ミルヴァ Milva
カンツォーネ界に君臨する孤高の女王

 

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 実を言うと、ミルヴァという女性アーティストにはそれほど興味がない。ブレヒトやテオドラキスを歌ったり、アストール・ピアソラやヴァンゲリスと共演したり、オペラに出演したり、などなど・・・なんだか“お芸術”色が強すぎてしまうのだ。でもって、彼女を崇め奉る日本のブルジョワなオバサマ方の存在もウザイの一言。60歳を過ぎてもパンク精神(?)を忘れないカンツォーネ界のゴッド・マザー、ミルヴァやパティ・プラヴォ、オルネッラ・ヴァノーニに比べると、ミルヴァというのはあまりにもコンサバが過ぎて受け付けないのだ。
 とはいえ、彼女ももともとは流行歌手。60年代の「フラメンコ・ロック」や「私もあなたも恋してる」、「タンゴ・イタリアーノ」などのカンツォーネ・ヒットは大好きだ。例えは変かもしれないが、歌謡曲から童謡歌手に転向してしまった後の由紀さおりに全く興味が湧かないのと共通するものがある。ゴージャスなルックスといい、ドラマチックで表現力のあるボーカルといい、とても好きなタイプのアーティストではあるのだが。ただ、逆に言うと流行に流されずに確固とした地位を確立しているという意味で、非常に反骨精神の旺盛な女性とも言えるかもしれない。イタリアの音楽界でも非常にユニークな位置にあるアーティストではある。

 1939年7月17日、イタリアはフェラーラ近郊にあるゴーロに生まれる。1959年に国営放送RAIの新人コンテストに優勝し、翌年エディット・ピアフのカバー“Milord”でレコード・デビュー。61年にはサンレモ音楽祭に出場し、「ひきだしの中の海」(Il Mare Ne Cassetto)で3位に入賞を果たす。以降、合計で14回もサンレモに出場しているが、実は1度も優勝したことがない。とはいえ、リリースするシングルは次々とヒット・チャート上位にランクされ、イタリアのみならずドイツやフランスでも絶大な人気を得るようになる。
 その一方で、65年頃から演劇の舞台にも出演するようになり、73年の「三文オペラ」はヨーロッパ各国で上演されて大成功を収めた。この頃から、ヒット・チャートよりも芸術性を重視した作品を発表するようになり、オペラやタンゴ、ギリシャ音楽などにも挑戦するようになった。特に日本での人気は高く、今までに14回もの来日公演を行っている。
 93年にはアルバム“Uomini Addosso”で久々にポップスに挑戦したものの、その後はシャンソンやブレヒトなどの古典の世界に逆戻りしたまま。

 

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Most Famous Hits

I Grandi Successi Originali

(P) Surprise (EU) (P)2000 BMG Ricordi (Italy)
Disc 1
1,Milord
2,Tango Italiano
3,Il Mare Ne Cassetto
4,Il Promo Mattino Del Mondo
5,Nulla Rimpiangero
6,Mon Homme
7,Les Enfants Du Piree
8,Tango Della Gelosia
9,Violino Tzingano
10,Vieni Con Noi
11,Sinfonia D'Amore
12,Flamenco Rock
13,Et Maintenant
14,Exodus
15,Tentazione
16,Estate
17,Quattre Vesteti
18,Addio Lugano Bella
Disc 2
1,Fischia Il Vento
2,Horst Wessel-Lied
3,Lungo La Strada
4,John Brown
5,Inno A Oberdan
6,Los Cuatro Generales
7,La Marsalleise
8,La Carmagnole
9,La Cucaracha
10,25,April 1954
11,Per I Morti Di Reggio Emilia
12,Quaggiu' In Filanda
13,Simon Bolivar
14,Balocchi E Profumi
15,Creola
16,Finestra Chiusa
17,Gastone
18,Ladra
Disc 1
1,L'immensita
2,Io Di Notte
3,Canzone
4,Little Man
5,Aveva Un Cuore Grande
6,Albergo A Ore
7,Milord
8,Caro John
9,Inno All'Amore
10,La Filanda
11,Nulla Rimpiangero
12,La Pianura
Disc 2
1,D'amore Si Muore
2,Da Troppo Tempo
3,Lungo La Strada (Pljuska Polje)
4mL'uomo Questo Mascalzone
5,Non Piangere Piu Argentina
6,Balocchi E Profumi
7,Le Rose Rosse
8,Canzone Appassiunata
9,Mediterraneo
10,Non Ce L'ho Con Te
11,Uomini Addosso
12,Ci Vorrebbe Il Mare
 “Most Famous Hits”というタイトルはちょっと大袈裟ですね。内容的には非常に偏った選曲の2枚組ですが、それもこれもライセンス上の都合でしょう。このディスク1は1960年〜62年にレコーディングされた作品で構成されていて、#1、#2、#3、#12など、デビュー当時の代表的なヒット曲を聴くことができます。ジルベール・ベコーの名曲のカバー#15やモリコーネの#17も素晴らしい出来映え。  こちらのディスク2は1965年と76年にレコーディングされた作品で構成されています。75年のアルバム“Liberta”はほぼ全曲丸々の収録。ロシア民謡の名曲「カチューシャ」をドラマチックな交響曲風にカバーした#1、「ポルシュカ・ポーレ」のカバー#3など、日本人にもお馴染みのメロディばかりが並びます。ただ、どうも部分的に古いカセット・テープから音源を起しているらしく、音質は正直良くありません。  この2枚組ベスト盤についても、必ずしもベストな選曲とは言えないかもしれません。このDisc1は1966年〜72年にレコーディングされた作品からの選曲ですが、シングル・ヒットは#3、#4、#10、#12の4曲だけ。あとはB面ソングやアルバム・トラックで構成されています。#5なんかはB面に回されてしまったのが不思議なくらいにポップで爽やかな名曲。いかにも当時のカンツォーネらしい雰囲気が大好きです。

 Disc 2の方は72年〜78年までにレコーディングされた作品に加えて、93年のアルバム“Uomini Addosso”からの2曲で構成された内容。こちらは、#2、#4、#5、#7、#9、#11の6曲がシングル・カットされています。ボーカリストとして、まさに脂が乗りきっていた時期の作品ばかりなのは嬉しいですね。スケールの大きなミルヴァの歌唱は絶品。この時期は、カンツォーネそのものが一番良かった頃かもしれません。

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Tango (1968)

La Filanda E Altre Storie (1972)

(P)1999 BMG Ricordi (Italy) (P)1999 BMG Ricordi (Italy)
1,La Cumparista (Questo Tango)
2,A Media Luz (Guardando Intorno A Te)
3,Bandoneon Arrabalero (Il Cantastorie...)
4,Inspiracion (La Mia Vita Cambiera)
5,Cielo Azzurro (Stanotte Sognero)
6,Adios Muchachos
7,Duelo Criollo (La Donna Del Buono A Nulla)
8,Rodriguez Pena (Rodriquez Morira)
9,El Choclo (All'osteria)
10,Blue Tango (Il Diario Sa)
11,Poema (So Che Nel Cielo)
12,Adios Pampa Mia
1,Il Filanda (E'ou Nau E')
2,La Nostra Storia D'amore (For All We Know)
3,Bella Ciao
4,Un Uomo In Meno (Les Jardins De Marmara)
5,Iptissam (Love's Song Adelina)
6,La Pianura
7,Sola
8,Surabaya Johnny
9,Uno Dei Tanti
10,Albergo A Ore
11,Bandoneon Abrabalero (Il Cantastorie...)
12,Mediterraneo
 ぶっちゃけ、ジャケ買いです。内容的にはご想像の通り。濃厚なタンゴの世界を、これまた濃厚な歌声のミルヴァが情熱的に歌い上げるコッテリ感てんこ盛りの1枚。ポップス的なアプローチを一切排して、あくまでも正統派の王道タンゴを聴かせまくります。個人的には、「タンゴ・イタリアーノ」みたいにポップな亜流タンゴの方が好きなんですけど・・・。  こいつもジャケ買い(笑)。でも、こっちは良いですよ。基本的にオリジナル・アルバムではなく、67年〜72年までに発表された作品から選曲されたベスト盤的な内容。シングル曲の他にも、第2次大戦中にパルチザンの愛唱歌として親しまれた#3やブレヒト作の#8、ジョニ・ミッチェルの大ヒット#2など日本人にもお馴染みの名曲のカバーが揃っています。

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