ナンシー・アジュラム Nancy Ajram
アラビアン・ポップス界のスーパー・アイドル
今や泣く子も黙るスーパー・スターとなったナンシー・アジュラム。一説によると、現在のアラブ世界で最も影響力のあるセレブだという。2003年にシングル“Akhasmak
ah(私たちは言い争うかもしれない)”と“Ya
salam(何て素敵なの)”が爆発的なヒットとなった事をきっかけに、アラブ諸国で社会現象と言えるほどの一大旋風を巻き起こしている。これまでにリリースされたCDやカセットのトータル・セールスは1200万枚とも1600万枚とも言われており、既にアラブ音楽史上最も成功した歌手の一人となってしまった。
確かにとんでもなく歌が上手い。まだ若いこともあって、ナワル・エル・ズグビーやエリッサ、サミラ・サイードといった大御所ディーバには貫禄負けしてしまうものの、滑らかで巧みなコブシ回しは文句なしに天才だ。5年後、10年後はどんなに凄い歌い手になっているか、末恐ろしいとはまさにこの事だろう。また意外なのは、西欧ポップスの影響著しい近年のアラブ音楽界にあって、伝統的なアラブ歌謡の世界観をしっかりと踏襲した楽曲を歌っているという点。ハウスやロックの要素を積極的に取り入れている先輩アーティスト達に比べ、オーソドックスなアラブ歌謡と西欧的なテクノロジーを程よくミックスさせたバランス感が特徴で、その辺りの親しみやすい音楽性も広くアラブの一般大衆に受け入れられた要因かもしれない。
1983年5月16日、レバノンの首都ベイルートに生まれたナンシーは、12歳で地元のオーディション番組“未来のスターたち”で優勝して注目を集めた。すぐ学業に戻ったナンシーだったが、その天才的な才能に注目した音楽界からは引く手あまたで、1998年にはアルバム“Mihtagalak(あなたが必要なの)”でデビューを果たしている。さらに2001年にもアルバム“Sheel
Oyoonak
Anni(私から目をそらして)”をリリースするものの、どちらのアルバムも全く売れなかった。ゆえに、彼女のディスコグラフィーでは、この2枚のアルバムは無かった事になっている。
そして2003年、先述した2枚のシングル“Akhasmak
ah”と“Ya salam”が大ヒットを記録し、アルバム“Ya salam”は360万枚という驚異的なセールスを成し遂げた。続くアルバム“Ah w
Noss(ええ、もちろん)”はさらに爆発的な売り上げとなり、実に500万枚近くのセールスを記録した。昨年リリースされた最新アルバム“Ya tabtab...wa
dallaa(私は褒めて甘やかす)”も現在までに300万枚以上を売っており、その勢いは止まるところを知らない。さらに、この3枚のアルバムからカットされた11曲のシングル全てがアラブ諸国でヒット・チャート1位を記録しており、アラブ世界におけるその人気はブリトニー・スピアーズやクリスティナ・アギレラどころの話じゃないのだ。
今年は2枚のアルバムをほぼ同時にリリースする予定だという。そんな大胆な試みも、向かうところ敵なしのスーパー・スターだからこそ出来るというもの。最近では日本の輸入盤ショップでもナンシーのCDが比較的気軽に手に入るようになったので、アラブ音楽には興味あるけど何から手をつけていいか分からないという人にはオススメかもしれない。
Ya
salam (2003) Ah
w Noss (2004) Ya
tabtab wa dallaa (2006)
(P)2003 EMI Music Arabia (Lebanon)
(P)2004 EMI Music Arabia (Lebanon)
(P)2006 Art Line Music (Lebanon)
1,Akhasmak ah ビデオ
2,Nasseto
garho
3,Yay ビデオ
4,Inta w
bass
5,Ya salam ビデオ
6,Ahla
jaw
7,Eynann tara
8,Inta
9,Ashkaraballi
produced by Reax
In/Megastar1,Ah w Noss ビデオ
2,Baddalaa
aleyk
3,Lawn ouyounak ビデオ
4,Oul tani
eyh ビデオ
5,Taala
ya
6,Sana wara sana
7,Inta eyh ビデオ
8,Gayinn
you'oulouli
9,Ana leyh
10,Hobbak liya
11,La
teloum
produced by Megastar/Relax In1,Ya tabtab wa dallaa ビデオ
2,Ehsas
jdid ビデオ
3,Moegaba ビデオ
4,Moushtaka
lik
5,Ana yalli bahebbak ビデオ
6,Ashtiki
menno
7,Oul hansaki
8,Elli kan
9,Ya si el sayed
10,Sabrak
alaya
11,Law dallalouni
produced by Art
Line
ナンシー・アジュラムのオフィシャルなファースト・アルバムがこれ。伝統的なアラブ歌謡の世界を踏襲しつつ、西欧ポップスの要素を取り入れたアル・ジール的アプローチを聴かせます。大ヒットした#1や#5は勿論のこと、3枚目のシングルとなった幻想的でチャーミングなミディアム・ポップ#3、キャッチーでトライバルなダンス・ナンバー#4、オーソドックスなアラブ歌謡にヒップ・ホップ的センスを盛り込んだ#9など、カラフルで若々しいサウンドが好印象。
これは素晴らしいアルバムです。ナンシーにとっても今のところ最大のヒットとなった1枚。ジャケ写はババア臭いですが、中身はバツグン。オーソドックスながらもキャッチーでヒット・ポテンシャルの高いアラブ歌謡ばかりで、シングル曲全てがアラブ総合チャートでナンバー・ワンに輝いたのも大いに納得。中でも、ナンシーの天才的なコブシ回しが堪能できる美しいラブ・ソング#3は絶品。最近になって特典DVDの付いた2枚組ボックスも発売されています。
前作以上に完成度の高い最新作。特に往年のヨーロピアン・ポップスを彷彿とさせる美しいバラード#2は傑作。本作からのシングル・カット作品の中でも最大のヒットを記録しました。また、レバノンの国民的ソングライター、サミール・スフェイルが書いた#5も、本国では爆発的なヒットとなったようです。個人的にはエレガントで官能的なベリーダンス・ナンバー#6、幻想的でエキゾチクなエジプト風ダンス・ナンバー#9もお気に入り。