘)”には女王セゼン・アクスが参加。よりロック色の強いアルバムに仕上がっていた。また、99年のアルバム“Dimir
Leblebi(鉄のひよこまめ)”に収録された作品“Demirden
Leblebi”では、少女時代に実の父親から性的虐待を受けていた事を歌ってセンセーションを巻き起こしている。
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Bir Hadise Var (1992) |
Goc (1995) |
Sokak Kizi (1996) |
Demir Leblebi (1999) |
(P)1992 Yasar Kekeva (Turkey) | (P)1995 Seyhan Muzik (Turkey) | (P)1996 Seyhan Muzik (Turkey) | (P)1999 Seyhan Muzik (Turkey) |
1,Ayni Nakarat 2,Gitme Kal Bu Sehirde 3,Asik Degilim Olabilirim 4,Leylim Yar 5,Muhurledim Seni Kalbime 6,Hadi Hadi Nazlanma 7,Boncuk 8,Hani Boyle Olamazdik 9,Nokta Nokta 10,Agla Erkegim Agla ビデオ 11,Olmaz Ki 12,Ayni Nakarat (Remix) produced by Iskender Paydas, Riza Erekli, Nazan Oncel |
1,Gidelim Buralardan ビデオ 2,Sen Bini Olduruyorsun 3,Ask Olmali 4,Bir Sarki Tut 5,Aglama Gonlum 6,Nazli Ay 7,Goc 8,Isiniz Gucunuz Yok Mu Yani 9,Cocuk Kalbim 10,Vesaire produced by Aksit Togay |
1,Ben Sokak Kiziyim 2,Bana Ozel 3,Bu Istanbul 4,Erkekler De Yanar ビデオ 5,Geberik 6,Birak Seveyim Rahat Edeyim 7,Ozgur Cicek 8,Olutorum Anlasana 9,A Bu Hayat 10,Hadi Guneye produced by Aksit Togay |
1,Beni Seyletme 2,Bu Havada Gidilmez ビデオ 3,Kunduram Sandukam Zembilim 4,Asiklar Parki 5,Zor Dunya 6,Hizli Yasarken 7,Hep Talniz 8,Kotulere Bi'sey Olmaz 9,Kiz Bebek 10,Sokarim Politikana 11,Demirden Leblebi produced by Aksit Togay |
シンガー・ソングライター、ナザン・オンジェルとしての第1作目に当たるアルバム。シングル・カットされた#1は、当時のUKハウスを彷彿とさせるダンス・ポップ・ナンバーで、かなり原始的なボーカル・サンプリングが時代を感じさせます。#12ではリミックス・バージョンも収録されてますが、当時トルコでクラブ・ミックスを制作するというのは画期的な事だったと思います。全体的にまだまだ垢抜けない印象ですが、新しい事をやりたいという意気込みは伝わってくる1枚ですね。 | アコースティック色の濃厚な、オリエンタル・フォーク・ロックといった趣きの作品。全体的にとても渋くてクール、どこか幻想的なムードがあって、非常に奥深い音世界が繰り広げられます。彼女のアルバムの中でも、特に芸術性の高い1枚と言えるでしょう。トルコの伝統音楽の世界にフォーク・ロックやブルースの要素が非常に上手く溶け込んでいて、トム・ウェイツやライ・クーダーの世界を彷彿とさせるものがあります。中でも渋さの中に哀愁感を漂わせた#3と#7は名曲。 | 前作に比べると、かなりストレートなロック色を全面に押し出したアルバムに仕上がっています。とはいえ、そこはナザン・オンジェルのこと、とてもシュールでひねくれたオリエンタル・ロックを聴かせてくれます。あえて例えるならば、中近東色を強めたケイト・ブッシュといったところでしょうか。まあ、そんな感じなので、ちょっと人によって好き嫌いが分かれるかもしれませんね。彼女のクセ者ぶりがよく分かる一枚だとは思います。 | ナザン・オンジェルにしては意外なくらい、素直なオリエンタル・ポップ路線を聴かせてくれるアルバムです。ハウスやヒップ・ホップの要素も盛り込んで、なんかこうスッキリとひと皮剥けたといったような印象。大人の女の余裕とか色香みたいなものさえ感じさせます。その辺りは、色彩豊かなジャケットやブックレットに描かれた絵画を見ても良く分かるかと。今まではモノクロの世界でしたからね。ま、あくまでもナザン・オンジェルにしては・・・ということですけど(笑) |
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Yan Yana Fotograf Cektirelim (2004) |
7'n Bitirdin (2006) |
(P)2004 Hitt Muzik/DMD (Turkey) | (P)2006 Avrupa Muzik (Turkey) |
1,Hay Hay (duet with Tarkan) ビデオ 2,Ukala Dumbelegi 3,Nereye Boyle ビデオ 4,Beyoglu 5,Atiyosun 6,Beni Hatirla 7,Hokka ビデオ 8,Anlamaya Calis 9,Kucuk Gemiler 10,Gul Pansiyon 11,Otomobil 12,Ruh Hali 13,Hayat Guzelmis produced by Nazan Oncel & Tarkan |
1,Askim Baksana Bana ビデオ 2,Omzumda Agla ビデオ 3,7'n Bitirdin 4,Ekilmekteyim ビデオ 5,Zehirli Sarmasik 6,Birak Bonussunlar 7,Utan 8,El Kizi 9,Bittimse Bittim 10,Anlat Arkadasim 11,Direkten Dondum 12,Kis Baba produced by Nazan Oncel |
実に5年ぶりとなるアルバムで、前作よりもさらに若返ったコンテンポラリーな作品に仕上がっています。共同プロデューサーにタルカンを迎えているという事もあるかとは思いますが、全体的に汎地中海系ダンス・ポップ的な躍動感が漲っていますね。そのタルカンとデュエットした大ヒット曲#1は、今までの彼女なかったイケイケのダンス・ナンバー。むちゃくちゃカッコいいです。もちろん、随所に彼女らしい遊びというか、一癖も二癖もある凝った音作りを聴かせてくれていています。やっぱり一筋縄ではいかないって感じですね。 | オンジェル自身が作詞、作曲、プロデュースからサウンド・デザインまで一人でこなした最新作がこれです。オバサンはっちゃけちゃいました!って感じの、変化球的ダンス・ポップ・アルバムに仕上がってます。前作でタルカンから若さを吸収しまくってしまったんですかね(笑)彼女が本来持っているひねくれたポップ・センスが十二分に生かされていて、遊びや実験を取り入れたアレンジやサウンド・プロダクションの凝り方もユニーク。昨年の暮れから今年にかけてトルコのヒット・チャートを席巻したのも納得の1枚です。 |
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