リネア・クイグリー Linnea Quigley
'80〜'90年代にかけてアメリカで絶大な人気を誇ったスクリーム・クィーンの1人である。ブリンク・スティーヴンス、ミシェル・バウアーと並んで低予算ホラー映画の3大女王として名を馳せ、35年以上のキャリアで出演作は100本を軽く上回る。ブロンドのベビーフェイスに身長157センチという小柄な彼女は、いわばB級映画界のアイドル的な存在だった。しかも、そのルックスに似合わず度胸が据わっており、可憐なヒロインはもちろんのこと、パンクな悪女や醜い汚れ役だって全然イケルし、大胆なヌード・シーンやハードなアクション・シーンも難なくこなすことができる。
“この仕事では心を広く持たないといけない。裸になるのが嫌だっていうだけで、仕事にあぶれてしまう女の子は山ほどいるもの”“エクスプロイテーション映画にヌードは必要不可欠なものよ。いちいち緊張なんかしていたら、監督を困らせてしまうだけだわ”というその言葉には、エログロなんでもありの過酷なB級映画界で逞しく生き抜いてきた彼女ならではのプロ根性を垣間見ることができるだろう。
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パンク娘トラッシュを演じた出世作「バタリアン」 |
1958年5月27日、アイオワ州のダヴェンポートに生まれたリネアは、本名をリネア・バーバラ・クイグリーという。父親は心理学者で整体師、母親は専業主婦という平凡な中流家庭で育った。幼い頃から女優に憧れていたという彼女は、'70年代半ばに家族がロサンゼルスへ引っ越したことから、本格的に芸能界を目指すようになったようだ。最初の仕事は歯磨き粉のCMモデル。その直後に、低予算映画“Wheeler”('75)で映画デビューを果たしている。
さらに、ポルノ映画界の裏側を描いた擬似ドキュメンタリー「オーディション」('78)にて、女優志望の女の子サリー役で主演に抜擢されたリネア。とはいえ、やはりこれも弱小インディペンデント会社の作ったゴミのような映画に過ぎず、当時は「デススポーツ」('78)や“Don't
Go Near The Park”('81)、“Graduation
Day”('81)といったB級映画の殺され役や色添え役が関の山といったところだった。
そんな彼女の転機となったのは、リンダ・ブレアの妹役を演じたバイオレンス・アクション「暴行都市」('84)。さらに、大ヒットしたゾンビ映画「バタリアン」('85)では赤く染めたショートカットでパンク娘トラッシュ役を演じ、トップレスのままゾンビとして甦るシーンが強烈なインパクトを残した。この作品で初めて彼女に注目したというファンも多いだろう。
さらに、デヴィッド・デコトー監督のSFホラー「核変異体クリーポゾイド」('87)で主演に起用され、これをきっかけに「ザ・インプ」('88)や「ナイトメア・シスターズ」と立て続けにデコトー監督でヒロインを演じるように。フレッド・オーレン・レイ監督のカルト映画「女切り裂き狂団チェーンソー・クィーン」('88)でもヒロインのストリッパー、サマンサ役を演じ、ミシェル・バウアーとの過激なチェーンソー・バトルを披露した。
また、この頃売れっ子特殊メイクアーティストだったスティーヴ・ジョンソンと結婚していたことから、彼の手がけた「エルム街の悪夢4/ザ・ドリームマスター最後の反撃」('88)や「イノセント・ブラッド」('92)などにも出演。ただし、本当に顔見せ程度の小さな役でしかなかったのだが。まあ、やはり所詮はC級低予算映画のスター女優。いくらカルトな映画ファンのあいだで熱烈な支持を得ているとはいえ、一般的には無名に等しいのだから仕方あるまい。それでも、イタリアのホラー映画「サスペリア2000」('97)にも招かれて特別出演しているのだから、そのマニアックな人気がインターナショナルな規模で広がっていたことは確かだろう。
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カルト映画として名高い「女切り裂き狂団チェーンソー・クィーン」 |
そんなこんなで、欧米ではそれこそサブカル・アイコンと呼んでもいいくらいの存在になった彼女だが、ここ日本では残念ながらほとんど名前も顔も知られていない。ブリンク・スティーヴンスやミシェル・バウアーにしてもそうなのだが、やはり女優としての立ち位置が特殊すぎるのだろう。なにしろ出演作はどれもキワモノばかり、女優としての売りもヌードと絶叫のみ。恐らくラス・メイヤーとかポール・モリシーみたいな、ある種のお洒落でスノッブな方々がご贔屓にするアート系(?)B級エログロ映画にでも出ていれば、その扱われ方もちょっとは違ったのかもしれないのだろうが。
かくして、既に50代半ばに差し掛かったリネア。意外なことに、今でも年に4〜5本の仕事をこなすという売れっ子女優だ。さすがにセクシーなヌード・シーンなんぞを演じることはなくなったが、「ストリッパー・ゾンビランド」('11)ではゾンビ・ストリッパー軍団を相手に女ランボーさながらのバトルを繰り広げるタフなオバチャン役で健在ぶりをアピール。かつての出演作「悪霊たちの館/呪われたハロウィンパーティ」('87)をリメイクした「ファイナル・デッドパーティ」('09)にも、チョイ役で顔を出していた。本人曰く“バッドアスなグランマを目指している”とのこと。いや、ますます特殊な存在のカルト女優になっていきそうな気がする(笑)。
なお、元旦那のスティーヴ・ジョンソンとは2年で離婚し、10年ほど前から年老いた両親が隠居生活を送るフロリダへと移り住んでいるらしい。
核変異体クリーポゾイド
Creepozoids
(1987)
日本では劇場未公開・ビデオ発売のみ
VHSは日本発売済・DVDは日本未発売
(P) Shadow Entertainment
(USA)
画質★★☆☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/スタンダードサイズ/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:
ALL/72分/製作:アメリカ
特典映像
オリジナル劇場予告編
監督:デヴィッド・デコトー
製作:デヴィッド・デコトー
ジョン・ショウウェイラー
脚本:バーフォード・ハウザー
デヴィッド・デコトー
撮影:トーマス・キャラウェイ
音楽:ガイ・ムーン
出演:リネア・クイグリー
ケン・エイブラハム
マイケル・アランダ
リチャード・ホーキンス
アシュリン・ギア
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核戦争による放射能で崩壊してしまった世界 |
5人の脱走兵たちは謎の研究施設へ迷い込む |
肉食系の女兵士ビアンカ(L・クイグリー) |
施設内には不気味な“巣”が… |
<Review>
当時にわかに頭角を現しつつあったリネアにとって、デヴィッド・デコトー監督との初コンビ作となったのがコレ。核戦争による放射能の影響で荒廃しきった世界を舞台に、とある研究施設へ迷い込んだ兵士たちが不気味な巨大モンスターと遭遇する。いかにもチープでバカバカしい亜流「エイリアン」といった感じだが、それなりに力の入った巨大モンスターの造形はまずまずの合格点だし、クライマックスに登場する赤ちゃんモンスターもなかなかユニーク。72分という上映時間の短さで退屈させないのも好感が持てる。
なんて、とりあえず褒められるところは褒めておいたが、ぶっちゃけたところ作品のクオリティは確実に平均点以下だろう。シンプルなだけが取り柄の大雑把な脚本、素人臭さを隠せない役者陣の大袈裟な演技、時間稼ぎ以外の何ものでもない無駄な人間ドラマ、低予算丸出しの安っぽいセットなどなど、欠点を上げればキリがないだろう。
加えて、ヒロインを演じるリネアがイマイチ魅力的じゃないという点もちょっとイタい。まあ、とりあえず女兵士という設定だからね、キレイにメイクしたりできないという事情はよく分かる。汗と汚れにまみれた顔で、髪の毛もボサボサのまま…っていうのも役作りだから仕方あるまい。しかしながら、この人はメイクなしだと、どうしてもホワイトトラッシュの小娘にしか見えないという弱点があるのだ。なので、全裸シャワー・シーンに濃厚なベッド・シーンというサービスも抜かりなく用意されているものの、残念ながらあまり有り難みが感じられない。というか、悪い意味での場末感が漂ってしまうのだ。
なので、リネア・クイグリーがお目当てのファンは予め注意が必要。しかし、先述したようにエイリアンもどきの巨大モンスターは悪い出来じゃないし、いかにもぬいぐるみな巨大ネズミもレトロなB級感たっぷりで微笑ましい。さらに、最後を飾る赤ちゃんモンスターの、まるで殿山泰司を連想させるような憎めないオッサン顔も愉快だ。ちゃんとストップモーションで表情が変わるのだから偉い(笑)。ただし、「悪魔の赤ちゃん」が元ネタであろうことは一目瞭然だけどね。
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巨大モンスターに襲われるジェイク(R・ホーキンス) |
目覚めたジェイクは昨晩の記憶がなかった |
食事中に突然苦しみだしたジェイク |
残された仲間たちは施設の恐るべき正体を知る |
<Story>
時は1998年。東西の核戦争は6年以上にも及び、世界は放射能の影響で崩壊したも同然だった。とある巨大な廃墟施設の周辺を、男女5人の脱走兵が隠れ家を探してさまよっている。今にも雨が降ってきそうな空模様。強烈な酸性雨を避けるためにも、雨宿りのできる場所が必要だった。だが、予想よりも早く雨が降りだし、一行は目に入ったドアを無理やり開いて中へ逃げ込んだ。
そこはどうやら何かの研究ラボのようだった。しかし、中は真っ暗で人の気配もない。リーダーのジェシー(マイケル・アランダ)はこの施設の正体を知るため、通信兵ジェイク(リチャード・ホーキンス)にコンピューターを調べるよう指示する。一方、気の強い女兵士ビアンカ(リネア・クイグリー)は、単細胞だが憎めないブッチ(ケン・エイブラハム)と深い仲になっていた。施設には食料やシャワーも揃っており、兵士たちは久しぶりの休息を満喫する。
その晩、遅くまでコンピューターを解析していたジェイクは、足元に不可解な通り穴を発見する。その先には真っ暗な洞窟が。いったいここ何なのかと首をひねる彼に、巨大なモンスターが襲いかかる。翌朝、ベッドで目覚めたジェイクは昨晩の記憶がなかった。仲間たちとテーブルを囲む平和な朝食。ところが、その場でジェイクは苦しみはじめ、顔や両手がみるみるうちに焼け爛れていき。全身から黒い液体を吹き出して絶命する。
女兵士ケイト(アシュリン・ギア)がジェイクの調べていたコンピューターをチェックすると、どうやらこの施設は軍関係の機密研究所だったらしく、放射能を利用した遺伝子操作の実験が行われていたらしいことが判明。その直後に兵士たちは巨大モンスターに襲われ、口から吐き出す黒い液体によってコンピューターが破壊されてしまった。遺伝子操作によって生まれた怪物が施設内に潜んでいたのだ。
さらに、放射能の影響で巨大化したネズミがビアンカに襲いかかり、助けようとしたケイトが負傷してしまう。一方、巨大モンスターを退治しようと挑んだブッチも傷を負い、やはり全身から黒い液体を吹き出しながら死んでしまった。その上、傷口から放射能に汚染されたケイトが発狂し、ビアンカに襲いかかってくる。壮絶な格闘の末、ケイトの息の根を止めるビアンカ。
かくして、生き残ったのはビアンカとジェシーだけになった。しかし、ジェシーはモンスターに放り投げられた衝撃で気絶し、助けようとしたビアンカが殺されてしまう。意識を取り戻したジェシーはモンスターを倉庫へとおびき出し、辛うじて倒すことに成功した。ところが、今度はモンスターの体内からミュータントの赤ちゃんが登場。油断したジェシーに牙をむく…。
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リーダーのジェシー(M・アランダ)もモンスターに襲われる |
放射能を利用した遺伝子操作によって生まれた怪物 |
巨大化したネズミがビアンカに襲いかかる |
ブッチ(K・エイブラハム)も犠牲になってしまった |
<Information>
監督のデヴィッド・デコトーはもともとB級映画の帝王ロジャー・コーマンのもとで修行を積み、チャールズ・バンド率いるエンパイア・ピクチャーズやフルムーン・エンターテインメントで活躍した人物。予算も中身も限りなくゼロに等しいけれど、とりあえず派手な見せ場だけはしっかりと用意されていて、それなりに面白くて楽しいB級エンターテインメント映画を量産してきた人だ。まあ、いい意味でも悪い意味でも職人肌の監督。本作はまだ駆け出しの頃の作品で、予算がたったの15万ドルで撮影期間は2週間という悪条件に大苦戦したそうだが、できる範囲内で最大限に面白い映画を…という意欲だけは十分に伝わってくる。
そのデコトー監督と共同で脚本を手がけたバーフォード・ハウザーについては詳細不明。製作のジョン・ショウウェイラーはデコトー監督の盟友で、「Dr.エイリアン」('89)や「パペットマスター3/ナチス大激闘」('91)など数多くの作品でコンビを組んでいるプロデューサーだ。
撮影監督は「クリッター3」('91や「バタリアン5」('05)など低予算ホラーを数え切れないほど手がけ、当時はデコトー監督との仕事も多かったトーマス・キャラウェイ。巨大モンスターや赤ちゃんモンスターのメカニカル・エフェクトを担当したのは、「かいじゅうたちのいるところ」('09)や「プレデターズ」('10)のジョン・クリスウェル。特殊メイクは「ブロブ」('88)や「ヘルボーイ」('04)のトーマス・フローツが手がけている。
そして、音楽を担当したのは人気アニメ「Oops!フェアリー・ペアレンツ」でアニー賞(アニメ界のオスカー)を獲得している作曲家ガイ・ムーン。いかにも80'sなテクノポップ風シンセ・サウンドはなかなか悪くない。
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発狂したケイト(A・ギア)がビアンカに襲いかかる |
ジェシーを助けようとしたビアンカだったが… |
モンスターを倉庫へとおびき出すジェシー |
今度は赤ちゃんモンスターがジェシーに牙をむく |
そして、最後にリネアを囲む脇役キャストについても簡単に解説を。シャワー・シーンやベッド・シーンでリネアとの濃厚な絡みを演じているブッチ役のケン・エイブラハムは、「デッドロック」('88)などのB級アクション映画でチンピラ役なんかをやっていた俳優。現在はテレビ・ドキュメンタリーの製作者兼脚本家へ転向しているらしい。
脱走兵グループのリーダーであるジェシー役を演じているマイケル・アランダについては詳細不明。通信兵ジェイク役のリチャード・ホーキンスについても、映画「女優フランシス」('82)に端役で出ていたという程度の情報しか分からない。どちらも全くの無名俳優であることだけは確かだ。
なお、女兵士ケイト役のアシュリン・ギアについては、'90年代の人気ハードコア・ポルノ女優としてご存知の方も多かろう。当時はキム・マッキャミーの芸名で本作のようなB級映画の脇役を務めていたが、'90年頃よりハードコア・ポルノへ転向して大ブレイクを果たした。その一方、キンバリー・パットンやキンバリー・アシュリン・ギアなどの別名義で、ドラマ「Xファイル」やジェット・リー主演の映画「ザ・ワン」('01)などにも出ていたようだ。
ザ・インプ
Sorority Babes in the Slimeball Bowl-O-Rama
(1988)
日本では劇場未公開・ビデオ発売のみ
VHSは日本発売済・DVDは日本未発売
(P) Cult Video/Koch Vision
(USA)
画質★★☆☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/スタンダードサイズ/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:
ALL/80分/製作:アメリカ
特典映像
オリジナル予告編
キャスト・プロフィール
監督:デヴィッド・デコトー
製作:デヴィッド・デコトー
ジョン・ショウウェイラー
脚本:セルゲイ・ハセネック
撮影:スティーブン・アシュレイ・ブレイク
音楽:ガイ・ムーン
出演:リネア・クイグリー
アンドラス・ジョーンズ
ロビン・ロシェル
ハル・ハヴィンス
ジョン・スチュアート・ワイルドマン
ブリンク・スティーヴンス
ミシェル・バウアー
キャス・オブレヒト
カーラ・バロン
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冴えないオタク学生カルヴィン(A・ジョーンズ)と仲間たち |
女子寮では新入生の入会式が執り行われていた |
覗きがバレてしまったカルヴィンたち |
トロフィーを盗むために真夜中のボウリング場へ |
<Review>
「核変異体クリーポゾイド」の撮影現場ですっかり意気投合したというリネアとデヴィッド・デコトー監督のコンビ作第2弾。真夜中のボウリング場に忍び込んだ学生たちが、ひょんなことから蘇ってしまった小悪魔インプに次々と殺されていくというホラー・コメディである。チープな笑いとチープなスリルが満載の、天真爛漫でアッケラカンとしたバカ映画。ハロウィン向けの安上がりなパーティ・ムービーだ。
落ちこぼれのオタク男子学生3人組が女子寮をのぞき見しようとしたことから、罰として新入生女子の入会テストに付き合わされることとなる。それは、真夜中のボウリング場に忍び込んでトロフィーを盗み出してくるというもの。ところが、そのトロフィーには小悪魔インプが閉じ込められており、何も知らない学生たちはうっかりコイツを蘇らせてしまう。この間抜けな学生たちに次々と魔法をかけ、お互いに殺し合いをさせていくインプ。たまたまボウリング場に居合わせた泥棒のパンク娘スパイダーとオタク学生カルヴィンだけが辛うじて生き残り、ない知恵を絞ってインプを倒そうと奮闘する…というお話だ。
当時ブームだったスラッシャー映画の変化球的作品といったところだろうか。能天気でバカバカしいユーモアを散りばめつつ、それなりにグロいスプラッター・シーンや健康的で明るいセックス・シーンなどがたっぷりと盛り込まれていく。多くを期待しなければ普通に楽しめるB級エンターテインメント作品だ。もちろんアラを探せばいろいろと出てくるが、この手の映画をクソ真面目に批判するというのも野暮だろう。
また、コアなホラー映画マニアにとっては、3大スクリーム・クィーン(リネア・クイグリー、ブリンク・スティーヴンス、ミシェル・バウアー)の初共演作品としても要注目。これがきっかけで、次回作「ナイトメア・シスターズ」での本格的タッグが実現することとなったわけだ。おバカなオタク学生トリオが魔物を蘇らせてしまうという設定も「ナイトメア・シスターズ」と全く同じ。いかにも'80年代らしい他愛のなさが憎めない映画である。
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先輩のバブス(R・ロシェル)たちがこっそりと監視している |
泥棒のパンク娘スパイダー(L・クイグリー)と遭遇 |
ボウリング場からトロフィーを盗むのが目的 |
うっかり落としたトロフィーの中から出てきたのは… |
<Story>
女の子には全く縁のないオタク学生カルヴィン(アンドラス・ジョーンズ)、キース(ジョン・スチュアート・ワイルドマン)、ジミー(ハル・ハヴィンス)の3人組。女子寮で新入生を迎えるための入会式が行われると知った彼らは、こっそりと女子寮に忍び込んで覗き見をしようとする。が、リーダーのバブス(ロビン・ロシェル)に見つかってしまい、新人女子タフィー(ブリンク・スティーヴンス)とリサ(ミシェル・バウアー)の入会テストに付き合わされる羽目となった。
その入会テストとは、真夜中のボウリング場に忍び込んでトロフィーを盗み出すというもの。実はボウリング場の入っている巨大ショッピング・モールはバブスの父親が経営しており、彼女は取り巻きのロンダ(キャス・オブレヒト)とフランキー(カーラ・バロン)に協力させて新人たちにイタズラを仕掛けるつもりだった。
そうとは知らず、閉店後のショッピングモールへと忍び込む5人。先回りしていたバブスたちは防犯カメラで彼らの様子を見ている。ただ、モールには他にも予期せぬ客人がいた。店の売上金を狙った泥棒のパンク娘スパイダー(リネア・クイグリー)と警備員(ジョージ・バック・フラワー)だ。口は悪いけど気のいいスパイダーに惹かれるカルヴィン。なんとなくその場の流れで、スパイダーも5人のトロフィー泥棒に協力することとなる。
しかし、慌てたジミーがトロフィーを床に落としてしまったところ、中から小悪魔インプが出てくる。この30年間トロフィーの中に幽閉されていたらしい。で、まずインプはロンダとフランキーをゾンビに変え、さらにはジミーとキース、タフィーとリサに魔法をかけてしまう。黄金の山に囲まれて有頂天のジミー、発情してお互いの肉体を貪るキースとリサ、憧れだったプロム・クィーンの衣装に身を包んで夢心地のタフィー。バカバカしくてやってられない、と呆れたスパイダーとカルヴィンは家に帰ろうとするものの、インプの魔法によって彼らはモールの中に閉じ込められていた。
そして、血に飢えたゾンビと化したロンダとフランキーが次々と学生たちを殺していく。ジミーは生きたまま首をもぎ取られ、キースは冷却器に頭を突っ込まれ、タフィーは上半身と下半身を引っ張られ。さらには気を失っていたバブスもSMクィーンに変身し、リサを拷問道具で虐殺する。警備員も殺されてしまった。残されたスパイダーとカルヴィンはバブスたちをなんとか倒し、小悪魔インプを封じ込めようと画策するのだが…。
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小悪魔インプが姿を現す |
インプの魔法で発情してしまったリサ(M・バウアー)とキース |
おデブのジミー(H・ハヴィンス)が真っ先に殺される |
フランケンシュタインの花嫁にソックリなフランキー |
<Information>
さてさて、インプの魔法でゾンビに変身したロンダとフランキーだが、なぜかフランキーの方だけ“フランケンシュタインの花嫁”に瓜二つ。ホラー・マニアへ向けたギャグのつもりなのだろうけど、いかんせん唐突過ぎて意味がわからない。なぜに“フランケンシュタインの花嫁”なのか?と(笑)。まあ、ロンダが腐りかけた自分の顔面に美肌クリームを塗りながら、“こりゃダメだわ”と呟くシーンはちょっとだけ笑えたのだが。
そんな中学生レベルの楽屋落ち的な笑いを散りばめた脚本を書いたのは、これが脚本家として唯一の仕事であるセルゲイ・ハセネック。もしかすると、デコトー監督ないし製作者ショウウェイラーの偽名だったのかもしれないが、残念ながら詳細は不明のままだ。なお、撮影監督のスティーブン・アシュレイ・ブレイクは、「デッドリー・プレイ/地獄のプラトーン」('87)や「ナイトウォーズ」('88)などのB級アクション映画を手がけたカメラマン。特殊効果のクレイグ・ケイトンは、「ジュラシック・パーク」('93)や「アポロ13」('95)などのSFXチームに加わっていた人物である。
そして、音楽は「核変異体クリーポゾイド」に続いてガイ・ムーンが担当。これが、前作以上にポップかつキャッチーな出来栄えで、80'sらしい派手なシンセ・サウンドを存分に楽しむことができる。中でも、オープニングとエンディングに使用されているテーマ曲“Here
in
Darkness”は出色。デッド・オア・アライブ風のPWL系ハイエナジーサウンドをベースに、当時のイタロ・ディスコやジャーマン・ディスコの要素を加味したような、イケイケのユーロビート・ナンバーに仕上がっている。
ちなみに、撮影のロケ地として使用されたサクラメントのボウリング場施設は、その後建て替えられて市民プールとなったらしい。
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タフなスパイダーに助けられるダメ男カルヴィン |
つぎつぎと罠を仕掛けていく狡猾なインプ |
SMクィーンとなったバブスがリサをなぶり殺す |
残るはスパイダーとカルヴィンの2人だけに… |
で、今回は元ランナウェイズのリタ・フォードみたいなメイクとファッションで小悪魔系パンク娘を演じるリネア・クイグリー。この手のロリ顔ビッチは彼女の独壇場だ。時代が時代ならばゴスロリ系でも十分イケたに違いない。まだまだ演技には素人臭さが残るものの、ヒロインとしての役割はしっかりと果たしている。
そんな彼女に一目惚れするオタク男子学生カルヴィンを演じているアンドラス・ジョーンズは、「エルム街の悪夢4/ザ・ドリームマスター最後の反撃」('88)のカンフー少年リッキー役を演じていたイケメン俳優。本作ではダテ眼鏡を着用して冴えない草食系男子に扮している。その悪友キース役のジョン・スチュワート・ワイルドマンも、ミシェル・バウアー出演のC級ホラー“Terror
Night”('87)でヒロインのイケメン彼氏を演じていた役者。おデブなジミー役のハル・ハヴィンスは、主にテレビドラマのチョイ役をこなしている人のようだ。
一方、女子寮を仕切るビッチなお嬢様バブス役のロビン・ロシェルは、一部でカルトな人気を誇るスラッシャー映画“Slumber
Party
Massacre”('82)の転校生ヴァレリー役で知られる女優さん。ロビン・スティル名義での出演作も多い。低予算ホラーの世界ではそれなりに売れっ子だったが、1996年に34歳という若さで自殺してしまった。
そして、新入生タフィーとリサを演じているのがブリンク・スティーヴンスとミシェル・バウアー。2人とも当時はまだほぼ無名に近い存在だったが、本作をきっかけにB級セクシー女優として脚光を浴びるようになったわけだ。また、警備員役としてジョン・カーペンター作品の常連俳優ジョージ・バック・フラワーが顔を出しているのもホラー映画ファンなら見逃せない。
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