リンダ・ブレア Linda Blair

 

LINDA_BLAIR.JPG

 

 良くも悪くも『エクソシスト』(73年)のみで語り継がれるようになってしまった女優・・・というか元子役。主人公の少女リーガンは、どこにでもいそうな普通の女の子だからこそ、悪魔に祟られてからの豹変ぶりがショッキングだったのであり、リンダ自身は同世代のテイタム・オニールやジョディ・フォスターのようなスター性に恵まれているというわけでもなかった。
 ところが、映画があまりにも大当たりしてしまうと、その主人公を演じた女優というネーム・バリューばかりが一人歩きしてしまう。オールスター・キャストのメジャー大作『エアポート'75』(74年)や『エンテベの勝利』(76年)などにも出演し、一躍売れっ子になったはいいものの、もともとが決して見た目の華やかな人ではない。
 『エクソシスト2』(76年)の興行的失敗でミソを付け、ローラー・ディスコを題材にした青春映画『ローラー・ブギ』(79年)も大コケ。演技力はある人なので、もっと堅実な方向性を歩めば良かったものの、我が強いのか目立ちたがりなのか、いわゆるアイドル・スターが歩むような路線を選んでしまった。これがそもそも失敗のもとだったのかもしれない。
 しかも、健康的で庶民的なイメージとは裏腹に、18歳の時に麻薬所持で逮捕。これは彼女のキャリアにとってかなり致命的な事件だった。スラッシャー映画の佳作『ヘルナイト』(81年)では清純な美少女役。迫真の恐怖演技に関してははさすがの巧さだったが、とてもじゃないけど“清純な美少女”というのは説得力不足。
 さすがに今までの路線には限界を感じたのか、リンダは女囚映画『チェーン・ヒート』(83年)で大胆なイメチェンを図る。彼女が演じたのは無実の罪で刑務所に入れられた女性。レイプや暴力、レズビアンなどセンセーショナルな題材を描いたエクスプロイテーション映画で、彼女はヌードやセックス・シーンも辞さない大胆な演技を披露し、セクシー女優として売り出す道を選んだのだ。
 あのリンダ・ブレアが!という話題性も手伝って、最初のうちは成功したかのように思えたが、結局はもの珍しさだけで観客が集まっただけのこと。似たような女囚映画に次々と出演したり、過激なヌード・グラビアを発表したりしたものの、次第にその存在そのものがジョークになっていく。出演作のクオリティも下がる一方。
 それでも、一部の物好きな映画ファンからスクリーム・クィーンと呼ばれ、C級Z級のアクション映画やホラー映画、サスペンス映画などに活路を見出していった。そういった意味では、立派なカルト女優と言えるだろう。
 先にも述べたが、演技力は十分に備わっていた。しかし、己の資質に見合わないキャリアを歩んでしまったことから、いつの間にか天才子役からC級女優へと転落してしまったわけだ。どう見ても、セクシー女優を名乗るには容姿が平凡過ぎる。唯一の救いは豊満な肉体くらいか。それも、やがては年齢的な問題によって限界がやって来る。
 90年代半ば以降はすっかり仕事もなくなってしまい、本人の自主制作したビデオ映画“The Blair Bitch Project”(99年)をイベント会場で手売りするような状態に。これは当時大ヒットしていたホラー映画『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』のパロディ作品で、彼女が懐中電灯を持ちながら鼻水をたらし、“神様、私はビッチでした、ごめんなさい、だから助けて・・・!”と呟きながら恐怖に震えるシーンが最大の見どころという自虐的なクズ映画。さすがのリンダ・ブレアも遂にここまで来たかと、当時つくづく思ったもんだった。
 近年は自ら立ち上げた動物愛護団体の活動や、ベジタリアンとしての啓蒙活動、ファッション・ブランド経営に精力を注ぎつつ、時折テレビ・ドラマにゲスト出演したり、映画で小さな役を演じたりしている。

 

エクソシストの謎
La casa 4 - Witchcraft (1988)

日本では1989年劇場公開
VHSは日本発売済・DVDは日本未発売

WITCHCRAFT-DVD.JPG
(P)2006 Media Blasters (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録
)/2.0chステレオ/音声:英語/字幕:なし/地域コード:1/96分/製作:イタリア・アメリカ

映像特典
オリジナル劇場予告編
ジョー・ダマート予告編集
監督:ファブリツィオ・ラウレンティ
製作:ジョー・ダマート
    ジム・ハンソン
脚本:ハリー・スポールディング
    ダニエレ・ストロッパ
撮影:ジャンロレンツォ・バッタリア
特殊メイク:マウリツィオ・トラーニ
音楽:カルロ・マリア・コルディオ
    ランディ・ミラー
出演:デヴィッド・ハッセルホフ
    リンダ・ブレア
    ヒルデガルド・ネフ
    キャサリン・ヒックランド
    アニー・ロス
    レスリー・カミング
    ロバート・シャンパーン
    リック・ファーンズワース
    マイケル・マンチェスター

WITCHCRAFT-1.JPG WITCHCRAFT-2.JPG

妊娠して以来、幻覚に悩まされている女性ジェーン(L・ブレア)

小さな島に残された豪邸は、地元で幽霊屋敷と噂されていた

 80年代後半は本当に酷い映画ばかりに出ていたリンダ・ブレアだが、その中にも僅かながらカルト映画として注目に値する作品もあった。それが、この『エクソシストの謎』である。撮影はアメリカのマサチューセッツ州で行われているが、製作したのはイタリアの映画会社。当時のイタリアン・ホラーらしい過激なエログロ描写と荒唐無稽なストーリー、そしてスタイリッシュなビジュアル・センスが光る、なかなか見応えのあるホラー映画だ。
 ストーリーはいわゆる幽霊屋敷もの。かつて魔女が住んでいたと言われる屋敷で一晩を過ごす羽目になった人々が、一人また一人と残虐極まりない方法で殺されていく。なので、日本語タイトルにあるような“エクソシスト”は一切登場しない。リンダ・ブレア=エクソシスト、というだけの安易な発想だ。
 当時はイタリア産娯楽映画も凋落の一途を辿っており、決して資本的に豊かな時代とは言えなかった。なので、本作も基本的には安上がりの低予算映画。オプチカル効果を中心としたSFXの極端なチープさはちょっと痛い。
 それでも、古い屋敷のロケーションを生かした不気味なゴシック・ムードやケバケバしい特殊メイク、ユニークで過激なスプラッター描写など、低予算の枠内で最大限の見せ場を用意している。当時テレビの『ナイトライダー』で大人気だった俳優デヴィッド・ハッセルホフや、ヒルデガード・ネフにアニー・ロスというベテラン女優の起用など、あまり安っぽさを感じさせないキャスティングも良かった。
 所詮はB級映画、と言ってしまえばそれまでだが、イタリアン・ホラー特有のキワモノ的なおどろおどろしさは、好きな人にとってはたまらないはず。B級ホラー・マニアなら是非とも一度は見ておきたい作品だと思う。

WITCHCRAFT-3.JPG WITCHCRAFT-4.JPG

魔女伝説を取材するレスリー(L・カミングス)とゲイリー(D・ハッセルホフ)

ジェーンの家族は屋敷を下見に訪れる

WITCHCRAFT-5.JPG WITCHCRAFT-6.JPG

異次元へと引き込まれたジェーン

誰も彼女の話を信じてはくれない

 マサチューセッツ州はボストン郊外の小さな島。そこに立つ豪邸は過去にホテルだったが、今は廃墟となっている。もともと、ここには往年のハリウッド女優が住んでいたことがあり、彼女は地元で魔女だと噂されていた。そのせいもあって、人々は呪われた屋敷として忌み嫌っていた。
 この屋敷に関するノンフィクション本を執筆している女性レスリー(レスリー・カミング)は、写真家ゲイリー(デヴィッド・ハセルホフ)を伴って現地調査に訪れている。二人は恋人同士だが、セックス恐怖症のレスリーは処女を捨てられないでいた。一方、その頃ボストン市内に住む若い妊婦ジェーン(リンダ・ブレア)は、たびたび見る奇妙な幻覚に悩まされていた。
 彼女は強欲で口の悪い母親ローズ(アニー・ロス)と気弱な父親フレディー(ロバート・シャンパーン)、そして幼い弟トミー(マイケル・マンチェスター)と共に、例の幽霊屋敷を訪れることになる。物件の安さに釣られた母ローズは幽霊の類など全く信じておらず、屋敷をホテルとして営業再開させるつもりでいた。
 家族を案内したのは不動産仲介業のリンダ(キャサリン・ヒックス)と管理会社のジェリー(リック・ファーンズワース)。ジェーンは屋敷内で奇妙な体験をする。突然異次元へと引き込まれ、そこで恐ろしい光景を目にしたのだ。気がつくと屋敷内で倒れていたジェーン。もちろん、彼女の話など誰も信じてはくれない。
 屋敷を見学し終わって本土へ戻ろうとした一行だったが、彼らを乗せてきたはずのボートが跡形もなく消えている。実は、黒いドレスを纏った謎の老女(ヒルデガルド・ネフ)によって船長が殺害され、ボートは遠く沖へと漂流してしまったのだ。
 天候も荒れ模様で、仕方なく屋敷へと戻った一行は、建物の中に隠れていたゲイリーとレスリーを発見する。二人は不法侵入に当たるわけだが、今はそんなことを追及している場合ではない。やがて外は暗くなり、屋敷の中も寒くなってきた。
 そして、屋敷内では謎の老女が一人また一人と異次元へ連れ去り、世にも恐ろしい方法で命を奪っていく。老女はかつてこの屋敷に住んでいた映画女優で、その正体は魔女だった。針で口を縫いつけられたローズは煙突の中で逆さ吊りにされ、悲鳴をあげることも出来ないまま燻り焼きにされる。セックスを楽しんでいたリンダとジェリーも異次元へ引きずり込まれ、リンダは拷問椅子でなぶり殺しにされ、ジェリーは十字架に釘付けとなった。
 ローズたちがいなくなったことに気付いたジェーンやゲイリーは、屋敷の外で十字架にかけられたまま焼き殺されているジェリーを発見。さらに、リンダやローズの無残な死体も発見する。一方、寝室で休んでいたレスリーは悪魔によってレイプされた。
 事態を察したゲイリーたちは発炎筒を打ち上げて本土へSOSを知らせる。それを偶然目撃した少女が保安官事務所へ連絡し、ヘリコプターが救助に向った。しかし、屋敷が停電しているために、外からは人の気配が全く分からず、暴風雨のために島へ着陸することも出来ない。ヘリコプターはそのまま去ってしまった。
 そうこうしている間に、ジェーンの父フレディが血管の破裂による出血多量のために死亡。さらに、魔女に取り憑かれたジェーンがゲイリーとレスリーを襲う。命からがら屋敷から逃げ出した二人だったが、幼いトミーを残してきたことに気付く。トミーを救出するため、ゲイリーは独りで屋敷へと戻っていくのだったが・・・。

WITCHCRAFT-7.JPG WITCHCRAFT-8.JPG

唇を針と糸で縫いつけられるローズ(A・ロス)

煙突の中で逆さ吊りにされる

WITCHCRAFT-9.JPG WITCHCRAFT-10.JPG

拷問椅子で嬲り殺されるリンダ(C ・ヒックランド)

屋敷に取り憑いた魔女(H・ネフ)

 この屋敷に憑依している魔女はかつて地元の人々によって殺されたらしく、その復讐のために殺害を繰り広げているというのだが、全く無関係の人々を血祭り挙げているという時点で説得力に欠ける。また、ローズの殺害は“強欲”を、リンダとジェリーの殺害は“肉欲”を、レスリーのレイプは“処女の血”を象徴し、その三つによって呪いが成立するらしいのだが、そうすると他の犠牲者は?という疑問がおのずと出てくる。とりあえず、細かいディテールは全く辻褄が合わない。
 その一方で、ゴシック・タッチの映像はなかなか良い雰囲気。サディスティックなスプラッター・シーンも見応え十分だ。ローズが唇を針と糸で縫い付けられるシーンの特殊メイクなんか非常に良く出来ていると思う。
 しかもイタリア映画にしては珍しく、セリフも吹き替えではないので全く違和感がない。少なくとも技術的な面から見て、当時のイタリアン・ホラーの低迷ぶりを考慮すれば、十分に合格点を付けることが出来る仕上がりだ。
 監督のファブリツィオ・ラウレンティはこれが監督デビュー作。本作ではマーティン・ニューリンという変名でクレジットされている。その後、『殺人ルーツ・ザイリアン』(90年)など幾つかのホラー映画やサスペンス映画を撮っているが、90年代後半には消えてしまった。
 脚本にはダニエル・デイヴィスという名前がクレジットされており、一部では製作を担当したジョー・ダマートの別名だと言われているが、どうやら実際に書いたのは『デモンズ・キラー』(87年)や『肉の蝋人形』(97年)のダニエレ・ストロッパと、『蝿男の呪い』(65年)や『呪われた森』(80年)のハリー・スポルディングの二人だったらしい。
 製作を担当したのは、イタリア映画マニアにはお馴染みのジョー・ダマートこと、アリスティド・マッサチェージ。撮影は『デモンズ』(85年)シリーズや『グレイブヤード』(87年)などランベルト・バーヴァ作品でお馴染みのカメラマン、ジャンロレンツォ・バッタリアが担当している。
 また、特殊効果と特殊メイクを手掛けたマウリツィオ・トラーニは、『サンゲリア』(80年)や『ビヨンド』(81年)などルチオ・フルチ作品を手掛けたことでも有名な特殊メイク・アーティスト。ホラー映画やSF映画のみならず、ベルナルド・ベルトルッチの『1900年』(76年)やジュゼッペ・トルナトーレの『ニュー・シネマ・パラダイス』(88年)なんかにも参加している大御所だ。

WITCHCRAFT-11.JPG WITCHCRAFT-12.JPG

レスリーは悪魔に処女を奪われる

こいつが、その悪魔

WITCHCRAFT-13.JPG WITCHCRAFT-14.JPG

身の危険を察したジェーンたちだったが・・・

魔女の霊がジェーンに乗り移る

 一応、キャスト・クレジット上ではデヴィッド・ハッセルホフが主演ということになっているが、実質的にはリンダ・ブレア扮するジェーンがメインの扱い。ハッセルホフは当時『ナイトライダー』で世界的な知名度も高かったため、トップ・ビリング扱いされたのだろう。
 もう一人のヒロイン、レスリー役を演じているレスリー・カミングスは、同じくジョー・ダマートが製作を手掛けた『キリング・バード』(87年)にも出ていた女優だが、出演作はこの2本だけ。詳しい経歴などはよく分かっていない。
 一方、不動産会社の販売員リンダを演じているキャサリン・ヒックランドは、当時イタリア産B級映画に何本も出演していたアメリカ人のセクシー女優。90年代半ばからはテレビの昼メロ・スターとして活躍しているようだ。
 そして、独特の雰囲気を持った魔女役として登場するのが、戦後ドイツを代表する大女優ヒルデガルド・ネフ。ハリウッドにも進出して『キリマンジャロの雪』(52年)などに出演したが、戦時中にナチ少女だった過去がバレて追い出されてしまった。しかし、ドイツではマレーネ・ディートリッヒよりも尊敬される女優と言われ、2002年に亡くなってからもその人気は全く衰えていない。どういった経緯で本作に出演することになったのかは分からないが、この手のB級ホラーには滅多に出ることがなかっただけに、大変興味深いキャスティングと言えるだろう。
 また、唇を縫い付けられるオバサン、ローズ役でアニー・ロスが出演しているというのも当時は驚きだった。アニー・ロスといえば、ルイ・アームストロングやカウント・ベイシー、チェット・ベイカーらとも共演した往年のジャズ・シンガー。日本でも根強い人気を誇っている女性だ。女優としては『スーパーマン3』(83年)の悪役が印象深い。本作への出演で何か吹っ切れるものでもあったのか、その後『バスケット・ケース2』(90年)と『バスケット・ケース3』(92年)でフリークスたちの母親的存在であるルース叔母さんを怪演している。

 

 

フローズン・ボディ
The Chilling (1989)

日本では劇場未公開
VHSは日本発売済・DVDは日本未発売

THE_CHILLING-DVD.JPG
(P)2008 Code Red (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/スタンダードサイズ/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:1/91分/製作:アメリカ

映像特典
撮影風景ビデオ
NGシーン集
オリジナル予告編
プロモ映像
スチル・ギャラリー
監督:ジャック・A・サンセリ
    ディランド・ヌース
製作:ジャック・A・サンセリ
脚本:ジャック・A・サンセリ
撮影:ディランド・ヌース
音楽:ウィリアム・アッシュフォード
出演:リンダ・ブレア
    ダン・ハガティ
    トロイ・ドナヒュー
    ジャック・デ・リュー
    ロン・ヴィンセント
    マイケル・ジェイコブス

THE_CHILLING-1.JPG THE_CHILLING-2.JPG THE_CHILLING-3.JPG

死体を冷凍保存するユニヴァーサル・クライオジェニックス社

女性職員のメアリー(L・ブレア)

社長のミラー博士(T・ドナヒュー)

 リンダ・ブレア出演作の中でもワースト・ワンを選ぶとすれば、間違いなくこの作品で決まりだろう。冷凍保存された人々が、落雷の影響で次々ゾンビとなって蘇るという作品。倉庫内を舞台にした展開は、恐らく『バタリアン』をパクったつもりなのだろうが、あの『バタリアン2』でさえ傑作に思えてしまうくらい酷い出来だった。
 まず最大の難点は、手際よくまとめれば30分くらいで済みそうな話を延々と1時間半も繰り広げてしまうストーリー。特に中盤からは、主人公たちとゾンビが工場内をウロウロとする姿を延々と見せられる。その退屈なことといったら!
 しかも、このジャック・A・サンセリとディランド・ヌースという監督コンビの演出が素人丸出しで、ただ漠然とカメラを回しているだけ。その上、引きの長回しばかりで編集にリズム感がないため、ホラー映画としてのスリルも緊張感もまるっきり感じられない。
 ゾンビの特殊メイクにしてもラバー・マスクを被っただけ。さらに、銀色のジャンプスーツみたいなものを着ているため、工事現場の作業員が仮装してうろついているようにしか見えない。しかも、ある時は普通に走り回ったり、ある時はゾンビらしくモゾモゾと歩き回ったりと、その動きも首尾一貫していないのだから困った。ゾンビが人間を襲うシーンにしても、ホラー映画というよりもアクション映画みたいなので、ちっとも怖くない。
 また、役者の演技も相当に酷い。リンダ・ブレアは相変わらずの大熱演で一応は合格点だとしても、ダン・ハガティとトロイ・ドナヒューはベテラン俳優にあるまじき手抜きぶりだし、それ以外の役者の演技なんかまるで学芸会レベル。
 とにかく、リンダ・ブレアの出演作としてもゾンビ映画としても最低レベルのクズ映画。これで編集にもうちょっとセンスがあって、上映時間を短くまとめることが出来れば、酷すぎて笑えるくらいのバカ映画にはなったのかもしれないが、残念ながらただひたすら退屈なだけ。早送りせずに最後まで見ることが出来たら、きっと何かの悟りでも開けるに違いない。

THE_CHILLING-4.JPG THE_CHILLING-5.JPG THE_CHILLING-6.JPG

メアリーは大富豪ダヴェンポート(J・デ・リュー)と親しくなる

ダヴェンポートのドラ息子ジョー(R・ヴィンセント)

遺体の臓器は密かに売買されていた

 死体の冷凍保存を請け負っているユニヴァーサル・クライオジェニックス社(UCC)。医療技術が進歩するまで死者を保管し、将来的に再び蘇らせることができるというのが謳い文句だ。大富豪のダヴェンポート(ジャック・デ・リュー)は、最近亡くなったばかりの妻をUCCに預けた。
 ところが、音信不通になっていたドラ息子ジョー(ロン・ヴィンセント)が銀行強盗の罪を犯し、銃撃戦の果てに射殺されたとの知らせを受ける。遺体を引き取ったダヴェンポートは、息子もUCCで連投保存させることにした。悲しみに暮れる彼を慰めたのは、UCCの従業員である女性メアリー(リンダ・ブレア)。彼女も同棲中の恋人によるドメスティック・バイオレンスに悩んでおり、2人はお互いに特別な感情を抱くようになる。
 その日はハロウィンだったが、夜になって天候が荒れてきた。落雷で冷凍装置が故障してしまい、警備員のヴィンス(ダン・ハガティ)は死体保存ケースを屋外へ持ち出した。外の方が冷えるだろうと配慮したのだ。だが、嵐は激しさを増し、保存ケースに雷が直撃する。すると、中に入っていた死体が次々とゾンビとなって蘇った。
 ダヴェンポートと食事をしたメアリーは、彼のリムジンで自宅まで送ってもらう。すると、玄関口で酔っ払った恋人マーク(マイケル・ジェイコブス)がダヴェンポートに言いがかりをつけてきた。そこへ、警備員のヴィンスから電話がかかってくる。緊急事態と知って会社へ戻るメアリーとダヴェンポート。嫉妬に狂ったマークも後を追った。
 会社に到着したメアリーとダヴェンポートは、荒らされた状態の研究室を見て愕然とする。臓器が残されているのを発見したメアリーは、社長のミラー博士(トロイ・ドナヒュー)が死者の臓器を闇で売買している事実に気付いた。
 社内ではゾンビたちが次々と従業員を食い殺している。メアリーとダヴェンポート、ヴィンスの3人は社内や倉庫をひたすら逃げ回った。一方、ミラー博士はなぜか書類を抱えて逃げ出そうとするが、ゾンビたちに捕まって保存ケースに入れられてしまう。ゾンビたちが低温に弱いと気付いたメアリーたちは、液体窒素でゾンビを一網打尽にしようとするのだったが・・・。

THE_CHILLING-7.JPG THE_CHILLING-8.JPG THE_CHILLING-9.JPG

警備員のヴィンス(D・ハガティー)

死体保存ケースに雷が直撃

死体がゾンビとなって蘇る

 一人残らず退治したはずのゾンビが意外なところに・・・というクライマックスは気の利いたギャグのつもりなのだろうが、完全に滑ってしまって笑えず。臓器売買や命の尊厳といった話題に触れておきながら、そのまんま放ったらかしにして終わってしまうという無責任さにも呆れる。頭の悪い人が作った映画の見本みたいな作品だ。
 監督・製作・脚本のジャック・A・サンセリは『デッドロック』(88年)というビデオ用アクション映画のプロデューサーだった人で、監督と脚本を務めたのはこれ一本だけ。一方、共同監督と撮影を担当したディランド・ヌースは、ウーリ・ロンメル監督のB級アクション映画のカメラマンを務めていた人物だ。
 なお、特殊メイクを手掛けたスタッフは、後にそれぞれメジャー作品で活躍するようになった人ばかり。ブライアン・レエは特殊メイク集団KNBのスタッフとなり、『フロム・ダスク・ティル・ドーン』(96年)や『ゴースト・オブ・マース』(01年)、『ハロウィン』(07年)などのヒット作に参加。ピーター・コーニグはフィル・ティペットのスタッフとなり、『ジュラシック・パーク』(93年)や『スターシップ・トゥルーパーズ』(97年)、『クローバーフィールド』(08年)などに参加している。また、ライオネル・アイヴァン・オロスコも、『ジュラシック・パーク』シリーズや『スターシップ・トゥルーパーズ』のスタッフに名を連ねていた。

THE_CHILLING-10.JPG THE_CHILLING-11.JPG THE_CHILLING-12.JPG

ラバー・マスクを被っただけのゾンビ・メイク

メアリーたちは決死の脱出を試みるが・・・

ダヴェンポートの息子ジョーもゾンビに

 警備員ヴィンス役を演じたダン・ハガティは、70年代のTVドラマ“The Life and Times of Grizzly Adams”の主演で人気を集めた巨漢俳優。映画では主にB級アクションやコメディ映画の脇役を務めている。
 一方、ユニヴァーサル・クライオジェニックス社の悪徳社長を演じたトロイ・ドナヒューは、『恋愛専科』(62年)や『パームスプリングスの週末』(63年)などの青春映画で一世を風靡した往年のアイドル・スター。もともとあまり演技の上手い人ではないのだが、本作での適当な仕事ぶりはベテラン俳優としていかがなもんだろうかと真剣に思う。
 それ以外のキャストは、ほとんど他に映画出演経験のないような無名の俳優ばかり。というか、プロの俳優かどうかすら怪しいような人も少なくない。

 

戻る