ナワール・エル・ズグビー Nawal Al
Zoghby
アラブ歌謡大国レバノンの女王
イスラエルによる残虐な武力攻撃により数多くの一般市民が犠牲となったレバノン。8月14日に停戦調停がなされたが、依然として根本的な問題解決はなされていない。その首都ベイルートはかつて“中東のパリ”と呼ばれ、1975年に起きた内戦により数多くの文化人・知識人が国外に逃れたものの、1990年に内戦が終結してからはアラブの文化先進国としての地位を回復してきていた。中でもレバノンはエジプトと並ぶアラブ歌謡大国であり、アラブ音楽史上最高の女性歌手ファイルーズ(Fairouz)など数多くのスターを生み出してきている。その現在のアラブを代表するスーパー・スターがナワール・エル・ズグビーである。
エジプトのアムル・ディアブと共にアラブ音楽界をリードする存在のナワールだが、その最大の魅力はやはりアムルと同じように、アラブ歌謡の伝統を継承しつつ最先端の西洋音楽のテクノロジーを積極的に取り入れているというところだろう。こうした西洋のロックやポップスに影響を受けた音楽を現地では“アル・ジール”と呼んでいるが、ナワールはまさにその先駆者と言える。
また、そのスーパー・モデル顔負けのゴージャスなルックスも目を引くところだろう。第2次大戦前の名歌手アスマハーンもかなりの美人だったらしいが、伝統的にアラブ歌謡の女性歌手は容姿端麗が基本。逆に、どんなに歌が上手くても容姿が悪ければスターにはなれないといっても過言ではない。そんな美人揃いのアラブ歌謡界の中でも、ナワールはずば抜けた美貌に恵まれている。そのビジュアルを存分に駆使したプロモーション・ビデオの制作にも積極的で、マドンナやブリトニー・スピアースにも負けないスタイリッシュでセクシーなビデオも彼女の強力な武器だと言える。とはいえ、90年代半ばに鼻を整形してはいるようだが・・・。
1972年6月29日、ベイルートに生まれたナワールは、少女時代から歌手になることを夢見ていた。1988年に家族の反対を押し切ってテレビの音楽番組に出演。これがきっかけでプロの歌手となり、1992年にCDデビューを果たした。デビュー・アルバム“Wehyati
Andak”はアラブ諸国で爆発的なヒットとなり、ナワールは一躍トップスターの地位を手に入れた。さらに、98年にリリースしたシングル“Mandam
Aleik”はシリアの大物女性歌手Houwaidaとの競作で話題となり、どちらが本家かという問題で物議を醸したりもした。その人気はアラブ語圏のみならずフランスやイギリス、さらにはアメリカにまで広がり、ナワールはアラブ歌謡界最大の女性歌手となった。昨年にはロンドンでもコンサートを行っている。
今年の7月に勃発したイスラエルとの戦争では多くの著名人が国外に脱出したが、ナワールはレバノンに残って空爆を受けた地域を自ら訪問して回った。被災地の学校を巡り、子供たち一人一人に語りかけ、不安に怯える人々の声に耳を傾けるその姿に、彼女の絶大な人気の秘密を見たような気がした。過去にパレスチナを擁護する作品や愛国心を鼓舞するような作品も発表しているナワールだが、あくまでも一般大衆の側に立ち、彼らの声を代弁してきたからこそ、アラブ歌謡界の頂点に立つことが出来たのかもしれない。
“Togmana Essaat”のプロモ・クリップは ココ で見れます!
“Yama Alou”のプロモ・クリップは ココ で見れます!
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The Very Best of Nawal Al Zoghby (2001) |
Elli Tmanetoh (2002) |
Enneik Kaddabin (2004) |
Yama Alou (2006) |
(P)2001 EMI Music Arabia (EU) | (P)2002 Ark 21 Records (USA) | (P)2004 Alam El Phan (Egypt) | (P)2006 Alam El Phan (Egypt) |
1,El Layali 2,Mandam Aleyk 3,Malom 4,Meen Habibi Ana (duet with Wael Kfouri) 5,Ayzah El Rad 6,Daloona 7,El Manoua Marghoub 8,El Eyen Bel Eyen 9,Bladi 10,Ma Btetaab Dakhlak 11,Bain Elbareh Wel Youm 12,Ala Bali 13,Nasseni Leeh bonus El Layali (Video) |
1,Elli
Tmanetoh 2,Bibaklak 3,Ghib an aynayya 4,Nar El Gharam 5,Trikni Rouh 6,Habib Dialy 7,Malak Alaya Yamine 8,Yana Yana 9,Weli Ya Hawa 10,Ya Habibi Ana |
1,Enneik Kaddabin 2,Khalletni Ahebak 3,Ana Baddi Eish 4,Bieynak 5,Togmana Essaat 6,Law Wakhed Balak 7,Ouyoun Ouyouni 8,Bihebbeni 9,Malleit 10,Khalleek Liya 11,Samah 12,Khod Albi produced by Mohsen Gaber |
1,Yama
Alou 2,Habbaytak 3,El-Assi 4,Aghia El-Habayeb 5,Adi 6,Btaarigni Ana 7,Ayzak 8,Betisal 9,Gheeb Anni Gheeb 10,Akher Marra 11,Rouhi Ya Rouhi 12,Shou Akhbarak 13,Habibaty Man Takoun produced by Mohsen Gaber |
1994年〜2001年までのMusic Box及びRotana在籍時代の作品から選曲されたベスト盤。コテコテに泥臭いアラブ歌謡から洗練されたダンス・ミュージックへと、彼女の音楽的成長の軌跡が手に取るように分かるのが面白い。時代を遡るほどにアコースティック色が強くなっていくが、全体的にメロディが驚くほどキャッチーで分かりやすいという点では共通している。絶妙のコブシ回しを駆使したナワ−ルの歌声は、安定感があって清楚。強烈な個性がない分、幅広く受け入れられるのだろう。 | 全米リリースされた6枚目のアルバム。オープニングを飾る#1からトライバル感炸裂のハードなオリエンタル・ダンス・ナンバーで、むちゃくちゃカッコいいです。#2では派手なシンセ・エフェクトやボコーダーを駆使しながらも伝統的なアラブ歌謡の世界を展開、#4ではハウスのリズムに乗せて幻想的で哀切感に満ちた美しいサウンドを聴かせてくれる。その歌声も力強さを増しており、まさに女王の貫禄。ワールド・ミュージック・ファンにも、ポップス・ファンにも自信を持ってオススメできる傑作です。 | 基本的には前作の延長線上にある作品で、さらに大胆にハウスやテクノ、トランスを取り入れたサウンドを展開しているものの、全体的に楽曲のインパクトが弱いという印象。ジャズ・フュージョン的ムードの叙情的な#3(間奏がグロリア・ゲイナーの「恋のサバイバル」にソックリ)や、ジプシー音楽風の哀愁溢れるメロディが美しいダンス・ナンバー#5など、それなりに良い作品もあるだけに残念。この年は、Nancy Ajramが大ブレイクした事もあり、ちょっと影に隠れてしまっていましたね。 | 間違いなく今年のアラビアン・ポップス界を代表する1枚。前作の空振り具合が嘘のように、充実した素晴らしい作品に仕上がっています。楽曲の良さもさることながら、そのゴージャスで隙のないサウンド・プロダクションはお見事。これぞワールド・ビート!といった感じのエレクトリックでトライバルなサウンドは迫力満点で、ガンガンに大音響で聴きたい。鳥肌が立つくらいに美しいキーボードのメロディが感動的なバラード#3もオススメ。#9ではトルコのNiluferの大ヒットを哀愁ディスコ・ハウスとしてカバー。自由自在にコブシを回しまくるナワールのボーカルも必聴です。 |
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