ローリー・ジョンソン Laurie Johnson

 

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 ローリー・ジョンソンと言えば、なんといっても『おしゃれ㊙探偵』(61〜69)と『特捜班CI-5』(78〜83)のテーマ曲。どちらも60年代と70年代のイギリスを代表する人気テレビ・ドラマだったわけだが、中でもローリー・ジョンソンの書いたテーマ曲はすこぶるカッコ良さだった。よくよく考えると、『おしゃれ㊙探偵』のテーマは当時巷に溢れていた“007”シリーズもどきのジョン・バリー風スコア(ジョンソンが書いたのは65年以降の2代目テーマ曲)だったし、『特捜班CI-5』のジャズ・ファンク風スコアも明らかに当時のラロ・シフリンやロイ・バッドの影響下にあったわけだが、それでも単なるパクリに終わらないキャッチーなポップ・センスとクールなアレンジの妙は侮れない。
 そう、ローリー・ジョンソンの書く楽曲は基本的にとてもポップだ。テレビや映画の音楽スコアのみならず、ジャズ・コンボや交響楽団、そして英国軍ミリタリー・バンドのためにありとあらゆるジャンルの楽曲を手掛けているが、そのいずれもが非常にメロディアスで分かりやすい。室内交響楽団向けのシンフォニーなんかお堅くて高尚なものを想像してしまいがちだったりするが、これが思わず耳を疑ってしまうくらいにスインギーでファンキーだったりする。ミリタリー・ミュージックだってとても聴きやすい。さながらイギリス版のフランチェスコ・デ・マージもしくは菊池俊輔。それだけに、日本ではキューブリックの『博士の異常な愛情』(63)を手掛けた作曲家という程度の認知度しかないのが惜しまれる。

 1927年2月7日ロンドンに生まれたジョンソン。王立音楽大学で作曲を学び、英国陸軍歩兵部隊コールドストリーム・ガーズに従軍した後、40年代末にテッド・ヒース楽団のアレンジャーとしてショー・ビジネスの世界へと足を踏み入れた。1950年代半ばから映画やテレビにも進出。そんな彼が初めて注目されたのは、59年にロンドンで初演されたミュージカル“Lock Up Your Daughters”。作曲・アレンジ・オーケストラ指揮を担当したジョンソンは、作詞家のライオネル・バートと共にアイヴァー・ノヴェロ賞を受賞。これをきっかけに、まずはミュージカル作曲家として知られるようになった。
 さらに、61年から始まったテレビのスパイ・ドラマ“Top Secret”のテーマ曲“Sucu Sucu”が全英シングル・チャート9位をマークする大ヒットに。たちまちテレビ・ドラマの人気コンポーザーとなった彼は、65年に当時イギリスのみならずアメリカやヨーロッパでも高い視聴率を誇っていた人気探偵アクション『おしゃれ㊙探偵』の2代目テーマ曲を担当。これが大変な反響を呼び、すっかり『おしゃれ㊙探偵』のイメージを決定づけてしまった。ジョン・ダンクショーの手掛けた初代テーマ曲は今や完全に忘れ去られ、後のハリウッド・リメイク版映画『アベンジャーズ』(98)でもジョンソンの書いたテーマ曲が流用されている。
 ほかにも、1962年から83年まで続いた子供向けの動物ドキュメンタリー番組“Animal Magic”やピーター・ワインガード主演のミステリー・ドラマ『作家探偵ジェイソン・キング』(71〜72)、シャーリー・マクレーン主演のバラエティ番組“Shirley's World”(71〜72)などのテレビ作品を担当。その一方で、子役ヘイリー・ミルズを一躍スターにした傑作ミステリー『追いつめられて…』(59)や巨匠キューブリックの『博士の異常な愛情』(63)、『H・G・ウェルズのS.F.月世界探検』(64)といった劇場用映画の音楽スコアも手掛けるようになった。

 その後、『おしゃれ㊙探偵』の脚本家ブライアン・クレメンスらと共に製作会社を立ち上げたジョンソンは、同作を70年代仕様にアップデートした“The New Avengers”(76〜77)と、骨太で斬新なスパイ・アクション・ドラマとして日本でも根強い人気を持つ『特捜班CI-5』(78〜83)をプロデュース。もちろん、それぞれに音楽スコアも手掛けている。
 さらに、87年にはイギリス映画界の老舗ゲインズボロー・スタジオをジョン・ハフ監督らとの共同出資で買収。以降は同スタジオの経営業務に重点を置くようになり、コンポーザーとしては第一線を退いてしまった。それでも、交響曲やミリタリー・ミュージックの作曲活動はマイペースで続けており、ビッグ・バンドを率いたコンサート・ツアーもコンスタントに行っているという。97年にはビッグ・バンドによる『特捜班CI-5』のテーマ曲のセルフ・リメイクが全英シングル・チャートで36位をマーク。07年にはフォークランド紛争25周年を振り返る組曲を英国陸海空軍のために書き下ろしている。

 

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The Music of Laurie Johnson Volume 1 : The Avengers

(P)2007 Demon Music Group Ltd. (UK)
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DISC 1/The Avengers Soundtrack
1,The Avengers Theme (Main Title)ビデオ
2,Dead Man's Treasure
3,Escape In Time
4,What The Butler Saw
5,Honey For The Prince
6-7, Invasion Of The Earth Man
8-9,Joker
10,Return of the Cybernauts
11-12,Quick Quick Slow Death
13,A Funny Thing Happened On The Way To The Station
14-17,The Superlative Seven
18-20,Murdersville
21-22,Mission Highly Improbable
23-25,From Venus With Love
26-30,The See-Through Man
31-32,Hidden Tiger
33,The Living Dead
34,Tag Scene
35,The Avengers Theme (End Title)
DISC 2
TELEVISION THEMES
1,This Is Your Life
2,The New Avengers ビデオ
3,Animal Magic ビデオ
4,The Professionals
5,Riviera Police
6,When The Kissing Had To Stop
7,Whicker's World
8,World In Action
SINGLES
9,Hallelujah
10,Pick Up Yourself Up
11,Fascinating Rhythm
12,Buttercup
FILM THEMES
13,First Men In The Moon
14,Tiger Bay
15,Dr.Strangelove
16,Hot Millions
17,Hedda
18,The Beauty Jungle
SYMPHONY
19,First Movement
20,Second Movement
21,Third Movement
22,Fourth Movement
23,Fifth Movement
DISC 3/Royal Military Spectacular
1,Fanfare for HRH Prince of Wales; Falkland Salute (F25 March)
2,Royal Tour Suite-Fanfare Overture
3,Royal Tour Suite-Greensleeves
4,Royal Tour Suite-Salute to America
5,Echoes
6,To The Few-Scramble
7,To The Few-Juke Box
8,Th The Few-Fly Past

conducted by Laurie Johnson

#1 played by The Massed Bands of the Royal Air Force
#2-4
played by The Band of the Coldstream Guards, The London Brass Chorale and The Fanfare Trumpeters of the Scots Guards
#5 played by The Massed Bands and the Fanfare Trumpeteters of the Royal Air Force
#6-8
played by The Massed Bands and the Fanfare Trumpeteters of the Royal Air Force and the London Philharmonic Choir
 『おしゃれ?探偵』のオリジナルサントラ音源を集めたディスク1。各エピソード毎に、ストーリーやテーマに即したスコアが書かれていたらしく、これは当時のイギリス・テレビ界では初めての試みだったそうです。ここでは全編共通のテーマ曲をオープニングとエンディングの2種類収録しているほか、シーズン4と5のエピソードから劇中スコアをセレクト。ラウンジ・ミュージック的なものが多いのは時代ですね。  こちらは各テレビ番組のテーマ曲及び映画音楽、ジャズ&ポップス系シングル、交響曲などの代表作を集めたコンピレーション。オリジナルをさらにファンキーなディスコ・タッチにした#2や当時イギリスのラウンジ系オーケストラが好んでカバーした#3、ラテン・ジャズ・スタイルのゴージャスな#5がおススメ。また、#11では当時21歳だったペチュラ・クラークの歌声を聴くことが出来ます。  フォークランド紛争25周年の記念式典のためにジョンソンが書き下ろした壮大な組曲を聴くことが出来るディスク3。基本的にはザ軍隊!といった感じの勇ましいミリタリー・ミュージックなんですが、随所にキャッチーなフックや抒情的なセンチメンタリズムを織り込んでいるのがローリー・ジョンソンならではの魅力と言えるかもしれません。予想外に聴きやすかったことはちょっと驚きました。

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The Music of Laurie Johnson Volume 2 : The Professionals

(P)2008 Demon Music Group Ltd. (UK)
VOLUME2_DISC1.JPG VOLUME2_DISC2.JPG VOLUME2_DISC3.JPG
DISC 1/The Professionals Soundtrack
1,The Professionals Theme ビデオ
2-3 Theme Version A, B
4,Sleuthing
5,On The Trail
6-11,Stopover
12-16,Fugitive
17-18,Foxhole On The Roof
19-21,Hijack
22,First Night
23-24,A Hiding To Nothing
25-28,Dead Deckoning
29-37,The Ojuka Situation
38-42,Need To Know
43-51,The Gun
52,The Professionals Theme
DISC 2
TELEVISION THEMES
1,Jason King ビデオ
2,Top Secret (Sucu Sucu)
3,Echo Four Two
4,Happy Go Lively (Ren & Stimpy)ビデオ
EARLY SINGLES
5,Drum Crazy
6,Jamboree
7,Lullaby of the Leaves
8,Winter Wonderland
FILM SCORES
THE FIRST MEN IN THE MOON
9,Main Titles
10,Moonscape And Descent Into The Moon
11,Encounter with the Selenites
12,Trek To The Giant Doors
13,The Monster Caterpillar
14,The Eclipse and Ascent of the Great Staircase
15,Selenite Pursuit and Sphere Returns to Earth
16,End Titles
IBSEN'S HEDDA SUITE
17,Main Titles ビデオ
18,Hedda And Thea
19,Judge Brack
20,Hedda And Lovborg
21,The Manuscript
22,Death And End Titles
CONCERTO FOR TRUMPET, TENOR SAX AND ORCHESTRA
23,Prelude
24,Adagio
25,Allegro
DISC 3/Royal Military Spectacular
THREE PAINTINGS BY LAUTREC SUITE
1,At The Circus
2,Girl With Red Hair
3,Chocolat Dancing
COLOURS FOR CONCERT BAND SUITE
4,Red Heat
5,Blue Mist
6,Green Haze
7,Yellow Mirage
CONCERT HALL WORKS
8,The Battle of Waterloo
9,The Wind In The Willows (Tone Poem)

conducted by Laurie Johnson
#1-3 performed by The London Brass Chorale and the Band of the Coldstream Guards
#4-7 performed by RAF Central Band and RAF Squadronaires
#8 performed by the London Brass Chorale, Band of the Coldstream Guards, Bulgers & Fanfare Trumpeters of the Scots Guards, Cavarly Trumpeters of the Lifeguards. Organist : Williams Davies
 ディスク1は『特捜班CI-5』のオリジナル・サウンドトラック盤。テーマ曲#1も当然カッコいいのですが、それ以上におススメなのがバージョン違いの#2と#3。超レア・グルーヴなジャズ・ファンク全開といった感じで、鳥肌モノのカッコ良さです。#4〜#51はシーズン3以降の劇中スコアよりセレクトされている模様。いかにもタフでハードボイルドな雰囲気を醸し出すファンキーな楽曲が多く、なかなか聴き応え十分な1枚だと思います。  こちらは50年代の初期シングル曲及びテレビ番組テーマ曲、コンサート用交響曲、そして映画『H・G・ウェルズのS.F.月世界探検』と“Hedda”のサウンドトラックをコンパイルしたディスク2。いかにも70年代的なストリングス・サウンドが爽やかな『作家探偵ジェイソン・キング』のテーマ曲#1と全英チャート9位に輝いたトロピカルなラテン・ジャズ#2が目玉でしょうか。モダン・ジャズ風の交響曲#
23〜#25もクールです。
 英国軍のミリタリー・バンド向けの交響曲を集めたディスク3。ロートレックの絵画をモチーフにした組曲(#1〜#3)がとにかく素晴らしい出来栄えです。ノスタルジックでエレガントでゴージャス。それこそマックス・オフュールスの映画なんかにしっくりと合いそうな感じです。一方で“ブリテンの戦い”50周年を記念した#4〜#7はスインギーなビッグ・バンド・ジャズ。軍隊音楽らしからぬ軽妙洒脱さがなんともユニークです。

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Cult TV Themes

(P)2004 Sanctuary Records (UK)
1,No Hiding Place
2,Echo Four Two
3,Top Secret (Sucu Sucu)
4,Riviera Police (Latin Quarter)
5,Animal Magic (Las Vegas)
6,Whicker's World (West End)
7,Theme from the Deputy
8,Mein Libling, Mein Rose
9,The Avengers
10,Thorson Theme ビデオ
11,This Is Your Life
12,The Jason King Theme
13,Shirley's World ビデオ
14,The New Avengers
15,The Professionals
16,The Lady and the Highwayman
17,A Hazard of Hearts
18,A Duel Of Hearts
19,A Ghost in Monte Carlo
20,The Avengers (End Tag Scene)ビデオ
21,A Flavour of the New Avengers
 ジョンソンの手掛けたテレビ番組テーマ曲を一通り網羅したベスト盤的な1枚。値段的にかなりお手頃なので、入門者向けとしても最適ではないかと思います。代表曲#3や#4、#5、#9、#12、#14、#
15はもちろんのこと、『おしゃれ?探偵』テーマ曲の最終シーズン・バージョン#10やシャーリー・マクレーン主演番組のテーマ曲#13などレアなトラックも収録。ラウンジ・ミュージックとしても十分に楽しめる内容だと思います。

 

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