マカロニ・ウェスタンとタンゴ〜ルイス・バカロフ

 ヨーロッパ最大の映画大国イタリアは、同時に映画音楽大国でもある。エンニオ・モリコーネ、ニーノ・ロータといった世界に名だたる巨匠を生み出し、アカデミー賞を受賞した作品も少なくない。美しく憶えやすいメロディ、ポップで大衆的な音楽性、洗練されたアレンジ、奇想天外で実験性の高い創造性、イタリア映画音楽の魅力は実に様々で多面的である。特にシンフォニックで機能性を重視しがちなハリウッド映画の音楽に比べ、イタリア映画は音楽に親しみ、音楽と密接に結びつき、音楽に雄弁に語らせる。時として、音楽が映画の完成度を左右することさえある。そのルーツはオペラの伝統の中にも見出せるだろう。
 そんなイタリア映画界からオスカーを受賞した経歴の持ち主の一人がルイス・バカロフである。バカロフといえば、そのオスカーを受賞した「イル・ポスティーノ」('94)のイメージが強く、多くの映画ファンにはオーソドックスな映画音楽を手掛ける作曲家と認識されているかと思われる。確かに、80年代以降のバカロフは、叙情的でノスタルジックでエスプリの効いた品の良いスコアを書き、国際的にも高く評価されてきた。また、近年はオペラ・タンゴと呼ばれるアルゼンチンタンゴとクラシックを融合したオペラや、室内楽を精力的に手掛けており、今や大作曲家の風格を漂わせている。
 しかし、古くからのファンにとってバカロフは、60年代から70年代にかけて手掛けたマカロニ・ウェスタンや刑事アクション、コメディといった娯楽映画こそが真骨頂。基本的に、非常に繊細で叙情性豊かな作曲家なのだが、センチメンタリズムに流されるギリギリ手前のところで絶妙な抑制をきかせ、驚くほどクールで骨太な一面も見せる。その辺りはモリコーネの個性と非常に近いと言えるかも知れない。

 バカロフとモリコーネは実は共通点が多い。もともと、RCAのアレンジャーとしてスタートしたバカロフだったが、当時RCAの看板アレンジャーとして活躍していたのがモリコーネだった。カンツォーネの作曲家として名を上げ、映画界へ進出していったモリコーネだったが、バカロフも全く同じ道を歩む。そして、共にマカロニ・ウェスタンの音楽で一躍知られるようになるのだ。
 バカロフの代表作の一つである「群盗荒野を裂く」('67)には、モリコーネが監修として名を連ねている。しかし、実際にはモリコーネはこの作品に一切タッチをしてなかった。興行的な理由からモリコーネの名前がクレジットに欲しかったプロデューサーが監修を依頼したのだが、バカロフが作曲を手掛けると知ったモリコーネは名前を使うことは許可したものの、“バカロフなら大丈夫だ”と言って監修の仕事は拒否した。
 マカロニ・ウェスタン全盛期には多くの作曲家がウェスタンを手掛けたものの、その殆どがモリコーネの真似事に終わってしまった。そんな中で、バカロフはモリコーネに匹敵するオリジナリティーを発揮し、偉大な業績を残した数少ない作曲家の一人だった。それを考えると、非常に興味深いエピソードと言えるだろう。
 また、先述の「イル・ポスティーノ」にしても、当初はモリコーネが手掛ける予定だったものが、スケジュールの都合がつかずバカロフのもとに回ってきた仕事だった。そして、バカロフはいまだにモリコーネが手にしていないオスカー像を手中にしたのだった。

 バカロフは1933年8月30日、アルゼンチンはブエノスアイレスに生まれた。そう、彼はイタリア人ではない。本名はルイス・エンリケ・バカロフ。5歳の頃から音楽を学び、10代の頃からピアニストとしてクラシックから現代音楽まで幅広いジャンルの音楽を演奏するようになる。そして、スペイン、フランスと渡り歩いた末に、1959年ローマに定住する。
 当時はイタリア映画黄金期。翌年にはフェリーニの「甘い生活」('60)でイタリア映画は頂点を迎える。映画音楽のレコーディング・ミュージシャンとして日銭を稼ぐようになったバカロフは、大物作曲家ジョヴァンニ・フスコの紹介でクラウディア・カルディナーレ主演の「鞄を持った女」('60)の主題歌のアレンジを任される。これがイタリア国内で爆発的なヒットとなったことから発売元のRCAと契約を結び、数多くのカンツォーネのアレンジを手掛けるようになった。
 そして、ダミアーノ・ダミアーニ監督の「禁じられた抱擁」('63)でリタ・パヴォーネが歌う主題歌のアレンジを依頼された際に、交換条件としてスコアの作曲を任せてくれとダミアーニ監督に交渉。これが実って、念願の映画音楽作曲家としてデビューすることとなった。

 その翌年、パゾリーニ監督の「奇跡の丘」('64)で初めてオスカーにノミネートされるが、これはあくまでアレンジャーとしての評価。作曲家として注目されるようになったのは、フランコ・ネロ主演のマカロニ・ウェスタン「続・荒野の用心棒」('66)だった。監督は“もう一人のセルジョ”ことセルジョ・コルブッチ。セルジョ・レオーネ監督の「荒野の用心棒」(モリコーネの出世作)がマカロニ・ウェスタンの名を世界に知らしめた金字塔的作品ならば、「続・荒野の用心棒」はマカロニ・ウェスタン・マニアのバイブル的作品と言えるだろう。主題歌“ジャンゴのテーマ”の男気溢れる哀愁のメロディは、マカロニ・ファン永遠のテーマ・ソングとなった。

 当時モリコーネの独壇場だったマカロニ・ウェスタンの音楽で、バカロフが独自の地位を築くことが出来たのは、ひとえに彼のラテン・アメリカ音楽への深い造詣にあったと言える。アルゼンチンのラジオ局で仕事をしていた頃にアメリカ西部及びラテン・アメリカの古い大衆音楽を研究していたバカロフにとって、マカロニ・ウェスタンのブームは願ってもないチャンスだったろう。「群盗荒野を裂く」や「英雄たちの黄金」('70・日本未公開)で聴かせる荒々しいリアリズムは、モリコーネとはまた違った魅力。その一方で、「怒りのガンマン/銀山の大虐殺」('72)ではモリコーネもぶっ飛ぶようなドラマチックで哀愁溢れる壮大なスコアを聴かせてくれる。
 その他、マカロニ・ウェスタン以外でも、数多くの優れたスコアを手掛けたバカロフだったが、70年代に入ると次第に映画音楽から遠のいていってしまう。

 イタリア映画の斜陽化が著しくなると、モリコーネやアルマンド・トロヴァヨーリ、ピエロ・ピッチョーニといった一部の作曲家以外は、次第に作品に恵まれなくなっていく。多くの作曲家が低予算のソフト・ポルノやエログロ映画を手掛けるようになる中で、バカロフは再びカンツォーネの世界に戻っていく。ミア・マルティーニなどの人気スターのアレンジを手掛ける一方で、オーケストラ指揮者として演奏活動を行っていたバカロフ。南米を演奏旅行中に、フェリーニの新作の作曲依頼が舞い込む。フェリーニ映画の音楽といえばニーノ・ロータが手掛けるのが通例。バカロフは首を傾げる。そのとき初めて、彼はロータの死を知った。
 実はその数年前、たまたま同じスタジオで「フェリーニのカサノバ」の音楽のレコーディングをしていたロータに声をかけられたバカロフは、“この男には才能がある”とフェリーニに紹介されていた。そのときのことを憶えていたフェリーニが、ロータの後継者としてバカロフを指名してきたのだった。
 その作品が「女の都」('80)。結果として、あまりにもロータの作品を意識しすぎてしまったバカロフだったが、これを機にヨーロッパ各国からアート志向の強い作品の依頼が舞い込むようになる。作風こそガラリと変わってしまったが、映画スコアとしてはより完成度の高い作品を次々と発表していく。そんな中の傑作が、ディアーヌ・キュリ監督のフランス映画「女ともだち」('84)。シャンソン風のノスタルジーと、イタリア的な甘いセンチメンタリズムが溶け合った極上のスコアだった。
 「イル・ポスティーノ」でオスカー受賞後は、イタリア、フランス、そしてアメリカと、文字通り世界各国の映画音楽を手掛けている。自身のルーツであるアルゼンチン・タンゴに原点回帰しながらも、その一方でニーノ・ロータやカルロ・ルスティケッリ、ジョヴァンニ・フスコといった古き良き時代のイタリア映画音楽の伝統も確実に継承しており、モリコーネに匹敵するイタリア映画界の至宝として、今後もその精力的な活動に期待したい名匠と言えるだろう。

 

LONELY_HEART.JPG ROMA_BENE.JPG SCATENATO.JPG

ロンリー・ハート
Cuori Solidari(1970)

ローマ・ベーネ
Roma Bene(1971)

スキャッテナート
Lo Scatenato(1967)

(P)1998 Avanz Records (Japan) (P)2004 Avanz Records (Japan) (P)2002 Avanz Records (Japan)
1,Paranagua (Version 1)
2,To The Barren Moor
3,Fino all'orizzonte (Main Title)
4,Cuori Solitari (S.h.a.d.o.)
5,Cuori Solitari (Military Shake)
6,Cuori Solitari (Kali)
7,En Plen Air (Version 1)
8,Paranagua (Version 2)
9,Cuori Solitari (Casanova)
10,Fino all'orizzonte (reprise)
11,Cuori Solitari (Night club 1)
12,En Plen Air (version 2)
13,Cuori Solitari (Mystery)
14,Paranagua (version 3)
15,Fino all'orrizonte (reprise)
16,Cuori Solitari (Night club 2)
17,Cuori Solitari (party)
18,Cuori Solitari (Night club 3)
19,Paranagua (Instrumental version)
20,Fino all'orizzonte (End titles)
21,En Plen Air (Long version)
1,Down Memory Lane
2,Boulders Movement (part 1)
3,Uma bossa pra Dede
4,Blue Eggs and Ham
5,Rhythm
6,Sylvia's Earrings
7,Boulders Movement (part 2)
8,Una villa bene
9,Don't Put Me Down
10,Uma bossa pra Dede (Movie version-take 1)
11,Una villa bene (Longer-movie version)
12,Roma bene (Bossa slow)
13,Rhythm (Instrumental-movie version)
14,Sylvia's Earrings (Longer-movie version take2)
15,Una villa bene (Longer-movie version take 2)
16,Uma bossa pra Dede (Movie version-take 2)
1,Lo scatenato (Main Titles)
2,Lo scatonato (Love Theme Beat 1)
3,Lo scatonato (Main Theme)
4,Lo scatonato (Love Theme Beat 2)
5,Lo scatonato (Tango & Sex)
6,Lo scatonato (Love Theme Slow)
7,Lo scatonato (Main Theme 2)
8,Se chiudi gli occhi (Complete Version)
9,Lo scatonato (Tango & Sex 2)
10,Lo scatonato (Main Theme 3)
11,Se chiudi gli occhi
12,Lo scatonato (Main Theme 4)
13,Lo scatonato (Love Theme Beat 3)
14,Lo scatonato (Main Theme 5)
15,Se chiudi gli occhi (Version 2)
16,Lo scatenato (Main Theme 6)
17,Se chiudi gli occhi (Slow)
18,Se chiudi gli occhi (Complete Version Take 2)
 イタリアの誇る大スター、ウーゴ・トニャッツィとハリウッドでも活躍した美人女優センタ・バーガー主演の日本未公開セックス・コメディのサントラ。ストリングスとクラリネットの音色が甘酸っぱくも爽やかなメロディを紡ぎだす、ノスタルジックなソフト・ロック・テイスト溢れる#7、#12、#21がとにかく素晴らしい。気だるい男女のスキャットが絡むグルーヴィーなボサノヴァ#1、#8、#19やバロック風オルガン・ナンバー#9など、バカロフのメロディ・メーカーとしての才能とモダンな感性が十二分に生かされている。全編イージー・リスニング・アルバムとしても楽しめる傑作。  センタ・バーガー、ヴィルナ・リージ、フィリップ・ルロワ、イレーネ・パパス、ニノ・マンフレディとオール・スター・キャストを揃えた名匠カルロ・リッツァーニ監督の風刺コメディのサントラ。全体にロック色が強いサイケデリックな仕上がり。ブラジルの大スター、トッキーニョの奏でるギターが最高にグルーヴィーなアップテンポ・ボサ#3、#10、#16が聴きもの。突き抜けるようなストリングスと女声スキャットにサックスが絡む辺りの高揚感は筆舌に尽くしがたい。  ポップでキッチュでダンサンブルなメイン・テーマがむちゃくちゃ楽しいカラフルなサントラ。マンシーニの「子象の行進」のような、シャレの分る大人のセンス。ダンディでとぼけた男性のつぶやき声とビート系タンゴ(?)が絶妙に絡み合う粋でふざけた#5や優雅なラウンジ・ボサ#8、#11、#15、#17、#18辺りもラウンジ・ジャズやイージー・リスニングファンにはたまらんだろう。全編通じて、実に様々な楽器をちりばめており、遊び心溢れたサントラに仕上がっている。映画の方は大スター、ヴィットリオ・ガスマンとハリウッド女優マーサ・ハイヤーを配した近未来風モダン・コメディ。

 

WESTERN.JPG GRANDE_DUELLO.JPG WE_STILL_KILL.JPG LAST_CHANCE.JPG

The Italian Western of
Luis Bacalov

怒りのガンマン/銀山の大虐殺
Il Grande Duello (1972)

悪い奴ほど手が白い
A ciascuno il suo (1966)
Una questione d'onore (1965)

最後の大犯罪
L'ultima chance (1973)

(P) Vivi Musica (Italy) (P)2003 Rambling Records (Japan) (P)1995 Point Records (Italy) (P) 2002 GDM Music (Italy)
Django (1965) 続・荒野の用心棒
1,Django (Instrumental)
2,La corsa
3,Town of Silence
4,El Pajarito
5,Vamos muchachos!
6,Django (Vocal)(Robert Fla)
Quien Sabe? (1967) 群盗荒野を裂く
7,Quien sabe?
8,La fusilacion
9,Fiesta en San Miguel
10,Al treni
11,Ya me voy
La piu grande rapina del west (1967) 荒野の金貨
12,Titoli
13,Mistero
14,Saloon Polka
15,Insequimento a cavallo
16,Square Dance
L'oro dei bravados (1971)
17,Titoli (Adios, tierra mia)
18,Minaccia
19,Duello
20,Adios, tierra mia!
Si puo fare amigo... (1972)
21,Can Be Done (Vocal)(Rocky Roberts)
22,Suspense/Pianino pianino/Suspense/Finale
Sugar Colt (1966) 必殺の用心棒
23,Titoli
24,Dislocamento
25,Polka Saloon
26,L'onore
27,Misteriosa attesa
28,La gloria
1,Il grande duello (Parte prima)
2,Il grande duello (Parte seconda)
3,Il grande duello (Parte ferza)
4,Il grande duello (Parte quarta)
5,Il grande duello (Parte quinta)
6,Il grande duello (Parte sesta)
6,Il grande duello (Parte settima)
7,Il grande duello (Parte ottava)
8,Il grande duello (Parte nona)
10,Il grande duello (Parte decima)

A Ciascuno il suo 悪い奴ほど手が白い
1,A ciascuno il suo
2,Delitto d'onore
3,L'arresto
4,Samba
5,A ciascuno il suo
6,Pour reve l'hiver
7,Tema di Laurana
8,Jazz Club
9,A ciascuno il suo
10,Samba (finale) -mix 1-
11,Il sospetto di Laurana
12,Intrigo
13,Suite
14,L'imboscata
15,Sulla Spiaggia
16,L'aggressione
17,Samba (finale) -mix2-
Una questione d'onore
18,Una questione d'onore
19,Teste dure
20,Domenica angela (tema d'amore)
21,Una banda per un assassinio
22,Mosche e pure
23,West Sardinia
24,Serenata
25,La festa
26,Valzer per una pecora
27,Anice nuraghi
28,Modi loro
29,Finale

1,The Last Chance (Main Title)
2,The Last Chance (Dramatic sequence)
3,Motel Theme
4,The Last Chance (Love theme reprise)
5,To The City
6,The Last Chance (Violence sequence)
7,The Last Chance (Love theme reprise 2)
8,Un griorno a los angeles
9,Skier's Holiday
10,The Last Chance (Love and menace)
11,Montreal Non Stop
12,Caribo's Waves
13,The Last Chance (Love theme Finale)
 バカロフの手掛けたマカロニ・ウェスタン6本分のサウンドトラックを収めたお徳用コンピ。各作品の聴き所はきっちり押さえてあるので、全スコアをコンプリートしたいというわけでなければ、これ一枚で事足りるだろう。やはり一番の聴きものは「続・荒野の用心棒」のテーマ。本格的なメキシコ音楽をモチーフにした「群盗荒野を裂く」やバンジョーの音色も軽やかな「荒野の金貨」のテーマなど、非常にストレートなアプローチのウェスタン作品が集められているため、イタリア映画らしいポップなサントラを期待する向きには期待はずれかもしれない。メキシコやアメリカ西部の古典音楽に精通したバカロフならではの、シリアスなスコアが満載だ。  これを傑作と呼ばずして何と呼ぼう。タランティーノの「キル・ビルVol.1」で、オーレン・イシイの回想アニメのBGMとして大胆に使用されたので聴き覚えのある人も多いだろう。モリコーネもぶっ飛ぶような、ドラマチックで哀愁感溢れる壮大なスコア。ストリングスのこみ上げるような悲壮感に満ちた美しいメロディと、スキャットの女王エッダ・デル・オールソの突き抜けるようなソプラノが聴く者の感情を高揚させる。ハリウッドのウェスタンでは絶対に聴くことのできない、マカロニ・ウェスタンならではのスコアと言えるだろう。マカロニ・ファンのみならず、全ての映画音楽ファンにお薦めしたい。  バカロフが手掛けたサントラ2作品のカップリング。メインは「悪い奴ほど手が白い」。ニノ・ロータの「ゴッド・ファーザー愛のテーマ」を思わせる重厚で美しいメロディ・ラインが印象的なテーマ曲も素晴らしいが、何と言っても傑作はそのサンバ・バージョン#4、#10、#17。歯切れの良いパーカッションに乗せて奏でられるハモンド・オルガンの哀愁溢れるキャッチーなメロディ。グルーヴィーでクールで、どことなくバロック風な雰囲気さえ漂う。クラブ・ユースにも最適なキラー・チューンだ。カップリングの"Una questione d'onore”は日本未公開のコメディ。全体的に牧歌的な仕上がりで、バカロフ作品としては可もなく不可もなくといったところ。  日本ではテレビ放送されたイーライ・ウォラック、ウルスラ・アンドレス、ファビオ・テスティ主演の犯罪アクション映画のサントラ。アクション映画らしからぬ甘く切ないテーマ曲。後のピノ・ドナッジョ作品を思わせるような、どこか寒々しささえ感じさせる美しいメロディが印象に残る。バカロフのロマンティスト的側面が生かされた作品と言えるだろう。ただ、全体的には躍動感に欠けるため、アルバムを通して聴くと単調に感じられるかもしれない。

 

SUMMERTIME_KILLER.JPG CITY_OF_WOMEN.JPG ANNI_RIBELLI.JPG IL_POSTINO.JPG

サマータイム・キラー
Ricatto alla mala (1972)
傷だらけの刑事(でか)
La polizia e al servizio del cittadino?(1973)

女の都
La citta delle donne (1980)

Anni ribelli (1994)

イル・ポスティーノ
Il postino (1994)

(P) 1995 Point Records (Italy) (P) 1997 CAM (Italy) (P) 1994 CAM (Italy) (P)1994 CAM (Italy)
Ricatto alla mala
1,Run and Run
2,Like A Play
3,The Summertime Killer
4,Motorcycle Circus
5,Lisboa's Tram
6,The House on the Lake
7,Like A Play
8,Run And Run
9,The Summertime Killer (Suite)
La polizia e al servizio del cittadino?
10,La polizia e al servizio del cittadino? (titoli)
11,Indagando
12,Criminalita urbana
13,Attesa ossessiva
14,Di notte, Genova
15,Il killer
16,Un uomo solo contro la citta
17,La polizia e al servizio del cittadino? (finale)
1,La citta delle donne
2,Panna e mirtilli
3,La variazioni della massaia
4,Hotel la grande valse
5,Snaporaz's trip
6,La festa
7,Katzone's Kanzone
8,La citta delle donne
9,Le soubrettine
10,Il sogno di snaporaz
11,Il cinema
12,Voci nella citta delle donne
13,Senza stelle
1,La primavera del 55 (Tango)
  performed by Milva
2,Anni ribelli (titoli)
3,Dedicato a lagos (zamba)
4,Laura's Mirror
5,Ritratto di Laura
6,L'attesa
7,Barrio norte
8,Equinas de Buenos Aires
9,Laura's Solitude
10,Primavera del 55 (variazione 1)
11,Miloga del atardecer
12,Domino
13,Baiao de la carambola
14,Herrings and Shearings
15,La casa vuota
16,Preludio a due voci
17,La recita
18,Pasion (Bolero) performed by Alana
19,Nostalgia performed by Antonio Sechi
1,Il postino (titoli)
2,In Vicicletta
3,Madreselva (vocal by Carlos Gardel)
4,Postino Bambino
5,Beatrice
6,Metafore
7,Loved by Women
8,Il postino (trio version)
9,Suoni dell'isola
10,I sogni del postino
11,Pablito
12,Milonga del Poeta
13,Madreselva (instrumental version)
14,Postino Poeta
15,Il postino (harpsichord and string version)
16,Il postino (guitar and bandoneon version)
 バカロフ作品2本のカップリング盤。日本ではオリヴィア・ハッセイ主演という事で話題になった「サマータイム・キラー」。当時の若者カルチャーを反映したアメリカン・ニューシネマ的な雰囲気で、バカロフのスコアもいつになくサイケデリックでハードなロック風の仕上がり。特にドライブ感溢れる#3や#4は「イージー・ライダー」の影響濃厚だ。一方の「傷だらけの刑事」は名優エンリコ・マリア・サレルノ主演の社会派刑事ドラマで、バカロフは重厚でクールなハード・ボイルド・タッチのジャジーなスコアを聴かせてくれる。  ニノ・ロータ亡き後を任されたフェリーニ作品。アーヴィング・バーリンやコール・ポーター、クルト・ワイルらの作品を随所に引用しながら、フェリーニらしい賑やかな世界を作り上げているが、あまりにもロータを思わせるような印象で、バカロフらしさはあまり感じられない。それほどまでに、フェリーニにとってロータの存在は大きかったということであり、それはロータ的なものを要求されたバカロフにとって不幸な事だったのかもしれない。結局フェリーニとバカロフのコラボはこれ1作のみで、フェリーニは「ジンジャーとフレッド」以降ニコラ・ピオヴァーニと組むようになる。  アルゼンチンに渡ったイタリア系移民の女性の波乱に満ちた運命を描く日本未公開作。まさに、バカロフにとってはうってつけの題材で、全編にアルゼンチン・タンゴを配し、実に繊細でノスタルジックな美しいスコアを聴かせる。中でもイタリアを代表するディーヴァ、ミルヴァをボーカルに迎えたテーマ曲は6分を超える力作。バカロフ自身も全編に渡って素晴らしいピアノ・ソロを聴かせてくれる。80年代以降のバカロフ作品としては、「女ともだち」、「イル・ポスティーノ」と並ぶ代表作と言える。  アカデミー賞を受賞し、バカロフの名を一躍世界に轟かせた名作。モリコーネの「ニューシネマ・パラダイス」と並ぶ現代イタリア映画音楽の金字塔と言えるだろう。バンドネオンの紡ぎだすノスタルジックで優しいメロディの数々は、カルロ・ルスティケッリやジョヴァンニ・フスコといった往年のコンポーザーを思わせるもので、イタリア映画の伝統が着実に受け継がれている事が実感できて嬉しい。特に、優しさと哀しみが程よく入り混じったスコア#5は、聴くたびに心に染み渡る素晴らしい傑作。

 

CIELO_CADE.JPG ASSASSINATION_TANGO.JPG

ふたりのトスカーナ
Ul cielo cade (2000)

Assassionation Tango (2003)

(P)2000 CAM (Italy) (P)2003 RCA Victor (USA)
1,Da lontano variante 1
2,Divertimenti infantilli
3,Nel bosco
4,Tema di Penny e Baby
5,Allegro in Si bemolle, KV3
6,La variazioni di Signor Pit su un tema di Mozart
7,Da lontano (versione per violoncello e pianoforte)
8,Divertimenti infantilli variante 1
9,Adagio un poco mosso
10,Mesti pensieri
11,Tema di Penny e Baby variante 1
12,Mazurka opera 68 n.4
13,La villa invasa
14,Aspettative gioiose
15,Tema di Penny e Baby variante 2
16,Tema di Penny e Baby variante 3
1,Racing Club (Alfredo Gobbi)
2,Tres esquinas (Angel D'Agostino)
3,Building The Bullet (Luis Bacalov)
4,Compadreando (Angel D'Agostino)
5,En un beso la vida (Carlos di Sarli)
6,First Kill (Luis Bacalov)
7,El cielo en tus ojos (Carlos di Sarli)
8,El yacare (Angel D'Agostino)
9,Seduction (Luis Bacalov)
10,Landing in Argentina (Luis Bacalov)
11,Una emocion (Ricardo Tanturi)
12,Second Kill (Luis Bacalov)
13,La cachila (Carlos di Sarli)
14,Bahia blanca (Carlos di Sarli)
 第2次大戦末期のトスカーナ地方の風光明媚な大自然を舞台に、叔母夫婦のもとに引き取られてきた孤児姉妹のつかの間の幸福と悲劇を描く作品。瑞々しさと慈愛に溢れた美しくも物静かなスコアは、フィリップ・サルドやフランシス・レイの作品を思わせる気品に満ちている。まさに巨匠の風格。特に、二人の少女の運命を静かに見つめるかのような優しくも哀しいスコア#4、#11、#15、#16には心を揺さぶられる。  名優ロバート・デュヴァルが自ら監督・脚本・製作・主演を務めたフィルム・ノワール。バカロフによる書き下ろしの他、1940年代のアルゼンチン・タンゴの名曲が随所に散りばめられている。バカロフのスコアは、そうした古典に負けじといった気迫に満ちたものばかり。クールでドラマチックでスリリングなタンゴを聴かせてくれる。

 

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