イタリア映画のマエストロ(4)
ルチオ・フルチ Lucio Fulci
PART 2

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フレンチ・マフィアの陰謀からナポリを守るマフィア、ルカ(F・テスティ)
『野獣死すべし』より

極悪非道なフレンチ・マフィアのボス、ジャシオス(M・ボズッフィ)
『野獣死すべし』より

 『サンゲリア』('79年)の大成功で“イタリア産ゴアの帝王”と呼ばれるようになったフルチだが、意外にもその直後に撮ったのは『野獣死すべし』('80年)というマフィア映画だった。というのも、『サンゲリア』が世界各国で劇場公開されたのは1980年に入ってからのこと。当時は、それほど大当たりするとは考えていなかったのかもしれない。
 いずれにせよ、フルチ自身にとってもかなり珍しいマフィア映画ではあるのだが、さすがそこはフルチのこと。ありきたりなマフィア映画を撮るはずがない。ナポリの伝統的な犯罪組織と新興のフレンチ・マフィアとの抗争を軸に、ホラー映画も真っ青のバイオレンス描写が展開する。言うなれば、スプラッター・マフィア映画といったところだろうか。その血みどろぶりはとにかくハンパじゃない。それゆえに、イタリア本国でも残酷シーンをカットした短縮版が劇場公開され、ニュージーランドなど一部の国では上映禁止の憂き目に遭っている。
 ストーリーそのものは決して目新しくもないが、現役を引退したマフィアのドンたちがナポリの平和を守るために立ち上がるクライマックスは鳥肌もののカッコ良さ。セックスやドラッグで荒稼ぎし、滅多やたらと人を殺すような邪道は、俺たち昔気質のマフィアが成敗してやる!といった感じだろうか。ある意味で、当時流行だったアメリカン・スタイルのポリス・アクションに対する、フルチならではのアンチテーゼだったとも言えるだろう。まあ、深く考えてしまえば、そんなアナタも血みどろバイオレンスで食ってるわけでしょ?と突っ込みたくもなるわけだが、そこは素直にフルチ爺さんの心意気を楽しみたいところだ。

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ルカの身の上を案じる妻アデーレ(I・モンティ)
『野獣死すべし』より

顔面をガス・バーナーで焼かれる女密売人イングリッド(O・メイヤー)
『野獣死すべし』より

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ナポリのドンたちが一斉に殺されていく
『野獣死すべし』より

爆破事件の現場から発見された死体
『野獣死すべし』

 舞台は犯罪都市ナポリ。地元マフィアの中堅ルカ(ファビオ・テスティ)は、タバコの密輸業で生計を立てていた。ある日、沖合での取引の現場を警察のパトロール部隊に襲撃される。兄ミッキー(エンリコ・マイスト)と共に間一髪のところを逃れたルカは、内情を知っている何者かが警察に密告したものと睨む。
 ルカには最愛の妻アデーレ(イワナ・モンティ)と幼い息子がいる。ナポリではマフィア同士の結束が強く、それが庶民生活に一定の規律をもたらしていた。しかし、近頃では伝統的なルールを無視するような輩が現れ、マフィアの世界も徐々に変貌を遂げつつあった。ルカのボスである若手のドン、ペルランテ(サヴェリオ・マルコーニ)もその一人だ。
 ルカはタバコの密輸を巡って対立しているライバル、スケリーノ(フェルディナンド・ムローロ)を疑い、ミッキーと共に独自の調査を開始した。しかし、検問を装った偽の警官隊に襲撃され、ミッキーを殺されてしまう。夫の身の上を心配する妻アデーレの反対をよそに、ルカは復讐を誓うのだった。
 スケリーノの邸宅に押し入ったルカ。身の潔白を主張するスケリーノに襲い掛かるルカだったが、反対に取り押さえられて半殺しの目に遭ってしまう。そんな彼のもとに、チンピラがある情報を持ってきた。それによると、どうも一連の事件の背後にはフランソワーズ・ジャシオス(マルセル・ボズッフィ)という新興フレンチ・マフィアのボスが関わっているらしい。彼らはドラッグの密売で荒稼ぎしており、ナポリの裏社会を牛耳ろうと狙っているというのだ。
 ジャシオスは金儲けのためならどんな犯罪も厭わないという冷血漢だった。彼のもとにイングリッド(オフェリア・メイヤー)というドイツ人の麻薬密売人が現れ、取引を持ちかけてきた。イングリッドの持参したドラッグが粗悪品だと見抜いたジャシオスは、ガスバーナーで彼女の顔面を焼く。
 それからほどなくして、ナポリのドンたちが一斉に暗殺されるという事件が起きた。事態を重く見た警察は、タランティーノ長官(ヴェナンティノ・ヴェナンティーニ)の陣頭指揮のもとで犯罪の掃討作戦に乗り出す。一方、ルカはスケリーノと協力してフレンチ・マフィアとの全面対決を誓った。ナポリにはドラッグなど必要ないと。
 ルカとスケリーノは計画を立てるためにペルランテの屋敷に集まる。ところが、そこにフレンチ・マフィアの一味が現れ、ルカは何とか逃げ切ることが出来たものの、スケリーノは射殺されてしまった。裏切り者はペルランテだったのだ。
 ジャシオスはルカを従わせるために、妻アデーレを誘拐。妻がジャシオスの部下たちにレイプされる様子を電話越しに聞いたルカは、引退したマフィアのドン、モローネ(グイド・アルベルティーニ)に助けを求める。モローネはかつてナポリ一帯を支配していた大御所マフィア。貧しい庶民には英雄として愛され、年老いた今でも強い影響力を持っていた。ルカから事情を詳しく聞いたモローネは、今は堅気の仕事をしている旧友たちに声をかける。こうして、古き良き時代を築き上げたかつてのドンたちが、愛するナポリの平和を守るために武器を持って立ち上がることになったのだった・・・。

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スケリーノ(F・ムローロ)の顔面にマシンガンが撃ち込まれる
『野獣死すべし』より

ルカの愛妻アデーレをレイプするフレンチ・マフィアたち
『野獣死すべし』より

 全編に渡ってハードなアクション・シーンと強烈な残酷描写が満載。ドイツ人の麻薬密売人イングリッドの顔面をガス・バーナーで焼くシーンでは、皮膚の表面が煙を上げて徐々に焼けただれていく様子まで克明に描写されている。他にも、顔面をマシンガンで蜂の巣にしたり、口から弾丸を撃ち込むと後頭部から脳みそが飛び散ったり。これでもかこれでもかといった執拗なバイオレンスは、全くためらいがない分だけ逆に痛快だ。さすがはフルチ!と思わず感心。レイプ・シーンの鬼畜ぶりも相当なもんである。
 そんな残酷シーンの特殊メイクを担当したのはフランコ・ディ・ジロラーモ。フルチとは『幻想殺人』('71年)以来たびたび組んでいるメイキャップ・アーティストだが、最も印象的なのが本作と『ザ・リッパー』('82年)での仕事ぶりと言えるだろう。どちらも観客の度肝を抜くような、まさに極悪とも言うべきスプラッター描写をモノにしている。
 今回の脚本を担当したのは、テレビ出身のジャンニ・デ・キアーラと『白昼の暴行魔』('77年)などのバイオレンス映画で知られる脚本家エットーレ・サンゾの二人。フルチは原案のみを手がけている。
 その他、撮影のセルジョ・サルヴァーティや編集のヴィンチェンゾ・トマッソ、衣装デザインのマッシモ・レンティーニ、音楽のファビオ・フリッツィなど、フルチ作品の常連組スタッフが勢ぞろい。また、ダリオ・アルジェントの『サスペリアPART2』('75年)や『サスペリア』('77年)、『インフェルノ』('80年)を手がけたジェルマーノ・ナターリが特殊効果を担当している。

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ルカを助けるために重い腰を上げる大御所モローネ(G・アルベルティ)
『野獣死すべし』より

黒人娼婦ルイーザ役を演じるアジタ・ウィルソン
『野獣死すべし』より

 主人公ルカを演じるのは巨匠ヴィットリオ・デ・シーカの『悲しみの青春』('71年)で注目され、『殺しのギャンブル』('73年)など70年代のマフィア映画で大活躍した俳優ファビオ・テスティ。一時期はハリウッド映画にも出演していた二枚目スターだ。
 敵対するフレンチ・マフィアのボス、ジャシオスを演じているのが、『フレンチ・コネクション』('71年)の殺し屋役でも有名なフランスの悪役スター、マルセル・ボズッフィ。60年代から70年代にかけてのフレンチ・ノワールには欠かせない名優だった。
 そして、主人公ルカを絶体絶命の危機から救う大御所マフィア、モローネ役で存在感を発揮しているのが、イタリアの有名な舞台俳優グイド・アルベルティ。映画ではフランチェスコ・ロージの『都会を動かす手』('63年)で知られるようになった人である。一見するとちょっととぼけた隠居老人だが、いざという時に見せる眼光は別人のように鋭い。
 その他、ルカの愛妻アデーレ役をテレビ女優イワナ・モンティが、裏切り者ペルランテ役をタヴィアーニ兄弟の傑作『父/パードレ・パドローネ』('77年)で息子役を演じたサヴェリオ・マルコーニが、警察長官タランティーノ役をイタリアの誇る名脇役ヴェナンティノ・ヴェナンティーニが演じている。
 また、ペルランテの愛人である黒人娼婦ルイーザ役で顔を出しているアジタ・ウィルソンにも注目したい。彼女は70年代から80年代にかけて数多くのヨーロッパ産ソフト・ポルノに出演したスターで、全身美容整形のトランスジェンダーだった。その容姿は日本人の美的感覚からすると不気味以外のなにものでもないのだが、当時のヨーロッパでは相当な人気があったようだ。もともとはハードコア・ポルノの出身で、10年間で40本以上の映画に出演したが、1987年に交通事故で亡くなってしまった。

 さて、『サンゲリア』が各国で爆発的なヒットとなったことから、フルチは矢継ぎ早にホラー映画を撮るようになる。その第一弾となったのが『地獄の門』('80年)。文字通り地獄の門が開いてしまい、阿鼻叫喚の地獄絵図が繰り広げられるというもの。舞台となるニューイングランド地方のゴシックなムードが上手く生かされており、前半は正統派ホラーの雰囲気をたたえた美しい映像が展開する。
 しかし、中盤辺りからストーリーは崩壊。もはやプロットは全く意味を成さなくなり、脳みそや内臓が飛び散るスプラッター・カーニバルへと変貌していく。これは、それまでのフルチ作品にはなかった展開。そういった意味で、この『地獄の門』は“イタリア産ゴアの帝王”フルチにとって大きな転機となった作品と言えるかもしれない。これ以前と以降では、映画作家としての姿勢が明らかに変化しているのだ。
 より視覚的な描写に比重が置かれるようになり、極端なこと言えば“脚本はあってないも同然”というケースが多くなっていく。それを進歩と呼ぶのか後退と呼ぶのかは受け手次第なのかもしれないが、少なくともこの時期のフルチには理屈を吹き飛ばしてしまうくらいのパワーが漲っていた。
 この『地獄の門』にしても、重厚な映像で見せる導入部分がしっかりとしていることもあり、中盤からの破綻は全く気にならない。というよりも、あれよあれよという間に加速していくゴア描写にアドレナリンが噴出し、気がついたらクライマックスを迎えてしまっていたという感じなのだ。もちろん、賛否両論はあるだろう。一ヶ月弱という撮影期間を考慮すれば、そもそもストーリーを練っているような時間すら無かったに違いない
。しかも、撮影終了からたったの二週間で劇場公開に踏み切っている。そうした状況を考えると、逆にフルチの映画監督としての力量をうかがい知ることが出来るのではないかと思う。
 ただし、これ以降の作品を見ただけで、フルチの映画は脚本が無意味だと決め付けてしまうのは大間違い。よくワケ知り顔でフルチ作品の脚本を批判する輩が目立つが、そういう人に限って70年代以前の作品を全く見ていないのだ。中途半端な知識だけでモノを言うのはいかがなものかと思う。

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ダンウィッチの墓地でトーマス神父(F・ジョヴィ−ネ)が自殺する
『地獄の門』より

交霊会でショック状態に陥る霊能者メアリー(C ・マッコール)
『地獄の門』より


 真昼のニューヨーク。霊媒師テレサ(アデレイド・アステ)のアパートでは、友人を集めての交霊会が行われていた。その最中に、霊能力者のメアリー(カトリオナ・マッコール)は、ニューイングランド地方の町ダンウィッチに住む牧師トーマス(ファブリツィオ・ジョヴィーネ)が墓地で首吊り自殺する姿を透視する。それは神を冒涜する行為であり、地獄の門が開かれる瞬間であった。メアリーはショック状態に陥り、そのまま急死してしまう。
 事件を知ったローカル紙の記者ピーター・ベル(クリストファ・ジョージ)は、記事になるようなネタがないかとメアリーが埋葬される墓地を訪れた。すると、メアリーの棺から物音が聞こえる。息を吹き返したメアリーが悲鳴をあげていたのだ。近くにあったつるはしを手にしたピーターは、棺を壊して彼女を救出した。
 無事に生還したメアリーはテレサのもとを訪れる。テレサの言うには、トーマス神父の自殺によって地獄の門が開き、死者が次々とこの世に蘇ることになるのだという。それが始まるのは、数日後に控えた“聖人の日”だった。メアリーとピーターは真相を確かめるべく、ダンウィッチへと向うことにした。

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ローカル紙の記者ピーター(C ・ジョージ)
『地獄の門』より

精神科医ジェリー(C ・デ・メーヨ)とサンドラ(J・アグレン)
『地獄の門』より

 その頃、ダンウィッチでは不可解な出来事が起きつつあった。精神科医ジェリー(カルロ・デ・メーヨ)が患者であるサンドラ(ジャネット・アグレン)のセラピーをしていると、サンドラは奇妙な幻覚を見る。その晩、ジェリーの助手である若い女性エミリー(アントネッラ・インテルレンギ)が姿を消した。さらに、車の中でデートをしていたローズ(ダニエラ・ドリア)とトミー(ミケーレ・ソアヴィ)の前に、死んだはずのトーマス神父が現れる。ローズは口から内臓を吐き出して死に、トミーは後頭部から脳みそを引きずり出されて殺された。
 翌朝、エミリーの死体が発見される。前の晩に彼女が不良青年ボブ(ジョヴァンニ・ロンバルド・ラディーチェ)と密会していたことが分かった。当然のごとくボブに疑惑の目が注がれるものの、証拠となるようなものはなかった。
 さらに、教会の遺体安置所では死んだ老女が牧師の手を食いちぎり、エミリーの弟ジョン・ジョン(ルカ・ペイズナー)のもとにはゾンビと化した姉が姿を現した。また、サンドラの家にも死者が現れる。その頃、行き場を失ったボブがロス氏(ヴェナンティノ・ヴェナンティーニ)の自宅ガレージに潜伏するが、ロス氏の娘に見つかってしまう。そこへ偶然通りかかったロス氏は、ボブが娘を殺そうとしていると誤解。怒り狂った彼は、ボブの頭にドリルを突き刺して殺してしまう。
 翌朝、ダンウィッチに到着したメアリーとピーターは墓地へ向った。トーマス神父の墓を探していると、そこへジェリーとサンドラがやって来る。お互いにこれまでに出来事を話した彼らは、ジェリーのオフィスへと向った。すると、突然嵐のような風が吹き込み、大量の蛆虫が彼らに降りかかってきた。
 その後、ジョン・ジョンから電話がかかり、死んだ姉エミリーがやってきて両親を殺してしまったという。急いでジョン・ジョンのもとへ向った4人は、彼の両親の無残な死体を発見した。メアリーとピーター、ジェリーの3人は保安官事務所へ向い、サンドラはジョン・ジョンを自宅に連れ帰ることにする。ところが、玄関先でゾンビとなったエミリーが現れ、サンドラの頭皮を剥いで殺害してしまう。命からがら逃げ出したジョン・ジョンは、引き返してきたジェリーに救われた。
 同じ頃、町の各地で死者が蘇り、人々を襲い始めていた。メアリーとピーター、ジェリーはトーマス神父の墓を暴き、その下に地下通路があるのを発見する。そこには、遥か昔に建てられたと思われる地下墓地が広がっていた・・・。

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内臓を吐き出して殺される女性ローズ(D・ドリア)
『地獄の門』より

ボブ(J・ロンバルド・ラディーチェ)の脳天にドリルが・・・
『地獄の門』より

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サンドラたちに蛆虫の大群が降りかかる
『地獄の門』より

ゾンビと化した女性エミリー(A・インテルレンギ)
『地獄の門』より

 ニューイングランド地方のダンウィッチとくれば、誰もがラヴクラフトを思い出すだろう。冒頭にはエノク写本まで登場する。しかし、フルチ自身によると、ラヴクラフトからは固有名詞を拝借しただけで、作品そのものはポーからの影響が強いらしい。とはいえ、それもあくまで本人のイメージであり、具体的にポーの作品と関連付けられるような要素はほとんど無い。あえて挙げるのであれば、メアリーの生き埋葬くらいのものだろう。
 脚本を手がけたのはフルチとダルダノ・サケッティ。先述したように、ストーリーそのものは中盤から完全に破綻しており、クライマックスも唐突に終わる。脚本にはほとんど意味がないと言ってもよかろう。サケッティは優れた脚本家だと思うが、本作はフルチの妄想に寄り切られたという印象が強い。
 特殊メイクを担当したのはジーノ・デ・ロッシ。『サンゲリア』では特殊効果に参加していた人物だが、今回はちょっとタイプの違ったゾンビ・メイクを仕上げている。『サンゲリア』のゾンビはまさに歩く腐敗した死体といった感じだったが、本作のゾンビはよりモンスター的なイメージに近いと言えるだろう。また、後に『デモンズ』シリーズの特殊メイクを担当することになるロザリオ・プレストピーノが、メイク助手としてクレジットされているのも興味深い。
 なお、『サンゲリア』でインパクトの強いスコアを手がけていたファビオ・フリッツィが、本作でも重厚でおどろおどろしい音楽を聴かせてくれている。翌年の『ビヨンド』('81年)のスコアも素晴らしかった。イタリア映画の作曲家としては正直なところCランク・レベルの人だが、フルチとの相性は抜群に良かったようだ。

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地下墓地でも死者が続々と蘇っていた
『地獄の門』より

ゾンビに囲まれたジェリーとメアリー
『地獄の門』より

 主人公メアリーを演じるのはフランス女優カトリオナ・マッコール。ジャック・ドゥミ監督の実写版『ベルサイユのバラ』('79年)でオスカル役を演じた女優さんだが、本作と『ビヨンド』、『墓地裏の家』('81年)の3本で、すっかりホラー映画女優のイメージが付いてしまった。10年ほど前にロサンゼルスで行われたイベントで本人に会ったことがあるが、とても知的で物静かな女性だった。ちなみに、棺に閉じ込められた彼女の頭上につるはしが打ち込まれるシーンでは、本物のつるはしが撮影に使用されたらしい。もちろん、専門家がちゃんと計算して彼女には当たらないようになっていたのだが、本人は生きた心地がしなかったという。
 新聞記者ピーター役を演じているのは、60年代の人気ドラマ『ラット・パトロール』で主人公トロイ軍曹を演じていたアメリカの俳優クリストファー・ジョージ。『グリズリー』('76年)や『アニマル大戦争』('77年)といった動物パニック映画でもお馴染みの顔だ。
 サンドラ役のジャネット・アグレンは、『食人帝国』('80年)や『ラットマン』('88年)でホラー映画ファンにお馴染みの女優。『レッド・ソニア』('85年)ではブリジット・ニールセンの姉役を演じていた。もともとスウェーデンの出身で、70年代初頭からヨーロッパ各国で活躍していた人。フランス映画『さらば夏の日』('70年)でルノー・ヴェルレーの相手役を演じていた頃は、本当に瑞々しい清純な美少女という感じだった。
 精神科医ジェリー役を演じているカルロ・デ・メーヨは、イタリアの誇る大女優アリダ・ヴァリの息子。パゾリーニの『テオレマ』('68年)などにも出演していたが大成せず、ルイジ・コッツィの『エイリアン・ドローム』('80年)やブルーノ・マッテイの『呪われた修道院』('80年)といったB級映画にばかり出ていた。
 頭にドリルを刺されて殺される若者ボブ役を演じているのは、ジョン・モーゲンの変名でも知られるジョヴァンニ・ロンバルド・ラディーチェ。イタリア産ホラーやアクションの脇役としてお馴染みの俳優だ。さらに、ゾンビとなる若い女性エミリー役で登場するのはアントネッラ・インテルレンギ。戦後イタリア映画を代表する傑作『靴みがき』('46年)の名子役フランコ・インテルレンギと、50年代の人気女優アントネッラ・ルアルディを両親に持つサラブレッドだが、女優としてはあまり大成しなかった。
 その他、フルチの『ザ・サイキック』にも出ていたファブリツィオ・ジョヴィーネ、前作『野獣死すべし』に引き続いてのヴェナンティノ・ヴェナンティーニ、『死霊のしたたり』('85年)の病院長役で知られるロバート・サンプソン、そして後に映画監督となるミケーレ・ソアヴィが脇を固めている。
 さらに、内臓を吐き出して殺される女の子ローズ役でダニエラ・ドリアが出演。彼女はフルチのお気に入り女優で、これ以降フルチ作品の殺され役専門女優として華々しい(?)キャリアを歩むことになる。ちなみに、本作で口から吐き出していた内臓は本物の羊の臓器だったらしく、フルチは一切文句を言わない彼女の心意気に惚れ込んだようだ。

 上でも述べたように、エドガー・アラン・ポーの世界を意識して『地獄の門』を撮ったフルチ。そのポーの代表作をフルチ流にアレンジして映画化したのが、次の『恐怖!黒猫』('81年)である。主人公は黒猫を操って殺人を重ねる霊能者の老人という設定になっており、ポーの小説はほとんど原型をとどめていない。『地獄の門』の撮影が終了した10日後に本作の撮影がスタートしており、ほとんど同時進行の企画だったと見ていいだろう。そもそも、フルチ自身が望んだ映画化ではなかったこともあり、金のためというやっつけ感が否めない作品だ。
 物語の焦点は老人と黒猫の関係にあると言えるだろう。本当に老人が黒猫を操って殺人を重ねているのか、それとも黒猫が自らの意思で人間を殺しているのか。はたまた、逆に黒猫が老人を操っているのか。その辺りが、実は全く整理整頓が付けられておらず、非常に曖昧なままストーリーが一方的に進行してしまう。そのため、一体全体何が起こっているのがが分からず、なんともモヤモヤした状態のまま終わってしまうのだ。
 フルチ自身、生前のインタビューでも本作については多くを語っておらず、単純に経済的な理由から引き受けた仕事であったろうことは想像に難くない。それでも、随所に彼らしい独創的な見せ場もしっかり用意されており、ファンであれば一度は見ておきたい作品と言えるだろう。

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のどかな田舎町を不気味に徘徊する黒猫
『恐怖!黒猫』より

アメリカ人の女性旅行者ジル(M・ファーマー)
『恐怖!黒猫』より

 舞台はイギリスの田舎町。車でゴルフに出かけた男性が、後部座席に黒猫が乗っているのを発見する。猫はまるで催眠術でもかけるかのように男性をじっと見つめ、車は事故で大破。運転していた男性は死んでしまった。
 黒猫はそのまま何事もなかったかのように田舎町を歩いていく。やがてたどり着いたのはマイルズ教授(パトリック・マギー)の館。彼はもともと大学で精神医学を教えていたが、今は引退して心霊学の研究を行っている。黒猫とは何かしらの共犯関係にあるようだ。教授は死んだ男性の墓へと赴き、テープレコーダーのマイクを向け、死者との交信を試みていた。
 その頃、アメリカ人の女性旅行者ジル(ミムジー・ファーマー)が町を訪れる。写真が趣味の彼女は、古い墓地でシャッターを切っていた。すると、地下墓地へ続く階段を発見。中へ入って見たところ、墓石の上手に小さなマイクを発見した。なぜこんなところにマイクが・・・?と首を傾げるジル。
 地元のパブで食事をしていたジルは、墓地で死人と会話をしているというマイルズ教授の噂話を耳にする。好奇心に駆られた彼女は、教授の館を訪問。教授は彼女に催眠術をかけようとするが、いきなり黒猫が襲い掛かってきて失敗。何も気付いていないジルは、そのまま教授の館を後にした。

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死者との交信を試みるマイルズ教授(P・マギー)
『恐怖!黒猫』より

ロンドンから派遣されてきたゴーリー警部(D・ワーベック)
『恐怖!黒猫』より

 一方、ゲイソン邸では娘モーリーン(ダニエラ・ドリア)の失踪騒動が起きていた。実は、モーリーンは恋人と一緒にボートハウスの納屋に忍び込んだものの、オートロックの鍵を忘れてしまい、中に閉じ込められてしまっていたのだ。納屋は換気が非常に悪く、二人は呼吸困難に陥ってしまっていた。母親リリアン(ダグマール・ラッサンデール)からの通報を受けた警察は、ロンドンからゴーリー警部(デヴィッド・ワーベック)を呼んで捜査に当たらせる。
 ゴーリー警部はバイクを愛する変わり者で、地元警察のウィルソン巡査(アル・クライヴァー)とはすぐに打ち解けた。その晩、町のパブで飲んでいた男ファーガソン(ブルーノ・コラッツァーリ)が転落死を遂げる。これも黒猫が仕組んだものだったが、当然警察は事故として処理をした。だが、現場に居合わせたジルは被害者の手に猫の引っかき傷があることを見逃さなかった。
 相変わらず娘の所在が分からないことに業を煮やしたリリアンは、藁にもすがるような思いでマイルズ教授のもとを訪れた。霊能力のある彼に透視してもらおうというのだ。教授はモーリーンと恋人がボートハウスの納屋にいると告げる。もちろん警察は半信半疑だったが、ボートハウスの納屋を調べると、そこにモーリーンと恋人スタンの腐乱死体を発見した。
 その晩、グレイソン邸で火事が発生し、リリアンが焼死してしまう。一連の出来事からマイルズ教授を疑うようになったジルは、教授が何かしらの邪悪な力を使って黒猫を操っているのではないかと詰め寄る。そんな彼女に、教授は“黒猫の方が私を操っているのだ”と切り返すのだった。
 ジルが去ったあと、マイルズ教授は黒猫を捕まえ、ロープで首を絞めて木に吊るした。ところが、死んだはずの黒猫が再び教授の前に姿を現す。その晩、ゴーリー警部が黒猫に襲われた。催眠術をかけられた警部は、パトロールカーに向って突進したのだ。
 一方、ジルはマイルズ教授が犯人であるという証拠を捜して、教授の館に忍び込む。しかし、教授に捕らえられてしまい、生きたまま地下室の壁に埋め込まれてしまう。そこへ、怪我の回復したゴーリー警部がウィルソン巡査らを引き連れてやって来た。自ら屋敷の中を案内するマイルズ教授。その時、地下室から猫の鳴き声が聞こえてきた・・・。

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人間に催眠術をかけて殺す黒猫
『恐怖!黒猫』より

娘の行方を捜すリリアン(D・ラッサンデール)
『恐怖!黒猫』より

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腐乱死体となって発見されたモーリーン(D・ドリア)
『恐怖!黒猫』より

ゴーリー警部まで黒猫に襲われてしまう
『恐怖!黒猫』より

 といった具合で、ストーリーはまさに支離滅裂。ただ、映像そのものは丁寧に撮られており、舞台となるイギリスの田舎の牧歌的な風景も上手く生かされている。また、リリアンが火事で焼死するシーンはなかなかの迫力。火だるまになったリリアンが屋敷内を駆け回る様子も、機械仕掛けのダミー人形を使ってリアルに再現されている。炎に包まれた顔面が断末魔の悲鳴をあげるシーンなど、フルチでなければ考え付かない描写だろう。
 フルチと共に脚本を書いたビアジオ・プロイエッティは、主にテレビ・ドラマの脚本を手がけてきた人物で、80年代には監督作も何本か残している。70年代初頭にはジャッロの脚本も何本か手がけているようだが、個人的にはまるっきりノー・チェックだった。
 その他、主なスタッフはフルチ作品の常連組ばかりだが、音楽を手がけたピノ・ドナッジョのみがフルチ作品への初参加。ご存知の通り、ブライアン・デ・パルマ作品を数多く手がけた大物作曲家なわけだが、本作でもノスタルジックなメロディが印象的な美しいスコアを書いている。正直なところ、このドナッジョの音楽に救われている部分も大きいのではないだろうかとも思う。

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マイルズ教授の館に忍び込むジルだったが・・・
『恐怖!黒猫』より

地下室から猫の鳴き声が聞こえてくる
『恐怖!黒猫』より

 主人公マイルズ教授役を演じているのは、イギリスのベテラン名優パトリック・マギー。キューブリックの『時計じかけのオレンジ』('71年)や『バリー・リンドン』('75年)で有名な人だが、その一方で『アサイラム・狂人病棟』('72年)や『スクリーミング・夜歩く手首』('73年)などアミカス・プロダクションのホラー映画にも数多く出演している。独特の個性的なマスクが印象的な俳優だ。
 そんな教授に疑いの目を向けるアメリカ人女性ジル役には、バルベ・シュローデルの『モア』('69年)やジョルジュ・ロートネルの『渚の果てにこの愛を』('69年)で有名なミムジー・ファーマー。フラワー世代の情緒不安定な青春を演じて一世を風靡した女優さんだ。イタリアの脚本家ヴィンチェンゾ・チェラーミと結婚したことから、70年代初頭からイタリアに拠点を置くようになった。アルジェントの『4匹の蝿』('71年)やアラン・ドロンと共演した『暗黒街のふたり』('73年)、マルコ・フェレーリの『バイバイ・モンキー』('77年)など優れた作品に数多く出演していたが、80年代に入るとB級映画ばかりになってしまう。ちょうど、そんな時期に出演したのがこの『恐怖!黒猫』だった。
 ゴーリー警部役のデヴィッド・ワーベックは、本作に引き続いて『ビヨンド』('81年)でもフルチと組んだニュージーランド人俳優。もともとイギリスで活躍していたが、70年代半ばからイタリアに拠点を移し、数多くのB級ホラーやアクションに主演したスターだった。ちなみに、ジョージ・レーゼンビーが降板したあと、ジェームズ・ボンド役の候補に挙がっていたことがあるらしい。
 そのゴーリー警部と親しくなるウィルソン巡査役を演じるのがアル・クライヴァー。本名をピエル・ルイジ・コンティというイタリア人で、70年代の“愛の妖精”アニー・ベルのダンナとしても知られる。火事で焼け死ぬマダム、リリアン役を演じているのはダグマール・サッランデール。60年代から70年代にかけて、イタリア産のサスペンスや西部劇、ソフト・ポルノなどで引っ張りだこだったセクシー女優だ。
 そして、納屋に閉じ込められて窒息死してしまう女の子モーリーン役で登場するのが、前作に引き続き壮絶な死様を見せる女優ダニエラ・ドリア。今回はグチョグチョの腐乱死体だ。しかも、ネズミに目玉を食われてしまっているという悲惨な姿を晒してくれる。

 さて、『恐怖!黒猫』を製作中のフルチに、『サンゲリア』で組んだプロデューサー、ファブリツィオ・デ・アンジェリスから声がかかった。もちろん、新たにホラー映画を撮らないかという誘いだ。条件はゾンビを登場させること、それだけ。あとは、予算の範囲内であればどんなものを作っても構わないという。デ・アンジェリスは基本的に放任主義の映画プロデューサーだったらしく、フルチは後のインタビューでも彼の懐の大きさを絶賛している。
 こうして、デ・アンジェリスの全面的なバックアップを得て作られたのが、フルチにとって80年代を代表する傑作『ビヨンド』('81年)だ。基本的な設定は『地獄の門』と同じ。ルイジアナ州の古い街を舞台に、地獄へ通じる扉が開いてしまう。あとは、文字通り酒池肉林のスプラッター大会だ。
 “この映画にプロットなどない。論理性など存在せず、イメージの羅列で出来上がっているんだ”とフルチ自身も語っているが、まさに彼の頭の中の悪魔的妄想をかき集めて、一本の映画にしてしまったと言っても過言ではあるまい。
 そのイメージは残酷でありながらも魅惑的。アメリカ南部特有のエキゾチックかつヨーロッパ的なムード、宗教絵画からシュール・レアリズムまでを呑み込んだアート感覚、そして尋常ではないくらいに徹底した人体破壊フェチ。そうしたものが混沌と入り乱れ、とてつもないパワーを生み出しているのだ。
 恐らく、フルチは『地獄の門』でやり残したことが沢山あったのだろう。彼が目指したのは、理屈を超越した純然たる恐怖そのもの。人は往々にしてあらゆることに理屈を求めようとするが、この世には理屈では説明できないような事も圧倒的に多い。トルストイが『人生論』で“死の恐怖とは、解決されない生の矛盾にすぎない”と語っているように、人間の人生そのものが“生と死”という矛盾の上に成り立っているわけだ。そう考えれば、フルチの描く理屈なき恐怖の世界をすんなりと受け入れることも出来るのではないだろうか。

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生き埋めにされる画家シュウェイク(A・サン・ジョン)
『ビヨンド』より

古いホテルを相続した女性ライザ(C ・マッコール)
『ビヨンド』より

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ライザの力になるマッケイブ医師(D・ワーベック)
『ビヨンド』より

ライザは盲目の女性エミリー(C ・モンレアーレ)と知り合う
『ビヨンド』より

 1927年のルイジアナ州はニュー・オーリンズ。松明を手にした人々が真夜中の沼地をボートで進む。向う先は人里離れた場所で営業するセブン・ドアーズ・ホテル。彼らは魔術師と噂される異端の画家シュウェイク(アントワーヌ・サン・ジョン)をリンチした挙句、地下室の壁に生き埋めにしてしまった。
 時は移って1981年のニュー・オーリンズ。ニューヨークからやって来た女性ライザ(カトリオナ・マッコール)は、今は廃墟となったセブン・ドアーズ・ホテルを遺産として相続した。営業を再開するために改装工事に着手したライザだったが、次々と不可解な出来事が起きる。
 まず、屋根のペンキを塗り替えていた職人が転落し、“目が・・・目が・・・!”と奇妙な言葉をうわ言のように叫ぶ。さらに、地下の水道管を整備しに来た配管工が壁をチェックしていると、中からミイラ化した死体が現れた。驚く配管工の頭に掴みかかるミイラ。その顔面は見る見るうちに潰され、目玉が飛び出す。
 その頃、高速道路で車を走らせていたライザは、エミリー(シンツィア・モンレアーレ)という盲目の女性と出会う。彼女はライザのことを待ち続けていたらしい。ライザを自宅に招いたエミリーは、すぐにでもセブン・ドアーズ・ホテルから立ち去るようにと警告する。
 ホテルの地下では、メイドのマーサ(ヴェロニカ・ラザール)が配管工の惨殺体と、画家シュウェイクのミイラを発見した。直ちに警察に通報され、病院ではマッケイブ医師(デヴィッド・ワーベック)が検視に取りかかる。マッケイブ医師が休憩に出ると、入れ替わりで配管工の妻と娘ジル(マリア・ピア・マルサーレ)がやって来た。ところが、突然遺体が脈打ち始め、驚いた妻は転倒。その際に、傍においてあった薬品のビンが倒れ、彼女は顔面に硫酸を浴びて死んでしまった。その様子を見ていたジルの前にシュウェイクのミイラが現れる。
 マッケイブ医師は街のカフェ・バーでライザと会っていた。ライザはホテルを巡る不可解な出来事に不安を抱いていた。さらに、マッケイブ医師の言うのには、ホテルに働くメイドのマーサと執事アーサー(ジャンパオロ・サッカローラ)の二人はこの辺りの人間ではなく、ライザがやってくるまで誰もその存在すら知らなかったという。
 そこへ、マッケイブ医師の同僚ハリス(アル・クライヴァー)から配管工の妻が死んだという連絡が入った。一部始終を目撃したはずのジルはショック状態に陥っているという。翌日、配管工夫婦の葬儀に参列したライザがホテルに戻ると、エミリーが盲導犬ディッキーと共にやって来た。彼女の話によると、この世には地獄へ続く門が7つあり、そのうちの1つがこのホテルの地下にあるという。かつて36号室に泊まっていた画家シュウェイクは、その門番であった。
 問題の36号室へ行くと、そこには荒涼とした世界を描いた不思議な絵画が置いてあった。その画に手を触れたエミリーは、それがシュウェイクの描いたものであると断言。突然、何かに怯えるようにしてホテルを立ち去っていった。その際、ライザは奇妙なことに気付いた。エミリーも盲導犬ディッキーも、一切足音を立てないで走り去っていったのだ。
 翌日、36号室の中を一人でチェックしていたライザは、表紙に『エイボンの書』と書かれた一冊の本を発見する。すると、彼女の目の前にシュウェイクのミイラが出現。恐怖でパニックに陥ったライザだったが、そこへマッケイブ医師がやって来た。彼の話によると、ホテルの周囲にはエミリーなどという盲目の女性はいないという。

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夕暮れ時にたたずむセブン・ドアーズ・ホテル
『ビヨンド』より

ゾンビと化した画家シュウェイクが現れる
『ビヨンド』より

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怪しげなメイド、マーサ(V・ラザール)
『ビヨンド』より

後頭部に突き刺さった釘によって飛び出すマーサの眼球
『ビヨンド』より

 さらに、ホテルでは執事のアーサーが姿を消した。ライザの友人であるマーティン(ミケーレ・ミラベッラ)はライザに頼まれ、街の図書館でセブン・ドアーズ・ホテルの設計図を探した。ようやく目的のものを見つけたと思った瞬間、マーティンは書棚の梯子から転落してしまう。頭を強く打って動けなくなったマーティン。その体に巨大な蜘蛛が何匹も這い上がり、彼の顔を食い荒らした挙句に舌を抜いてしまう。その瞬間、ホテルの設計図はまっさらの白紙になってしまった。
 一方、マッケイブ医師はライザの証言をもとに、エミリーが住んでいるとされる古い屋敷を訪れていた。そこはまったくの廃墟であったが、彼は床の上に一冊の本を見つける。それが『エイボンの書』だった。その頃、ホテルではメイドのマーサがゾンビとなった配管工に襲われ、後頭部を壁に強く打ち付けられた。壁からは長い釘が突き出ており、マーサの眼球は釘に押し出されて飛び出る。
 その晩、エミリーが自宅に戻ってくる。廃墟だったはずの屋敷は元通りだ。すると、彼女は自分が死者たちに取り囲まれていることに気付く。実は、彼女自身が地獄から送られてきた監視人だったのだ。しかし、役不足のために地獄へ戻されるという。盲導犬ディッキーを使って使者を追い払おうとしたエミリーだったが、逆にディッキーに喉元を噛み切られてしまう。
 その頃、『エイボンの書』を読んでホテルの正体を知ったマッケイブ医師は、ライザを建物から連れ出した。彼らが去った後のホテルでは一斉に各部屋に光が灯り、死者がうごめき始めた。ついに地獄の門が開かれたのだ。
 ニューオーリンズの町を車で移動していた二人は、人っ子一人歩いていないことに気付く。やがて、二人は病院に到着。しかし、すでにそこは死者によって占拠されていた。同僚ハリスも殺され、少女ジルは地獄の死者と化していた。ライザに襲いかかったジルの顔面を拳銃で吹っ飛ばすマッケイブ医師。二人は病院の地下へと逃げ込むが、なぜかそこはホテルの地下室だった・・・。

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転倒して動けなくなったマーティン(M・ミラベッラ)の顔に蜘蛛が
『ビヨンド』より

地獄から蘇った死者たちがエミリーを取り囲む
『ビヨンド』より

 実にシュールなストーリー展開。辻褄が合わないのではなく、そもそも辻褄合わせなど一切考えられていないのだ。地獄の門が開いてしまったという基本プロットだけがあって、あとはまさに恐怖のイメージを羅列しただけ。その有無を言わさぬ不条理さこそが、実は本作の最大の強みなのだと言えよう。この手の作品は辻褄を合わせようとすればするほど、嘘が嘘になっていってしまう。であれば、最初から合理性など無視した方が、逆に“恐怖”という核心に迫ることが出来るのだ。その開き直りが、本作では結果的に“吉”と出たのだと思う。
 また、本作においてフルチは、人間の顔面をこれでもかこれでもかと破壊し続ける。特に、眼球へのこだわりは尋常でない。配管工の目玉は押し出され、メイドのマーサは眼球が飛び出し、マーティンの目玉は蜘蛛にくり抜かれる。“まず最初に破壊しなくてはいけないのは目だ。なぜなら、人間の目は悪いものを見すぎている”と生前に語っていたフルチだが、ちょっと常人には理解し難い独自の理念を持っていたようだ。というか、正直なところチンプンカンプンなのだが(笑)。
 今回は特殊メイクに『サンゲリア』のジャンネット・デ・ロッシが復活。前作に引き続いてのジェルマーノ・ナターリと共に、壮絶極まりないスプラッター描写を繰り広げている。中でも、蜘蛛の大群がマーティンの顔を食い散らかすシーンや、ゾンビが配管工の顔を握りつぶして目玉がこぼれ落ちるシーンなどは、当時のハリウッド産スプラッターを遥かに凌駕する凄惨さ。今やハリウッドを代表する特殊メイク・アーティスト、ロバート・カーツマンは『サンゲリア』以降のフルチ作品に強い影響を受けたと語っているが、そういった面での功績の大きさというのも忘れてはならないだろう。
 脚本を担当したのはフルチとダケッティ、マリウッツィの3人。クトゥルー神話に登場する『エイボンの書』を引き合いに出していることから、やはりラヴクラフト的な世界を意識しているのだろうか。いずれにせよ、アメリカン・ゴシック的な世界を目指していたであろうことは想像に難くない。
 フルチ組の撮影監督セルジョ・サルヴァーティによるカメラも、ニュー・オーリンズに漂うある種の魔術的な雰囲気をとても上手く捉えている。エイドリアン・ラインの『エンゼルハート』とは一味違った、アメリカ南部のダークサイドを美しく再現していると思う。
 そして、ファビオ・フリッツィによる素晴らしいスコア。プログレ的な要素を兼ね備えた重厚で趣のあるサウンドは、彼の代表作と言っても間違いはないだろう。

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盲導犬ディッキーに喉を噛み切られるエミリー
『ビヨンド』より

病院では次々と死者が蘇っていた
『ビヨンド』より

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逃げ場を失ったライザとマッケイブ医師
『ビヨンド』より

地獄の死者と化した少女ジルの顔面を拳銃で吹き飛ばす
『ビヨンド』より

 主演は『地獄の門』のカトリオナ・マッコールと、『恐怖!黒猫』のデヴィッド・ワーベック。また、盲目の女性エミリー役には、『ビヨンド・ザ・ダークネス/嗜肉の愛』('78年)でも知られるシンツィア・モンレアーレがサラ・ケラーという変名で登場する。彼女はもともとソプト・ポルノなので活躍したセクシー女優だったが、最近では主にテレビで活躍している模様。『ホラー・ハウス』('89年)で再びフルチ作品に起用されている。
 また、ホテルの怪しげなメイド、マーサ役にはアルジェントの『インフェルノ』で死神役を演じていたヴェロニカ・ラザールが出演。彼女はイタリアの有名な舞台女優で、ハリウッドでも活躍した名優アドルフォ・チェッリの奥さん。『ラスト・タンゴ・イン・パリ』('72年)や『ルナ』('79年)などベルトルッチ作品の常連で、アントニオーニの『ある女の存在証明』('82年)では主人公の姉役を演じていた名わき役だ。アルジェントの『スタンダール・シンドローム』('96年)では、アーシア・アルジェントの母親役で顔を出している。
 その他、マッケイブ医師の同僚ハリス役をアル・クライヴァー、画家シュウェイク役をルイジ・コッツィ監督の傑作ジャロ『殺人者は再び殺す』('75年・日本未公開)の殺人鬼役が印象的だったフランス人俳優アントワーヌ・サン・ジョンが演じている。

 ちなみに、この『ビヨンド』は1983年に“Seven Doors To Hell”というタイトルで全米公開されているのだが、配給会社によって残酷シーンの殆どがカットされてしまった。しかも、ファビオ・フリッツィの音楽は平凡なライブラリー・ミュージックに差し替えられ、監督名もルイス・フラーに変更。また、宣伝ポスターでは『悪魔のいけにえ』のトビー・フーパーとキム・ヘンケルの推薦コメントが寄せられていたが、実際には名前を貸しただけだったことを後にヘンケル自身が暴露している。配給会社社長テッド・レヴィンの言い分としては“アメリカ市場向けに改良した”とのことだったが、どう考えてもこれは“改悪”以外の何ものでもないだろう。
 また、イギリスでも残酷シーンをカットしたバージョンで劇場公開され、ビデオ版も同じマスターが使用された。さらに、ドイツではノー・カット版での劇場公開に踏み切ったものの、残念ながら上映禁止の憂き目に。ビデオでも当初はノー・カット版が発売されたが、こちらも4年後に発売禁止の措置がとられてしまった。
 一方、日本では大映ビデオがノー・カット版を問題なくリリース。そのため、DVDの時代に入るまでは日本版ビデオとレーザー・ディスクがホラー・ファン垂涎のコレクターズ・アイテムとされ、世界各国でビックリするようなプレミア価格で取引されていた。筆者が勤めていたコレクターズ・ショップでも、中古の日本版レーザー・ディスクが4万円前後で店頭販売されており、それを海外のバイヤーが転売目的で購入していったものだった。もちろん、業者価格として若干の値引きはしたと思うのだが(笑)。

 さて、さすがに何度も地獄の門を開けてしまうのには限界を感じてきたのか(?)、次にフルチが取り組んだのは古典的な幽霊屋敷ものに80年代的スプラッターを加味した怪作『墓地裏の家』('81年)。舞台を郊外の一軒家に限定し、その地下室に潜むマッド・ドクターの狂気と、何も知らずに引っ越してきた一家の恐怖を描いた作品だ。
 もともとのタイトルは『フロイトシュタイン』。これは劇中に登場するマッド・ドクターの名前で、有名な心理学者フロイトとメアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』を合体させたもの。殺した人間のパーツを自分の体に移植しながら100年以上も生き続ける医者という設定はとてもユニークだし、『地獄の門』以来のアメリカン・ゴシック的な雰囲気もたっぷり。一家の幼い一人息子に対して警告を発信する亡霊少女が登場するというオカルト的な味付けも悪くない。
 ただ、全体的にかなりスロー・ペースなストーリー展開で、フルチ自身の演出力のパワー・ダウンは否めないところだろう。残酷描写もいろいろと凝ってはいるものの、『地獄の門』や『ビヨンド』に比べると独創性に乏しい。また、人を食ったようなクライマックスも、確かにシュールといえばシュールなのだが、適当に終わらせてしまったという手抜き感は否定できない。80年代のフルチは作品を追うごとに完成度が低下していくのだが、そのきっかけとなったのがこの『墓地裏の家』なのではないかと思う。

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忌まわしい過去のある一軒家
『墓地裏の家』より

写真に写った謎の少女とは・・・?
『墓地裏の家』より

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歴史学者ノーマン(P・マルコ)と妻ルーシー(C ・マッコール)
『墓地裏の家』より

少女からのメッセージを受け取る一人息子ボブ(G・フレッツィ)
『墓地裏の家』より

 古びた空き家に二人の男女(ダニエラ・ドリアとラニエリ・フェラーラ)が忍び込んだ。恋人の名前を呼ぶ女性。次の瞬間、彼女は彼の無残な死体を発見する。悲鳴をあげる彼女の脳天にナイフが突き刺さり、その刃が口から飛び出した。そして、暗闇から現れた何者かが、女性の死体を地下室へと引きずっていく。
 ニューヨークに住む歴史学者ノーマン(パオロ・マルコ)は、家族を連れてボストンの郊外にある小さな一軒家に引っ越すこととなった。その家は、もともとノーマンの友人であるピーターソン博士の持ち家だったが、彼は妻を惨殺した挙句に自殺してしまった。あまり気の進まないノーマンだったが、ニュー・イングランド地方の古い家を調査して欲しいという、上司ミュラー教授(ルチオ・フルチ)の頼みを断ることは出来なかった。
 新居の写真を眺めていた幼い一人息子ボブ(ジョヴァンニ・フレッツィ)は、何かを訴えようするかのように窓際にたたずんでいる少女の姿を写真の中に発見する。母ルーシー(カトリオナ・マッコール)にそれを教えようとするボブだったが、少女の姿はすぐに消えてしまった。
 ボストンの不動産屋に到着したノーマン一家。車の中で待っていたボブは、通りの向こうに少女の姿を発見した。それは、あの写真の中にいた少女だった。彼女はテレパシーを使って、あの家に近づいてはいけないと警告する。

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冒頭で殺される若者スティーブ(R・フェラーラ)
『墓地裏の家』より

脳天から突き刺されたナイフが口から飛び出す女性(D・ドリア)
『墓地裏の家』より

 不動産屋の女性オーナー、ジッターソン(ダグマール・サッランデール)の案内で新居に向ったノーマンたち。ジッテルソンはノーマンの顔に見覚えがあるようだったが、なぜだか思い出すことができない。屋敷はかなり古びており、生活するには修理の必要があった。また、キッチンにある地下室へのドアは鍵がかかっており、さらに釘が打ち付けられていた。そこへ、ジッターソンに依頼されたベビー・シッター、アン(アニア・ピエローニ)がやって来る。彼女も、どこか謎めいたところのある女性だった。
 次の日、ノーマンはピーターソン博士のことを調べるために町の図書館へ出向いた。ここでも、司書のウィートリー(カルロ・デ・メーヨ)がノーマンの顔に見覚えある様子だったが、ボストンに初めてやって来たノーマンと面識があるはずもない。図書館でピーターソン博士のことを確認したところ、どうやら彼は過去にこの周辺で発生した行方不明事件や未解決殺人事件と屋敷の関連について調べていたようだ。
 その頃、ルーシーはリビングに敷かれたマットレスの下に巨大な墓石が埋め込まれているのを発見する。それはフロイトシュタインという人物の墓だった。次の瞬間、家中で奇妙な物音が鳴り響き、ルーシーは恐怖でパニックに陥る。そこへノーマンが帰ってきた。彼によると、真冬の積雪量が多いこの地方では、家の中に墓石を埋め込むという習慣が昔からあるという。ルーシーの希望で地下室への扉をこじ開けたノーマン。中へ入ってみると、そこには大量のコウモリが棲んでおり、ノーマンは腕を噛まれてしまった。
 こんな家に住むことはできないと考えたノーマンとルーシーは不動産屋へ相談に行くが、違う家を手配するまでには数日かかると言われる。翌日、一家はノーマンの腕の怪我を治療するために病院へ。その留守中に、新しい家を確保することができたことを伝えようとジッターソンが訪れた。しかし、暗闇から現れた何者かによって、彼女は惨殺されてしまう。
 図書館の資料を調べていたノーマンは、フロイトシュタインという人物が100年ほど前の外科医で、数々の違法手術を繰り返していた人物だったことを知る。より詳しい調査をするためにニューヨークへ戻ることにした彼は、途中で立ち寄った図書館でピーターソン博士のメッセージが吹き込まれたカセットテープを発見した。そこには、彼を自殺に追い込んだ詳しい状況が語られていた。その証言によると、妻を殺したのは博士ではなく、遥か過去に死んだはずのフロイトシュタイン医師その人だというのだ・・・!

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ルーシーはリビングのカーペット下に驚くべきものを発見する
『墓地裏の家』より

フロイトシュタインに殺された犠牲者
『墓地裏の家』より

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ベビーシッター、アン(A・ピエローニ)も首を切断される
『墓地裏の家』より

恐怖に怯えるルーシーとボブ
『墓地裏の家』より

 人が死んだばかりの家にわざわざ一家で移り住むんじゃない!と突っ込みたくなるのも山々だが、それを言ってしまっては物語が始まらないので仕方あるまい。アイディアは面白いものの、基本プロットに致命的な欠陥があるというのが、本作の最大の問題点と言えるだろう。合理性にとらわれないフルチの姿勢が裏目に出てしまったわけだ。
 今回はフルチ、マリウッツィ、サケッティの3人に加えて、『サンゲリア』でも組んだ女流脚本家エリサ・ブリガンティが脚本に加わっている。一応、ラヴクラフトをヒントにしたことにはなっているものの、具体的にどの作品を参考にしているのかは定かではない。というよりも、単純にラヴクラフト的なムードだけを拝借したといった印象だ。また、エンディングではヘンリー・ジェームズの言葉を引用しているが、これは真っ赤な嘘で、実際にはフルチ自身が書いたものである。
 主要スタッフはいつものフルチ組で固められているものの、音楽だけはフルチ作品初参加のワルター・リッツァーティが担当。主にB級アクションやソフト・ポルノを手がけていた作曲家で、前作までのファビオ・フリッツィと比較すると凡庸と言わざるを得ない。
 また、ジャンネット・デ・ロッシとマウリツィオ・トラーニによる特殊メイクも、今回は全体的に地味な印象だ。フロイトシュタインのクリーチャー・デザインにしても、まるで50年代のB級SFホラーに出てくる宇宙人といった感じ。インパクトこそあるが、安っぽいイメージは否定できない。

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ついに姿を見せたフロイトシュタイン
『墓地裏の家』より

不動産屋の女性オーナー役で顔を出すダグマール・ラッサンデール
『墓地裏の家』より

 お馴染みのカトリオナ・マッコールに加え、今回フルチ作品初登場となるのがノーマン役のパオロ・マルコ。第2のジャンカルロ・ジャンニーニ的なイメージでデビューした俳優で、『作家マゾッホ愛の日々』('80年)のマゾッホ役で有名だが、本作をきっかけにB級ホラー路線まっしぐらとなってしまった。
 彼らの息子ボブ役を演じるジョヴァンニ・フレッツィは、ランベルト・バーヴァの『暗闇の殺意』('83年)や『デモンズ』('85年)などにも出演していた子役。フルチの『マンハッタン・ベイビー』('82年)にも顔を出しており、当時ホラー映画に引っ張りだこだった。正直なところ、あんまり可愛いとはいえないのだが、妙にインパクトの強い顔立ちをした子供だった。
 ベビーシッターのアン役を演じているのは、アルジェントの『インフェルノ』や『シャドー』に出ていたアニア・ピエローニ。演技は下手っくそだが、どこか神秘的でミステリアスな美しさを持った女優だった。
 その他、『地獄の門』にも出ていたカルロ・デ・メーヨ、『恐怖!黒猫』にも出ていたダグマール・ラッサンデール、『ビヨンド』のジャンパオロ・サッカローラなど、お馴染みの顔が脇を固めている。お馴染みと言えば、フルチ映画の殺され役専門女優ダニエラ・ドリアも登場。冒頭で口からナイフを出して殺された。

 ちなみに、本作はアメリカで廉価版DVDやビデオが幾つも出回っているのだが、これは日本版のレーザー・ディスクからダビングしたビデオをマスターにしているので注意が必要。残念ながら日本語字幕はマスク処理で消されているのであしからず(笑)。

<以降、PART3へと続く・・・>

 

CONTRABAND-DVD.JPG CITYOFTHELIVINGDEAD-DVD.JPG BLACK_CAT-DVD.JPG

野獣死すべし
Luca il contrabbandiere (1980)

日本では劇場未公開
VHSは日本発売済・DVDは日本未発売

地獄の門
Paula nella citta dei morti viventi (1980)

日本では劇場未公開
VHS・DVD共に日本発売済

恐怖!黒猫
Black Cat (1981)

日本では劇場未公開
VHS・DVD共に日本発売済

(P)2003 Blue Underground (USA) (P)2000 Anchor Bay (USA) (P)1999 EC Entertainment (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆ 画質★★★★☆ 音質★★★★☆ 画質★★★★☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録
)/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/97分/製作:イタリア

映像特典
オリジナル劇場予告編
バイオグラフィー集
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録
)/5.1chサラウンド/音声:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/94分/製作:イタリア

映像特典
オリジナル劇場予告編
ラジオ・スポット集
バイオグラフィー集
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(レターボックス収録)/モノラル/音声:英語/字幕:なし
/地域コード:ALL/90分/製作:イタリア

映像特典
オリジナル劇場予告編
ルチオ・フルチ インタビュー
ルチオ・フルチ バイオグラフィー
監督:ルチオ・フルチ
製作:サンドロ・インファシェッリ
脚本:ジャンニ・デ・キアラ
    エットーレ・サンゾ
撮影:セルジョ・サルヴァーティ
音楽:ファビオ・フリッツィ
出演:ファビオ・テスティ
    マルセル・ボズッフィ
    サヴェリオ・マルコーニ
    イワナ・モンティ
    グイド・アルベルティ
    フェルディナンド・ムローロ
    ダニエレ・ダブリーノ
    ヴェナンティノ・ヴェナンティーニ
    アジタ・ウィルソン
監督:ルチオ・フルチ
製作:ジョヴァンニ・マシーニ
    ルチオ・フルチ
脚本:ルチオ・フルチ
    ダルダノ・サケッティ
撮影:セルジョ・サルヴァーティ
音楽:ファビオ・フリッツィ
出演:クリストファー・ジョージ
    カトリオナ・マッコール
    カルロ・デ・メーヨ
    ジャネット・アグレン
    アントネッラ・インテルレンギ
    ジョヴァンニ・ロンバルド・ラディーチェ
    ダニエラ・ドリア
    ヴェナンティノ・ヴェナンティーニ
監督:ルチオ・フルチ
製作:ジュリオ・スバリージア
原作:エドガー・アラン・ポー
脚本:ルチオ・フルチ
    ビアジオ・プロイエッティ
撮影:セルジョ・サルヴァーティ
音楽:ピノ・ドナッジョ
出演:パトリック・マギー
    ミムジー・ファーマー
    デヴィッド・ワーナー
    ダグマール・ラッサンデール
    アル・クライヴァー
    ダニエラ・ドリア
    ブルーノ・コラッザーリ
 映像特典が劇場予告編だけというのは寂しいものの、本編そのものはノー・カットの完全版。もともとアンカー・ベイの下請けだったブルー・アンダーグランドだけに、画質も大変良好です。欲を言えば、オリジナルのイタリア語バージョンも入れてほしかったかもしれません。やっぱりナポリを舞台にしてセリフが英語というのは不自然ですもんね。  こちらは日本盤DVDも出ていますが、なぜか日本盤はスタンダード・サイズのカット・バージョン。なので、絶対にこちらのアメリカ盤の方を手に入れるべきでしょう。アンカー・ベイからは『マッキラー』とカップリングしたお徳用2枚組も出ています。また、ECエンターテインメントからも高画質なDVDが出ていますが、残念ながらレターボックス収録でした。  こちらも日本盤DVDはなぜかスタンダード・サイズのカット・バージョン。ただ、このECエンターテインメント版も、ワイドスクリーンではあるものの、残念ながらレターボックス収録です。スクィーズ収録にこだわる方は、アンカー・ベイ盤がオススメです。ちなみに、映像特典で収録されているインタビューは、コンベンションでの質疑応答を収録しただけ。

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ビヨンド
L'aldila (1981)

日本では劇場未公開
VHS・DVD共に日本発売済

墓地裏の家
Quella villa accanto al cimitero (1981)
日本では劇場未公開
VHS・DVD共に日本発売済

(P)1998 EC Entertainment (USA) (P)1998 EC Entertainment (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆ 画質★★★★☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(レターボックス収録)/ステレオ/音声:英語/字幕:英語/地域コード:ALL/87分/製作:イタリア

映像特典
オリジナル劇場予告編
バイグラフィー集
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録
)/モノラル/音声:英語/字幕:英語・ドイツ語/地域コード:ALL/87分/製作:イタリア

映像特典
オリジナル劇場予告編
スチル・ギャラリー
ルチオ・フルチ インタビュー
ルチオ・フルチ バイオグラフィー
監督:ルチオ・フルチ
製作:ファブリツィオ・デ・アンジェリス
脚本:ルチオ・フルチ
    ダルダノ・サケッティ
    ジョルジョ・マリウッツィ
撮影:セルジョ・サルヴァーティ
音楽:ファビオ・フリッツィ
出演:カトリオナ・マッコール
    デヴィッド・ワーベック
    シンツィア・モンレアーレ
    ヴェロニカ・ラザール
    アントワーヌ・サン・ジョン
    アル・クライヴァー
    ミケーレ・ミラベッラ
    ジャンパオロ・サッカローラ
監督:ルチオ・フルチ
製作:ファブリツィオ・デ・アンジェリス
脚本:ルチオ・フルチ
    ダルダノ・サケッティ
    ジョルジョ・マリウッツィ
    エリサ・ブリガンティ
撮影:セルジョ・サルヴァーティ
音楽:ワルテール・ビガッティ
出演:パオロ・マルコ
    カトリオナ・マッコール
    ダグマール・ラッサンデール
    カルロ・デ・メーヨ
    アニア・ピエローニ
    ジョヴァンニ・フレッツァ
    ダニエラ・ドリア
 こちらは先にリリースされていたECエンターテインメント版ですが、こだわるファンであればアンカー・ベイ盤の方がオススメでしょう。スクィーズ収録だし、5.1chサラウンドにリミックスされていますので。なお、日本盤はこのEC盤とほぼ同じ仕様。画質そのものは十分に合格点です。  この作品に関しては、日本盤DVDがオススメかもしれません。映像特典がかなり充実していますから。アメリカ盤でいうならば、このEC版もアンカー・ベイ版も、どっこいどっこいといったところでしょうか。どちらもスクィーズ収録ですしね。ただ、EC版の方にはフルチのインタビュー映像が入っています。

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