哀愁のマーゴット〜マーゴット・キダー
好きな映画女優は星の数ほど。しかし、中でも特に好きな人を挙げろと言われれば、迷わず彼女の名前を出す。マーゴット・キダー。一般には「スーパーマン」シリーズの女性記者ロイス・レイン役が有名だろう。ちょっとマニアックな映画ファンには「悪魔のシスター」('73)や「悪魔の棲む家」('79)といったホラー映画の主演女優としても馴染み深い。彫りの深い陰影のある顔立ちで、明るくて気の強いヒロインから暗い宿命を背負った女性まで幅広い役柄を演じることの出来る女優だ。
ただ、ボクがマーゴット・キダーを贔屓にしているのには特別な理由がある。それは、ボクがソビエト時代のモスクワに住んでいた少年時代にまで遡るのだ。当時、ジャーナリストだった父の友人に王(ワン)さんという、中国人の父親と日本人の母親の間に生まれた男性がいた。王さんの両親は、戦前に日本で知り合ったのだという。とにかく、王さんは当時ウクライナ共和国の首都キエフに住んでいた。モスクワに来ることの多かった王さんは生きた日本語を使うチャンスを捜しており、たまたまモスクワ市内のウルクライナ・ホテルのロビーで見かけた父に話しかけたのが、父と王さんの交流の始まりだったらしい。
王さんと父の付き合いは家族ぐるみとなり、王さん一家がモスクワの我が家を訪れる事もあれば、こちらからキエフを訪ねることもあった。王さんの奥さんはユダヤ系ウクライナ人。共に当時のソビエト社会ではマイノリティー(東洋人とユダヤ人)に属する夫婦だったが、一人息子にも恵まれ、幸福そのものの穏やかな一家だった。
王さんの奥さんは、時折一人でモスクワを訪れる事があり、その際にも我が家に寄ってくれた。当時マンガを描くのが大好きだったボクが廊下に寝そべって画用紙に絵を描いていると、それを覗き込んで笑顔で熱心に見てくれたものだった。スラリと背が高く、スリムで彫りの深い顔立ちの美しい人だった。そう、マーゴット・キダーはこの王さんの奥さんに容姿が非常に似ているのである。マーゴット・キダーの姿を見ていると、遥か遠くに過ぎ去った少年時代の異国の地の思い出が鮮やかに蘇ってくるのだ。
しかし、王さん一家との交流には予想もしなかった哀しい結末が待っていた。ある日突然、王さんの奥さんから一本の電話が入った。王さんが当局に逮捕されたというのだ。
当時、冷戦時代真っ只中のソビエトにおいて外国人と現地人との私的交流は非常に大きなリスクが伴うものだった。当局に知れれば、現地人はスパイ容疑でシベリア送りだし、外国人の方もただでは済まされない。そのため、父は細心の注意を払っていた。王さんからの連絡は外国人の宿泊するホテルの公衆電話からのみ。それも日本語で話さねばならない。なぜなら、我が家の電話は常にKGBに盗聴されていたからだ。そして、父が車で王さんを迎えに行き、車でアパートメントに戻ってくる。アパートメントの入り口には常に兵士が門番として監視しており、現地人の出入りは制限されていた。だが、外国人ナンバーの車に乗って入れば、さすがの門番にも気付かれない。
そこまでしていたのに、なぜ王さんが逮捕されたのか?実は、うちの両親は王さんの生活の足しにと、ルーブル紙幣をドル紙幣に換金してあげていたのだが、王さんはそのドル紙幣をさらに闇で高値で売っていたのだった。愛する家族に少しでも豊かな生活を、との思いだったのかもしれないが、そのリスクは余りにも大きかった。囮捜査に引っかかってしまったのである。
さらに、この事件の影響は我が家にまで波及してしまう。詳細については、いずれ父に回想録として書き残してもらいたいので割愛するが、結果として父はある事件をでっちあげられ、帰国時に当局ともめることとなった。当時、中学生だったボクは王さんが逮捕されてしまった事は理解していたが、その後の一連の出来事は全く知らされていなかった。子供に心配をかけまいとする両親の配慮だったろう。ただ、父の秘書だったロシア人女性オーリャさんが泣きじゃくっていた事はよく憶えている。ボクら一家が日本に帰ってしまうという事を悲しんでいるのだと思っていたが、その涙のワケがそれだけではなかった事は後々になって知った。
時は1983年。何も知らずに日本に帰国したボクは、日本の学校に馴染めずに腸炎を患ってしまうほど憂鬱な毎日を送ることになった。その年の9月には大韓航空機撃墜事件が起こり、大好きだったアバがその活動に終止符を打った。そういえば、マーゴット・キダーもこの年の「スーパーマンV」と「トレンチコート」を最後にキャリアの下り坂に入っていった。1983年、それはボクにとって古き良き少年時代に別れを告げた年だった。
さて、肝心のマーゴット・キダー。こうしたボクの極私的思い入れを別にしても、彼女は非常に興味深い女優と言える。1948年10月17日、カナダの小さな鉱山町イエローナイフに生まれたマーゴットは、幼い頃から内気な少女だった。鉱山技師だった父の転勤が余りにも多かった事も災いし、幼くして自殺未遂を起こすなど精神的に不安定な少女時代を過ごす。そんな彼女を心配した両親は、娘を寄宿学校に入れる。そこで学校劇に参加したことから女優を志すようになった。
16歳でロサンゼルスに移ったマーゴットは、エージェントと契約を結ぶことに成功し、ノーマン・ジュイソン監督の「シカゴ・シカゴ」('68・日本ではテレビ放送)で映画デビューを果たす。その後、演技の勉強をするためにニューヨークに移るものの、生活費が底をついてしまい、再びロサンゼルスに戻ってくる。そこで親しくなったのが、後に「悪魔のシスター」('72)で共演する事になる女優ジェニファー・ソルトだった。彼女の誘いでビーチ・サイドにあるロフト・ハウスに移る。ここで共同生活を送り、共に夢を語り合った仲間が、マーティン・スコセッシであり、ブライアン・デ・パルマ、スーザン・サランドン、そしてスティーブン・スピルバーグだった。そう、彼女は70年代のアメリカ映画界を背負って立つ事になる才能たちと深い親交があったのである。
ほどなくして、マーゴットはブライアン・デ・パルマ監督と恋人関係になる。そして、恋人マーゴットにデ・パルマは最高のクリスマス・プレゼントを贈る。映画「悪魔のシスター」('72)の主演である。しかも共演は大親友ジェニファー・ソルト。シャム双生児を題材にした猟奇的ムードとヒッチコックばりのショック演出で大絶賛されたこの作品で、マーゴットは一躍映画女優として認知されるようになる。
当時を知る人々によると、マーゴットは人一倍よく喋り、しょっちゅう下品なギャグを連発し、歯に衣着せぬ毒舌を吐き、誰よりもハードに働く豪快で自信家のタフな女性だったという。愛すべき姉御肌の女優として、誰もが彼女に魅了された。しかし、その一方で本人によると、当時から常に鬱病の不安に悩まされ続けていたという。
その後、デ・パルマと別れたマーゴットは、アイルランドにおけるテロの悲劇を描く問題作「地獄の殺戮都市」('73)やロバート・レッドフォードの恋人役を演じた「華麗なるヒコーキ野郎」('75)などに出演するものの、女優としては伸び悩む。「リーインカーネーション」('74)では老け役までやらされた。そして、彼女は女優としてのキャリアに見切りをつけ、作家兼脚本家トーマス・マクゲインとの結婚を機に映画界を引退してしまう。
しかし、マクゲインとの結婚生活は長く続かず、たったの1年で離婚してしまう。そんな時に舞い込んできたのが「スーパーマン」('78)のオーディションの話だった。リチャード・ドナー監督との相性も良く、見事ロイス・レイン役を勝ち取ったマーゴットは、この作品と後に続く一連のシリーズでようやくトップ・スターの座に上り詰める。
翌年には全米でベストセラーとなっていたノンフィクションの映画化「悪魔の棲む家」('79)に主演。さらに、ポール・マザースキー監督が「突然炎のごとく」のリメイクに挑戦した「危ない関係」('80)で、かつてジャンヌ・モローが演じたヒロイン役を演じる。ローマで撮影されたイタリアとの合作“Miss
Right”では、米・伊のトップ女優が共演する豪華キャストの中、数々の恋愛遍歴を重ねた主人公の男性がようやく出会う理想のヒロイン役で登場。
しかし、マルタ島で殺人事件に巻き込まれる女流作家をコミカルに演じたディズニー映画「トレンチコート」('83)を最後に、そのキャリアは下降線をたどる事となる。バート・ランカスターと共演した女版インディ・ジョーンズ「トレジャーinメキシコ」('85)もコケてしまい、活動拠点を母国のカナダに移す。その間、フランスの名匠フィリップ・ド・ブロカ監督(「まぼろしの市街戦」)と結婚したが、やはり1年で離婚。次第に活動の場をテレビに移していくようになる。
そんな彼女に大きな試練が訪れる。1992年、テレビ・ドラマの撮影中に交通事故にあったマーゴットは、半身麻痺の重傷を負ってしまう。しかも、保険会社が保険の適用を認めなかったために、莫大な治療費を払わざるを得なくなった彼女は自己破産してしまう。その後、リハビリと古くからの友人の助けで歩けるようになった彼女は、旧友リチャード・ドナー監督の「マーヴェリック」('94)へのカメオ出演でカムバックを果たす。
その後、順調に女優としてのキャリアを回復しつつあるように見えたマーゴットだったが、1996年に突然失踪してしまう。原因は幼少期より患ってきた躁うつ病だった。交通事故の影響もあって、より一層精神的に不安定になっていた彼女は、自分のパソコンがウィルスに冒された事をきっかけに誇大妄想を抱くようになる。最初の夫が自分を殺そうとしている、CIAが自分を狙っている・・・。肥大していった妄想は遂に限界に達してしまう。パニックに陥ったマーゴットは、身を隠すためにホームレスとなり、正体がバレないようにと髪をばっさりと切り落とし、差し歯まで全部抜いてしまった。そして、ロサンゼルスの路上で全裸で怯えているところを、パトロール中の警官に保護される。
実は、彼女は長年精神安定剤などの薬物による治療を受けてきたのだが、一時的な効果があるだけで根本的な解決にはなっていなかった。この事件をきっかけに、薬物以外の治療方法を模索したマーゴットは、ビタミンなどのオーガニックな栄養素のみで病気を治療する栄養療法と出会う。これが優れた効果を発揮し、現在ではほぼ完治している。残念ながら最近の日本公開作は殆どないものの、ここ数年は年に3〜4本もの映画出演をこなしている。
昔からハリウッドには波乱万丈の人生を送るスターが多いが、彼女ほど強烈な浮き沈みを経験している人はなかなかいないだろう。そして、そんなマーゴット・キダーの姿を見るたびに王さん一家の思い出も蘇り、なんだかいろいろな意味で切ない思いに駆られるのだ・・・。
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「地獄の殺戮都市」 |
「トレンチコート 危険な追跡」 |
「サバイバル・シティ」 |
「ホワイト・ルーム」 |
東北新社 (VHS) カナダ映画 | バンダイ (VHS) アメリカ映画 | パック・イン・ビデオ (VHS) カナダ映画 | パック・イン・ビデオ (VHS) カナダ映画 |
監督:ミラダ・ベッサダ 脚本:ジャック・グレイ 原作:アンドリュ0・ダルリンプル(戯曲) 撮影:ハリー・メイキン 出演:バリー・フォスター マーゴット・キダー ショーン・マッカン レオ・レイデン メル・タック ジョイス・カンピオン |
監督:マイケル・タシュナー 脚本:ジェフリー・プライス ピーター・シーマン 撮影:トニーノ・デッリ・コッリ 製作:ジェリー・レイダー 音楽:チャールズ・フォックス 出演:マーゴット・キダー ロバート・ヘイズ デビッド・スーシェ ジラ・フォン・ヴィーターシャウゼン ロナルド・レイシー ジョン・ジャスティン レオポルド・トリエステ |
監督:ロビン・スプリー 製作:ジャミー・ブラウン ロビン・スプリー 脚本:ジャミー・ブラウン 撮影:ロン・スタネット 音楽:ベン・ロウ 出演:マーゴット・キダー マイケル・サラザン アラン・スカーフ ケン・ポグー ジョン・ボーイラン |
監督:パトリシア・ロゼマ 製作:パトリシア・ロゼマ アレキサンドラ・ラッフェ 脚本:パトリシア・ロゼマ 撮影:ポール・サロッシー 音楽:ジェーン・タッターサル 出演:ケイト・ネリガン モーリス・ゴディン マーゴット・キダー シーラ・マッカーシー バーバラ・ゴードン |
アイルランドのベルファストを舞台に、ある平凡な一家の平凡な一日の裏に潜む悲劇を描く力作。マーゴットが演じるのは、テロに加担する兄に反感をむき出しにしてイギリス兵と付き合う気性の激しい娘ブリジットと、全く正反対に従順な双子の姉妹セルマ。別々に進行していた二人の一日がクライマックスに結びつき、登場人物の殆どが死んでしまうというショッキングな脚本は実に巧みでよく出来ている。邦題を見るとまるでB級アクションだが、ロッセリーニの「無防備都市」を思わせるようなリアリズムに徹した骨太なドラマ。隠れた名作。マーゴットの兄を演じるのは、当時デビッド・リーンの「ライアンの娘」やヒッチコックの「フレンジー」で大役を演じて注目されていたバリー・フォスター。 | マーゴットが演じるのは、完全にロイス・レインのイメージを引き継いだ、好奇心が強くておっちょこちょいでキュートなミステリー作家志望の女性ミッキー。彼女がネタ探しに訪れたマルタ島で殺人事件に巻き込まれるという犯罪コメディ。殆ど悪ノリってくらいのマーゴットのドジな素人探偵ぶりが絶妙。ディズニー映画らしく安心して楽しめる一本。共演は「フライングハイ」シリーズで当時ブレイクしていたロバート・ヘイズ。TVの名探偵ポワロ役で御馴染みのD・スーシェが地元刑事役で登場。その他、「インディ・ジョーンズ」1作目で顔が溶けたR・レイシーや往年の名作「バグダッドの盗賊」に主演したJ・ジャスティン、「イタリア式離婚狂想曲」や「明日を夢見て」などで有名なイタリアの名脇役L・トリエステなどが顔を見せている。また、撮影にフェリーニやセルジョ・レオーネ、ルイ・マルら巨匠と組んできたイタリアの名カメラマン、トニーノ・デッリ・コッリが参加しているのにも注目。 | こっちもマーゴットの役名はミッキー。今回のミッキーはやり手のバンク・ウーマン。正義感が強すぎるのが玉に瑕のパワフルな女性だ。一方、マイケル・サラザン演じるホーキンスはテレビの名物ニュース・キャスター。こちらは好奇心が強すぎるのが玉に瑕で問題ばかり起こしている。この二人が、たまたま乗り合わせた夜行列車でマイクロチップを巡る国家規模のスパイ事件に巻き込まれてしまう。ヒッチコック風のコミカルなサスペンス・スリラー。気が強くて出しゃばりで憎めないキャラクターはマーゴットの真骨頂。もう絶好調ってくらいにキュートです。共演のサラザンは70年代の青春スター。マーゴットとは「リーインカーネーション」で共演している。 |
「私は人魚の歌を聞いた」('87)で有名なパトリシア・ロゼマ監督が、殺人事件を偶然に目撃した内気な青年と世間から隔絶されて生きる謎の女性との微妙な関係を描くシュールなドラマ。どこか御伽噺のような雰囲気のある作品で、パッケージで謳っているようなエロティック・スリラーなどではない。殺人事件はただのきっかけに過ぎない。社会に適応できない繊細な男女の綴る哀しいファンタジーと呼んだ方がいいだろう。マーゴットが演じるのは殺人事件の被害者である人気ロック・スター、マデリーンX。出番は冒頭の数分だけで、顔もよく見えない程度の出演。ヒロインを演じるのはフランク・ランジェラ版「ドラキュラ」('79)のルーシー役が有名な名脇役女優ケイト・ネリガン。「私は人魚の・・・」の主演で一躍有名になった女優S・マッカーシー(「ダイ・ハード」でハリウッド進出して失敗)も顔を出している。 |
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Miss Right (1982) |
「悪魔の棲む家」 |
Quackser Fortune Has a Cousin in the Bronx (1970) |
Crime and Punishment (1994) |
(P)2003 Legacy Entertainment (USA) | (P)2005 MGM Home Entertainment (USA) | (P)1999 VCI Home Entertainment (USA) | (P)2004 ILC Ltd. (UK) |
画質★★☆☆☆ 音質★★☆☆☆ | 画質★★★★★ 音質★★★★★ | 画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆ | 画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆ |
DVD仕様(北米盤) カラー/スタンダード・サイズ/96分/モノラル/地域コード:ALL/イタリア映画 |
DVD仕様(北米盤) カラー/ワイドスクリーン/119分/5.1chサラウンド/英語、フランス語、スペイン語字幕/地域コード:1/アメリカ映画 映像特典 オーディオ・コメンタリー(H・ホルザー博士) メイキング・ドキュメンタリー ラジオ・スポット集 劇場予告編 |
DVD仕様(北米盤) カラー/ワイドスクリーン/モノラル/英語音声/字幕なし/地域コード:ALL/88分/製作:アイルランド 映像特典 劇場予告編 バイオグラフィー |
DVD仕様(イギリスPAL盤) カラー/スタンダード・サイズ/ステレオ/英語音声/字幕なし/地域コード:ALL/126分/製作:アメリカ・ポーランド・ロシア |
監督:ポール・ウィリアムス |
監督:スチュアート・ロゼンバーグ 製作:ロナルド・サラノ エリオット・ゲイシンガー 脚本:サンドー・スターン 原作:ジェイ・アンソン 撮影:フレッド・J・コーエネカンプ 音楽:ラロ・シフリン 出演:ジェームズ・ブローリン マーゴット・キダー ロッド・スタイガー マレー・ハミルトン ドン・ストラウド ヘレン・シェイバー |
監督:ワリス・フセイン 製作:ジョン・H・クシンガム メル・ハワード 脚本:ガブリエル・ウォルシュ 撮影:ギルバート・テイラー 音楽:マイケル・ドレス 出演:ジーン・ワイルダー マーゴット・キダー アイリーン・コルゲン シーマス・フォード メイ・オリス リズ・デイヴィス |
監督:メナハム・ゴーラン 製作:エフゲニー・アフニーフスキー メナハム・ゴーラン 原作:フョードル・ドストエフスキー 脚本:メナハム・ゴーラン ジョセフ・ゴールドマン 撮影:ニコラス・ジョセフ・フォン・スタンバーグ 音楽:ロバート・O・ラグランド 出演:クリスピン・グローヴァー ヴァネッサ・レッドグレーヴ ジョン・ハート マーゴット・キダー ジョン・ネヴィル ソフィー・ワード パトリシア・ヘイズ セオドア・バイケル リチャード・リンチ |
ローマに住む特派員テリーが、次々と美女と知り合って酷い目にあうというラブ・コメディ。どうでもいい恋愛論や人間観察がスノッブなインテリ風にとくとくと語られる脚本は退屈そのもの。主演・脚本のウィリアム・テッパーの自己満足でしかないクソ映画。ウッディ・アレンかピーター・セラーズ辺りでも狙ったのだろうけど、あまりにも身の程知らずだったね、テッパー君。今はいずこへ?P・ウィリアムズ監督(あのシンガー・ソングライターとは別人)の演出もヘッポコそのもの。編集まで意味不明。しかし、女優陣の豪華な顔ぶれは凄い。マーゴットは、テリーの理想の女性ジュリエットを演じる。イタリア映画ファンとしては、ローマの街角にマーゴットの姿という光景だけで感無量。ヒステリックなアメリカ女に何故か70年代に絶大な人気を誇ったK・ブラック。頭のおかしいフランス女に「真夜中の向こう側」で有名なM=F・ピジェ。ゴージャスな有閑マダムに「王妃マルゴ」のカトリーヌ・ド・メディチ役でカムバックしたイタリアの誇る大女優V・リージ。そのリージと「スキャンドール」で共演したC・ゴールドスミスに「悪魔のはらわた」の人造美女D・D・ラッザーロ。さらに、イギリスの名女優ジェニ・アガターがカメオ出演というオマケ付き。満腹です。DVDの画質はVHS並み。 | 日本でも公開当時話題となったホラー映画。ニューヨーク州に実在する家で実際に起こったとされる事件を描く作品で、ベストセラーとなった原作ノンフィクションの真偽性については未だに論議の的となっている。長男による一家惨殺事件のあった家に越してきたラッツ一家が体験する奇妙な出来事の数々。実はこの家の建っている場所は、悪魔の棲む呪われた土地だった・・・。マーゴットが演じるのはラッツ一家の母親。作品としては、実話の映画化という話題性がなければヒットしたかどうかも疑わしいような出来映えだが、明朗快活な主婦が身の回りで起こる不可解な現象と次第に精神を病んでいく夫の奇妙な行動に追い詰められていく過程をリアルに演じるマーゴットの演技力は見事。監督は「暴力脱獄」や「マシンガン・パニック」で知られる男気監督スチュアート・ローゼンバーグ。夫役のジェームズ・ブローリンは当時タフ・ガイ俳優として人気絶頂で、現在ではバーブラ・ストレイサンドのダンナとしても有名。「真夜中の大捜査線」でアカデミー主演男優賞を受賞したR・スタイガーが神父役で顔を出す。この北米盤DVDにはドキュメンタリーが映像特典でついており、すっかり元気で豪快なオバさんとなったマーゴットが登場する。 | 「俺たちに明日はない」やメル・ブルックスの「プロデューサーズ」で当時個性的なコメディ俳優として注目を集めていたジーン・ワイルダーと共演した小粒なコメディ映画。マーゴットが演じるのはアメリカからアイルランドのダブリンにやって来た交換留学生ザゼル。彼女は馬糞を拾っては肥料として売っている貧しい青年クアックサー・フォーチュン(G・ワイルダー)と知り合い、教養はないが純朴で真面目な彼に強く惹かれていく。貧しい労働者階級に生まれ、工場で酷使される父親のような惨めな人生を送るよりは、たとえ馬糞拾いでも自由に稼げる仕事をして、将来は事業を起こしたいと考える青年。遊ぶことしか頭にない退屈な学生仲間に辟易していた聡明な女学生。どう考えても不釣合いな二人はお互いに共感しあうものの、厳しい社会の現実が二人の前に立ちはだかる。ほろ苦いタッチの社会派ラブ・コメディで、地味ながらも心に残る佳作。全米脚本家組合賞の最優秀コメディ脚本賞にノミネートされている。マーゴットは当時まだ21歳。爽やかで聡明で溌剌とした女学生役を生き生きと演じており、とても美しい。 |
80年代に巨匠の名作から低予算のB級作品まで、大量の娯楽映画を世に送り出したキャノン・グループの総裁メナハム・ゴーランが自らメガホンを取った作品。ゴーランの無節操なまでの大量生産体制には批判も多いが、個人的にはそのラインナップに彼のディープな映画マニアぶりが伺えて、実は非常に好きな映画人だったりする。本作は1994年に撮影されたものの、直後に当時彼が経営していた21世紀ピクチャーズが倒産してしまい、そのままお蔵入りしていたという曰くつきの作品。2002年にようやく陽の目をみる事となったため、多くの資料では2002年製作と記されている。ドストエフスキーの原作を2時間強に収めてしまうという強引な脚本だが、逆に映画作品としては無駄なくまとまっている。また、舞台設定を共産党崩壊直後のロシアに移しており、当時の世相を色濃く反映した非常に野心的な作品と言える。強引な資本主義への移行についていくことができず、社会の底辺でもがき苦しむ当時のロシアの一般庶民の生活を随所に織り込み、ドストエフスキーの原作とはまた違った味わいの問題作に仕上がっている。マーゴットは貴族の血筋であるという誇りだけを心の拠所にして貧しさと苦闘するマルメロドフ夫人役を熱演している。 |
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デリバリー |
The Hi-Line (1999) |
ダークサイド |
(P)2004 First Look (USA) | (P)2004 RDE (USA) | (P)Cloud Ten Pictures (Canada) |
画質★★★★☆ 音質★★★★☆ | 画質★★★★★ 音質★★★★☆ | 画質★★★★☆ 音質★★★★☆ |
DVD仕様(北米盤) カラー/ワイドスクリーン/ステレオ/英語音声/字幕:スペイン語/地域コード:1/97分/製作:アメリカ 映像特典 予告編 スチル・ギャラリー フィルモグラフィー |
DVD仕様(北米盤) カラー/ワイドスクリーン/ステレオ/英語音声/字幕なし/地域コード:1/93分/製作:アメリカ 映像特典 メイキング・ドキュメンタリー レイチェル・リー・クック インタビュー 未公開シーン集 |
DVD仕様(北米盤) カラー/ワイドスクリーン/ステレオ/英語音声/字幕なし/地域コード:ALL/97分/製作:アメリカ 映像特典 メイキング・ドキュメンタリー 予告編 |
監督:ポール・ジラー 製作:ブルース・ハーヴェイ 脚本:デヴィッド・シュルツ 原作:パブロ・ダミーコ エマヌエラ・ミアーニ 撮影:ジェームズ・ジェフリー 音楽:ニール・スモラー 出演:ロレイン・ブラッコ マーゴット・キダー ジェイソン・ゲドリック ジョン・ハード R・H・トンプソン |
監督:ロン・ジャドキンス 製作:モリー・M・メイユー コリン・ウォルシュ・フィリップス 脚本:ロン・ジャドキンス 撮影:ウォリー・フィスター 音楽:ジョン・ハック 出演:レイチェル・リー・クック ライアン・アロシオ マーゴット・キダー タントー・カーディナル スチュアート・マーゴリン ライナー・ジャッド |
監督:アンドレ・ヴァン・ハーデン 製作:ピーター・ラロンデ ポール・ラロンデ 脚本:ピーター・ラロンデ ポール・ラロンデ 撮影:ジョージ・イリ・ティール 音楽:ゲイリー・コフティノフ 出演:ゲイリー・ビジー ハウイ・マンデル マーゴット・キダー ニック・マンクーソ シェリー・ルイス |
児童虐待問題に取り組む女性ジャーナリスト(ロレイン・ブラッコ)は、ある取材を通じて養子エージェントが闇で赤ん坊を売買しているという事実を突き止める。そして、その闇ルートに医師が関係していると知った彼女は、死産だった自分の子供が本当は生きているのではないかという疑問を抱く・・・。アメリカでは既に一般的となっている養子縁組。その闇の部分にスポットを当てたサスペンス・スリラーで、随所にご都合主義的な甘さが散見されるものの、なかなか見応えのある作品に仕上がっている。もともとテレビ映画として制作されており、2時間ドラマとしては優れた作品だろう。マーゴットはヒロインの取材を助ける女刑事役。男勝りで口は悪いが人情味溢れる豪快なオバサン刑事(デカ)で、ロイス・レインが年取ったらこうなるのかなあ、といった感じで微笑ましい。悪徳医師を演じるのは、かつてマーゴットの夫だったジョン・ハード(たった3日間で離婚している)。80年代にアイドル・スターとして売り出したジェイソン・ゲドリックが、赤ん坊を売買する安っぽいチンピラ役を演じている。 | モンタナ州の小さな町。無職の若い娘ヴェラのところへ、サムという青年が訪ねてくる。最初は近隣の町にある大手スーパーの人事担当者を名乗っていた彼を、ヴェラの両親は不審に思って警戒する。その両親の不安が的中するかのように、サムはある男からの手紙を預かってきている事を告げる。その手紙とは、獄中で死亡したヴェラの実の父親からのものだった。ショックを受けたヴェラは、まだ生きているという実の母親をサムと共に捜すことにする。そして、遂に居場所を突き止めた実の母親は、ブラックフット族のネイティブ・インディアンだった・・・。本当の家族とは何なのかという事を、ゆっくりと静かに語る繊細な作品。ストーリーにほとんど起伏がないため、好き嫌いの分かれる作品だろうとは思う。マーゴットはヴェラの育ての母親役で、愛しい娘が遠くへ行ってしまうのではないかという不安に怯える平凡な主婦を演じている。ちなみに、このDVDにはヴェラ役のレイチェル・リー・クックの実母がインタビューに登場するが、本当に血が繋がっているとは思えないような巨漢のオバサンだった(笑)。 | 90年代後半から宗教色の強いSFやホラー映画を製作し、アメリカのビデオ・マーケットでは絶大な支持を得ているクラウド・テン・ピクチャーズの作品。殆どキリスト教原理主義者のプロパガンダとしか思えない内容で、冷静に見れば非常に滑稽でバカバカしい。マスメディアを操る悪魔が神を信じない大衆を欺き世界を支配する。神を心から信じる少数の人々が、いわゆるパルチザンとなって悪魔の謀略から世界を救うというもの。主人公は現実主義者の刑事トム。マーゴットはその姉で敬虔なカトリック信者を演じる。宗教は自由だが、聖書に書かれている奇跡は比喩であり、現実に起こったことではない。神なんか本当に存在するわけではない、と語るトムに、とんでもない、聖書に書かれていることは一字一句全て本当に起きたことの記録なのよ!今に見ていなさい、とんでもない事が起きるわ!と語る姉の言葉通りに悪魔の世界支配が起きてしまう。神や聖書を信じないと世界は破滅する、というメッセージを強引に押し付ける、相当に荒唐無稽な作品。低予算ゆえにSFXもしょぼければ、脚本もご都合主義そのもので、見るに耐えない。 |
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